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2014年11月18日 (火)

安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)

安倍首相が21日の衆議院解散を表明した。
任期を半分残しての師走の総選挙はどういう狙いだろうか?
一言でいうならば、安倍政権の行き詰まりでしかあるまい。

GDP速報値が示すように、日本経済は成長どころか縮小している。
⇒2014年11月17日 (月):GDP速報値が示す衆院選の争点/アベノミクスの危うさ(42)

安倍首相は「消費税増税延期の是非を問う」と言っているが、選挙を行う名分としてはいかにも苦しい。
だいたい野党も増税延期に反対しているわけではないので争点にならない。
消費税増税の根拠法である「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(法律第六十八号(平成二四・八・二二))には次のようにある。

(消費税率の引上げに当たっての措置) 第十八条
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

現下の経済状況は、決して好転はしていない。
すなわち「施行の停止」という選択肢はあらかじめ用意されているのである。
では、総選挙の狙いは何か?
政権運営の行き詰まりを打開するため以外にはない。

第1次政権の時は体調を崩した。
本来ならば退陣すべき状況であるが、解散を選んだということだろう。

安倍首相が胸を張って言っていたような経済の好循環は生まれていなかったのである。
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)
日銀の追加緩和というのも実体経済に効くというよりも、一時的なカンフル剤というべきである。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
⇒2014年11月 1日 (土):博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

やはり安倍首相は、裸の王様だった。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年2月14日 (金):安倍首相の暴走をコントロールするのは?/花づな列島復興のためのメモ(307)

自分が期待しているように認識しがちなことは誰にでもあることである。
しかし、一国のリーダーが盲目であっては大変である。
直言する参謀役が重要であるゆえんだが、「現代の軍師」と評価されている菅官房長官はどういうサポートをしているのだろう。
⇒2014年1月 4日 (土):現代軍師論/花づな列島復興のためのメモ(288)

安倍首相のお仲間の1人百田尚樹氏が、やしきたかじん氏というよりもさくらさんという未亡人をテーマにして、『殉愛』幻冬舎(2014年11月)という作品を刊行した。
幻冬舎流のメディアミックスで、7日の「金スマ」に、百田氏自身が登場し、再現ビデオまで制作してプロモーションを展開した。
あざといまでのプロモーションの成功が、作品の瑕疵を浮かびあがせることになり、火だるま(炎上)状態である。

アマゾンのカストマーレビューに意味があるかどうか疑問ではあるが、それにしても600近い驚異的な数のレビューの平均値が2.2という低さである。
普通、自分で選んで買った本には多少甘くなるものではないだろうか。
私が稀に見る駄本と思った飯島勲『秘密ノート~交渉、スキャンダル消し、橋下対策 』プレジデント社(2013年6月)でさえ、3.9であるから、推して知るべしである。

なまじノンフィクションなどと銘打たないで、実話をベースにした純愛物語としていればまだしも傷は浅かったのではないか。
だいたいにおいて、一周忌にもならないうちにこのような書物を出すべきかどうか。
まともな日本人なら、喪に服すという感覚であろう。

低評価の理由は人によりさまざまであろうが、たかじん氏のファン度の高いレビュアーは怒っているようだ。
百田氏自身が100%真実と語っていた内容が、たかじん氏に感じていた東京とは異質の「関西のいき」を感じさせないような内容である。
しかも、意図的な隠蔽もしくは虚偽があったのである。
口を極めて避難していた朝日新聞と左右反転すれば、そっくりである。

私は百田氏には見切りをつけていたが、やしきたかじんという人間は好意的に見ていたので、BookOffに出回るだろうと思いながら、新刊を買って読んだ。
⇒2014年1月 8日 (水):関西の「いき」を体現・やしきたかじん/追悼(42)

きわめて後味の良くない作品だった。
それは長年仕事を共にしてきたたかじん氏の側近や実子を、口汚く悪し様に書いていることに象徴的に現れている。
詳細についてはここでは触れないが、百田氏がツイッターで弁解している言葉を引こう。
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何というお粗末な弁解だろう。
自分の都合が悪くなったことを、開き直っているだけで説明になっていない。

私は都知事選で、百田氏が田母上俊雄氏の応援演説で、他の候補者たちを「人間のクズ」というのを聞いて百田氏を評価しなくなった。
⇒2014年2月 9日 (日):都知事選と安倍政権批判/花づな列島復興のためのメモ(305)
「人間のクズ」というのはどうやらお気に入りの言葉らしく、先行するツイッターではAmazonのカストマーレビューで評点の低い人たちにも投げつけていた。
天に唾したら自分に降りかかってくることも予想できなかったらしい。

安倍首相が、解散という選択肢を頭に浮かべたのは、女性閣僚のW辞任を迫られたころだという。
「女性の輝く社会」を標榜して選んだはずの女性閣僚が、何ともお粗末だった。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)

特に、未来の総理候補などと囃された小渕優子前経産相の金銭疑惑は痛手だったはずである。
⇒2014年10月17日 (金):安倍政権高支持率の潮目は変わるのか?/日本の針路(53)
⇒2014年10月19日 (日):小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)

平和国家の理念を覆した解釈改憲、暗黒国家への道を開く特定秘密保護法、前のめりに原発再稼働を急ぐエネルギー政策・・・
総選挙は、これらの総体を問う選挙である。
言ってみれば、東日本大震災後のわれわれの生き方、文明の様式を考えることになろう。
⇒2013年5月17日 (金):「成長の限界」はどのような形でやって来るか?/花づな列島復興のためのメモ(214)
⇒2014年2月 3日 (月):成長から成熟へ/花づな列島復興のためのメモ(302)

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