「輝く女性」の看板に偽りあり!/日本の針路(63)
安倍首相が掲げる「女性の輝く社会」。
本気で輝いて欲しいと考えているかどうかが問われている。
「女性の輝く社会」の看板であったはずの小渕前経産相が、旧態依然たる後援会の御輿だったことが明らかになりつつある。
東京新聞10月31日
改造内閣の5人の女性大臣の中でも、小渕氏を看板にしようとしたことは間違いないだろう。
大学卒業後TBSに入社し、同期入社者と結婚して2児の母親である。
父が首相に就任すると、TBSを退社して父の秘書となる。
その父が首相在任中に脳梗塞で倒れ死去すると、直後の総選挙で、父の遺志を継ぐかのように立候補しトップ当選をした。
弱冠26歳であった。
その経歴が裏目に出たと言えるのではなかろうか。
父の遺産ともいえる後援会は、小渕氏にとってはブラックボックスだった。
観劇会の収支が合っていないことを指摘された釈明の記者会見で、「分からないことが多すぎる」と困惑した様子を隠せなかったことからも窺える。
しかし、根本的には、小渕氏自身の遵法精神や金銭感覚のマヒが原因というべきであろう。
政治資金報告書に、乳幼児向け用品や服飾雑貨などの支払いが記載されていたが、これを小渕氏は、世話になった方への贈答品であり、公私混同ではないと釈明した。
やはり何も知らないお嬢様だったことが露呈したように思う。
小渕氏は、私用に使ったものではないと言いたかったのだろう。
しかし、世間では個人的な贈答は、個人の財布から支出するというのが常識である。
また、選挙区内の有権者に名入りの特注ワインを贈っていることが表面化した。
明らかなど公職選挙法違反である。
小渕氏は、政治的訓練を受けないまま、政治家になったから、政治の世界について不案内だったのだろう。
しかしそれ自身は決してハンディとは言えない。
私たちは、職業的政治家の志の薄さに辟易としている。
職業的政治家が失ってしまった清新さは、差別化要素として強味とすべきであったのではないか。
もちろん健全な社会人としての感覚が前提とはなるが。
「女性が輝く社会」を考えるならば、女性が妊娠や出産を機に不利な処遇を受けるようなことを改めることが必要であろう。
10月23日に、同意なき「妊娠降格」は違法という最高裁判断が示された。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)
いわゆるマタニティーハラスメント(マタハラ)を受けて泣き寝入りしていた女性たちにとって、待望久しい朗報といえよう。
私は女性が輝くために、必ずしも社会進出が必要条件だとは思わないが、子育て中の母親の多くが何らかの職業に就く時代である。
女性が働ながら安心して出産・育児できなければ、自ずから少子化という問題にも影響してこよう。
安倍首相が「3年間抱っこし放題」というキャッチフレーズで、法定育児休業の長期化を提唱したことがある。
しかし、できるだけ早期に職場復帰できることを望む女性も多く、議論はかみ合わないままだった。
マタハラが横行している土壌には、「女性は家庭を守るのが本分」という伝統的な家庭観がある。
有村治子女性活躍担当相が属する政治団体「日本会議」も、かねてからそういう価値観を表明している。
安倍首相と「日本会議」は、親密な関係である。
仕事をしながら子育てをしたいという女性との間のギャップは埋めがたいものがあるように思う。
女性の多くが非正規従業を余儀なくされているが、ブラックと呼ばれるような環境の改正なくして「輝く」ことは不可能であろう。
かくして、小渕氏を看板として利用とした安倍首相の思惑は、「看板に偽りあり」という事実によって破綻した。
看板だけでイメージを良くしようと思っても限界があるのである。
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