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2014年10月18日 (土)

特許法改正の効果と影響/知的生産の方法(105)

今年のノーベル物理学賞は、名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授、米カリフォルニア大学の中村修二教授に贈られることになった。
青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザーに関する業績に対してであるが、日亜化学と中村修二氏の特許報奨訴訟のことが改めて話題になっている。
⇒2014年10月 7日 (火):青色LEDでの三教授のノーベル賞受賞を寿ぐ/知的生産の方法(104)

訴訟の経緯を、「日経ビジネスオンライン」の『ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか』で辿ってみよう。

 中村氏は1979年に徳島大学大学院工学研究科を修了し、日亜化学に入社。1990年に「ツーフロー方式」と呼ぶ、窒化ガリウム結晶成長技術の特許(404特許)を出願した。これが、高輝度の青色LEDの道を開いたとされる。そして1993年に日亜化学が青色LEDの製品を発表し、同社の業績は右肩上がりで急成長していった。 99年12月に日亜化学を退社した中村氏は、翌2000年2月に米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授に就任した。そして2000年12月、米国において日亜化学が中村氏を企業秘密漏洩で提訴。これに対し、2001年8月に中村氏が日亜化学を東京地裁に提訴した。これが4年に及ぶ青色LED訴訟のきっかけだった。
・・・・・・
最終的に中村氏は和解を受け入れ、法廷闘争は終結した。しかし、本人は決して納得していなかった。発明対価の算出方法が、地裁と高裁で大きく異なっていたのが最大の理由だ。
 6億円という数字に根拠なんて全然ありません。これまで発明対価は「超過利益」が判例の基準になってきました。日本の電機メーカーの場合、売り上げに対する利益率は良くて5%ぐらいでしょう。これが「普通の利益」になります。超過利益というのは(発明が売り上げに貢献した年の)総利益から、普通の利益を引いたものです。その超過利益と発明者の貢献度を掛け合わせることで、対価は決まります。
 私のケースだと、日亜化学では売り上げに対する利益率が60%。だから「60%-5%=55%」が超過利益になります。地裁では超過利益を1200億円と算出し、私の貢献度を50%と認定した。それで、600億円という発明対価になったんです。
・・・・・・
 本当に悲しいことですが、裁判所が保守的である限り日本は何も変わらない。技術者が全員海外に出ていって、日本がおかしくなるまでは真剣に考えないんじゃないでしょうか。
 「こんな国では、もう仕事なんてできませんよ」。冒頭で紹介したこの言葉を残し、中村氏は米国へと帰っていった。そして今も米国を拠点に研究を続けている。

上記は中村氏にフォーカスしているので、中村氏よりの紹介になっている。
私見は、おおざっぱに言って、中村氏の受けるべき相当対価は10億円程度ということだ。
そもそも適正な対価など算定使用がないだろうと思うが、以下のように考える。
・事業化のプロセス総体のなかで、発明フェーズは1/16程度の重みであろう
・企業内技術者が職務として行った発明に対しては、どれほど大きな経済効果をもたらした発明であったとしても、その程度の金額で十分ではないか
⇒2007年12月20日 (木):職務発明対価私見 

職務発明の特許権が、「社員のもの」から「会社のもの」になるように特許法が改正されるらしい。

 特許庁は17日、社員が仕事で行った発明(職務発明)の特許権について、社員への適切な報奨を義務付けることを条件に、「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは発明による特許は「社員のもの」としていた。企業に特許をより使いやすくさせる一方、社員に不利にならないように報奨を義務付けて研究開発意欲を確保し、競争力の向上を狙う。
社員発明:会社に帰属 特許庁、適切な報奨条件

Photo
発明:「社員」から「会社のもの」へ 訴訟リスク低減 特許活用、円滑化に道

しかし、発明行為は個人が行うものであって、企業が行うものではないだろう。
上記の日経ビジネスOLの記事に次のような言葉がある。

 2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長は、本誌の取材に対しかつてこう語った。「中村先生は勇気を持って、当然の権利を主張したと考えています。その彼が、今は米国で教壇に立っている。日本人としては寂しいことです。すごい技術を開発した研究者に、日本の若い人たちが学び、後に続くことができたら、どれだけ素晴らしいことか」。

2人のノーベル賞受賞者は特許法改正の方向性をどう考えるであろうか?
杉晴夫氏は、『論文捏造はなぜ起きたのか?』光文社新書(2014年9月)で、「科学の進歩は天才によって新たな研究分野が開拓され、その分野に多くの研究者が集まってその分野の知見を押し広げる」という形で発展すると説明している。
企業の都合に良いことを考えると、反骨心を持った研究者の離反を招くのは、中村氏の例が示す。
特許法の改正が、かえってブレークスルーするような大発明を阻害することにならないか。

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コメント

何を言いたいのか良く解らない。個人の発明対価は1/16程度で良いと言いながら、特許権は社員から会社へ変わる事に何の意思表示もしていない。
 特許権の対価と特許権の主体が変わると云う事は全く違う次元のテーゼである。私は特許権の主体を変える事は全く反対である。権力者が報奨を義務付けても対等な評価がなされて来なかったのは歴史が証明しているのではないでしょうか?

投稿: shiseian1130 | 2014年10月19日 (日) 01時54分

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