マララさんノーベル平和賞受賞の意味/世界史の動向(28)
今年の延べう平和賞は、パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイさんと、インドの児童労働問題の活動家カイラシュ・サティヤルティさんの2人に授与されることになった。
⇒2014年10月10日 (金):「憲法9条」に対する国内と国外の評価の落差/日本の針路(49)
マララさんがノーベル平和賞を受賞したことはどのような意味をもつのだろうか?
東京新聞10月11日
マララさんは、2年前にパキスタンの反政府武装勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)から銃弾を浴びせられた。10月
現地では今も学校を狙った事件が続いているという。
マララさんの母国パキスタンでは、有力メディアが「勇敢な人物」などと称賛し、こぞって受賞決定を歓迎した。
しかし、保守層の一部でマララさんに批判的な声もある。
ただ、一部保守層は、欧米が人権問題などで圧力をかけるため、マララさんを利用していると反発している。マララさんの自伝を学校図書館に置くことを禁止する「全パキスタン私立学校連盟」のミルザ・カシフ・アリ会長は、平和賞の受賞決定を「西洋の指示に従った結果だ」と批判した。
「欧米がマララさん利用」…母国保守層に反発も
つまりマララさんはイデオロギー対立のシンボル的要素になっていることだろう。
TTP側の主張は以下のようだ。
TTPが女子生徒が通う学校を攻撃するのは「男性は女性たちの保護者である」というイスラム教の聖典コーランの一節を極端に解釈し、女性が外で働いたり、教育を受けたりすることを「悪」と見るからだ。
TTPは表向き「女子教育には反対しない」と主張している。ただし、TTPが言う「学校」はコーランの学習を主体としたマドラサ(宗教学校)だ。
空軍からTTPに加わったアドナン・ラシド幹部は昨年7月、マララさんに公開書簡を出した。「あなたが命をかけるという教育とは、英国趣味のアジア人、英国流の意見を持ったアフリカ人を次から次へ生み出すことだ。女子用のマドラサ(宗教学校)に入って、コーランを勉強しなさい」と主張した。
なぜマララさんは撃たれたか 無防備な女子生徒標的続く
ノルウェー政府がウクライナ危機やイスラム国というような国際情勢に関連してではなく、子どもの権利に着目したことを評価したい。
世界で5,700万人に上る子どもたちが初等教育を奪われているという。
子どもが教育を受ける権利を持つのは普遍的な価値である。
教育を受けられないことが、貧困や過酷な児童労働の温床になっている。
幸いにしてわが国は、江戸時代の寺子屋という教育システムにより、子どもの識字率が世界最高水準になっていた。
文字を読めることは文明化の前提条件であり、明治維新以降の近代化を支える基盤になったのである。
マララさんの両親について、次のような事情が伝えられている。
パキスタンの少女ペカイさんは、六歳の時に学校に通い始めたが、一年もたたずにやめてしまった。周りで学校に通っている女の子などいない。どうせ大人になったら、家の中の仕事をするだけ。学校に行っても、意味はないだろう▼だから、大きくなって恋に落ちたジアウディンさんから詩を献(ささ)げられても、読めなかった。ただ、この人の夢を支えていこうと思った。彼の夢は、貧しい家の子も女の子もみんな学校に行けるようにすること。そのために学校を作ることだった▼二人の間に生まれた女の子も、両親と同じ夢を抱くようになった。だが、そのために少女が学校に行くことを認めないイスラム過激派に撃たれ、死の淵(ふち)まで追いやられた▼それがマララ・ユスフザイさん。手記『わたしはマララ』が世界的ベストセラーとなった少女だ。
筆洗
このような事情があったからこそ、マララさんが昨年行った国連演説が多くの人の心に響いたのだ。
演説でも、銃撃を受けたことで逆に「私の中で弱さと恐怖、絶望が死に、強さと力、勇気が生まれた」と主張した。最も大きな拍手がわいた瞬間だった。
「タリバンとすべてのテロリスト、過激派の息子と娘たちに教育を受けさせたい」。マララさんは両親から学んだ「許しの心」を強調しつつ、「教育(の普及)のためには平和が必要」と、演説のテーマを自分の経験から普遍的な真理へと発展させた。
約17分間の演説は格調高く、説得力に満ちていた。総立ちの聴衆の拍手はしばらく鳴りやまなかった。
ノーベル賞:勇気とリーダーの資質 マララさん国連演説
わが国の女性閣僚と比べるのもどうかとは思うが、人間としての器が違う。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)
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