セルフネグレクトと認知症/ケアの諸問題(18)
「セルフネグレクト」という概念が、認知症との関係で注目を集めている。
セルフネグレクトについては、「デジタル大辞泉」では以下のように説明している。
成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうこと。必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合がある。防止するためには、地域社会による見守りなどの取り組みが必要とされる。自己放任。
セルフ・ネグレクトに陥るきっかけはいろいろあるが、高齢者の場合は認知症が大きな要因だという。
岸恵美子帝京大教授(地域看護学)らの研究グループが09年12月~10年1月、地域介護の拠点である全国の地域包括支援センター4038カ所に調査票を送り、1046カ所(26%)から回答を得た。
生活上当然すべき行為をせず、安全や健康が脅かされる状態をセルフネグレクトと定義し、65歳以上の人のケースを尋ねたところ、499カ所のセンターで計1528人だった。ホームレスは除いた。
詳しく書かれた846人を分析すると、男女ほぼ同数、80~84歳が26%と最も多い。68%が一人暮らしだが、21%は家族と同居。56%は介護保険の要介護認定を申請していない。経済状態に「余裕がある」「ややある」が計31%。20%が精神疾患、44%が糖尿病や高血圧など慢性の病気があった。
食べ物やごみ放置…セルフネグレクトの高齢者1500人
セルフ・ネグレクトが問題になるのは、、生活上すべき行為をしない、または、する能力がないことから、家の前や室内にゴミが散乱したり、極端に汚れた衣服を着ていることである。
結果として、地域や家族からも孤立し、ゴミ屋敷状態や孤立死にもつながっていく。
セルフ・ネグレクト高齢者は全国に約1万1千人いると推計されている(2009年度、内閣府の経済社会総合研究所の調査)。
一人で暮らす認知症のトシエさん(仮名・72歳)は認知症が進んでいたために自宅内でゴキブリが大量発生していても、近隣住民に苦情を訴えられることもなく、そのまま暮らし続けていた。発覚したのは介護サービスの利用を開始し、スタッフがトシエさんの暮らしぶりを垣間見るようになったからだった。だが、今後はどうするのか。核家族化や、隣近所の人たちとの関係が希薄になっていく社会で、“家の中”というブラックボックスで起きる異変に外から気がつくのは難しい。
「ゴミ屋敷」予備軍は1万超 今「セルフ・ネグレクト」が問題化
認知症との関連について、医師や弁護士ら専門家が実態調査に乗り出したというニュースがあった。
日本経済新聞11月17日
速やかな実態の解明に期待する。
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