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2014年10月14日 (火)

経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)

「株価連動政権」といわれ、必死に株価を維持してきた安倍内閣であるが、肝心の株価の動向が怪しくなってきた。
日経平均株価は5日連続して下落し、1万5千円割れで引けた。
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時事通信は、米株続落と円高を受けて投資意欲が冷え込んだと説明しているが、どうだろうか。
街角の景気判断でも先行き不透明である。
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東京新聞10月9日

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、内閣改造後に次のように語っていた。

 それから、安倍内閣は別名「株価連動政権」とも言えます。株価を維持することによって、あたかも景気がよくなったようなイメージをつくり上げている。この政権が比較的高い支持率を維持して来られた最大の要因は、株価上昇によって景気回復への「期待感」を醸成してきたことに他なりません。
 しかし、期待感がいつまでも実感に変わらなかったら、ある時点で国民はみな、我に返るでしょう。鳴り物入りで始まったアベノミクスですが、足もとの7月を見ると、現金給与総額の平均が2.6%増えた一方で、実質賃金指数(現金給与総額に物価変動の影響を加味したもの)は13ヵ月連続で下がっています。
 4月以降は消費税の負担が3%上がり、足もとの消費者物価指数も前年同月比で3%以上上がっているため、差し引きで見ればむしろ国民生活は厳しくなっているのです。今後景気がもたついた場合は、期待感が大きな反動となり、悲壮感が増すでしょう。そうなると、頼みの綱である株価が下落してしまう。これは「株価連動政権」にとって、非常に危うい状況です。
のるかそるか、安倍“株価連動”政権/見え始めた内閣改造の思惑と未来予想図

公的資金まで動員して株価維持を図ってきたのも、株価が高い限り国民の批判をかわせると考えているからである。
⇒2014年7月12日 (土):株価対策のための公的資金投入/アベノミクスの危うさ(35)

安倍政権の経済政策に対し、フィナンシャル・タイムズ紙は次のように評している。

 安倍晋三首相の「3本の矢」は明らかに的を外している。理由はそもそも矢が3本ないことで、あるのはたった1本、通貨の下落のみだ。
 これは過去には常に有効な公式だった。円安がかつては日本の電子製品や自動車の輸出を加速させたからだ。だが今日、もはやそうした効果はない。
[FT]アベノミクス3本の矢、いまだ的中せず

アベノミクスで曲がりなりにも効果を示したのは、「第1の矢」である異次元の金融緩和である。
しかし、金融緩和の実体経済への効果は疑問視せざるを得ない。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)

そもそも自国通貨(円)安を好ましいとする政策は、どこか「うさんくさい」と考えるべきであろう。
⇒2013年2月14日 (木):円安と経済成長の両立は可能か?/花づな列島復興のためのメモ(193)
⇒2013年7月 2日 (火):円安は良いことか?/アベノミクスの危うさ(9)

心ある識者は、安倍首相の暴走に対して警鐘を鳴らしている。
デフレの正体  経済は「人口の波」で動く』角川oneテーマ21(2010年6月)や『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』角川oneテーマ21(2013年9月)などで知られる藻谷浩介氏は、アベノミクス以降、日経平均株価は9割上昇したが、国内の小売販売額は1%しか伸びていない、と指摘している。
国民や中小零細企業の大多数は円安で経費が嵩むばかりで恩恵を受けていない。
藻谷氏に対して、安倍首相は「アイツだけは許さない。あの馬鹿っ! 俺にケンカ売っているのか」と攻撃したという(「フライデー」誌2014年10月24日号)。
まあ実際の発言の様子は分からないが、同誌がヘイトスピーチになぞらえているのも尤もであろう。

脱藩官僚の1人古賀茂明氏は、『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』角川oneテーマ21(2014年9月)で、安倍政権の暴走ぶりを批判している。
まさに「暴走」というしかないだろう。
⇒2014年2月14日 (金):安倍首相の暴走をコントロールするのは?/花づな列島復興のためのメモ(307)
2月の時点ではまだ助走というべきであった。
⇒2014年9月30日 (火) :『新・戦争のつくりかた』を読む/日本の針路(46)

古賀氏は安倍首相の狙いを、日本を米国に次ぐ世界の列強国(帝国主義国)と変えようとすることであるとして、次のように書いている。

列強国になるとは「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない国」、「戦争なしには生きられない国」になってしまうことだ。

「戦争なしには生きられない国」になっても、自衛隊を志望する若者が減ったら戦争はできない。
現に集団的自衛権で他国との戦争の可能性が高まったことにより、若者の自衛隊離れが起きているという。
不足する兵員をどう補うか?
そのとき、徴兵制が敷かれるというのは蓋然性の高いシナリオであろう。

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