子どもたちの騒ぐ声は騒音か?/日本の針路(62)
私の母親は、一貫して幼児教育に携わった。
いわゆる女手一つで、戦後の困難な時期を子育てをしてきた。
そのお影響であろうか、長姉や長姉の長女も幼児教育を職としていた。
つまり、幼稚園や保育園は、身近な存在だった。
その幼稚園や保育園が、いま地域の迷惑施設視されているという。
確かに、ワーワーギャーギャーと騒ぐのが子どもたちの特性である。
それを騒音と感じるかどうか?
あるいは、騒音だから規制すべきかどうか?
子どもの声がうるさいというトラブルが増えているという。
「何人(なんぴと)も規制基準を超える騒音を発生させてはならない」。条例の条文はこう明記し、子どもの声も規制対象に含まれると解釈されてきた。
見直しの背景には近年、各地で「子どもの声がうるさい」と住民が保育所建設に反対するケースが増えたことがある。中には騒音差し止め訴訟に発展した例もあり、今年三月には都議が「子どもの声を工場騒音と同列に扱うのはおかしい」と都に指摘。これを受け都は三~九月、都内六十二区市町村にアンケートした。結果、七割が「子どもの声に関して住民から苦情を受けた」と答え、二自治体は保育施設の建設が住民の反対で延期や中止になったとした。一方で、子どもの声を規制対象外とするか、規制基準を緩和すべきだとの意見は四十自治体に上った。「何人も」としている条例が、保育所を訴える根拠とされる可能性があるためだ。
声の規制が子どもの健全な発達を妨げる恐れもあり、都は規制の対象外とするか規制基準を緩和する条例改正を検討することにした。早ければ来年二月の都議会に条例改正案を出し、来年度から施行する。一方で「子どもの声であっても、受忍限度を超えるような場合は対応が必要」とし、実際に声に悩まされる住民への配慮も盛り込む考えだ。
子どもの声をめぐっては、練馬区で二〇一二年に、私立保育所の近隣住民が「平穏に生活する権利を侵害された」と、騒音差し止めや慰謝料を求めて提訴。神戸市でも今年、住民が保育所の運営者を相手に、防音設備設置などを求める訴訟を起こした。
子どもの声=騒音? トラブル増え、都条例改正へ
確かに、子どもの声は大きい。
どれだけ静かにするように注意しても、聞かないで騒ぐのが子どもである。
住宅街に幼稚園、保育園、小学校などが作られるのは、今に始まったことではない。
最近になってから子どもの声が騒音トラブルになっているのは、子どもの声を騒音として感じる人の問題とも言える。
しかし、次のような事例まで発生するようでは、一種の社会問題である。
2014年9月の末、東京都国分寺市の保育園前で、子どもを遊ばせていた父親に対して、近所に住んでいた無職の男が、無言で持っていた斧を振り下ろした。斧は地面にあたり、父親に怪我はなかったが、男は子どもの父親を脅した「暴力行為等処罰法違反」の容疑で逮捕された。
男は5年も前から、市役所に電話をかけ、「園児のマナーが悪い」などと苦情を訴え、事件前日には対応しないのであれば、園児に危害を加えることを示唆していたという。
市役所の方でも、保護者に対して「近所から苦情があったので、帰り道などでは子どもをうるさくさせないようしてほしい」という文書を配布したばかりだった。死傷者が出なかったことは不幸中の幸いだが、結局トラブルは発生してしまった。
騒音が人を狂わせる — 保育園は迷惑施設か?
誰もが幼児期を過ごしてきたはずであるから、子どもの声に寛容でありたいとは思う。
特に、少子化が多くの社会問題の根本になっているときであるから、子どもの声は地域の宝であるとも言える。
子どもの声は騒音なのか。Yahoo!の意識調査では、「あなたは、子どもの声を騒音だと思ったことがありますか?」という問いに対して、10月20日14時時点で40770票が集まっている(男性74.2%、女性25.8%/調査期間は10月16日~26日)。
思ったことがない、が若干多いものの、ほぼ拮抗していると見ていいだろう。
人が騒音と感じるのは、単に音の大きさだけではない。
脳が感情的に不快に感じた音はすべて「騒音」になる。
論理だけでは解決しない問題である。
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