永田町から吹いて来る解散風/日本の針路(66)
前回の総選挙は、2012年12月16日に行われたから、任期のちょうど半分という時期である。
にもかかわらず、メディアや政党周辺では年内解散総選挙という空気らしい。
こういうものは一度動き出すと、止めるのが難しくなってくるものだろう。
静岡新聞11月12日
解散権は首相にあるから、安倍首相が解散に傾いているということだろう。
事実次のように報じられている。
安倍晋三首相が早期の衆院解散を視野に、自民党幹部に「年内の衆院解散・総選挙は選択肢にある」と伝えたことが明らかになった。消費税率の10%への引き上げを巡る判断を踏まえ、国民に信を問う位置づけにしたい考えだ。首相は外国訪問から帰国する17日にも公明党の山口那津男代表と会談する。与野党は12月の総選挙を想定した準備に入った。
首相「年内の衆院選 選択肢」 自民幹部に伝える
6日の安倍首相の動静 欄に、次のような記事が載っている。
▽9時54分 クルーグマン米プリンストン大教授。浜田、本田両内閣官房参与が同席。
関連して次のように伝えられている。
同席者らによると、クルーグマン教授は米欧の経済情勢などについて見解を述べ、黒田東彦総裁による日銀の金融政策運営を支持すると語った。
また、日本については、デフレ脱却前の増税の危険性を明言した。首相は自分の意見をコメントせず、興味深く聞いていたという。
クルーグマン教授は、従来からデフレ脱却途上における昨年4月の消費税増税を強く批判し、ニューヨーク・タイムズ紙上などで持論を展開してきた。今回は国内大手証券のイベント出席などで来日。本田参与がこの日の会談を設定したという。
クルーグマン教授が安倍首相と会談、消費増税反対を表明
浜田、本田両内閣官房参与はアベノミクスの理論的支柱と目される学者だ。
共に「貨幣が成長を決する」というマネタリスト、あるいはリフレ派といわれる人である
⇒2014年7月16日 (水):お友達内閣の経済ブレーン/アベノミクスの危うさ(36)
アベノミクス支援者の消費税増税慎重論の意見を聞いて、現時点での増税は難しいと判断したのではないか。
そして先送りに対する批判を封じ込める狙いで、解散総選挙をするのであろう。
首相は佐藤栄作元首相の手法に学ぼうとしているという見方もある。
佐藤内閣では、国有地の払い下げなどをめぐり閣僚らの不祥事が相次ぎ、政界を覆う「黒い霧」が批判された。逆風を受けた佐藤元首相は求心力回復のため、衆院解散に打って出た。一連の疑惑にもかかわらず自民党の議席は微減にとどまり、佐藤内閣は7年を超える長期政権となった。
解散前の佐藤内閣は、閣僚の「政治とカネ」の疑惑がやまない第2次安倍改造内閣の姿と重なる。
佐藤元首相は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散するほど上がる」という格言を残した。長期政権を目指す安倍首相にとって、支持率低下を招いた9月の改造の失敗をリセットする解散が魅力的に映るのは、自然なこととも言える。
複数の政府・与党関係者は、首相が本格的に年内解散の検討を始めたのは、観劇会などの不明朗な会計処理で辞任した小渕氏らのダブル辞任(10月20日)の頃と証言する。
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一方、首相はほかのタイミングでの解散の可能性も探った。当初は来年の通常国会閉会後の夏の解散も有力視されたが、自民党幹部は「統一地方選の後に国政選挙をやって勝ったことはない」と指摘。また、統一地方選後には集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の審議が予定される。政府関係者は「安保法制に体力を奪われる。来年、解散を打てる時期はない」と来年中の解散はむしろ困難との見方を示す。
11日現在、次期衆院選の立候補予定者は自民党が278人に対し、民主党は134人。与党の選対幹部は「こちらの選挙態勢はほぼ出来上がっている。解散で実際に困るのは準備ができていない野党側だ」と述べ、早期解散は与党側に有利だと断言する。
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こうした選挙日程優先の解散判断を巡っては、与党内からも懸念の声が上がっている。自民党の閣僚経験者は「解散の大義がない。来年の党総裁選など自分の都合で解散するということなのか」と不信感を隠さない。
解散へ調整 長期政権へ「リセット」
まあ一寸先は闇の世界であるから、どう展開するかは予断はできない。
しかし自らの失政・政治責任にほおかむりして、党利党略の思惑で解散するならば、国民もそれなりの判断を下すことになろう。
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