「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)
安倍首相の第187回国会における信表明演説に次のような言葉がある。
成長戦略を確実に実行し、経済再生と財政再建を両立させながら、「経済の好循環」を確かなものとする。そして、景気回復の実感を、全国津々浦々にまで届けることが、安倍内閣の大きな使命であります。
引き続き、デフレ脱却を目指し、「経済最優先」で政権運営に当たっていく決意であります。
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
この言葉をしらけないで聞けるのはよほどの安倍信奉者しかいないであろう。
連立与党の井上義久公明党幹事長ですら、10月1日の衆院本会議の代表質問で、次のような疑義を呈している。
「『(経済の)好循環はどこで回っているのか』というのが国民の生活実感ではないか」。
アベノミクスは異次元と自負する金融緩和で円安誘導してきた。
第2次安倍政権発足後の円安トレンドが、9月に入って急速に加速している。
実に6年ぶりの円安水準だという。
日本経済新聞10月1日
円安は何をもたらしたか?
期待されたような輸出増は、生産拠点が海外へ移転済みのため起きていない。
代わりに輸入品の価格が上がり、食品値上げとなって家計を直撃している。
一般的な生活者は、節約マインドによって対処するしかない。
「経済の好循環」は、消費を伸ばして企業の生産活動を活発にし、賃金の上昇や雇用の拡大をもたらし、賃金の上昇や雇用の拡大がまた消費を刺激し、企業の新たな投資を促す、というようなフィードバックループが形成されることに他ならない。
経済政策に限らないが、安倍首相は言っていることの意味が本当に分かっているのだろうか?
「経済の好循環」どころか、消費は低迷し、生産、投資を落ち込ませるという悪循環に陥りつつある 。
日銀が発表した9月の短観(企業短期経済観測調査)では、円安による恩恵が大きい「大企業・製造業」のみ景況感がわずかに改善したが、これまで景気回復をけん引してきた「大企業・非製造業」や中堅、中小企業の製造業、非製造業はいずれも景況感悪化の回答が多い。
経済の実態を見据えないまま、「成長戦略の実行」と力説されても違和感を禁じ得ない。
成長戦略の柱は、「女性が輝く社会」「岩盤規制改革」だという。
「女性が輝く社会」について、安倍首相はとんだ勘違いをしている。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
安倍政権は、株価を維持することに注力してきた。
高株価が景気が良くなったようなイメージが形成されるというのは、一面の真実ではある。
景気回復への「期待感」が醸成されている間はいいが、株価だけが実体経済と独立に上昇するならば、バブル以外の何物でもないだろう。
今日の日経平均株価は、420円(2.61%)安と暴落した。
今後の株価≒安倍政権の行方や如何?
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