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2014年10月13日 (月)

超高齢社会をどう生きるか?/ケアの諸問題(15)

藤枝市立総合病院の外科医・金丸仁さんが書いた『死者は穏やかに微笑ん』万来舎(2014年8月)という小説が新聞に紹介されていた。
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東京新聞10月10日(静岡版)

わが国の高齢化は世界でも例がない段階に入っている。
高齢者人口は、平成27(2015)年には3,395万人となり、37(2025)年には3,657万人に達すると見込まれている。
その後も高齢者人口は増加を続け、54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。
Photo
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_1_1_02.html

しかしこうなることは、女性の出産可能年齢と合計特殊出生率や平均寿命のトレンドからして、ずっと前から分かっていたはずだ。
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)
いよいよ「地方消滅」が懸念されることになってから、「地方創生」が具体的な政策課題として取り上げられる。
⇒2014年5月10日 (土):人口減少の過程と問題/ケアの諸問題(7)
⇒2014年5月12日 (月):人口減少の過程と問題②/ケアの諸問題(8)
⇒2014年6月 4日 (水):超高齢社会と限界自治体/花づな列島復興のためのメモ(330)
しかも高市総務相は、「ローカルアベノミクスで……」などというトンチンカンなことを言っている。
はどう見ても輸出企業のための政策であるアベノミクスを、どうローカライズするというのか?

主人公の長瀬は65歳で公立病院を定年退職し、特別養護老人ホームの医師として働き始める。
そこで介護の現実に接したり、自分の父親の認知症が進んで行くのを見るうちに、考える。
日本社会はますます高齢化時代が進んで行く。安い賃金、汚い仕事の介護士の離職率は高いが、介護保険制度はいつまでもつか分からない。
老老介護が増え、認認介護と言われるような事態が進行するが・・・・・・

世間では、「不老即死」すなわちピンピンコロリが理想だという。
現実にはどうしたらいいか?
大学の同窓会で旧友に会い、「老人問題が今の日本の最も大きな問題だけど、どうすればいいと思う?」と問われるが、長瀬は答えられなかった。
現役の医師がSF風味のミステリー仕立てで問う日本社会の現実。

本書にも、認知症患者が起こしたJR列車事故について、家族の監視責任が問われた裁判の件が出てくる。
⇒2014年5月19日 (月):総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
こんな判例が定着すれば、在宅介護をする人はいなくなるだろう。
しかし、厚労省は、介護の在宅化を進める方針だ。
在宅介護で「強いられたボランティア」として介護をしているのは、多くの場合女性だ。

安倍首相は、昨年の「成長戦略スピーチ」で、「女性が輝く日本」を掲げ、(3年間抱っこし放題での職場復帰支援)を高らかに宣言した。
ところがこのスピーチは評判が悪かった。

「働く女性にとっての悩み・不安は、育休明けにキャリアを持続できるのか、ということ。3年間も職場を離れたら、その不安はさらに拡大する。またそもそも、子供が小さいうちの育児では、単に抱っこできれば済むものではない。病気やアレルギーがあれば医者に通わなくてはならない。夜泣きなどの体力的・精神的負担は大きい。子供がいない時代に比べ家事は一気に増える。今の核家族化した日本社会で、母親は夫など周囲の助けがないまま子を育てるのは困難だ。」

女性の側からも、つぎのような批判が続出した。
「結局育児は母親がするもんだみたいな昔のオヤジ的考えよね。働きたいママさんは沢山いて、両立のためのサポートをしっかりしてほしいと望んでるんだけど。」
「安倍さんの話を聞いていると、女は『産めよ、育てよ、働けよ』と言われている気がする。ムリですから!」

9月29日の第187回国会における所信表明演説では、(女性が輝く社会)という表現は継続しているが、(3年間抱っこし放題での職場復帰支援)は取り下げざるを得なかった。
現実を見ないで、観念的にウケを狙った言葉を並べても、化けの皮はすぐはがれる。

介護人材を養成するための施策も腰が定まっていない。
2014年2月 6日 (木):2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)

介護現場では低い給料への不満が広がっている。
 関西の社福に勤める女性職員は月に7、8回の夜勤をしても月給は20万円ほどにしかならない。「いくらがんばっても理事長は現場の努力を評価してくれない。給料は1年に2千円しか上がらない」と嘆く。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、福祉施設で働く人の13年の平均給料は月に約21万9千円、訪問介護で働くホームヘルパーは約21万8千円だった。看護師は約32万8千円と大きく上回り、栄養士も約23万4千円と上回る。
 介護職員らが入る労働組合「日本介護クラフトユニオン」では、組合員数は今年春の約6万8千人から半年で千人ほど減った。景気が持ち直してほかの仕事の給料が上がり、介護から離れた人がいるとみられる。
介護現場の待遇 薄給、耐えられない

介護保険は40歳以上が払う保険料や税金でまかなわれており、負担を抑えながら、どう介護サービスを充実させ、介護職員の待遇を改善するか。
来年度には、介護保険から支払われる介護報酬について3年に1度の改定があるが、この改定をめぐり、財務省と社会福祉法人が激しく対立している。
介護職員の待遇を改善するためには、介護報酬のアップが必要だが、原資の介護保険料は上げるのが難しい。
アベノミクスの方向性に答えはないだろう。

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