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2014年11月

2014年11月30日 (日)

安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)

相当に危機感を強めているのか?
2年間の安倍政治によほど自信がないんだろうな。
奇襲解散だけでは不安なのか、自民党が在京テレビ局に「公平中立な放送を心がけよ」という要望書を送りつけたことが話題になっている。

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 文書は「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」というタイトルで、20日付で在京のテレビキー局に送付された。差出人は筆頭副幹事長の萩生田光一と報道局長の福井照の連名。その中身がむちゃくちゃなのだ。
 投票日の12月14日までの報道に〈公平中立、公正な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます〉と注文をつけた上に、〈過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、(略)大きな社会問題となった事例も現実にあったところです〉とクギを刺している。文中には「公平中立」「公平」が13回も繰り返されている。要するに自民党に不利な放送をするなという恫喝だ。
選挙報道に露骨な注文…安倍自民党がテレビ局に“圧力文書”

見えない自分の影に脅えているかのようにも見える。
自ら仕掛けた「大義なき解散」であるが、この解散そのものが批判されている。
日経ビジネスオンライン(NBO)が、11月19日~24日にかけてアンケートを実施し、5838人の回答を得た。
以下、「解散評価しない」「消費税は引き上げるべき」が多数 より。

安倍政権が決断した衆院解散を評価しますか。
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評価しない人の大半は「消費再増税の是非は選挙の争点としてふさわしくないから」を理由に挙げた。
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にもかかわらず、選挙戦は自民党優位に進むであろう。
野党が多弱状態では勝ち目はない。
沖縄知事選のように、保守から共産までの統一戦線ができれば別だが、その可能性はない。
せめて暴走しない程度に負けさせなければならないだろう。

衆院選の争点をアベノミクスという経済政策に絞りたい安倍自民党であるが、本質は「改憲の是非」にあるだろう。
9条改憲、集団的自衛権の行使であり、各党のスタンスは以下のようである。
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東京新聞11月30日

内田樹『街場の戦争論』ミシマ社(2014年10月)が、1942年にミッドウェー海戦の後に日本が講和を求めて、それが成功していたらどうだったかという思考実験で安倍政権の安全保障政策を全否定している。
なりふり構わぬ自民党に一矢報いることができるかどうかにしか、今回の総選挙に意義は見いだせないと考える。

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2014年11月29日 (土)

ラディカルな時代のラディカルな思考・松本健一/追悼(61)

評論家の松本健一さんが、11月27日亡くなった。
胃がんで闘病中だったという。
男の平均寿命が80歳を超えていることを考えれば、68歳というのは若過ぎると言って言いだろう。

1968年に東京大学経済学部を卒業し、旭硝子入社するが翌年退職した。
1969年に修士課程を修了し会社勤めを始めた私には、同時代人という感覚のある評論家だった。
旭硝子を直ぐに退職した判断も、あの頃の雰囲気として良く理解できる。
とりあえず就職してみたものの、本当に自分の人生はこういうことでいいのか?

ものごとを本源に遡って考えようとするラディカルな精神が横溢していた時代だったと思う。
もっとも大多数は、大企業の中に沈潜(埋没)してしまったのであるが。

法政大学大学院で近代日本文学を専攻。
1971年、『若き北一輝』を上梓し、在野の評論家、歴史家として執筆を続け注目される。
1994年から麗澤大学経済学部教授を務め、2009年麗澤大比較文明文化研究センター所長に就任。

竹内好、橋川文三らと同様に、右翼・左翼という分類を越えて歴史と思想が融合した領域で多くの著作がある。
民主党の仙谷由人元官房長官とは大学時代からの親友であり、その縁で2010年10月〜2011年9月、菅政権時代に内閣官房参与を務めた。
当時の内幕を冷静な目で批判して欲しいと期待していたところだった。
⇒2011年8月20日 (土):菅批判を始めた松本健一内閣官房参与

近著の『「孟子」の革命思想と日本―天皇家にはなぜ姓がないのか』昌平黌出版会(2014年6月)では、「天皇」という最大の「やまとの謎」に取り組んでいる。
⇒2012年3月19日 (月):吉本隆明の天皇(制)論/やまとの謎(58)
⇒2011年1月 7日 (金):初詣と神道と天皇制
書店で立ち読みしたところだったが、訃報に接するとは思わなかった。

Ws00000033年かけて完成させた「評伝北一輝」(全5巻)ではファシストといったレッテルを排して、近代日本が生んだ特異な革命家の実像に迫り、司馬遼太郎賞、毎日出版文化賞を受けた。また「日本の失敗」では、第2次大戦を中国への侵略の延長ととらえ、日本が敗戦へと至った経緯を追った。冷戦終結後に勃興したナショナリズムについても論じた。
評論家の松本健一さん死去 近代日本の精神史を考察

もう少しこの人の問題意識がどこに向かうのかを見てみたかったと思う。
合掌。

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2014年11月28日 (金)

安倍首相の盟友・百田尚樹の馬脚/日本の針路(76)

百田尚樹氏の『殉愛』 のAmazonカストマーレビューは日を追って低下している。
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)

当初、幻冬舎の仕掛けにまんまと乗って、「感動しました」というような星5つはほとんど姿を消してしまった。
もちろん、11月27日時点でも、次のような投稿もある。

とても素敵な本でした。涙がとまりませんでした。やしきたかじんさんとさくらさんのお互いに対する愛が、文面からヒシヒシと伝わってきました。この本に出会えてよかった。ありがとうございます。

星5つを付けている投稿の中には、次のように逆説的なものもある。

未亡人がしゃべって、流行作家が書いて多くの人が手にした。その結果、不審点が浮き彫りになり公的な捜査も行われるだろう。その功績で星5つ。

現在の実質的な平均値は星1つ台になっていると思われる。
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週刊誌等にとっては格好の話題のはずであるが、「作家タブー」であろうか余り目にしない。
しかしネット上では、この著書をめぐる疑惑については、すでに勝敗があったようである。

代表的な最近のレビューの一部を引用する。

公平な視点で読んだとしても相当数の疑問点が挙がる
さくら女史がいかに健気に尽くした女性かを描きたいのはわかるが正直、常軌を逸しており滑稽ですらある
百田氏はもはや第三者的な目でこの作品を読む事が出来ないのだろう
いったい何の為にこの本が出されたのか
彼女の保身、それはわかる
では百田氏は?
あまり口にしたくないそれであろうか
氏の作品を多く読んだひとりとして残念だ
そして
この本を世に送り出した出版社にすら疑問を抱かずにはいられない
時同じくして、京都では自分の夫を次々と殺害した女の事件が取り沙汰されている
以前にも首都圏では結婚詐欺から何人もの男を殺したふくよかで床上手と噂の女性がいた事を思い出した
・・・・・・

私としては、日本を右傾化させている張本人の実像が多くの人に知られるようになったことは誠に結構なことだと思う。
そしてついに、たかじん氏の実娘は提訴した。

 今年1月に64歳で死去した歌手、やしきたかじんさんの晩年を作家の百田尚樹氏(58)が書いたノンフィクション本「殉愛」によって名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害をされたとして、たかじんさんの長女(41)が21日、出版元の幻冬舎に、出版差し止めと1100万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。
 訴状では、複数の虚偽の記述があり、「原告の私生活に関して誤った認識を与える」と指摘。さらに、「百田氏は原告をはじめとした親族などに取材をして事実確認しようとしなかった」と主張している。
やしきたかじんさんの長女、出版差し止め求め提訴 晩年を百田尚樹氏が描いた「殉愛」

百田氏は提訴されたことについて、次のようなツイートを発していた。
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すぐに削除したようだが、何とも気が滅入るような応対ではなかろうか。
少なくとも自分が書いた亡くなった人の実の娘からの提訴である。
百田氏等が好きな「真の日本人」なら、もう少し厳粛に受け止めるべきだろう。

百田氏は作詞家の及川眠子の批判に対しても、見当違いの反論をして世間の顰蹙を買っている。
当該ツイートは以下のようなものである。
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たかじん氏の歌を多数作詞しており、『殉愛』にも引用されている詞の作者である及川氏に対して「売名行為」と決めつけた。
たかじんファンの反感を買ったのは当然であるが、及川氏は次のように返した。
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皮肉が効いているが、蛙の面にナントカであろうか。
見かねて(?)タレントの水道橋博士氏が百田氏をたしなめた。
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これに対して、百田氏は次のように応答している。
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まあ、いちいち反応する百田氏の器の小ささを見る思いがするが、文士とは作家のことであろう。
気取ったことはあるかどうか知らないが、博士氏のいうように各出版社から本を出している百田氏が、タブーによって守られているのは事実だろう。

どんな顔をして出るかと楽しみにしていた「たかじんのそこまで言って委員会」の放映は、『殉愛』 に触れている部分は全部カットだった。

 11月23日、それを象徴するようなできごとがあった。この日、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)では、『殉愛』の特集が放映されることになっていた。この日の放映では、その部分がすべてカットされていたのだ。
「2週間ほど前に収録をすませ、さくら夫人の結婚歴が暴かれた後も、放映予定を変えていなかったようですが、訴訟を起こされたことで、カットせざるをえなくなったらしい。テレビの場合、放送法の関係での訴訟案件の主張を一方的に取り上げると、問題になる可能性がある。今後は『殉愛』をテレビでPRするのはむつかしいやろう」(読売テレビ関係者)
『殉愛』訴訟で「委員会」が特集中止!大阪のテレビ局関係者に責任波及

たかじん氏の死を冒涜する気はないが、百田氏が反論を重ねるたびに、墓穴は深く広くなっていく。
百田氏といい、安倍首相といい、他人の批判に過剰なくらい敏感に反応している。
精神病理学の領域かも知れないが、どんどん反論して世間にその姿を露出すればいい。

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2014年11月27日 (木)

続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

安倍首相が大学生のサイトに激怒して、自身のFacebookで反論した。
さすがに批判が殺到し、既に削除されているが、まさに「裸の王様」状態であることが露呈したと言えよう。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)

大学生の作ったサイトは次のようなものだ。
黒板の数字がアクセス数になっていた(と思われる)。
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http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4579.html

サイトを作ったのは慶応大学の学生で、以下のような釈明(?)が載っている。

まずはじめに皆さんに謝らなければならないことがあります。
10歳の放送部の中村を名乗り、実際は私がリプライ、コメントをしていました。皆さんに嘘をつく形となり、本当に申し訳ありませんでした。
なぜ僕がそうしようと思ったのか、説明させて下さい。
数日前に衆議院が解散することが決まりました。なぜ解散するのか、理由がわからず、僕の頭の中には多くの疑問が残りました。そんな時に常に社会に対して疑問を持ち、どうして?なんで?と大人に問いかけていた自分の幼少期を思い出しました。当時の僕だったらこの問題に疑問を持ち、どうして?なんで?解散するの?と聞いていたと思うようになりました。
そして、この問題は日本の中でどのように感じられているのか、多くの人々は何を感じているのか知りたくなりました。
そこでウェブサイトを作り、僕が小学4年生を自演することで面白いと皆さんに受け止められ、より多くの方を巻き込んだ形で、今回の選挙の意義を語り合うことができるのではないかと考えました。
http://why-kaisan.com/

まあ、ちょっと手が込みすぎていたが、「どうして解散するんですか?」は、少なくともかなりの人数の有権者が疑問に思っていることであろう。
安倍首相は、無視するか正面から説明すればよかったのだろうが、次のように自身のFacebookで、この大学生の行動に反撃している。
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大学生が小学生のフリをしたのを、ことさらに「なりすまし」と非難するのからして大人気ない態度ではなかろうか。
この投稿は既に削除されているが、東京新聞には「首相はネトウヨだった!?」と皮肉られている。
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東京新聞11月27日

ネトウヨは「ネット上で右翼的(排外的)な表現を用いる人」のことであるが、右翼団体の一水会代表木村三浩氏はネット右翼について「右翼の品格にあらず」と発言している。
蔑称というニュアンスが込められていると言えよう。

プロブロガーのイケダハヤト氏は、首相のFacebookについて、次のようにコメントしている。

第一に、よほどこの投稿の方が卑劣だろ!という定番のツッコミ。そして第二に、なぜ「今回の失敗にめげずに、社会に問題提起を続けてほしい」という寛容なコメントを出さなかったのか、という戦略面に対するツッコミ。こういう投稿しても、ネトウヨくらいしか喜ばないと思いますけどね…。
安倍首相が青木大和さんを「最も卑劣」と公然と非難した件について

イケダ氏は、東京から高知に移住して話題になった人で、いわゆるノマド生活を送っている。
⇒2014年9月16日 (火):ダウンシフトと「ゆるい就職」人気/日本の針路(43)
そして、安倍首相のFacebookが、「ネトウヨの巣窟になっているので、案外、本当に支持層だと認識して、ああいった狭量な態度を露呈しているのかもしれませんね。」と続けている。
要は、安倍首相の周辺(たとえばFacebookの運用チームやFacebookにコメントを寄せる人たち)のレベルの問題であるが、それらが世の中だと思っているということであり、まさに「裸の王様」状態だということである。

これは盟友の百田尚樹氏の態度に共通するものでもある。
批判者に対して瞬間湯沸かし器のように短絡的に反応する。
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)

たまには熟慮する時間をもって、広く世間を俯瞰してみたらどうだろうか。
仁徳天皇の逸話に次のようなものがある。

難波高津宮から都を眺めても、人家から飯を炊く煙が上がっていなかった。
「これはどういうことだ? 民は飯時に炊く米もないほど困窮しているというのか? 都でさえこんな状態ということは、地方はもっとひどいであろう」と語ったという。

まさに階層分化が進み、地方は都よりも困窮しているのが現在である。
威勢のいい演説はもはや多くの人の胸に響かない。

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2014年11月26日 (水)

安倍政権を信任するのか?/日本の針路(75)

総選挙が事実上始まってしまった。
皮肉にも、最高裁26日、昨年の参院選について、違憲状態とする判断を示した。
衆参両院の選挙がそれぞれ2回連続して、最高裁から「違憲状態」と判断されたことになる。
違憲状態の国会で、憲法解釈を変えるたのが安倍政権である。

そして解散をし、また違憲状態の選挙を行う。
いろいろな意味で「なぜ、今なのか」に疑問符が付くが、それを論じている時ではないだろう。
⇒2014年11月17日 (月):GDP速報値が示す衆院選の争点/アベノミクスの危うさ(42)
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月23日 (日):郷原信郎氏の解散違憲論/日本の針路(73)

争点は、安倍政権を信任するかどうかに絞ってもいいだろう。
自民党が政権公約を発表した。
表紙に、安倍晋三首相の顔写真と「景気回復、この道しかない」と書かれている。
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東京新聞11月26日

「この道」というのは、アベノミクスであり、集団的自衛権である。
アベノミクスの是非を争点に据えるのに異論はないが、外交・安保に「集団的自衛権」という単語が出てこないのは、争点隠しと言われても仕方がないだろう。
国論を二分するようなテーマは表に出さないということは、与党として如何なものか。

安倍首相(政権)には、消費増税を先送りしたことを「解散の大義」にしたりというような「あざとさ」が目立つ。
しかしこのような「あざとさ」を既に大衆は見切っているのだ。
安倍首相の盟友・百田尚樹『殉愛』 に対するAmazonレビュアーの批判がそれを示しているのではなかろうか。
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)

私たちは、政権公約(マニフェスト)というものを、批判的に読むことを、政権交代した民主党から学んだ。
⇒2011年7月23日 (土):マニフェスト見直しをめぐって
⇒2011年2月 2日 (水):マニフェスト政治が悪いのか?
⇒2011年2月10日 (木):マニフェストを履行するための消費税増税?

自民党の政権公約には、支持基盤に目を向けたものが多い。
唐突な解散で投票率が下がるのを見越して、従来からの支持層を固めようと言うことだろう。
しかし、安倍政権の本質は、強者をより強くすることである。
中間層が失われるような政治に将来はない。
⇒2014年11月20日 (木):総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)

マニフェストという言葉が薄汚れてしまっているが、政権選択選挙である総選挙において、比較すべきは先ずは「政権公約」であろう。
よりましな選択を心がけたい。

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2014年11月25日 (火)

セルフネグレクトと認知症/ケアの諸問題(18)

「セルフネグレクト」という概念が、認知症との関係で注目を集めている。
セルフネグレクトについては、「デジタル大辞泉」では以下のように説明している。

成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうこと。必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合がある。防止するためには、地域社会による見守りなどの取り組みが必要とされる。自己放任。

セルフ・ネグレクトに陥るきっかけはいろいろあるが、高齢者の場合は認知症が大きな要因だという。

 岸恵美子帝京大教授(地域看護学)らの研究グループが09年12月~10年1月、地域介護の拠点である全国の地域包括支援センター4038カ所に調査票を送り、1046カ所(26%)から回答を得た。
 生活上当然すべき行為をせず、安全や健康が脅かされる状態をセルフネグレクトと定義し、65歳以上の人のケースを尋ねたところ、499カ所のセンターで計1528人だった。ホームレスは除いた。
 詳しく書かれた846人を分析すると、男女ほぼ同数、80~84歳が26%と最も多い。68%が一人暮らしだが、21%は家族と同居。56%は介護保険の要介護認定を申請していない。経済状態に「余裕がある」「ややある」が計31%。20%が精神疾患、44%が糖尿病や高血圧など慢性の病気があった。
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食べ物やごみ放置…セルフネグレクトの高齢者1500人

セルフ・ネグレクトが問題になるのは、、生活上すべき行為をしない、または、する能力がないことから、家の前や室内にゴミが散乱したり、極端に汚れた衣服を着ていることである。
結果として、地域や家族からも孤立し、ゴミ屋敷状態や孤立死にもつながっていく。
セルフ・ネグレクト高齢者は全国に約1万1千人いると推計されている(2009年度、内閣府の経済社会総合研究所の調査)。

一人で暮らす認知症のトシエさん(仮名・72歳)は認知症が進んでいたために自宅内でゴキブリが大量発生していても、近隣住民に苦情を訴えられることもなく、そのまま暮らし続けていた。発覚したのは介護サービスの利用を開始し、スタッフがトシエさんの暮らしぶりを垣間見るようになったからだった。だが、今後はどうするのか。核家族化や、隣近所の人たちとの関係が希薄になっていく社会で、“家の中”というブラックボックスで起きる異変に外から気がつくのは難しい。
「ゴミ屋敷」予備軍は1万超 今「セルフ・ネグレクト」が問題化

認知症との関連について、医師や弁護士ら専門家が実態調査に乗り出したというニュースがあった。
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日本経済新聞11月17日

速やかな実態の解明に期待する。

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2014年11月24日 (月)

長野北部地震と神城断層/日本の針路(74)

22日22時過ぎに発生した長野県北部を震源とする地震は、静岡県でもかなり揺れが続いた。
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長野北部で震度6弱 けが人複数、民家倒壊

国の地震調査委員会は同日、「神城断層の一部の活動による可能性が高い」との見解をまとめた。

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国土地理院は23日、電子基準点の観測で地殻変動を検出したと発表した。神城断層の西側にある白馬村の基準点が、同日午前9時すぎまでに南東へ約29センチ動くとともに約12センチ沈降しており、神城断層の逆断層型地震の可能性が高まった。
長野県地震で神城断層動く

天武天皇が信州に遷都を計画した時の候補地が、この地方の「鬼無里」だったという伝説がある。

 昔むかし、天武天皇は遷都を計画され、その候補地として信濃に遷都に相応しい地があるかを探るため、三野王、小錦下采女臣筑羅らを信濃に遣わしました。使者は信濃の各地を巡視して候補地を探し、水内の水無瀬こそ都に相応しい地相であるとの結論を得ました。そこで早速この地の地図を作り奉り天皇に報告いたしました。
        これを知ったこの地に住む鬼たちは大いにあわて、「この静かなところに都なんぞ出来たら、俺たちの棲むところがなくなってしまう。」「都が出来ぬように山を築いて邪魔してしまえ。」と、すぐさま一夜で里の真ん中に大きな山を築いてしまいました。
        これでは遷都は出来ません。怒った天皇は阿部比羅夫に命じて鬼たちを退治させてしまいました。
      この時から、この水無瀬の地に鬼はいなくなったので 人々はこの地を鬼無里と、又真ん中に出来た山を一夜山と呼ぶようになりました。
鬼無里の伝説

私は退院後リハビリを兼ねて、白馬村の自然の中を歩いたことがある。
⇒2011年8月22日 (月):白馬バスツアーで実践的リハビリ
⇒2011年8月23日 (火):白馬村の美術館と安曇野の自然
それからもう3年以上経ったわけであるが、歩容は改善されたようでもあるし、まだまだという感じもする。
その時宿泊したホテルは大丈夫だっただろうか。
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神城断層は、有名なフォッサマグナの西側の糸魚川-静岡構造線の北部にある活断層だ。
北は長野県小谷村付近から南は山梨県南アルプス市付近に達し、「北部」(神城断層、松本盆地東縁断層)、「中部」(牛伏寺断層、諏訪断層群、岡谷断層群、釜無山断層群)、「南部」(白州断層、下円井断層、市之瀬断層群)の3つの断層帯で構成される。
フォッサマグナは、日本列島を、東北日本と西南日本に二分する境界のゾーンである。
⇒2011年4月23日 (土):暘谷(フォッサマグナ)論/やまとの謎(30)

日本列島には至る所に活断層がある。
活断層とは〈最近の時代まで活動しており、将来も活動する可能性のある断層〉である。
〈最近〉とは、厳密な規定はないが、現代の地質・地形学の分野では、一般に第四紀または第四紀の後期(およそ数十万年前以降)を指すとされる。
⇒2012年4月28日 (土):活断層の上の原発/花づな列島復興のためのメモ(57)

改めて図示すれば、以下のようである。
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日本の活断層地図

国の指針では、動く可能性がある活断層の上に原発の重要施設を建設することを禁じている。
しかし、「動く可能性がある活断層」か否かの判断で原発再稼働推進派と慎重派の間で綱引きがある。
⇒2013年1月29日 (火):敦賀原発の活断層とアベノミクス/花づな列島復興のためのメモ(185)
⇒2013年9月 7日 (土):大飯原発活断層判断の怪/原発事故の真相(83)

現在知られている活断層がすべてではないし、活断層以外の場所で地震が起きる可能性もある。
日本列島に原発は馴染まないのだ。
自然の営みに対して、もっと謙虚であるべきではなかろうか。

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2014年11月23日 (日)

郷原信郎氏の解散違憲論/日本の針路(73)

解散の大義がないと野党はしきりに言っている。
しかし大義が真面目に論じられる、往々にして危険であることに注意したい。
かつての大日本帝国の聖戦、イスラム過激派のジハードなどが典型である。

安倍首相は「増税先送り」という判断を口実に、「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならない」と解散の理由を説明した。
増税先送りに反対する勢力が存在しないので、これでは解散の「必要性」の根拠にならない。
⇒2014年11月20日 (木):総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)

それでも「解散権」が首相にあるならば、もっとも自分の都合の良い時に解散するのは、原則的に首相の勝手とも言える。
しかし「解散権」について、重大な疑義がある、という意見がある。
たとえば、「現時点での衆議院解散は憲法上重大な問題」という郷原信郎氏の意見である。
郷原氏は、東大理学部出身の法曹という変わり種であるが、コンプライアンスを専門としている。
私には、小沢一郎氏と西松建設の事件についての発言が興味を引いた。
⇒2009年3月17日 (火):西松建設献金問題に対する捜査態勢をどう見るか?
⇒2009年3月18日 (水):特捜捜査の「ガダルカナル」化?

郷原氏の今回の解散についての疑義には2点ある。
①内閣の解散権

憲法の規定を素直に読めば、憲法45条が衆議院の任期は4年と定めており、69条がその例外としての内閣不信任案可決に対抗する衆議院解散を認めているのだから、解散は69条の場合に限定されるということになるはずだ。
・・・・・・
1952年の第2回目の衆議院解散は、69条によらず天皇の国事行為を定めた7条によって行われた。

私は漠然と、衆議院の解散は首相の専権事項と思っていたが、衆議院の解散権について、憲法は積極的な明示的規定を行っていない。
そもそも、内閣総理大臣を指名したのは国会であり(6条)、その国会を解散する裁量があるのか?

69条の規定では、内閣(不)信任のセットになっている。
「天皇の国事行為を定めた7条」の三に「衆議院を解散すること」とあるが、これは形式的なものであろう。

現行憲法は、衆議院議員の任期を原則として4年と定め(45条)、例外としての衆議院解散を、条文上は内閣不信任案が可決された69条の場合に限定している。そして、直接国民の意思を問う国民投票としては、憲法改正が発議された場合の特別の国民投票(96条)しか認めていない。このような規定からすると、内閣が、自らを信任している議会を解散することによって国民に信任を求めるということは、憲法は原則として認めていないと解するべきであろう。
69条の場合ではなくても、憲法7条に基づく衆議院解散が認められる理由とされたのは、重大な政治的課題が新たに生じた場合や、政府・与党が基本政策を根本的に変更しようとする場合など、民意を問う特別の必要がある場合があり得るということであり、内閣による無制限の解散が認められると解されてきたわけではない。

このような解散の「可能性」についての論議は、「必要性」の論議に比べてメディアでも余り取り上げられていない。
改めて憲法を読み直してみて、は「衆議院解散は日本国憲法第69条の場合(対抗的解散)に限られ、内閣による裁量的解散は認められないとする見解」の方が妥当性があるように思う。

②定数が是正されていない状態での解散

現時点で衆議院解散を強行するとすれば、もう一つ憲法上大きな問題が生じることになる。最高裁でも法の下の平等に反し「違憲状態」であるのに、国会がこれを合理的期間内に是正しないのは憲法に違反するとの判断が示されている「衆議院定数不均衡問題」である。前回衆議院選挙の際の三党合意による国会議員定数削減による定数不均衡の抜本的是正は、少なくとも、次の総選挙までに行わなければならない必須の事項だったはずだ。この点について、「0増5減」で極端な不均衡を是正しただけで、何ら抜本的な改正を行うことなく、任期が2年以上残っているこの時期に敢えて衆議院を解散し、総選挙を行うのは、憲法の要請に反するものと言えよう。

①が原理論とすれば、②は状況論であるが、不作為を棚に上げて政局に持ち込むというのは、甚だしく傲慢というべきであろう。
前回解散の野田佳彦前首相の甘さが今日の事態の元ではあるが、事実上解散されたわけであるから、機会と捉えて行動したい。

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2014年11月22日 (土)

クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)

殉愛』 は、プロモーションの効果もあってのことだろうが、たちまちベストセラーのランキングのトップに躍り出た。
しかし、世間の注目を集めた結果、作品の瑕疵が多くの人に指摘されることになった。
Amazonのカストマーレビューでも、星5つの高評価と星1つの低評価に極端に分かれ、特にたかじんファンを自称する人の多くが怒りに近い表現で低評価をつけているような印象だった。

私は当初、Amazonのカストマーレビューは圧倒的に「感動しました」という類が多いのだろうな、と予想していた。
11月22日時点での763レビューの分布は以下のようである。
Ws000002

2週間ほどの間にこれだけのレビューが投稿されるというのも稀であろうが、星5つと星1つに見事に分裂しており、1つが5つの3倍以上である。
明らかに、当初よりも日を追って低評価が増えているようで、私の予想は見事に外れた。
驚くべきことには、百田氏は自身のツイッターに次のように書いて、低評価レビュアーに反撃した。

=『殉愛』のAmazonレビュー、未亡人に対する誹謗中傷がひどすぎる! 実態も真実も何も知らない第三者が、何の根拠もなく、匿名で人を傷つける。本当に人間のクズみたいな人間だと思う!=

「クズみたいな人間」というのは、都知事選でも使っていたから、彼の愛用句(?)もしくは口癖なのであろう。
百田氏の批判は、作家の言葉かと思えないデリカシーが欠けていると言わざるを得ない。
さすがにこの百田氏のツイートが低評価投稿者を増やしたのではなかろうか。

他人の批判に傾ける耳を持たないというのは、典型的なクリティカル思考の欠落である。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
批判されることによって磨かれるのである。
こともあろうに、高圧的な反撃が墓穴を深めた。
常識ある人間は、褒められたり賞をもらったりしたときほど、身を振り返るものではないだろうか。

それでも、私は、熱烈というほどではないが「たかじん」という反権威的なスタンスの人は好きだったので、新刊を買ってみた。
こういう売られ方をした本は、間もなくBookOffに大量に出回ることだし、幻冬舎に乗せられるのもシャクだ、などとと思いつつである。

一読して、幻冬舎のサイトに載っているコピー以上の内容のない、予定調和のような、感動の押し売りのような「ノンフィクション」であった。
あえて言えば後味の悪さの残る作品と言えよう。
実の娘やKとかUのイニシャルで登場する「たかじん」の現役時代の仕事上の側近に対して、私憤というのだろうか、口汚い批判が頻出する。
さくら未亡人美化の意図だろうが、『殉愛』というタイトルにそぐわない感じがして、逆効果としか思えない。

さらに驚くべきことに、たかじん氏の代表作『東京』の作詞家・及川眠子氏の発言にも逆ギレして、次のようなツイートをしている。

=自分は何の迷惑もこうむっていないのにヒステリックな正義感(?)を振りかざして他人を攻撃する人間も腹立たしいが、この機に乗じて売名行為する作詞家というのも実に厄介や。=

何という高圧的な姿勢だろう。
私は作詞家の世界に疎いが、たかじん氏の歌の数十曲を手がけたその世界では著名な人だという。
そもそも作詞家というのは、縁の下か屋根裏の住人であって、売名行為とは無縁の存在である。
ついつい、自分に引き寄せて、売名行為と考えたのだろうか。
ちなみに、及川氏の発言の一端は次のようにきわめて順当なものだ。

=ちゃんと金を払って本を購入した読者の批判に対し、人間のクズ呼ばわりをする。世間に出したものがあれこれ言われるのは当然。私たち物書きはそれでゴハンを食べさせてもらっているのだ。世の中すべてが味方ではない。その覚悟なしに物書きなんてやれねえよ=

炎上した結果、さくら未亡人が離婚歴があることを百田氏自身も認めざるを得なくなったが、プライバシー云々というような陳腐な弁解ツイートでさらに墓穴を深くしている。
100%真実だと書いていたことが崩れたわけである。
こんどの日曜日の「たかじんのそこまで言って委員会」は本書の特集らしいが、どんな内容にするのか、あるいは百田氏がどういう顔で登場するのか、楽しみである。
東京地上波ではオンエアされないらしいが。

私は、男女のことは所詮他人には分からないことだと考えるので、さくら未亡人が巷間で噂されているようなことが事実であっても、批判する気はない。
幻冬舎の見城氏も、出版社としては「売れてナンボ」であるから、売れる本を作って売る努力をするのは理解する。

しかし、百田氏は、急先鋒として攻撃していた朝日新聞と左右が反転しただけで、同型ではないのか。
というよりも、今まで正義感を気取って激しく他人を攻撃していた人間が、居丈高に開き直るのは不快に感じる。
まさに「自分に対して」と「他人に対して」が異なるダブルスタンダードである。
NHK経営委員などの公職は即時辞任すべきであろう。

そして何よりも、いわば服喪中ともいうべき期間である。
とんでもない死んだ人にたいする冒涜行為ではあるまいか。

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2014年11月21日 (金)

百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)

百田尚樹という作家がいる。
永遠の0』(講談社文庫(2009年7月)、『海賊とよばれた男講談社文庫(2014年7月)、『フォルトゥナの瞳』新潮社((2014年9月)等のベストセラーを連発している当代筆頭の人気作家と言えよう。

しかし、日本社会の右傾化の露払いとしての役割の方を問題にしたい。
安倍首相とも親密であるのはよく知られているが、こともあろうに先の東京都知事選で田母神俊雄氏を応援したのである。
⇒2014年2月 9日 (日):都知事選と安倍政権批判/花づな列島復興のためのメモ(305)

田母神氏については、私は政治家としてまったく評価する観点を持たない。
⇒2009年1月10日 (土):田母神第29代航空幕僚長とM資金問題
⇒2009年1月11日 (日):田母神前幕僚長のアパ懸賞論文への応募
「幸福の科学」を主宰している大川隆法と似たようなものだと思っている。
⇒2009年8月24日 (月):大川隆法と田母神俊雄/「同じ」と「違う」(4)

しかし、いかにインチキ臭いっぱいの「幸福の科学」といえども各地に支部を作るほどには支持者がいる。
田母神氏も、泡沫候補のようでありながら、都知事選では若年層を中心に、結構支持を集めたのが現実である。
⇒2014年2月11日 (火):都知事選の結果と暗い予感/花づな列島復興のためのメモ(306)
そのことが、いわゆる右傾化する日本の1つのエビデンスである。
⇒2014年2月26日 (水):右傾化して行く日本の不安/花づな列島復興のためのメモ(311)

一作家としての百田氏が、田母神氏を応援するのは氏の勝手である。
しかし、百田氏は、NHKという影響力の大きな公共マスメディアの経営委員である。
しかもその応援演説で、他の候補者たちを、「人間のクズ」と表現して問題になった。
作家にあるまじきデリカシーの無い発言である。
これを聞いて、私の中では百田氏を見切った。

百田氏の最新作『殉愛』がアマゾンカストマーレビューなどで、炎上している。
火だるま状態と言えようか。

まず幻冬舎のサイトに載っているコピー(Amazonでも使われている)を引用しよう。

*****
誰も知らなかった、やしきたかじん最後の741日。 2014年1月3日、ひとりの歌手が食道がんで亡くなった。 「関西の視聴率王」やしきたかじん。 ベールに包まれた2年間の闘病生活には、 その看病に人生のすべてを捧げた、かけがえのない女性がいた。 夜ごとに訪れる幻覚と、死の淵を彷徨った合併症の苦しみ。 奇跡の番組復帰の喜びと、直後に知らされた再発の絶望。 そして、今わの際で振り絞るように発した、最後の言葉とは――。 この物語は、愛を知らなかった男が、本当の愛を知る物語である。 『永遠の0』『海賊とよばれた男』の百田尚樹が、 故人の遺志を継いで記す、かつてない純愛ノンフィクション。
*****

素直な人間ならば、あの「やしきたかじん」の秘められた純愛と思い、ファンならずとも「買ってみようか」という気になるであろう。
しかも、ベストセラー連発の百田尚樹が書いたとなれば・・・
Ws000000
本の帯に載っている「たかじん」氏とさくら未亡人の写真である。

幻冬舎の見城徹社長は、さらにメディアミックス戦略というか、TVの人気番組をプロモーションに利用した。
たかじんの闘病生活を特集した「中居正広の金スマスペシャル」(7日)は、平均20.1%(ビデオリサーチ調べ、関西地区)という高視聴率を記録した。
再現ビデオまで用意して、プロモーションとしては絵に描いたようなサクセスストーリーというべきであろう。
さすがに見城社長のやることは違う、というべきであろうか。
編集者という病い』等で、自らの仕事の流儀を、「顰蹙は金を出してでも買え!!」と言っている通りである。

Amazonで在庫切れというような情報もあったが、これも見城氏のやらせのような気がする。
それはともかく、ここまではマーケティングの教科書になるかも知れないような展開であった。

私はたまたまつけていたTVで「金スマ」を横目で見ていたのだが、違和感があった。
愛とか死というような究極の個人的マターを、「ノンフィクション」と銘打ってベストセラーにする?
しかも一周忌も済んでいないのに、再現ビデオか?
いくら資本主義の世の中とはいえ、「あざとさ」が過ぎるのではないか?

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2014年11月20日 (木)

総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)

安倍首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを2017年4月に先送りする方針を発表し、この判断を、「「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならない」と説明した。
表面上はもっともなようにも聞こえるが、まったくの「まやかし」と言うべきだろう。
増税延期に反対だという政党は見当たらないから、争点にならない。

あえてこのような言い方をするというのは、後ろめたいことの証明であろう。
増税先延ばしには、いま国民の嫌がることでも将来の国民のことを考えて、というような意気込みを感じない。
増税への国民の忌避感を利用しようとしか思えない。

 確かに経済は生き物であり、機械的に扱うと判断を誤る。17日に発表された7〜9月期のGDP速報値は予想を覆すマイナス成長となり、「増税できる環境にない」との意見には耳を傾ける必要があろう。
 だが、成熟した資本主義国の日本にとって、かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない。政治家の役割は、富の配分よりも、負担のあり方について国民的合意を形成する方に比重が移っている。
首相 解散を表明 争点は「安倍政治」だ

私も、「かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない」と思う。
成長よりも成熟を考えるべきだろう。
⇒2014年2月 3日 (月):成長から成熟へ/花づな列島復興のためのメモ(302)

しかしアベノミクスは「3本の矢」と称して成長への幻想を誘起してきた。
起きているのは円安と株高である。
⇒2014年11月 1日 (土):博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

アベノミクスの是非は重要な論点ではあるが、そればかりに集中すると全体像を見失う。
消費税再増税するような環境にないのは事実だが、それがアベノミクスの失敗を示している。
輸出型の企業、富裕層に偏重した政策は、経済格差を拡大させている。

ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン/ 稲葉振一郎(解説)、鬼澤忍 (訳) 『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』早川書房(2013年6月)によれば、国家の盛衰を決めるのは、地理でも、気候でも、文化でも、あるいは為政者の無知でもなく、政治・経済上の「制度」である。
韓国と北朝鮮、ボツワナとジンバブエ等、近接しているのに発展の度合いに極端な差がある例。
それは、政治・経済上の「制度」の差異である。

2つの差異の理念型として、「包括的な政治社会制度inclusive institution」と「収奪的な政治社会制度extractive institution」を想定する。
前者は、広範な経済主体が投資や技術革新に対して、インセンティブを持つことを可能とする制度である。
後者は、基本的にエリート層だけに経済的利益を還元し、その他大勢を排除する制度である。
経済発展を可能にするのは、「包括的な政治社会制度inclusive institution」である。
逆に言えば、富の偏在は発展を阻害する。

アベノミクスによって、雇用者の平均年収や正規雇用者数は減り続け、中間層が減った。
社会の格差を表すとされるジニ係数の推移は下図のようである。
Photo_2
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/11/blog-post_30.html

中間層を細らせた結果、個人消費に支えられる国内総生産(GDP)が落ち込んだ。
円安によってどれくらいの国富が失われたのか?
ドルベースでみれば、GDPはどうなっているのか?

安倍内閣の2年間を振り返ると、特定秘密保護法の成立強行、原発再稼働の推進、集団的自衛権の行使容認などが、「実績」である。
こんな政治を安定させてはならない。

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2014年11月19日 (水)

寡黙に耐える男・高倉健/追悼(60)

俳優の高倉健さんが亡くなった。

 日本映画界最高の銀幕のスター、高倉健さんが10日、83年の生涯を閉じた。俳優の名前で多くの観客を映画館に呼べる数少ない俳優だった。晩年まで、私生活をほとんど公にすることはなく、役柄のイメージの高倉健を観客の心に残したまま旅だった。「健さん」として親しまれてきたのは、役の中での男の生きざまであり、高倉さん自身の生き方も重なって多くのファンが魅了された。日本映画は長年映画界をけん引してきた大きな柱を失った。
 高倉さんが人気を不動にしたのは任(にん)きょう映画。1960年代に大人気となった「網走番外地」「日本きょう客伝」シリーズなどは、学生運動に身を投じる若者らからも圧倒的な支持を得た。着流しのアウトローが逆境に耐えながらも復讐(ふくしゅう)を果たす物語に観客は熱狂した。多くを語らず、いざという時に体を張って、義理や人情を大事にする姿は、男っぽさの神髄と受け入れられた。
高倉健さん死去:「不器用な男」日本人の美学重ね

60年代末の学生運動が活発だった頃、健さんの任侠映画が活動家たちの心情と同期した。
ムリやムダを承知で大組織に向かって行く。
特に、中核派や社学同のような街頭左翼といわれたセクトは馴染んだのではなかろうか。
映画館の中ではでは「健さん!」という掛け声が飛び、感情移入の余韻が残ってまま映画館を出た学生が肩を聳やかしていた、という伝説がある。

東映を退社してフリーになってからの『南極物語』『鉄道員』『ホタル』などを観に行った。
遺作となった『あなたへ』の印象が強い。
Photo
あなたへ

刑務所の指導技官が、富山から亡き妻の故郷・長崎の平戸まで、キャンピングカーを走らせながら、旅の途中でのエピソードを織り交ぜたストーリーだ。
美しい風景の映像が効果的であった。
壮年になってから結婚した妻とも死別した寡黙な男の像が、高倉健という俳優のイメージと完全にオーバーラップしていた。

今日の各紙のコラムは、こぞって健さんへのオマージュである。

朝日新聞:天声人語
 英国の哲学者ベーコンが言葉を残している。「名声は川のようなものであって、軽くてふくらんだものを浮かべ、重くてがっしりしたものを沈める」。タレント多くしてスター稀(まれ)なる現代に、最後の大スターとも称された俳優の高倉健さんが亡くなった▼世の中を漂う名声は儚(はかな)く、うたかたのように結んでは消える。しかし、高倉さんのたたずまいは、孤高に深く錘(おもり)を下ろしている者だけが醸(かも)す存在感に満ちていた。吹雪の中に立つだけでこれほど絵になる人を、ほかに知らない▼「八甲田山」「網走番外地」「南極物語」――寒地の映画が記憶に残る。「鉄道員(ぽっぽや)」も北海道の終着駅を守る初老の話だった。不器用に生きる男からにじみ出る「情と味」を、手のひらで包むように温かく演じて見せてくれた・・・・・・

日本経済新聞:春秋
・・・・・・あとから思えばアウトローにぴったりの面差しなのだが、東映ニューフェースで登場しただけに長い回り道をたどったわけである。世の理不尽に耐えに耐えたあげく敵陣に切り込んでいく、というストイシズムを鮮やかに体現できたのはそういう苦労のたまものだったかもしれない。あの寡黙にはさまざまな言葉があった。▼60年に及ぶ映画人生を生き抜いた、われらの健さんが亡くなった。任侠(にんきょう)ものを離れてからは年々また新たな風格をたたえ、この人の名を知らぬ日本人はいないだろう。「駅」「居酒屋兆治」「あ・うん」「鉄道員(ぽっぽや)」……。そこに登場する孤高の男は、役を抜け出して高倉健そのものでもあったのだ。スターというほかない。・・・・・・

毎日新聞:余録
「あんたも、もうこれだけ長い間やってるんだから、もうちょっといい役やらしてもらいなさいよ」。高倉健さんは母親からそう言われて戸惑った。雪中行軍遭難を描いて大好評だった映画「八甲田山」が封切られた当時のことである▲「もうその雪ん中ね、なんか雪だるまみたいに貴方が這い回って、見ててお母さんは切ない」。母親は健さんが小さいころからあかぎれができやすいのを知っていた。任俠映画の全身ポスターを見て、かかとのばんそうこうにただ一人気づいて心配したのも母だった▲後に随筆「あなたに褒(ほ)められたくて」(集英社文庫)でそんな母への思いをつづった健さんだ。しかし母の葬儀には参列していない。映画「あ・うん」の撮影中だったからだ。私事で撮影を妨げないというのが自らに一貫して課してきた「プロのプライド」であった・・・・・・

東京新聞:筆洗
昨日は風が強かった。正午すぎ、訃報を伝える号外が東京本社の玄関前に張り出された。行き交う人が足を止める。初老の男性が記事を読んでいる。思い入れの強い世代であろう。読み終え、静かに再び木枯らしの中へ歩きだす。この人も「健さん」か▼日本は高倉健のいない世界を生きることになった。<往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし> 愛した言葉の通りに「忍びて」の俳優である▼一九六〇年代に若者が心情を重ねた、「網走番外地」の健さんはいかなる逆境であろうと信念のために命を投げ出す男。七〇年代以降の健さんには人生につまずきながらも、それに耐えて誠実に生きたいと願う男の心情があった・・・・・・

静岡新聞:大自在
・・・・・・「器用なたちではないですから」と、不器用に男の美学を貫いた健さんが10日、83歳で亡くなった。1960年代に任侠(にんきょう)映画で圧倒的な支持を集め、「幸福の黄色いハンカチ」「南極物語」などの主演でファン層を広げた▼寡黙でストイック。でもロケでは市民エキストラにもよく声をかける気さくな人だったという。たびたび訪れた熱海温泉の定宿からコーヒーの注文を受けた喫茶店ボンネットのマスター増田博さん(85)は「コーヒーも一本道だった」としのんだ・・・・・・▼振り返れば、「解散はまったく考えてない」と言い残し、外遊に出たのはわずか10日前。不在中に一気に強まった解散風にも動じず、与党過半数割れならば「退陣する」と言い切った。健さんはそんな安倍さんを不器用と見るか、器用と見るのか。

匿名ではあるが、各社名うての名文家の文章であるから、本当は全文を引用したいところである。
共通しているのは、今はほとんど絶滅してしまったような男の肖像ということだろう。
役柄と実像が一致していたということだろうが、世代的にも思い入れが強いということがあるような気がする。
合掌。

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2014年11月18日 (火)

安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)

安倍首相が21日の衆議院解散を表明した。
任期を半分残しての師走の総選挙はどういう狙いだろうか?
一言でいうならば、安倍政権の行き詰まりでしかあるまい。

GDP速報値が示すように、日本経済は成長どころか縮小している。
⇒2014年11月17日 (月):GDP速報値が示す衆院選の争点/アベノミクスの危うさ(42)

安倍首相は「消費税増税延期の是非を問う」と言っているが、選挙を行う名分としてはいかにも苦しい。
だいたい野党も増税延期に反対しているわけではないので争点にならない。
消費税増税の根拠法である「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(法律第六十八号(平成二四・八・二二))には次のようにある。

(消費税率の引上げに当たっての措置) 第十八条
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

現下の経済状況は、決して好転はしていない。
すなわち「施行の停止」という選択肢はあらかじめ用意されているのである。
では、総選挙の狙いは何か?
政権運営の行き詰まりを打開するため以外にはない。

第1次政権の時は体調を崩した。
本来ならば退陣すべき状況であるが、解散を選んだということだろう。

安倍首相が胸を張って言っていたような経済の好循環は生まれていなかったのである。
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)
日銀の追加緩和というのも実体経済に効くというよりも、一時的なカンフル剤というべきである。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
⇒2014年11月 1日 (土):博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

やはり安倍首相は、裸の王様だった。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年2月14日 (金):安倍首相の暴走をコントロールするのは?/花づな列島復興のためのメモ(307)

自分が期待しているように認識しがちなことは誰にでもあることである。
しかし、一国のリーダーが盲目であっては大変である。
直言する参謀役が重要であるゆえんだが、「現代の軍師」と評価されている菅官房長官はどういうサポートをしているのだろう。
⇒2014年1月 4日 (土):現代軍師論/花づな列島復興のためのメモ(288)

安倍首相のお仲間の1人百田尚樹氏が、やしきたかじん氏というよりもさくらさんという未亡人をテーマにして、『殉愛』幻冬舎(2014年11月)という作品を刊行した。
幻冬舎流のメディアミックスで、7日の「金スマ」に、百田氏自身が登場し、再現ビデオまで制作してプロモーションを展開した。
あざといまでのプロモーションの成功が、作品の瑕疵を浮かびあがせることになり、火だるま(炎上)状態である。

アマゾンのカストマーレビューに意味があるかどうか疑問ではあるが、それにしても600近い驚異的な数のレビューの平均値が2.2という低さである。
普通、自分で選んで買った本には多少甘くなるものではないだろうか。
私が稀に見る駄本と思った飯島勲『秘密ノート~交渉、スキャンダル消し、橋下対策 』プレジデント社(2013年6月)でさえ、3.9であるから、推して知るべしである。

なまじノンフィクションなどと銘打たないで、実話をベースにした純愛物語としていればまだしも傷は浅かったのではないか。
だいたいにおいて、一周忌にもならないうちにこのような書物を出すべきかどうか。
まともな日本人なら、喪に服すという感覚であろう。

低評価の理由は人によりさまざまであろうが、たかじん氏のファン度の高いレビュアーは怒っているようだ。
百田氏自身が100%真実と語っていた内容が、たかじん氏に感じていた東京とは異質の「関西のいき」を感じさせないような内容である。
しかも、意図的な隠蔽もしくは虚偽があったのである。
口を極めて避難していた朝日新聞と左右反転すれば、そっくりである。

私は百田氏には見切りをつけていたが、やしきたかじんという人間は好意的に見ていたので、BookOffに出回るだろうと思いながら、新刊を買って読んだ。
⇒2014年1月 8日 (水):関西の「いき」を体現・やしきたかじん/追悼(42)

きわめて後味の良くない作品だった。
それは長年仕事を共にしてきたたかじん氏の側近や実子を、口汚く悪し様に書いていることに象徴的に現れている。
詳細についてはここでは触れないが、百田氏がツイッターで弁解している言葉を引こう。
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何というお粗末な弁解だろう。
自分の都合が悪くなったことを、開き直っているだけで説明になっていない。

私は都知事選で、百田氏が田母上俊雄氏の応援演説で、他の候補者たちを「人間のクズ」というのを聞いて百田氏を評価しなくなった。
⇒2014年2月 9日 (日):都知事選と安倍政権批判/花づな列島復興のためのメモ(305)
「人間のクズ」というのはどうやらお気に入りの言葉らしく、先行するツイッターではAmazonのカストマーレビューで評点の低い人たちにも投げつけていた。
天に唾したら自分に降りかかってくることも予想できなかったらしい。

安倍首相が、解散という選択肢を頭に浮かべたのは、女性閣僚のW辞任を迫られたころだという。
「女性の輝く社会」を標榜して選んだはずの女性閣僚が、何ともお粗末だった。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)

特に、未来の総理候補などと囃された小渕優子前経産相の金銭疑惑は痛手だったはずである。
⇒2014年10月17日 (金):安倍政権高支持率の潮目は変わるのか?/日本の針路(53)
⇒2014年10月19日 (日):小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)

平和国家の理念を覆した解釈改憲、暗黒国家への道を開く特定秘密保護法、前のめりに原発再稼働を急ぐエネルギー政策・・・
総選挙は、これらの総体を問う選挙である。
言ってみれば、東日本大震災後のわれわれの生き方、文明の様式を考えることになろう。
⇒2013年5月17日 (金):「成長の限界」はどのような形でやって来るか?/花づな列島復興のためのメモ(214)
⇒2014年2月 3日 (月):成長から成熟へ/花づな列島復興のためのメモ(302)

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2014年11月17日 (月)

GDP速報値が示す衆院選の争点/アベノミクスの危うさ(42)

GDP速報値は前期比年率1.6%減と2・四半期連続でマイナスとなった。
市場はこれに反応してほぼ全面安で、日経平均株価は急落し、517円安の暴落になった。
安倍首相は、消費再増税を先送りすることによって、「株式は買い」というムードを演出しようということだったのだろうが、吹き飛ばされたという感じだ。

直近3カ月の日経平均のチャートを示す。
Ws000000

先週、消費税先送りのアナウンス効果で上げた分を、今日1日で元に戻した。
いかにも高値恐怖症で戦々恐々としている投資家心理が見えるようだ。

それにしても、ついこの間まで、アベノミクスによって日本経済は力強く回復している、と言っていたのではないか。
消費税を先送りしなければならないということは、アベノミクスの失敗以外の何ものでもないだろう。

16日の沖縄県知事選と那覇市長選では自民党の推薦候補が敗北した。
⇒2014年11月16日 (日):沖縄県知事選で与党敗北/日本の針路(70)
安倍政権に明らかに変調が起きている。
その変調を隠すための選挙だとしたら、選挙結果によってそれに報いることが必要だろう。
⇒2014年11月15日 (土):総選挙の大義と剥げ落ちたカンバン/日本の針路(69)

アベノミクスはデフレ脱却を目指すとして、円安と株高を演出してきた。
しかし円安の進展により、消費への悪影響が大きくなっている。
株高による「資産効果」で個人消費拡大を図ったが、全体としては消費が縮小していることは明らかだ。
円安・株高は、多くの有権者にとってはマイナスである。
つまりアベノミクスは失敗だったのであり、その事実を見据えて総選挙を迎える必要がある。

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2014年11月16日 (日)

沖縄県知事選で与党敗北/日本の針路(70)

沖縄県知事選で、翁長氏が当選した。

 沖縄県知事選が16日、投開票され、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏(75)=自民、次世代推薦=らを破り、初当選を確実にした。最大の争点だった米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設問題で、翁長氏は「移設阻止」を主張。県民が移設反対を明確に突きつける形となった。
沖縄知事選、翁長氏が初当選確実 辺野古移設阻止を主張

翁長氏は普天間飛行場を名護市辺野古に移す計画を「断固阻止する」と訴え、共産党から自民党系那覇市議までの広い支持を受けていた。
辺野古移設を「現実的な解決の方向」とする仲井真氏は移設推進を明確にし、安倍政権や自民党の支援を取りつけていた。
各候補者のスタンスは以下のようだった。
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辺野古争点、くっきり 移設、4氏の態度鮮明

事実上2人の対決だったが、政権与党に明確に対立姿勢を打ち出している翁長氏の当選で、ある種の地殻変動が生ずることは不可避であろう。
⇒2014年11月14日 (金):普天間基地移転問題と沖縄県知事選/日本の針路(68)

日米両政府が普天間返還に合意した1996年以降5回の知事選で、辺野古移設反対を掲げる候補の勝利は初めてである。
翁長氏は、「沖縄の誇り」を掲げ、仲井真氏による昨年末の辺野古の埋め立て承認に不満を持つ多くの県民から支持を集めた。
仲井真氏は、前回知事選では「辺野古移設反対」に踏み込むことは避けつつ「県外移設」を求める立場を取った。
しかし辺野古移設を積極的に推進する立場に転向して、県民の支持を失った。

翁長氏の当選によって普天間基地問題は再考をお迫られることになる。
政府も明確な県民の意向を無視することはできないのではないか。

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2014年11月15日 (土)

総選挙の大義と剥げ落ちたカンバン/日本の針路(69)

来週に解散総選挙を表明することが既定らしい。
野党各党は、「大義なき解散」と言っており、私もそう思うが、何だか負け犬の遠吠えのようにも聞こえる。
誰も「仁義なき戦い」に、大義など求めてはいない。

解散の大義はどうでもいいが、選挙の「争点」ははっきりすべきだろう。
端的に言えば、2年間の安倍政治をどう評価するかである。
アベノミクスはもちろんのことであるが、解釈改憲、特定秘密保護法などの内容と手法が問われねばならないだろう。

俗に、選挙には3バンが必要であるとされる。
ジバン、カバン、カンバンである。
カンバンは看板、すなわち告知のツールである。
Wikipediaでは次のように解説されている。

知名度。看板のように市中に知られている(目立つ)喩え。地元有名企業の社長(社名と同じ苗字など)、多選者、世襲候補、旧藩主家出身者、芸能人・文化人等は知名度が高く、始めから有利である。「看板のない」候補は自分の存在と名前を知らせる必要が生じ、不利となる。

確かにその通りで、カンバンのない候補は、当選が難しい。
カンバンとして有力なのは世襲である。
現内閣の半数が世襲議員である。
しかし、世襲は本質において、選挙という制度の理念とはなじまない。
選挙制度の理想と現実ということであろうか?

情報化が進んだ社会では、実体よりもイメージが重要である。
「女性が輝く社会」とアピールしながら、女性活躍担当相には伝統的な家庭観を本領とする「日本会議」のメンバーである有村治子氏を任命する。
「女性は家庭を守れ」と「女性の社会進出」とは両立しない。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)

小渕優子全経産相は典型的な世襲議員である。
改造内閣で誕生した5人の女性大臣の中でも、「女性が輝く社会」のカンバンとして起用されたはずである。
しかし、後援会の不明朗な会計処理を指摘され、自身も「分からないことが多すぎる」と困惑を隠せない状態で、輝く間もなく辞職せざるを得なくなった。
⇒2014年10月19日 (日):小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)

 小渕優子前経済産業相の政治団体で浮上した不明朗会計疑惑は、発覚から2週間あまりで東京地検特捜部による強制捜査に発展した。地元では「小渕氏は何も知らなかったでは済まない。政治資金について認識が甘すぎる。議員辞職もやむを得ない」との声が上がった。
 30日午前8時40分ごろに小渕氏の元秘書で前群馬県中之条町長の折田謙一郎氏の自宅に入った東京地検の係官らは、母屋だけでなく離れや小屋、ガレージの乗用車も手分けして捜索。午後には合鍵業者が呼ばれ、地検は施錠された場所でも資料を捜したとみられる。家宅捜索は夜まで続き、段ボールに入れられた押収資料がワゴン車に積み込まれた。
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小渕前経産相:夜まで家宅捜索…「小渕氏認識甘い」の声

父から引き継いだ後援会組織だから、事実としてブラックボックスだったのだろうが、根本は小渕氏自身の遵法意識や金銭感覚の問題であろう。
政治資金報告書に、乳幼児向け用品や服飾雑貨などの支払いが記載されている。
小渕氏は、世話になった方への贈答品であり、公私混同ではないという認識を示したが、世間では個人的な贈答は、個人の財布から支出するというのが常識である。
その他にも選挙区内の有権者に名入りの特注ワインを贈るなどの公職選挙法違反が指摘されている。
いくら世間知らずのお嬢様とはいえ、大人としての判断力が問われると言わざるを得ない。
⇒2014年10月31日 (金):「輝く女性」の看板に偽りあり!/日本の針路(63)

小渕氏は、父の急死直後の総選挙で代議士になったから、政治の世界について不案内だったのだろう。
しかし今の社会では、そのこと自体は決してハンディとは言えない。
プロの政治家が失ってしまった清新さは、差別化要素として強味であり得たはずだ。
もちろん社会人としての健全な感覚が前提となるが。

女性が妊娠や出産を機に不利な処遇を受ける事例が後を絶たない。一〇月二三日に、同意なき「妊娠降格」は違法という最高裁判断が示されたが、泣き寝入りしていた女性たちにとって、待望久しい朗報といえよう。私は女性が輝くためには、社会進出が必ずしも必要条件だとは思わないが、子育て中の母親の多くが何らかの職業に就く時代である。

少子化はあらゆる社会問題の根底に横たわっている。
人口は最も確実な未来予測である。
出産可能年齢からして、20年後までの出産可能年齢女性の数は現在既に決まっている。
1人の女性が産む子どもの数(合計特殊出生率)も急激なトレンドの変化は起こりにくいとすれば、20年後の人口は変えられない。

女性が働ながら安心して出産・育児できるか否かは、自ずから少子化という問題にも影響してこよう。
安倍首相が「3年間抱っこし放題」というキャッチフレーズで、法定育児休業の長期化を提唱したことがある。
しかしできるだけ早期に職場復帰できることを望む女性も多く、議論はかみ合わないままだった。
「妊娠降格」のような事例が多い土壌として、女性は家庭を守るのが本分である、という伝統的な家庭観がある。
安倍首相は、意識してかしないでか、その辺りを取り違えていると言わざるを得ない。

小渕優子氏は、日本最初の総理大臣候補に擬せられたことがある。
いわば自民党のカンバンになるはずであった。
そのカンバンに偽りがあったのである。
自民党のデタラメを続けさせるか否かが問われている。

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2014年11月14日 (金)

普天間基地移転問題と沖縄県知事選/日本の針路(68)

沖縄県知事選の最大の焦点である普天間基地の辺野古移設問題については、政権交代を果たした民主党の鳩山由紀夫氏の発言が懐かしく思い出される。
「最低でも県外」というリアリティを欠いた発言が、民主党政権への失望の第一歩だったのではないだろうか。
鳩山氏は善意の人なのだろうが、沖縄の利権が複雑に絡み合った構造の中で、落下傘のように発言してみても所詮現実の力になるものではなかった

これは良いか悪いかという問題ではない。
自民党政権下でできあがった構造は、鳩山氏の言動でどうなるものではないということだ。
たとえばその構造の一端は、元防衛事務次官守屋武昌氏の『普天間」交渉秘録 』新潮文庫(2012年8月)に記されている。

著者は普天間基地移設問題の解決に尽力してきたが、在任中の収賄などによって有罪判決を受けた。
いわゆる山田洋行事件である。
2008年11月5日、東京地方裁判所にて懲役2年6月の実刑判決を受け、控訴するも2009年12月22日、東京高等裁判所で控訴棄却。
2010年8月27日に最高裁判所への上告を取り下げ懲役2年6月、追徴金約1250万円の実刑が確定した。
栃木県の社会復帰促進センターで服役後、2012年7月に仮出所した。

今や検察庁が正義の味方と思う人は余りいないだろうが、この事件も背景的に複雑である。
著者が逮捕されたのが、首相が安倍から福田に替わって2カ月ほどした07年11月末である。
東京地裁の判決が出た時が麻生首相で、2009年9月に民主党の鳩山内閣が発足した。
普天間基地移設をめぐる迷走が始まるが、2010年5月末、前政権時代の名護市辺野古移設の合意案に戻る形で日米共同声明となり、社民党が政権離脱した。
6月初めに鳩山内閣は総辞職し、菅内閣が発足した。

著者は克明に日記をつけており、その日記を元にして書いたのが上掲書である。

2005年8月、アメリカの国防副次官、ローレス氏が来日し、1500mの滑走路を辺野古沖の浅瀬に造るという「名護ライト案」を日米協議の場で示した。
この年の6月にはローレス氏は「ヘノコ・イズ・デッド」と言い、辺野古沖の海上空港案は日米間で消えたはずだった。
「名護ライト案」は、沖縄県北部の建設業者が中心の「沖縄県防衛協会」の北部支部(名護市)がその総会で、決議したものが原案である。
つまり沖縄側は埋め立てを望み、アメリカは地元が呑まない案は実現性がないと考えて、両者の思惑が合致したのが「名護ライト案」ということになる。

守屋氏は環境を破壊し強い反対運動が避けられない「名護ライト案」のような埋め立て方式には反対で、キャンプ・シュワブという既存の基地の敷地内に飛行場を建設する「L字案」を進めようとしていた。
1999年、小渕内閣はいわゆる「北部振興策」という特別な予算を、10年間にわたり毎年100億円つけることを閣議決定しており、沖縄北部12市町村の財政を支えていた。
普天間移設という「ムチ」を受け入れてもらうための「アメ」が、「北部振興策」という関係である。
普天間移設を遅らせれば、地元は長期にわたって公共事業を誘致できるという構造ができあがったのである。
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上図の赤印が普天間基地、青印が辺野古である。

2006年11月の沖縄知事選で、仲井真弘多氏が当選した。
翌年の1月7日夜、下地幹郎議員から守屋氏に、「国場組の国場(幸一郎)会長が訪ねてきた。自分のことを仲井真知事の使者と言っていた。仲井真知事は『V字案で二月の県議会で受け入れを表明する。受け入れ条件は、那覇空港の滑走路の新設、モノレールの北部地域までの延伸、高規格道路、それからカジノである』」という電話があった。
国場組は沖縄最大のゼネコンで、知事の提案通りになれば、沖縄で最も技術レベルが高いとされる国場組が受け持つ事業が多いことになる。
国場組と親密な政治家は、財務相や沖縄担当相を歴任した尾身幸次氏だった。

結局、守屋氏の「L字案」は、名護市側の要求に防衛庁長官の額賀福志郎氏が応じ、滑走路の先を300m沖合に移動する「V字案」に変更された。
「L字案より埋め立ての面積が東京ドーム9個分広がることになる」ものであり、守屋氏は納得がいかなかった。
尾身氏は西松建設の政治団体から多額の政治献金を受けていたうちの1人だった。
その他にも、中川秀直氏や山崎拓氏等の名前が出てくる。
これらの政治家と地元の経済界が結びついているところに、鳩山官邸はいわば丸腰で入っていったのであり、所詮動くはずもなかったのだ。

この構造がひょっとしたら動くかも知れないのが、沖縄知事選であるという。
「新潮45」に常井健一という人の『沖縄県知事選と「國場組」』という記事が載っている。
それによれば、沖縄県知事選は、事実上、辺野古移設のための政府の埋め立て申請していた仲井眞氏と、これに反対する翁長氏の一騎打ちである。
翁長氏はかつて自民党の沖縄県連の幹事長を務め、前回の知事選では仲井眞選対の本部長だった。
つまり自民党が割れて、沖縄VS中央の色彩になっている。

その中で、長年キングメーカーの役割を果たしてきた國場組の立場が揺らいでいるというのだ。
翁長陣営の中心に座っているのは、金秀グループ会長の呉屋守将氏である。
県知事選が経済界の顔と結びついているのだ。
沖縄の選挙には「三日攻防」という言葉があるそうである。
情勢はまだ動くのか?
 

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2014年11月13日 (木)

沖縄県知事選の帰趨はどうなるか/日本の針路(67)

沖縄県知事選が11月16日投開票される。
保革対立の単純な構図ではなく、普天間基地の辺野古移設や県内のオスプレイ配備などをめぐる仲井眞県政の姿勢に対する評価が主要な争点となっている。
3選を目指す仲井眞に対し、3人の有力な対立候補が出ている。

現職の仲井眞氏に対して、自民党県連から出馬要請し、知事がこれを受諾するという形で、8月7日に記者会見して出馬表明した。
那覇市長の翁長雄志氏は、県議会野党の社会民主党沖縄県連、日本共産党県中央委員会、沖縄社会大衆党、生活の党県連、県議会会派の「県民ネット」の5団体でつくる知事選候補者選考委員会が候補を一本化し、出馬要請した。
地域政党である政党そうぞう代表の元郵政民営化担当相・下地幹郎氏は、そうぞうの代表を辞職・離党して政党の推薦を受けずに無所属で立候補することを表明した。
民主党県連代表の喜納昌吉氏は、県連が常任幹事会で喜納本人の擁立を決定し出馬要請したが、民主党幹部は支持母体の連合が翁長支持を決めたことなどから、党本部として公認しない考えを示し、県連と本部で分裂した。

沖縄タイムス、朝日新聞社、琉球朝日放送(QAB)による中盤情勢調査では、翁長氏がやや優位で現職の仲井真が追う展開となっている。

 投票態度を明らかにした人を分析すると、翁長氏は幅広い年代から支持されており、全体の7割を占める無党派層にも浸透している。支援を受けている社民、社大、共産支持者を固め、自主投票の民主も大半が支持している。
 仲井真氏は推薦を受けた自民の支持者の約8割を固めた。年代別では20~40代で一定の支持を集めている。無党派層で引き離されている。
 自主投票の公明支持層は、翁長氏と仲井真氏に割れている。
 下地氏は出身の宮古を含む先島地域で一定の支持を受けている。支持する人を職業別に見ると、自営業が最も多い。ただ、全体的に伸び悩んでいる。
 喜納氏は、本紙とRBCが実施した調査と比較すると支持はやや多めだが、他候補に引き離された状況になっている。
翁長氏優位 仲井真氏追う 知事選中盤情勢

もちろん有権者の3割近くが投票態度を明らかにしていないので、終盤にかけて情勢が変わる可能性は十分にある。
特に劣勢と伝えられる仲井真氏の陣営は、のなりふり構わぬ「ネガティブキャンペーン」を展開していると報じられている。

9日に豊見城市内で行われた、右派の論客、櫻井よしこ氏を招いての講演でのことだ。
「翁長さんはずいぶん変な人だと思います。元自民党の大物なのでしょう。自民党の大物がなんで共産党と組むのですか」
 こう話した櫻井氏は、さらに翁長氏を支援する稲嶺進・名護市長をヤリ玉に挙げて、こう続けた。
「名護は、辺野古移転に反対の方(稲嶺進市長)が通りました。共産党の支持を受けました。それで、いま副市長さんは共産党なんですってね。教育長さんも共産党なんですってね。(共産党が)選挙で応援して勝ったから<俺たちにこのポジションを寄こせ>と言って、そのような重要なポジションを取っているわけです。沖縄はそんなふうになっていいのでしょうか。いいはずがないですよ」
沖縄知事選 “劣勢”仲井真陣営が度を越した「ネガキャン」

まるで宮台真司氏のいうネトウヨの言辞である。

感情を制御できずに、〈表現〉よりも〈表出〉に固着した状態です。ちなみに〈表現〉の成否は相手を意図通りに動かせたか否かで決まり、〈表出〉の成否は気分がスッキリしたか否かで決まります。
宮台真司がネトウヨを語る「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」

沖縄県知事選の結果を踏まえて、解散総選挙へ雪崩れ込むことになるのだろうか?
とすれば、やはり単なる県知事選を越えた意味があるように思える。

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2014年11月12日 (水)

永田町から吹いて来る解散風/日本の針路(66)

前回の総選挙は、2012年12月16日に行われたから、任期のちょうど半分という時期である。
にもかかわらず、メディアや政党周辺では年内解散総選挙という空気らしい。
こういうものは一度動き出すと、止めるのが難しくなってくるものだろう。
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静岡新聞11月12日

解散権は首相にあるから、安倍首相が解散に傾いているということだろう。
事実次のように報じられている。

安倍晋三首相が早期の衆院解散を視野に、自民党幹部に「年内の衆院解散・総選挙は選択肢にある」と伝えたことが明らかになった。消費税率の10%への引き上げを巡る判断を踏まえ、国民に信を問う位置づけにしたい考えだ。首相は外国訪問から帰国する17日にも公明党の山口那津男代表と会談する。与野党は12月の総選挙を想定した準備に入った。
首相「年内の衆院選 選択肢」 自民幹部に伝える

6日の安倍首相の動静 欄に、次のような記事が載っている。

▽9時54分 クルーグマン米プリンストン大教授。浜田、本田両内閣官房参与が同席。

関連して次のように伝えられている。

同席者らによると、クルーグマン教授は米欧の経済情勢などについて見解を述べ、黒田東彦総裁による日銀の金融政策運営を支持すると語った。
また、日本については、デフレ脱却前の増税の危険性を明言した。首相は自分の意見をコメントせず、興味深く聞いていたという。
クルーグマン教授は、従来からデフレ脱却途上における昨年4月の消費税増税を強く批判し、ニューヨーク・タイムズ紙上などで持論を展開してきた。今回は国内大手証券のイベント出席などで来日。本田参与がこの日の会談を設定したという。
クルーグマン教授が安倍首相と会談、消費増税反対を表明

浜田、本田両内閣官房参与はアベノミクスの理論的支柱と目される学者だ。
共に「貨幣が成長を決する」というマネタリスト、あるいはリフレ派といわれる人である
⇒2014年7月16日 (水):お友達内閣の経済ブレーン/アベノミクスの危うさ(36)

アベノミクス支援者の消費税増税慎重論の意見を聞いて、現時点での増税は難しいと判断したのではないか。
そして先送りに対する批判を封じ込める狙いで、解散総選挙をするのであろう。
首相は佐藤栄作元首相の手法に学ぼうとしているという見方もある。

 Ws000002
佐藤内閣では、国有地の払い下げなどをめぐり閣僚らの不祥事が相次ぎ、政界を覆う「黒い霧」が批判された。逆風を受けた佐藤元首相は求心力回復のため、衆院解散に打って出た。一連の疑惑にもかかわらず自民党の議席は微減にとどまり、佐藤内閣は7年を超える長期政権となった。
 解散前の佐藤内閣は、閣僚の「政治とカネ」の疑惑がやまない第2次安倍改造内閣の姿と重なる。
 佐藤元首相は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散するほど上がる」という格言を残した。長期政権を目指す安倍首相にとって、支持率低下を招いた9月の改造の失敗をリセットする解散が魅力的に映るのは、自然なこととも言える。
 複数の政府・与党関係者は、首相が本格的に年内解散の検討を始めたのは、観劇会などの不明朗な会計処理で辞任した小渕氏らのダブル辞任(10月20日)の頃と証言する。
・・・・・・
 一方、首相はほかのタイミングでの解散の可能性も探った。当初は来年の通常国会閉会後の夏の解散も有力視されたが、自民党幹部は「統一地方選の後に国政選挙をやって勝ったことはない」と指摘。また、統一地方選後には集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の審議が予定される。政府関係者は「安保法制に体力を奪われる。来年、解散を打てる時期はない」と来年中の解散はむしろ困難との見方を示す。
 11日現在、次期衆院選の立候補予定者は自民党が278人に対し、民主党は134人。与党の選対幹部は「こちらの選挙態勢はほぼ出来上がっている。解散で実際に困るのは準備ができていない野党側だ」と述べ、早期解散は与党側に有利だと断言する。
・・・・・・
 
 こうした選挙日程優先の解散判断を巡っては、与党内からも懸念の声が上がっている。自民党の閣僚経験者は「解散の大義がない。来年の党総裁選など自分の都合で解散するということなのか」と不信感を隠さない。
 
解散へ調整 長期政権へ「リセット」

まあ一寸先は闇の世界であるから、どう展開するかは予断はできない。
しかし自らの失政・政治責任にほおかむりして、党利党略の思惑で解散するならば、国民もそれなりの判断を下すことになろう。

 

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2014年11月11日 (火)

高齢化進展と介護の複雑化/ケアの諸問題(17)

今日11月11日は「いい日、いい日」の語呂合わせで、介護の日ということになっている。
しかし介護の問題は、当事者になるまでなかなか我が事として考えられない。
現代社会の最重要の問題といえよう。

団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、介護に無関係な人は殆どいなくなるだろうと予測されている。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2014年5月19日 (月):総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
2025140205
東京新聞2月5日

高齢者人口は今後、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となる来年には3,000万人を超える。
75歳以上となる2025年には3,500万人に達すると見込まれており、その後も高齢者人口は増加を続け、2042年に3,863万人でピークを迎える。
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将来推計人口でみる50年後の日本

総人口が減少する一方で、高齢者が増加するから必然的に高齢化率は上昇を続ける。
平成25(2013)年には高齢化率が25.2%で4人に1人となり、47(2035)年に33.7%で3人に1人となる。
54(2042)年以降、高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、67(2055)年には40.5%に達する。
75歳以上人口は増加を続け、平成29(2017)年には65~74歳人口を上回り、その後も増加傾向が続くものと見込まれている。
増加する高齢者数の中で、75歳以上人口の占める割合は、一層大きなものになるとみられている。

このような高齢者人口の増大は、介護の負担の増大に直結する。
そして、介護の様式も複雑化する。
・老老介護:介護者も被介護者も共に高齢
・認認介護:介護者も被介護者も共に認知症
・多重介護:ひとつの家庭に複数の要介護者が同時に存在する

多重介護をしている人の体験談を読むと、精神的にも肉体的にも疲労困憊している様子が目に浮かぶ。
以下1例のみ挙げる。

3年前、妻に病気が見つかり幸いにも命は助かりましたが半身麻痺や感覚障害等の後遺症が残り、身体障害1級の認定を受けました。食事、トイレ、風呂、寝返りなど全てに於いて介助が必要です。妻の介護は嫌だとか面倒だとか思った事は一度も無く、むしろ日々喜びを感じながら勤しんでいます。
しかし1年半ほど前から63歳の義母(妻の母親)が認知症になり、体は元気ですが、高額な買い物や契約を繰り返したり徘徊するようになり、こちらは介護というより、乱暴な表現ですが四六時中、監視しなければならない状態です。普段の会話は割と普通なので他人から見ると健常者そのもので、免許がないのに高級車の契約を結んだりと、とにかくお金に絡むトラブルが多いです。
・・・・・・
妻の介護に、日々酷くなっていく義母の認知症を考えると、とても2人だけを放って外に働きにでることはできず、かといって施設に入所もできず、どうしたらよいのか不安でいっぱいです。市役所の福祉にも何度も相談しましたが、有効な解決策はなく。
・・・・・・
先の見えない多重介護生活。時々くじけそうになります。

ネットでたまたま目に入った例ではあるが、案外類似の事例は多いのではないか。
昔と違い核家族化が進んでいるので、介護の苦労は内攻化しがちである。
厚労相は実態を把握しているのだろうか?

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2014年11月10日 (月)

石油コンビナートの出口戦略と地方創生/技術論と文明論(7)

11月7日の日本経済新聞を見て、つくづく時代の変遷というものを感じざるを得なかった。
経産相が、石油化学各社に過剰な設備の削減を求めるという。
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かつて石油コンビナートは時代の花形産業と言われた時代があった。
敗戦の復興の時代には、石炭・砂糖・セメント・肥料・繊維などが飛ぶ鳥を落とす勢いであった。
私の育った田舎町は、炭鉱とは縁もゆかりもないが、夏の盆踊りには「炭坑節」が定番だった。

1956年の経済白書は、「もはや戦後ではない」という有名な言葉で知られる。
経済企画庁内国調査課長の後藤誉之助(1916年10月25日 - 1960年4月13日)氏が主執筆者だった。
後藤氏はキャッチフレーズ作りの名手といわれ、経済事象が一般人の身近な話題となるきっかけをつくった人として知られる。
1958年~1959年、初代景気観測官として米国ワシントン在住したが、1960年4月13日睡眠薬の過服量事故により死亡した。
享年43歳という若さだった。

この名文句は、戦後復興が一段落して、今後は自立的な経済発展へ舵を切ることの必要性を訴えたものである。
そのためには「軽工業から重化学工業への転換」が必要であるとされた。
鉄鋼・造船等が中心であったが、「石炭から石油へ」のエネルギー革命が1960年頃までに完了すると、重化学工業化の1つのシンボルとして、石油コンビナートが脚光を浴びた。

コンビナートは、旧ソ連で計画的に配置された工業地域のことを指す言葉であったが、石油化学工業や鉄鋼業などで、原料や製品を有機的に結び付けた工場の集合を指すようになった。
日本では当時、1つの企業でコンビナート全体を作るコストに耐える体力がなかったことや政府が企業の調整を行っていたことなどから、多くの企業が参画できる形になった。
1956年、川崎市、四日市市、岩国市、新居浜市の4ヶ所に建設が決定され、1958年に三井化学・岩国(日本最初のコンビナート)、住友化学・新居浜が稼動した。

石油コンビナート計画は、三島・沼津地域にもあった。
1962年の全国総合開発計画で「拠点開発方式」が採用され、水資源と良港に恵まれた東駿河湾地区に石油コンビナートが計画された。
しかし計画を知った地元住民の強力な反対運動によって計画は頓挫した。
今年の6月7日に「沼津・三島・清水町石油コンビナート阻止五〇周年の集い」が沼津市で開かれた。
⇒2014年7月20日 (日):石油コンビナート阻止闘争50周年/技術と人間(1)

現時点で考えれば、計画が実現しないで良かったと思う。
しかし、新幹線駅のある三島市はともかく、沼津市は西武百貨店の地方展開の1号店が撤退し、人口の流出が続いている。
⇒2013年1月31日 (木):西武沼津店の閉店と地方再生の可能性/花づな列島復興のためのメモ(186)
地方創生が試される場であると思う。

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2014年11月 9日 (日)

認知症の傾向と対策(2)/ケアの諸問題(16)

高齢化の進展と共に、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下する認知症患者の増大が大きな社会問題になっている。
65歳以上の4人に1人が、認知症またはその予備軍と言われる。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2014年5月15日 (木):認知症の傾向と対策/ケアの諸問題(10)

認知症に関わる政策を総合的に推進するため、政府は6日、現行の5カ年計画に代わる、新たな認知症政策プランを年内にも策定することを明らかにした。新プランは省庁の枠組みを超え、政府全体で取り組む「国家戦略」として位置づける。東京都内で開催された認知症の国際会議で、安倍晋三首相が表明した。
・・・・・・
2013年度にスタートした現行の「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」は、厚生労働省による医療・介護を中心とした内容だったが、新たなプランは、暮らし全般を支える総合的なものとして、詐欺などの消費者被害防止(消費者庁など)▽就労・社会参加の支援(文科省など)▽公共交通の充実(国土交通省など)−−など、各省庁が連携して取り組んでいく方針。
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認知症対策:国家戦略に 年内にも新政策プラン

Photo_8背景には、世界的な認知症の広がりがある。国際アルツハイマー病協会の推計では、13年の認知症の人は4435万人。それが50年には1億3546万人と3倍に膨らむ。家族や行政による介護、医療費といった認知症にかかったコストは世界全体で6040億ドル(約68兆円、2010年時点)と見積もる。
 世界保健機関(WHO)の幹部は「認知症ほどの世界的な脅威はなく、全世界で(対策に)取り組むべきだ」と警鐘を鳴らした。
認知症どう立ち向かう 年内にも新戦略、首相が方針

厚労相は、予防と治療の開発につなげるため認知症の実態解明を進める。
全国で1万人規模の住民を対象とした健康や生活習慣の追跡調査を実施する。

 対象者が認知症になった場合、生活習慣などがどのように影響したかを探る。血液データの遺伝子解析も検討し、認知症の発症メカニズムを調べたり、予防や治療法に生かしたりする考えだ。
 厚労相が表明した国家戦略は、厚労省が13年度に始めた認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)に代わる包括的な内容とする。行方不明者の対応や悪徳商法対策など、省庁横断的な取り組みも含めて年末の予算編成に反映させ、来年度から実行する。
 具体的には、医師や看護師らが家庭を訪問して認知症の早期診断につなげる「初期集中支援チーム」を全市町村に配置するほか、患者や家族を見守る市民ボランティア「認知症サポーター」の育成目標を現行の600万人から引き上げることなどを想定している。
認知症対策で1万人調査 厚労省16年度から、予防・治療法探る

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静岡新聞11月7日

予防とケアが重要なのは認知症も同じである。
生活習慣によって認知症リスクが変わると言われている。
喫煙や飲酒、運動不足などは、認知症についても敵である。
認知症は国際的な喫緊のテーマであるといえよう。

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2014年11月 8日 (土)

川内原発を再稼働させる非論理と非倫理/日本の針路(65)

九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼ついて、7日鹿児島県の伊藤祐一郎知事が同意した。
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東京新聞11月8日

政府としては、、再稼働の環境は整ったと考えているようである。

鹿児島県の川内原発の再稼働について、伊藤知事は7日、再稼働に同意する考えを示しました。
菅官房長官は午後の記者会見で、「関係者の皆さんに重要なご判断をいただき、再稼働に向けた取り組みは大きく前進したと認識している。今後、政府として、引き続き川内原発の再稼働に向けた取り組み、具体的には原子力規制委員会による工事計画認可などの手続きをしっかり進めていきたい」と述べました。
官房長官「川内原発再稼働に向け前進」

3日には宮沢洋一経済産業相が鹿児島県を訪れ、再稼働への協力を要請し、「国の責任」を明確にすることを確約するなどの形で、外堀を埋めたような形をとってきた。
しかし、決して実体的な面で進展があったわけではない。

鹿児島県の伊藤知事は「川内原発1・2の再稼働について、やむを得ないと判断いたしまして」と述べた。
・・・・・・
薩摩川内市では「考えられないですね。大臣が間違えるのは」との声が聞かれた。
7日の鹿児島県議会では、発言をかき消すほどの怒号が飛び交う中、川内原発の再稼働を求める陳情が採択された。
これにより、薩摩川内市議会と市長、そして、県議会の全てが再稼働に同意したことになり、伊藤知事が目指していた地元合意の手続きが、事実上、完了した形となった。
ところが今も、地元では、原発再稼働の是非に揺れている。
薩摩川内市では、「(賛成・反対は)半分半分ですね、わたしは。(賛成は)経済的にも良くなるのかなというのと、反対面は、本当に安全というのは、絶対ではないですよね」、「これで再稼働して、もし何かあったときにどうするんだと」などと話した。
川内原発の再稼働は今後、原子力規制委員会による認可などの手続きが残されているため、2015年1月以降になる見通し。
鹿児島・伊藤知事、九州電力川内原発の再稼働への同意を表明

宮沢大臣が当該原発の名称を読み間違えたのは、まあお粗末ではあるがそれが大臣のレベルということであろう。
問題は、最終的な責任の所在が曖昧であるということである。
万一事故が起きた場合、国が責任を負うといっても、どういう形で何をするのか。
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川内原発、安全だとは私は言わない!なのに再稼働=田中規制委員、狂気の沙汰!避難計画、桜島大噴火…

要するに、総無責任体制なのだ。
いつか通った道と同じことではではないのか?

万一の場合の避難計画も、リアルな災害を真剣に考えて策定されているようにも思えない。
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東京新聞11月6日

川内原発の地元同意手続きには多くの瑕疵が残っていると言わざるを得ない。
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東京新聞11月8日

地球上でもっともプレート活動が活発な日本列島。
原発適地とはとてもいえないのではなかろうか。







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2014年11月 7日 (金)

川内原発を再稼働させて、廃棄物はどこへ行く?/日本の針路(64)

九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の準備が進んでいる。
原子力規制委員会が、9月10日の定例会合で、川内原発1、2号機が新規制基準に「適合していると認められる」との審査書を了承し、昨年7月に同基準を施行して以来、初の合格判断を正式決定した。
再稼働の必要条件である地元同意については、薩摩川内市の市議会と岩切秀雄市長が10月28日に、同原発の再稼動にそれぞれ同意した。

宮沢洋一経済産業相は、3日、鹿児島県を訪れ、再稼働への協力を要請した。
「国の責任」を明確にすることで住民の批判をかわしたい伊藤祐一郎知事と県議会の意向に沿う形だ。
しかし肝心の宮沢大臣が、職員らに訓示した際、同原発を「かわうち原発」と読んだというからサマにならない。
不勉強ぶりが露呈したわけである。

そして今日(7日)、鹿児島県議会の陳情採択を受け、伊藤祐一郎知事が同意表明した。
これで外形的には、再稼働の条件が整ったことになる、と言えるのか?

これらの手続きは、あくまで必要条件ではあっても十分条件ではない。
再稼働した方が良い、とは決して言えないだろう。
1つは稼働した後の廃棄物処理をどうするのか、という問題である。
今日の東京新聞に下図のような戯画が載っている。
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原発で使われた核燃料が再処理されて混合酸化物(MOX)燃料に再生されることになっている。
いわゆる核燃料サイクルである。
ところが、核燃料サイクルの要である青森県六ケ所村の再処理工場も、福井県敦賀市の高速増殖炉原型炉もんじゅも、トラブル続きで実用化のめどが立っていない。
このサイクルは事実上破綻しているのである。
⇒2013年5月18日 (土):「もんじゅ」22年間の運転の実態/原発事故の真相(70)
⇒2012年6月11日 (月):電源構成と核燃料サイクル/花づな列島復興のためのメモ(83)

また、技術的に上手く回ったとしても、コスト面で問題がある。
⇒2014年1月 6日 (月):核燃料サイクルをどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(290)

さらに核燃料サイクルの中間廃棄物を貯蔵している間のリスクをどう考えるか。
⇒2013年5月25日 (土):核燃料リスクをどう軽減するか?/花づな列島復興のためのメモ(219)

同原発は、火山列島の中でも有数の火山地域に立地している。
火山噴火リスクについての懸念は払拭し得ていない。
⇒2014年10月 6日 (月):御嶽山噴火と川内原発再稼働/日本の針路(48)

日本列島は1000年ぶりの大地動乱期に入ったという説が「新潮45」の11月号に載っている。
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福島第一原発の廃炉のメドはまだ立っていない。
⇒2014年11月 2日 (日):廃炉はいつ終わるのか?/原発事故の真相(119)

ライフサイクルが俯瞰できないような技術は未完成というしかないだろう。
それでも再稼働させるのだろうか?

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2014年11月 6日 (木)

聖徳太子と弁証法/法隆寺・聖徳太子(2)

聖徳太子の逸話には眉に唾をつけたいようなものが多いがその真偽はとりあえず置いておく。
⇒2013年4月10日 (水):教科書の聖徳太子像/やまとの謎(85)
人口に膾炙している業績の筆頭が、「十七条憲法」の制定であろう。
Wikipedia の解説を引用する。

『日本書紀』、『先代旧事本紀』には、推古天皇12年4月3日(ユリウス暦604年5月6日)の条に「十二年…夏四月丙寅朔 戊辰 皇太子親肇作憲法十七條」と記述されており、『日本書紀』には全17条が記述されている。この「皇太子」は、「廄豐聰爾皇子」すなわち聖徳太子を指している。
内容は、官僚や貴族に対する道徳的な規範が示されている。政府と国民の関係を規律する近代憲法とは異なり、行政法・行政組織法としての性格が強い。儒教・仏教の思想が習合されており、法家・道教の影響も見られる。

有名な第1条は、『日本書紀』の原文は以下の通りである。

一曰、以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。

書き下し文は以下のようである。

一に曰く、和(やわらぎ)を以て貴しと為し、忤(さか)ふること無きを宗とせよ。人皆党(たむら)有り、また達(さと)れる者は少なし。或いは君父(くんぷ)に順(したがわ)ず、乍(また)隣里(りんり)に違う。然れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理おのずから通ず。何事か成らざらん。

「聖徳太子謎紀行」というサイトでは、次のように要約している。

人と争わずに和を大切にしなさい

一般には、「仲良きことは美しき哉」という武者小路実篤の色紙のように解されている。
しかし、聖徳太子「和を以て貴しとなす」の真意というサイトは次のように説明している。

第1条全体の主旨は、この言葉を知っている多くの日本人が抱いているイメージとはやや違っている。
人はえてして派閥や党派などを作りやすい。そうなると偏った、かたくなな見方にこだわって、他と対立を深める結果になる。そのことを戒めているのだ。 それを避けて、人々が互いに和らぎ睦まじく話し合いができれば、そこで得た合意は、おのづから道理にかない、何でも成しとげられる-というのだ。
ただ「仲良く」ということではなく、道理を正しく見出すために党派、派閥的なこだわりを捨てよ、と教えているのだ。
■これは、じつは最後の条文、第17条と対応している。第17条の内容は次の通り。
「重大なことがらはひとりで決定してはならない。必ず多くの人々とともに議論すべきである。…(重大なことがらは)多くの人々と共に論じ、是非を検討してゆくならば、その結論は道理にかなうものになろう」
このように重大事の決定に独断を避け、人々と議論するにしても、各人が党派や派閥的な見方にこだわっていては、対立が深まるばかりで道理は到達できない。
したがって重大事の決定にあたり、公正な議論で道理にかなった結論を導く前提として第1条があるのだ。

第1条も第17条も、討論や議論の効用を高く評価している。
世の中のことは、たいてい、あちら立てれば、こちら立たずというトレードオフになっている。
ヘーゲルは、2つの正反対で相いれない意見の折り合いをつけ、違いを克服して優れた結論を見つけ出す方法として、弁証法を確立した。
⇒2012年5月 9日 (水):リハビリの弁証法/闘病記・中間報告(49)
⇒2011年1月11日 (火):起承転結の論理/知的生産の方法(6)
⇒2008年11月22日 (土):帰無仮説-「否定の否定」の論理

十七条憲法の第1条と17条を、立場の違う人間が議論した上で独断を避けて結論を出せ、と解するならばほとんど弁証法的な考え方ということができる。
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白取春彦『思考のチカラをつくる本』三笠書房(2014年10月)

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2014年11月 5日 (水)

国道6号線沿いに咲くセイダカアワダチソウ/原発事故の真相(120)

国道6号線は、東京都中央区から宮城県仙台市へ至る道路である。
水戸から太平洋沿いに北進するが、千葉県から宮城県にかけての区間は常磐自動車道と並走している。
福島第一原子力発電所事故に伴う帰還困難区域設定のため、福島県内の一部区間は許可車両以外の通行が規制されていた。
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上図の赤い印が福島第一原発を示す。
私の知人に南相馬市出身の人がいて、9月15日からの自動車の自由通行を喜んでいたので、何となく馴染みのある道路である。
しかし、線量計は、規制解除された区間でもはっきりと振れると言っていた。

10月31日の日本経済新聞朝刊のコラム「春秋」に常磐線富岡駅付近の光景が紹介されていた。
緑色の印が富岡駅の位置である。

 福島県富岡町のJR富岡駅。この場所で、線路がどこにあるかさえわからないほど覆い茂ったセイタカアワダチソウの話を、先日の本紙朝刊が伝えていた。原発の事故で住民は避難したまま。人の姿が消えた町はこんな光景になってしまうのかと、いたたまれなくなる。▼福島第1原発の周辺では、田畑一面にセイタカアワダチソウの花が咲き、黄色いじゅうたんが広がっているように見えるという。民家の庭にも入り込み、建物を押しつぶさんばかりに生い茂る。思い出の地を埋め尽くしていく植物の波。いまなお避難生活を送る人たちは、二重にふるさとを奪われるような思いであろうか。▼セイタカアワダチソウは、よく知られた外来種である。原産地の北米から、荷物に種子がくっつくなどして持ち込まれたらしい。植物でも動物でも、外来種は繁殖力が強く、生態系の中で悪役となっている。ただ、多くはペットや観賞用とされたり、船や飛行機に偶然閉じ込められたりして、無理やり運ばれてきたものだ。▼着いた先がたまたま日本で、そこで必死に生きている。原因が人の行いにあるとすれば、単純に外来種だけを責めてすむ問題ではないだろう。なにしろこんなジョークもあるくらいだ。かつてアフリカの一部にしか生息していなかったのに、世界中に広がって生き物を滅ぼしている外来種はなに? 答えは「人類」である。

朝刊のコラムニストは各社のエース級の名文家であろうから、題材の選び方からレトリックまで学ぶところは多い。
セイタカアワダチソウという外来種が、人の住まない生態系で、我が物顔で繁殖している様が目に浮かぶ。
この風景については、鷲谷いづみ東京大学教授の『セイダカアワダチソウに染まった秋』という日本経済新聞の2012年11月7日夕刊載っていた文章から考えたことを記したことがある。
⇒2012年11月22日 (木):セイダカアワダチソウの風景と記号論/知的生産の方法(25)

同じ季節なのだ、と改めて思う。
11月4日の東京新聞に、「国道6号線ルポ」が載っている。
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3年8か月になるというのに、依然として高い線量である。
黄色のじゅうたんは、原発事故が生活環境を奪ってしまった象徴ではないだろうか。

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2014年11月 4日 (火)

磐田市旧赤松家記念館/人物記念館(1)

磐田市にある赤松則良の旧邸。
赤松は、日本の造船学の黎明期の中心人物である。
⇒2014年9月19日 (金):もし「沼津兵学校」が現存していれば・・・/知的生産の方法(103)

赤松が晩年を過ごした磐田市の見付にある。
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近くの見付学校は、明治5(1872)年の学制発布を受け、翌年8月に仮校舎で開校した。
新校舎は、明治8(1875)年に落成し、開校式が行われた。
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赤松は、明治期に磐田原台地に茶園を開拓した。
明治20年代に建てられた門・塀・土蔵は県・市の指定文化財となっている。
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敷地内に入ると、則良の胸像があり、りっぱな庭園が広がる。
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旧邸の赤松家記念館には、旧赤松家ゆかりの文化財や寄贈資料等が展示してある。
咸臨丸の模型があったが、こんな船で太平洋を横断したのかと思うような小さな帆船である。
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経歴と系図は参考資料として有用だろう。
赤松の娘登志子が森林太郎(鴎外)と結婚している。
津和野出身同士の西周の仲介か?
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2014年11月 3日 (月)

ロボットが東大に入るようになったら/知的生産の方法(109)

国立情報学研究所の「ロボットは東大に入れるか(Todai Robot Project)」について触れたことがある。
研究リーダーの新井教授は、『ロボットは東大に入れるか』 イースト・プレス(2014年8月)、『コンピュータが仕事を奪う』日本経済新聞出版社(2010年12月)等で、プロジェクトの狙いを次のように説明している。

人工知能に何ができて何ができないのか、一般の人に興味を持ってもらうのに、東大入試という題材はわかりやすいだろう。
つまり、東大というネーミングは、一種の広報戦略である。

確かに、技術革新の進展によって、多くの職業が消えて行った。
例えば和文タイピストは私の若い頃は専門職であったが、「かな漢字変換ソフト」等が開発されたこと等により現在は絶滅状態である。
単純労働から始まったロボットによる人間の代替は、知らず知らずのうちに、次第にホワイトカラーの領域を浸食しつつあるといえよう。

棋界は天才的な頭脳が競う世界として知られる。
故米長邦雄永世棋聖の有名な語録に「兄貴達は頭が悪いから東大に行ったが、俺は頭がいいので将棋指しになった」というものがある。
事実として、米長氏には3人の兄がいて、いずれも東大に進んでいる。
米長氏一流の表現ではあるが、この言葉が示しているように、棋界は天才的な頭脳の集う世界であると言ってよい。

その棋界において、「若き天才」と呼ばれた沼津出身の棋士がいた。
故芹澤博文九段である。
順位戦で2年目から4年続けて昇級し、24歳でA級八段となった。
タレントとしても活躍する多才ぶりだったが、1987年に51歳の若さで亡くなってしまった。
芹澤葬儀で弔辞を読んだのが、米長氏だった。

米長氏は日本将棋連盟の会長を務めていた2012年1月、第1回電王戦で将棋ソフトと対戦し、敗れた。
第2、3回の電王戦は現役のプロ棋士チームとの団体戦として行われ、いずれもソフト側が勝利した。
コンピュータの圧勝と言わなくても、優位であることは間違いない。
⇒2013年5月 5日 (日):将棋ソフトの進歩と解説ソフトの可能性/知的生産の方法(52)

現時点では、ソフトの方が棋士より強いとは言い切れないだろうが、時間の問題であろう。
先端技術の世界では、「ムーアの法則」という有名な経験則がある。
集積回路の集積度が1年半で2倍になるというもので、人工知能のの脳力にも該当する。
ムーアの法則は未来を保証するものではないが、過去のトレンドとはよく合致している。

アメリカの未来学者のレイ・カーツワイルは、2045年にコンピュータが人間を凌駕すると予測している。
未来予測の限界点であり、技術的特異点とも呼ばれている。
⇒2014年4月27日 (日):電王戦の結果と2045年問題/知的生産の方法(93)

新井教授らは、人工知能に「東ロボ君」という名前を付け、大学入試の模試を受けさせた。
大学入試センター試験の模試では、東大の合格ラインには遠く及ばなかったが、私大の7割ではA判定(合格可能性80%以上)をもらった。
⇒2014年1月19日 (日):ロボットが東大に入る日/知的生産の方法(78)

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昨年、東ロボくんが挑戦したのは代々木ゼミナールの「全国センター模試」。複数の選択肢から解答を選ぶ方式だ。会場に出向いて試験を受けるわけではなく、事前に問題をもらい人の手でデータとして入力する。東ロボくんは試験時間内に自動で解答。数十秒で解ける問題もあれば、10分ぐらいかかるものもあった。
 結果は、総合7科目の偏差値が45で、全国平均を下回った=別表。世界史や日本史が比較的得意で、英語や国語は苦手だった。国語では漢字は全問正解。しかし小説の読解で「表情が固い」という表現の解釈を問われ、「まじめな様子」と解答した。正解は「こわばっている」。受験生全体の正答率は68%だった。講評では「文脈を捉えた理解ができていない」とされた。
 英語では発音やアクセントの知識を問う問題はよくできたが、対話文を完成させる問題は全滅。会話の状況を想像したり、発言の意味を理解したりするのは苦手。一方、別に受けた東大2次試験の数学模試は、偏差値60と好成績だった。
東ロボくん猛勉強!! 国立情報学研の人工知能 東大届かず私大A判定

東大入試楽勝というレベルに達した時、ヒトとロボットはどう棲み分けをするのか。
学校のあり方、教育のあり方が重大な岐路を迎えようとしているのではなかろうか。

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2014年11月 2日 (日)

廃炉はいつ終わるのか?/原発事故の真相(119)

国の新規制基準に初めて適合した九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は、10月28日、再稼働への同意を表明した。
同日開催された臨時市議会で、再稼働を求める陳情が採択されたことを受け判断したものである。

一連の地元同意手続きで、伊藤祐一郎知事は同意が必要な範囲を県と薩摩川内市に限っており、市が結論を出したことで手続きは県へと移る。
川内原発:市長、再稼働に同意 議会の賛成採択受け

川内原発はとりわけ火山の噴火リスクに対する疑念が拭われていず、再稼働反対を訴える人も多い。
⇒2014年7月21日 (月):川内原発を再稼働させるのか?/技術と人間(2)
⇒2014年10月 6日 (月):御嶽山噴火と川内原発再稼働/日本の針路(48)
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一昨年、鹿児島大学病院付属霧島リハビリテーション・センターに入院したとき、遠路見舞いに来てくれた知人と一緒に、都城・小林・えびのをドライブしたことがある。
新燃岳の噴火もあり、現在も霧島連山・えびの高原の硫黄山に噴火注意報が出ている。
わが国は至る所火山があると言っていい。
⇒2012年5月 8日 (火):火山活動との共生/花づな列島復興のためのメモ(62)

俵万智さんは次のように詠む。
⇒2014年7月21日 (月):川内原発を再稼働させるのか?/技術と人間(2)
⇒2014年7月24日 (木):ハンフォード・サイトの現状と核廃棄物の処理/原発事故の真相(117)

「おかたづけちゃんとしてからつぎのことしましょう」という先生の声

しかるに、福島第一原発事故で「おかたづけ」は遅々として進んでいない。

1_2 福島第一原発の廃炉に向け、国と東京電力は三十日、1、2号機の作業計画を見直す方向で検討に入った。1号機では二〇一七年度前半にも予定されていた使用済み燃料プールからの燃料取り出し開始が一九年度前半に、溶融燃料取り出しが二〇年度前半から二五年度前半にずれこむ。2号機はプール燃料の取り出しのため建屋上部を解体する方針。
 事故から三十~四十年と見込まれる廃炉完了の時期に影響はないとしているが、作業計画を遅らせる形での見直しは初めて。来春に廃炉工程を改定する予定。
・・・・・・
 水素爆発を免れた2号機では原子炉建屋が残っているが、建屋内や設備の放射線量が極めて高く、除染しても人が作業できる線量まで下がらないと判断。建屋上部を解体し新しい設備を設置するのが良いとした。
 1号機と同様にプール燃料を優先して取り出すかは二年後をめどに判断する。
 廃炉工程は事故発生から約九カ月後の一一年十二月に策定され、昨年六月には溶融燃料取り出しを最大一年半前倒しする見直しが行われた。
燃料取り出し2年の遅れ 福島第一の廃炉工程を見直し

こんな状況で川内原発を再稼働させようという政権は、常軌を逸していると言わざるを得ない。

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2014年11月 1日 (土)

博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

日銀が、31日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和策を決めた。
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日本経済新聞11月1日

 昨年4月に異次元緩和を導入後、初の追加緩和となる。黒田東彦(はるひこ)総裁は31日午後に記者会見し、消費低迷や最近の原油安を踏まえ、「物価上昇率がやや下がっており、将来の賃金や企業の価格設定が下がる恐れがある」と指摘。「デフレマインドの転換が遅延するリスクがあり、金融緩和の拡大が適当だ」と説明した。
 追加緩和策は、長期国債の買い入れ規模を現在の年間約50兆円から80兆円に30兆円増額。満期までの期間の平均も最大3年程度延長して7〜10年にする。より長期の金利を押し下げ、お金を借りやすい環境にして景気を刺激する狙いだ。上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT=リート)の買い入れ規模も3倍に増やす。資産買い入れを強化することで、市場に流すお金の量を増やす。
日銀:追加緩和、異例の僅差 賛成5、反対4 供給拡大、年80兆円−−決定会合

これを受けて株式市場は異例の高騰となった。
下図は昨日の日経平均である。
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 「まずい、買い戻せ!」
 週末前で静かだったフロアで、一気に電話が鳴りっぱなしになった。14時ごろの証券会社のトレーディングルーム。ある国内証券のトレーダーは、顧客からの大量の買い注文に追われた。13時40分ごろに日銀の追加緩和決定が伝わると、投資家は一斉に買いで反応した。日経平均株価はその後わずか5分で400円強上昇。買いの勢いは止まらず、終値では755円高と約6年ぶりの上昇幅となった。
日経平均6年ぶり上げ幅 日銀に裏をかかれた海外短期筋

1日の値動きを1年間と対比して見てみよう。
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追加緩和策が奇襲攻撃的であったことが分かる。
日銀の緩和策は円安を導くことになる。

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日銀が追加の金融緩和を決めたことで、三十一日の東京外国為替市場では一気に円安ドル高が進んだ。円安は海外での売り上げ規模が大きい大企業には増益につながる利点が見込める一方、海外との取引がない中小零細企業や家庭には輸入品などの物価上昇で負担が増えるリスクをもたらす。金融緩和が物価上昇をもたらすだけで、賃金アップや経済成長につながらなければ、消費者の生活は厳しくなるばかりだ。
 追加緩和を受けて三十一日の東京外国為替市場の円相場は一時、一ドル=一一一円台半ばを付けた。輸出増による利益アップが期待できる国内の自動車メーカー首脳は「一一一円台は心地よい水準」と話す。
 だが、円安を喜ぶ声ばかりではない。東京都などで食品スーパー十四店を展開するさえき(東京都国立市)の担当者は「(国産の)卵や牛乳も(輸入飼料の値上がりで)じわじわ仕入れ価格が上がっている」と明かす。
 東京都内の三十代の主婦は「内容量が減った食品も多い。さらに消費税率が10%になったら主婦は泣きます」と訴えた。
 東京都大田区の町工場は原材料費などの高騰に危機感を抱く。大手メーカーの下請けで金属部品を加工する神代(かみしろ)工業は電気代に加え、金属の研磨に使う中国製の砥石(といし)の値上がりに悩む。皆方一義(みなかたかずよし)社長(55)は「メーカーから受け取る工賃は上がらず、原材料費が値上がりすれば経費増を下請けがかぶらねばならない」と語った。
進む円安 物価高騰懸念 日銀、追加緩和を決定

円安は、日経平均を構成している主要銘柄であるグローバル企業にとっては追い風になるだろうが、中小企業や生活者にとってはマイナスが大きい。
日銀が追加緩和に踏み切らざるを得なかったというのは、アベノミクスの自壊を示しているように思える。

市場にとってはサプライズだったが、円安が進むことによって日本経済が良くなるとは思えない。
製造業大手の拠点は海外移転が進んだために円安でも輸出が伸びない。
中小企業にとっては原材料の輸入価格が高騰する一方で、価格転嫁はままならない。

消費税増税に加えて円安による物価上昇が家計を圧迫している。
現在の景気停滞の原因は、国内総生産(GDP)の六割を占める個人消費の落ち込みが大きいからである。
経済の好循環というのは、砂上の楼閣であろう。
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)

「3本の矢」などと、いかにもまともな経済政策のように思わせてきたが、アベノミクスの中身は金融政策しかないことが露呈した。
輪転機で紙幣を刷り、国土強靭化と称する公共事業に使うことで実体経済が活性化するとは思えない。
追加緩和は博打的な経済政策の本質を示しているといえよう。

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