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2014年11月20日 (木)

総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)

安倍首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを2017年4月に先送りする方針を発表し、この判断を、「「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならない」と説明した。
表面上はもっともなようにも聞こえるが、まったくの「まやかし」と言うべきだろう。
増税延期に反対だという政党は見当たらないから、争点にならない。

あえてこのような言い方をするというのは、後ろめたいことの証明であろう。
増税先延ばしには、いま国民の嫌がることでも将来の国民のことを考えて、というような意気込みを感じない。
増税への国民の忌避感を利用しようとしか思えない。

 確かに経済は生き物であり、機械的に扱うと判断を誤る。17日に発表された7〜9月期のGDP速報値は予想を覆すマイナス成長となり、「増税できる環境にない」との意見には耳を傾ける必要があろう。
 だが、成熟した資本主義国の日本にとって、かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない。政治家の役割は、富の配分よりも、負担のあり方について国民的合意を形成する方に比重が移っている。
首相 解散を表明 争点は「安倍政治」だ

私も、「かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない」と思う。
成長よりも成熟を考えるべきだろう。
⇒2014年2月 3日 (月):成長から成熟へ/花づな列島復興のためのメモ(302)

しかしアベノミクスは「3本の矢」と称して成長への幻想を誘起してきた。
起きているのは円安と株高である。
⇒2014年11月 1日 (土):博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

アベノミクスの是非は重要な論点ではあるが、そればかりに集中すると全体像を見失う。
消費税再増税するような環境にないのは事実だが、それがアベノミクスの失敗を示している。
輸出型の企業、富裕層に偏重した政策は、経済格差を拡大させている。

ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン/ 稲葉振一郎(解説)、鬼澤忍 (訳) 『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』早川書房(2013年6月)によれば、国家の盛衰を決めるのは、地理でも、気候でも、文化でも、あるいは為政者の無知でもなく、政治・経済上の「制度」である。
韓国と北朝鮮、ボツワナとジンバブエ等、近接しているのに発展の度合いに極端な差がある例。
それは、政治・経済上の「制度」の差異である。

2つの差異の理念型として、「包括的な政治社会制度inclusive institution」と「収奪的な政治社会制度extractive institution」を想定する。
前者は、広範な経済主体が投資や技術革新に対して、インセンティブを持つことを可能とする制度である。
後者は、基本的にエリート層だけに経済的利益を還元し、その他大勢を排除する制度である。
経済発展を可能にするのは、「包括的な政治社会制度inclusive institution」である。
逆に言えば、富の偏在は発展を阻害する。

アベノミクスによって、雇用者の平均年収や正規雇用者数は減り続け、中間層が減った。
社会の格差を表すとされるジニ係数の推移は下図のようである。
Photo_2
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/11/blog-post_30.html

中間層を細らせた結果、個人消費に支えられる国内総生産(GDP)が落ち込んだ。
円安によってどれくらいの国富が失われたのか?
ドルベースでみれば、GDPはどうなっているのか?

安倍内閣の2年間を振り返ると、特定秘密保護法の成立強行、原発再稼働の推進、集団的自衛権の行使容認などが、「実績」である。
こんな政治を安定させてはならない。

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