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2014年10月10日 (金)

「憲法9条」に対する国内と国外の評価の落差/日本の針路(50)

今年のノーベル平和賞は、女子教育の権利を訴えるパキスタンのマララ・ユスフザイさんと、インドの児童労働問題に取り組んでいるカイラシュ・サティヤルティさんに授与された。

ユスフザイさんは少女の教育を受ける権利を主張。その後パキスタンの武装勢力「タリバーン」のメンバーに頭部を銃撃された事件で世界的な注目を集めた。
サティアティさんは金銭を得るために子どもを利用することに反対する平和的なデモを主導するなどした。
ノーベル平和賞、マララ・ユスフザイさんとカイラシュ・サティヤティさんに

順当な人選ということだろう。
ノーベル平和賞は、スウェーデンではなくノルウェー政府が授与主体である点で他の分野とは異なっている。
ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルがスウェーデンとノルウェー両国の和解と平和を祈念して「平和賞」の授与はノルウェーで行うことにしたからである。
選定に政治的な思惑が見え隠れすることも他分野とは異質である。

日本人受賞者の佐藤栄作氏の場合、「非核三原則」の提唱が受賞理由であった。
しかし、1974年に受賞した後に有事の際の「核持ち込み」に関する密約が、日米間で結ばれていたことが明るみに出た
密約を暴いた毎日新聞の西山太吉記者は、有罪判決が確定している。
2000年になって、密約を裏付ける米国の公文書が発見され、対米交渉を担当した吉野文六外務省アメリカ局長(当時)も密約の存在を認めたが、西山氏が提起した国家賠償法に基づく賠償請求訴訟に対して、今年7月14日、最高裁は上告を棄却した。
⇒2014年7月 8日 (火):沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)
⇒2014年7月22日 (火):沖縄密約裁判、特定秘密保護法、解釈改憲、アベノミクス/日本の針路(11)

問題もあるノーベル平和賞ではあるが、世界の耳目を集めるニュースになることは間違いない。
今年は、他に米政府の監視プログラムを暴露した米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者(31)などがノミネートされていた。
注目すべきは、「憲法9条」が有力候補になっていたことだろう。

 受賞予測をしたのは、オスロ国際平和研究所(PRIO)。ウェブサイトで9条について「日本国民の多くはこの非侵略の誓いが、1946年(の憲法公布)以来、戦争を避けることができた大きな理由だとみている」と指摘し、他国との武力衝突が一度もなかった戦後約70年間の歩みに果たした役割を評価している。
 ハープウィケン所長は6日、朝日新聞の取材に応じた。1位の理由として、平和賞は「軍の廃止や縮小」などへの貢献者に贈られるとしたアルフレッド・ノーベルの遺志に合致している▽尖閣問題など東アジアで戦争リスクが高まっている――の二つに加え、安倍政権が9条の解釈を変え、集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたことで「9条が危機にある」ことを挙げた。
 所長は「ノーベル委員会は、授賞が安倍政権批判と見られることを気にするかもしれないが、9条が危機にある今年こそインパクトがあるとも認識するだろう」と指摘。2010年に中国政府と対立する人権活動家の劉暁波氏が受賞したことも挙げ、「政治的な問題から委員会が逃げることはない」と述べた。
 その上で、「東アジアの紛争の可能性は世界であまり注目されておらず、この地域に光を当てようとノーベル委員会が考えるかもしれない。原爆などで甚大な被害を受けながら、平和のうちに復興を遂げた日本の戦後約70年間の歩みに共感する人は世界に多い。平和賞の授与は世界から歓迎されるだろう」と話した。
9条、なぜノーベル賞トップ予測 「戦後の歩みに共感」

「何だ、朝日新聞の報道か」などという勿れ、である。
PRIOという民間機関ではあるが、海外の見方の例である。
これに対し、国内の自治体の及び腰が目につく。
「9条デモ」を詠んだサークルの選句の掲載を拒否したさいたま市公民館は、センスを疑う。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)

さいたま市の場合は、「何とも滑稽なほどナーバス」と思ったが、他の自治体にも同様の動きが広がっている。
「国分寺まつり」で毎年ブースを出している「国分寺9条の会」が今年の出店を拒否された。
⇒2014年8月31日 (日):ヘイトスピーチを国会デモ規制に短絡させる思考/日本の針路(33)

ただ白井市では、市教委は四月の規程改定で、「政治的中立」を理由に世論を二分するテーマの後援に慎重姿勢を打ち出したが、集団的自衛権をテーマに護憲団体が開く講演会について、後援する見通しとなった。

 講演会は、白井市の市民団体「しろい・九条の会」が来月十六日に市内で開催。日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を担当した東京外国語大の伊勢崎賢治教授が「紛争解決のプロが話す集団的自衛権」との演題で講演する。
 伊勢崎氏は安倍政権が進める解釈改憲による集団的自衛権の行使容認には「技術論としておかしい」との立場。九条の会は「集団的自衛権をより深く理解し、市民の知識を深める」ためとして、後援を市教委と市に申請した。
 市教委が後援申請を審査したのは、規程改定後はこの日が初めてで、委員たちは伊勢崎氏の著作を読んだ上で参加。「政治的に偏っていない。体験がユニークで勉強になる」「国際社会でどうあるべきか考えるきっかけになる」など、後援の承認に賛成する意見が相次いだ。
「九条の会」講演会の後援 白井市教委、一転承認

ごく当たり前の判断だろうが、それがニュースになるという時世である。
もし、「憲法9条を保持する日本国民」が受賞したならば、安倍政権はどう反応しただろうか?
見てみたい気もしたが、まあノーベル平和賞の性格からしてユスフザイさんたちの方が相応しいということだろう。

自治体が臆病になっているのは、国会へのデモを規制せよという高市早苗総務省や御嶽山ツイートでミソを付けた片山さつき議員等のおバカ政治家が跋扈しているので、障らぬ神に祟りなし、ということであろう。
今年のノーベル平和賞は逃したが、「9条」に対する内外の落差は著しい。
安倍首相は、慰安婦問題について、国内右派には朝日批判で点を稼ぎ、海外には反省をしてみせるというダブルスタンダードで対応しているが、海外の見る目は厳しいというべきだろう。

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