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2014年10月25日 (土)

沼津と造船学の奇しき縁/知的生産の方法(107)

沼津兵学校は、大政奉還直後の徳川に残された拠点・静岡藩に設置された教育機関である。
当時のわが国の最高レベルの教授陣が揃えられたと言って良いだろう。
何しろ校長(頭取)が西周である。
⇒2014年9月19日 (金):もし「沼津兵学校」が現存していれば・・・/知的生産の方法(103)

教授陣一覧表に、赤松大三郎という名前が見える。
造船学の黎明期の立役者・赤松則良の通称である。
赤松について、沼津兵学校教授というサイトから引用しよう。

赤松 則良 あかまつのりよし(一等教授方)
天保11年幕臣吉沢政範の子に生まれた。旧名大三郎。幼少時より坪井信道・信良らに蘭学を学び、安政4年には蕃書調所句読教授方出役に任命され、また第3期生として長崎海軍伝習所で学んだ。その後築地の軍艦操練所の教授をつとめ、万延元年には成臨丸の乗員に選ばれ、測量方兼運用方として太平洋を横断した。文久2年には幕府のオランダ留学生として、榎本武揚・津田真道・西周・林紀らとともに渡欧し、海軍関係の技術、特に造船学を勉強した。明治元年5月に帰国、榎本武揚の脱走軍に参加しようとしたが、榎本に説得され、遠江国見付(現磐田市)に移住した。沼津兵学校の設立に際して一等教授方に招かれ、「徳川家兵学校附属小学校掟書」を起草したり、得意の洋算を教授したほか、附属小学校の校舎を設計するなど、才能を発揮した。しかし、明治3年春には政府の命令により上京、兵部省に出仕した。以後、海軍兵学寮大教授・兵部少丞・兵部大丞・海軍大丞・主船寮長官・横須賀造船所所長・海軍省副官・主船局長・機関本部長・海軍造船会議議長・兵器会議議長・左世保鎮守府司令官・横須賀鎮守府司令官などを歴任し、男爵・海軍中将となり、貴族院議員もつとめた。晩年は見付に隠棲し、大正9年に亡くなった。

磐田市に旧邸を保存した記念館がある。
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赤松は造船学の学会である造船協会の初代会長である。
現在の造船学会は、公益社団法人・日本船舶海洋工学会というが、学界のサイトには、以下のような沿革が示されている。
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上記の年表に見るように、1898(明治30)年に設立された歴史ある学会である。
2010年に、日本船舶海洋工学会として統合される以前は、日本造船学会(←造船協会)、関西造船協会(←造船協会阪神倶楽部)、西部造船会(←九州造船会)の3学・協会が併存していた。
日本造船学会が東京大学、関西造船協会が大阪大学、西部造船会が九州大学が拠点であることは容易に理解できる。

同サイトに、歴代会長という資料が載っている。
造船協会の初代会長を務めたのが赤松則良で、任期は明治30年9月~大正7年4月の長期にわたっている。
そして、日本船舶海洋工学会となって初代の会長は、内藤林で、平成17年4月~平成19年5月の期間を務めている。
内藤は、平成16年1月~平成17年3月の間関西造船協会の会長を務めた。
最後の同協会会長とも言える。

内藤林君は、私の高校時代以来の畏友である。
「夏草冬涛」の友の1人である。
⇒2007年11月 5日 (月):私の『夏草冬涛』
当の内藤君を沼津市にある「明治史料館」に案内したことがあったが、赤松が沼津兵学校に関係していたのを知って内藤君自身が驚いていたのを思い出す。

内藤君は、第6回海洋立国推進功労者表彰(平成25年度)において、<科学技術>分野において内閣総理大臣賞を受賞した。
研究業績は、以下のように紹介されている。

船舶の実海域推進性能の先駆的研究
実海域での波浪中抵抗を効果的に低減させるためには水面近傍の船首船型が重であることを世界に先駆けて理論的、実験的に明らかにし、波浪中抵抗を低減する船型開発により船舶の省エネルギー化に貢献した。また、実海域推進性能の計算システムの構築や複雑な波を精度よく長時間にわたり再現できる造波水槽の開発により船の性能推定の研究に貢献した。
第6回海洋立国推進功労者表彰について

私は、造船学会の初代会長と新装成った造船学会の初代会長が、共に沼津に深い係わりを持っていることを知って感慨を禁じ得ない。

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