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2014年10月

2014年10月31日 (金)

「輝く女性」の看板に偽りあり!/日本の針路(63)

安倍首相が掲げる「女性の輝く社会」。
本気で輝いて欲しいと考えているかどうかが問われている。
「女性の輝く社会」の看板であったはずの小渕前経産相が、旧態依然たる後援会の御輿だったことが明らかになりつつある。
Photo_2
東京新聞10月31日

改造内閣の5人の女性大臣の中でも、小渕氏を看板にしようとしたことは間違いないだろう。
大学卒業後TBSに入社し、同期入社者と結婚して2児の母親である。
父が首相に就任すると、TBSを退社して父の秘書となる。
その父が首相在任中に脳梗塞で倒れ死去すると、直後の総選挙で、父の遺志を継ぐかのように立候補しトップ当選をした。
弱冠26歳であった。

その経歴が裏目に出たと言えるのではなかろうか。
父の遺産ともいえる後援会は、小渕氏にとってはブラックボックスだった。
観劇会の収支が合っていないことを指摘された釈明の記者会見で、「分からないことが多すぎる」と困惑した様子を隠せなかったことからも窺える。

しかし、根本的には、小渕氏自身の遵法精神や金銭感覚のマヒが原因というべきであろう。
政治資金報告書に、乳幼児向け用品や服飾雑貨などの支払いが記載されていたが、これを小渕氏は、世話になった方への贈答品であり、公私混同ではないと釈明した。
やはり何も知らないお嬢様だったことが露呈したように思う。

小渕氏は、私用に使ったものではないと言いたかったのだろう。
しかし、世間では個人的な贈答は、個人の財布から支出するというのが常識である。
また、選挙区内の有権者に名入りの特注ワインを贈っていることが表面化した。
明らかなど公職選挙法違反である。

小渕氏は、政治的訓練を受けないまま、政治家になったから、政治の世界について不案内だったのだろう。
しかしそれ自身は決してハンディとは言えない。
私たちは、職業的政治家の志の薄さに辟易としている。
職業的政治家が失ってしまった清新さは、差別化要素として強味とすべきであったのではないか。
もちろん健全な社会人としての感覚が前提とはなるが。

「女性が輝く社会」を考えるならば、女性が妊娠や出産を機に不利な処遇を受けるようなことを改めることが必要であろう。
10月23日に、同意なき「妊娠降格」は違法という最高裁判断が示された。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)
いわゆるマタニティーハラスメント(マタハラ)を受けて泣き寝入りしていた女性たちにとって、待望久しい朗報といえよう。

私は女性が輝くために、必ずしも社会進出が必要条件だとは思わないが、子育て中の母親の多くが何らかの職業に就く時代である。
女性が働ながら安心して出産・育児できなければ、自ずから少子化という問題にも影響してこよう。
安倍首相が「3年間抱っこし放題」というキャッチフレーズで、法定育児休業の長期化を提唱したことがある。
しかし、できるだけ早期に職場復帰できることを望む女性も多く、議論はかみ合わないままだった。

マタハラが横行している土壌には、「女性は家庭を守るのが本分」という伝統的な家庭観がある。
有村治子女性活躍担当相が属する政治団体「日本会議」も、かねてからそういう価値観を表明している。
安倍首相と「日本会議」は、親密な関係である。
仕事をしながら子育てをしたいという女性との間のギャップは埋めがたいものがあるように思う。
女性の多くが非正規従業を余儀なくされているが、ブラックと呼ばれるような環境の改正なくして「輝く」ことは不可能であろう。

かくして、小渕氏を看板として利用とした安倍首相の思惑は、「看板に偽りあり」という事実によって破綻した。
看板だけでイメージを良くしようと思っても限界があるのである。

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2014年10月30日 (木)

子どもたちの騒ぐ声は騒音か?/日本の針路(62)

私の母親は、一貫して幼児教育に携わった。
いわゆる女手一つで、戦後の困難な時期を子育てをしてきた。
そのお影響であろうか、長姉や長姉の長女も幼児教育を職としていた。
つまり、幼稚園や保育園は、身近な存在だった。

その幼稚園や保育園が、いま地域の迷惑施設視されているという。
確かに、ワーワーギャーギャーと騒ぐのが子どもたちの特性である。
それを騒音と感じるかどうか?
あるいは、騒音だから規制すべきかどうか?
子どもの声がうるさいというトラブルが増えているという。

 「何人(なんぴと)も規制基準を超える騒音を発生させてはならない」。条例の条文はこう明記し、子どもの声も規制対象に含まれると解釈されてきた。
 見直しの背景には近年、各地で「子どもの声がうるさい」と住民が保育所建設に反対するケースが増えたことがある。中には騒音差し止め訴訟に発展した例もあり、今年三月には都議が「子どもの声を工場騒音と同列に扱うのはおかしい」と都に指摘。これを受け都は三~九月、都内六十二区市町村にアンケートした。
Photo 結果、七割が「子どもの声に関して住民から苦情を受けた」と答え、二自治体は保育施設の建設が住民の反対で延期や中止になったとした。一方で、子どもの声を規制対象外とするか、規制基準を緩和すべきだとの意見は四十自治体に上った。「何人も」としている条例が、保育所を訴える根拠とされる可能性があるためだ。
 声の規制が子どもの健全な発達を妨げる恐れもあり、都は規制の対象外とするか規制基準を緩和する条例改正を検討することにした。早ければ来年二月の都議会に条例改正案を出し、来年度から施行する。一方で「子どもの声であっても、受忍限度を超えるような場合は対応が必要」とし、実際に声に悩まされる住民への配慮も盛り込む考えだ。
 子どもの声をめぐっては、練馬区で二〇一二年に、私立保育所の近隣住民が「平穏に生活する権利を侵害された」と、騒音差し止めや慰謝料を求めて提訴。神戸市でも今年、住民が保育所の運営者を相手に、防音設備設置などを求める訴訟を起こした。
子どもの声=騒音? トラブル増え、都条例改正へ

確かに、子どもの声は大きい。
どれだけ静かにするように注意しても、聞かないで騒ぐのが子どもである。
住宅街に幼稚園、保育園、小学校などが作られるのは、今に始まったことではない。
最近になってから子どもの声が騒音トラブルになっているのは、子どもの声を騒音として感じる人の問題とも言える。
しかし、次のような事例まで発生するようでは、一種の社会問題である。

 2014年9月の末、東京都国分寺市の保育園前で、子どもを遊ばせていた父親に対して、近所に住んでいた無職の男が、無言で持っていた斧を振り下ろした。斧は地面にあたり、父親に怪我はなかったが、男は子どもの父親を脅した「暴力行為等処罰法違反」の容疑で逮捕された。
 男は5年も前から、市役所に電話をかけ、「園児のマナーが悪い」などと苦情を訴え、事件前日には対応しないのであれば、園児に危害を加えることを示唆していたという。
 市役所の方でも、保護者に対して「近所から苦情があったので、帰り道などでは子どもをうるさくさせないようしてほしい」という文書を配布したばかりだった。死傷者が出なかったことは不幸中の幸いだが、結局トラブルは発生してしまった。

誰もが幼児期を過ごしてきたはずであるから、子どもの声に寛容でありたいとは思う。
特に、少子化が多くの社会問題の根本になっているときであるから、子どもの声は地域の宝であるとも言える。

Photo_2子どもの声は騒音なのか。Yahoo!の意識調査では、「あなたは、子どもの声を騒音だと思ったことがありますか?」という問いに対して、10月20日14時時点で40770票が集まっている(男性74.2%、女性25.8%/調査期間は10月16日~26日)。

思ったことがない、が若干多いものの、ほぼ拮抗していると見ていいだろう。
人が騒音と感じるのは、単に音の大きさだけではない。
脳が感情的に不快に感じた音はすべて「騒音」になる。
論理だけでは解決しない問題である。

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2014年10月29日 (水)

情報の保秘と開示の線引きは誰がどう決めるのか/日本の針路(61)

東京電力福島第1原発事故の賠償問題のADRを担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」の最上位の組織「総括委員会」の議事録を公開していないという。
ADRは、Alternative* Dispute Resolution の略称で、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」では「裁判外紛争解決手続」と規定されているものである。
「Alternative」ではなく「Appropriate」の略とする考え方もあるが、訴訟手続によらずに、つまり裁判を行わないで紛争を解決するための手続である。
「裁判だとお金も時間もかかりすぎるが泣き寝入りはしたくない」「相手と直接交渉していては解決しそうにない」「中立的な専門家にきちんと話を聞いてもらって解決したい」「信頼できる人を選んで解決をお願いしたい」というような場合の解決手段として重要な役割を負っている。

「原子力損害賠償紛争解決センター」については、和解案を作成する仲介委員(弁護士)の一部についても氏名を明かにされていない。

 総括委は大谷禎男委員長(元裁判官)、鈴木五十三(いそみ)委員(弁護士)、山本和彦委員(一橋大教授)の3人で構成。賠償額の目安などを定める重要な「総括基準」を決めており、これまで基準の決定日と決定内容だけしか公開していないため、毎日新聞は決定の作成過程を検証するため、文科省に情報公開請求した。
 文科省は議事録の存在を認めた上で、一切の公開を認めない「不開示」とした。一部を黒塗りにして開示する「部分開示」ではないため、3人の発言内容だけでなく、実際に委員会は開催されたのか▽開催されたのならその日時と場所▽出席者▽議題−−など、すべて検証できない。不開示理由について、文科省は(1)率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれる(2)国民に混乱を生じさせる(3)手続きの適正な遂行に支障が及ぶ−−などを挙げた。
 センターは和解案を作成する仲介委員282人(退任者を含む)の氏名についても全面開示をしていない。毎日新聞が東電との利害関係の有無を調べるため、氏名の公開を求め情報公開請求したところ、文科省は「個人情報」を理由に、名前や経歴などをすべて黒塗りにした文書を開示した。一方、センターの対応は一貫性を欠いており、ホームページで和解事例を紹介する中で202人の仲介委員名を付記している。それでも残る80人の氏名は分からないままだ。
 原発ADRのように行政機関が運営する裁判外手続きは行政型ADRと呼ばれ、消費者庁が2011年10月に有識者会議に提出した資料によると、全国規模の主な機関は、センターを含め6機関ある。毎日新聞のまとめでは、センターを除く5機関は、すべて委員の氏名をホームページ上で公表している。さらに、5機関のうち2機関は最上位の組織の議事録もホームページで開示し、残る3機関も「情報開示請求があれば対応を検討する」と答えた。
Adr
原発ADR:議事「不開示」…担当弁護士を黒塗り

国は情報公開法に基づき、請求から原則30日以内に以下のいずれかに決めることにになっている。
(1)すべて公表する全部開示
(2)一部を黒塗りにする部分開示
(3)一切公表しない不開示
2013年度に国の行政機関が行った9万5464件のうち、不開示は2.4%に過ぎない。
その中には、文書そのものが存在しないケースも含まれるという。
議事録が存在するのに不開示とするのは、特別に秘匿しなければならない事情があるのではないかと推測するのが普通であろう。
特定秘密保護法が論議されている折でもあり、原則は公開とすべきではなかろうか。

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2014年10月28日 (火)

京大・田中英祐投手の文武両道/知的生産の方法(108)

今日の日本経済新聞朝刊のコラム「春秋」が大学野球に触れている。

 野球といえば東京六大学という時代が、かつてあった。たとえば1937年に出た吉野源三郎の少年向け読み物「君たちはどう生きるか」には、主人公コペル君らが早慶戦のラジオ中継をまねて絶叫する様子が生き生きと描かれている。その興奮ぶりは並大抵ではない。▼ところがこのロングセラー、戦後の新版では早慶戦の場面がプロ野球の巨人―南海戦の実況にまるごと差し替わってしまった。世間の目がすっかり離れたのだ。むかし神宮球場で声援を送った各校OBもさして興味を示さず、もう長いあいだ、プロ野球と高校野球のエアポケットみたいなところに六大学は落ち込んでいる。▼盛り上がらぬ理由のひとつは「東大問題」かもしれない。毎シーズンのように最下位に甘んじ、特にここ4年間は白星もなく86連敗で今季を終えた。このままだと来年秋には100連敗に到達する。他校とはまるで選手の事情が異なるからなのだが、それにしてもちょっと負けすぎである。リーグ戦の意義が薄れもしよう。▼奮起を迫られる東大ナインにとって、15年ぶりの優勝を狙う立教の活躍は大きな刺激に違いない。これで東大が頑張れば六大学野球ももう少し話題になるはずだ。大スタジアムは早朝より数万の観衆に埋められて立錐(りっすい)の余地もありません――「君たちはどう生きるか」の、野球が若かったころの光景は取り戻せぬにしても。

「君たちはどう生きるか」は昔読んだ記憶があるが、内容は覚えていない。
春秋氏の言うように、人気凋落の1つの要因は「東大問題」にあるだろう。
しかし、ひょっとすると因果関係が逆かも知れない。
つまり大学野球全般の人気がなくなり、東大野球部へ入ろうという若者が減ったのが86連敗をもたらした?

私の高校時代の同級生で野球部だった2人が、一浪して東大に入った。
2人とも六大学で野球をしたいという理由で東大を選んだ。
六大学の他大学ではレギュラーとして試合に出ることが難しいという判断もあったようだが、高校時代に野球部に在籍しながら、東大に進学するには現役では時間が足りなかった。
無事、2人とも東大ではレギュラーとなり、1人は六大学のベストナインにも選ばれた。
プロ野球入りした東大生も何人かいる。

大学スポーツでは関西は不利な条件にある。
典型は箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)である。
長距離陸上競技の華であるが、関東学生陸上競技連盟が主催者なので、参加が関東の大学に限られる。
「箱根を走りたい」と思うような高校の有望選手は、関東の大学へ進出する。

野球についても同じようなことが言える。
東京六大学野球の相対的位置は以前より低下はしているが、依然として大学野球の象徴的存在である。
六大学以外にも、東都大学、首都大学等があって層が厚い。

一方、東京六大学に相当する関西学生連盟には、関西大学、 関西学院大学、 京都大学、 近畿大学、 同志社大学、 立命館大学が加盟しているが、東京に比べれば注目率が低いのは否めない。
例外的にほぼ関西優位の勢いを維持しているのはアメリカンフットボールくらいであろうか。

劣勢の関西大学スポーツにとって、久しぶりの明るい話題であろう。
京都大学の田中英祐投手がドラフト会議でロッテから2位指名された。
今までに、京大からプロ野球選手になった例はない。
田中投手は工学部工業化学科に在籍するが、実験等も多い中である。

京大はノーベル賞に強い大学といっていいだろう。
ノーベル賞といっても、経済学賞、文学賞、平和賞などは、授賞の判断基準が問題になる。
自然科学分野に限ってみよう。
最初に受賞した物理学賞の湯川秀樹、2番目の朝永振一郎、化学賞を最初に受賞した福井謙一、医学生理学賞を最初に受賞した利根川進は、みな京大出身である。
これはアカデミズムの牙城東大を凌駕する実績である。

しかし、学生スポーツで注目されることは稀である。
ひと頃は、アメリカンフットボールが学生日本一の時代もあったが、今は関学、立命館等の後塵を拝している。
田中投手は、兵庫県内の中高一貫の進学校・白陵の出身であるが、高校時代は公式戦1勝に終わった。

 友人に誘われて入部した時は1メートル80、65キロと細く、球速も130キロ台だった。
 それでも学業と両立させながら連日、午後10時まで体力トレーニングを行い、体幹を鍛えた。体重は約10キロ増え、球速は最速149キロを記録。2年春にはチームの連敗を60で止め、今年6月には大学日本代表候補にも選ばれた。今秋は28季連続の最下位。「野球部の歴史を変えたい」との目標は達成できなかったが、リーグ戦通算8勝は京大史上最多だ。
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田中 京大初のプロ!一流商社内定蹴り決意「使命感持って」

東大と似たような環境で、リーグ戦8勝を挙げている。
卒論のテーマは「SFA(表面力測定装置)における水和構造の逆計算理論」だという。
おそらく、類まれな集中力の持ち主なのだろう。
今のところ、文字通り文武両道である。

プロの世界は甘くないだろうが、それは本人も承知していることである。
どこまで通用するかは未知数であるが、クレバーぶりを発揮して活躍して欲しい。

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2014年10月27日 (月)

福島県県知事選で何が問われたのか?/日本の針路(60)

東日本大震災と福島第1原発事故後初となる福島県知事選の投票が26日投票が行われ、無所属新人で前副知事の内堀雅雄氏(50)が当選した。
引退を表明した佐藤雄平知事(66)の県政の後任選びということで、継承か刷新かが焦点だった。
6人が立候補し、福島県知事選では過去最多であったが、 論戦は盛り上がりを欠いたようである。

 全候補が福島第1、第2原発計10基の全基廃炉を主張し、原発政策は大きな争点に浮上しなかった。主要政党が内堀氏に相乗りしたため、政策論争は低調となり、投票率に響いた。
 内堀氏は2期8年の副知事としての実績を強調し、佐藤県政の継承と発展を掲げた。ロボット産業の集積や子育て環境の整備、避難区域の復興を訴えの柱に据えた。
 自民、民主、公明、社民4党が与野党相乗りで支援したほか、連合福島や県農政連、県町村会など集票力のある組織・団体から推薦を受け、県内全域で着実に得票した。
 内堀氏は「原子力災害の避難地域と津波被災地域の復興再生に全力で取り組む」と語った。
福島県知事選 内堀氏が初当選

全候補が県内原発計10基の全基廃炉を主張したことを、政府はしっかりと受け止めるべきだろう。
しかしロイターは次のように報じている。

安倍政権は、知事選で原発再稼働が否定されなかったとして、再稼働に向けた手続きを進める構えだ。
福島知事に内堀氏初当選

どう解釈すれば、「原発再稼働が否定されなかった」ことになるのだろうか。
確かに、明確に県外の原発再稼働反対の立場を打ち出していたのは、元宮古市長の熊坂義裕氏である。
熊坂氏が及ばなかったのは、国政では激しく角突き合わす自民、民主両党が相乗りしたためである。
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自民党本部 内堀氏支援へ 福島県知事選

相乗り候補に勝つのは容易ではない。

 初当選した内堀雅雄氏(50)は、民主党参院議員から転じた佐藤雄平現知事の下、副知事を務めた。三選立候補を見送った佐藤氏から事実上、後継の候補に指名され、民主、社民両党がまず支援を決め、自民党が相乗りした。
 自民党は、県連が擁立決定した候補を、安倍晋三首相率いる首相官邸と党本部が引きずり降ろして相乗りを決める異例さである。
 七月の滋賀県知事選では党推薦候補が敗れた。十一月の沖縄県知事選でも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」容認に転じた、自民党が推す仲井真弘多県知事の劣勢が伝えられる。
 福島で敗れれば、知事選三連敗の可能性も出てくる。消費税率再引き上げ決定や安全保障法制整備を控える政権運営や来年の統一地方選への打撃を、有力候補への相乗りで避けたかったのだろう。
福島県知事選 選択肢奪った責任重い

今回の知事選の結果から導かれる原発政策の結論は、県内の10基の全基廃炉だけである。

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2014年10月26日 (日)

消費税再増税はどうなるか/日本の針路(59)

向かうところ敵なしという感じもあったアベノミクスも、綻びが目立ってきたようである。
「第一の矢」とされる異次元金融緩和による円安も、期待した効果は目に見えず、副作用ばかりが目立つ。
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)

「第二の矢」の財政投資は、公共事業の増大が民業を圧迫している。
建設業を中心とした労働力不足が、震災復興を阻害しているようだ。

「第三の矢」の成長戦略は、実体が一向に見えない。
「女性の輝く社会」を訴求しても、内閣改造をした途端、当の女性閣僚に問題が続発だ。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)

安倍首相の価値観が問われていると考えるべきであろう。
⇒2014年10月20日 (月):女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)
⇒2014年10月21日 (火):安倍首相における女子力認識の勘違い/日本の針路(56)

安倍首相は、経済の再建が第一というが、力を入れているのは、列強国化である。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
「列強国=戦争と縁が切れない国」とすれば、戦争が経済活性化に有効だと考えているということだろう。

このような状況において、消費税を10%に増税をするのかどうか?
官邸には慎重論が生まれ、容認・推進派と綱引きをしていると言われる。

 山口氏は、野田佳彦政権が消費税率引き上げを決めた当時の民主、自民、公明3党合意の当事者だ。先月12日には、野田氏と自民党総裁だった谷垣禎一幹事長の3人で「同窓会」を開いた。
 谷垣氏も、「同窓会」を境に、「上げるリスク」よりも「上げないリスク」の方が大きいことを訴え、予定通りの引き上げに軸足を置くようになった。このほか野田毅税制調査会長ら、自民党は引き上げ容認の声が目立っていた。
 これに対し、首相は国会論戦で「経済再生と財政再建の両立を図る観点から政策を進める」と述べ、引き上げ判断の是非については慎重に行う姿勢を繰り返してきた。とはいえ、官邸内は引き上げに慎重な人が多く、首相の経済ブレーンの本田悦朗内閣官房参与は「再増税はリスクが高い」と主張する。
 与党内の引き上げ圧力が増せば、首相は判断を縛られることになる。このため、首相や甘利明経済再生担当相らは「現時点では全くニュートラルだ」と強調、引き上げ圧力の沈静化に躍起になっていた。
 ただ、自民党からも、引き上げに「待った」をかける声が出始めた。
 1日、首相の経済政策「アベノミクス」の仕掛け人といわれる山本幸三衆院議員を中心とする増税に慎重な議員が勉強会を開いた。勉強会には山本氏が所属する岸田派の若手約10人が参加し、本田氏が講師に招かれた。山本氏は勉強会で「再増税は厳しい。景気の腰折れを招くのは必至だ」と述べ、10%への引き上げは1年半先送りすべきだと主張した。
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景気腰折れ、容認論に「待った」 与党内、変わる潮目 消費再増税、慎重論じわり

財政再建も日々の生活も重要であり、当然人により考え方はさまざまである。
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東京新聞10月23日

私は、再増税するか否かよりも、8%に上げて生み出されたはずの財源がどうなったかを検証するのが先だと思う。

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2014年10月25日 (土)

沼津と造船学の奇しき縁/知的生産の方法(107)

沼津兵学校は、大政奉還直後の徳川に残された拠点・静岡藩に設置された教育機関である。
当時のわが国の最高レベルの教授陣が揃えられたと言って良いだろう。
何しろ校長(頭取)が西周である。
⇒2014年9月19日 (金):もし「沼津兵学校」が現存していれば・・・/知的生産の方法(103)

教授陣一覧表に、赤松大三郎という名前が見える。
造船学の黎明期の立役者・赤松則良の通称である。
赤松について、沼津兵学校教授というサイトから引用しよう。

赤松 則良 あかまつのりよし(一等教授方)
天保11年幕臣吉沢政範の子に生まれた。旧名大三郎。幼少時より坪井信道・信良らに蘭学を学び、安政4年には蕃書調所句読教授方出役に任命され、また第3期生として長崎海軍伝習所で学んだ。その後築地の軍艦操練所の教授をつとめ、万延元年には成臨丸の乗員に選ばれ、測量方兼運用方として太平洋を横断した。文久2年には幕府のオランダ留学生として、榎本武揚・津田真道・西周・林紀らとともに渡欧し、海軍関係の技術、特に造船学を勉強した。明治元年5月に帰国、榎本武揚の脱走軍に参加しようとしたが、榎本に説得され、遠江国見付(現磐田市)に移住した。沼津兵学校の設立に際して一等教授方に招かれ、「徳川家兵学校附属小学校掟書」を起草したり、得意の洋算を教授したほか、附属小学校の校舎を設計するなど、才能を発揮した。しかし、明治3年春には政府の命令により上京、兵部省に出仕した。以後、海軍兵学寮大教授・兵部少丞・兵部大丞・海軍大丞・主船寮長官・横須賀造船所所長・海軍省副官・主船局長・機関本部長・海軍造船会議議長・兵器会議議長・左世保鎮守府司令官・横須賀鎮守府司令官などを歴任し、男爵・海軍中将となり、貴族院議員もつとめた。晩年は見付に隠棲し、大正9年に亡くなった。

磐田市に旧邸を保存した記念館がある。
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赤松は造船学の学会である造船協会の初代会長である。
現在の造船学会は、公益社団法人・日本船舶海洋工学会というが、学界のサイトには、以下のような沿革が示されている。
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上記の年表に見るように、1898(明治30)年に設立された歴史ある学会である。
2010年に、日本船舶海洋工学会として統合される以前は、日本造船学会(←造船協会)、関西造船協会(←造船協会阪神倶楽部)、西部造船会(←九州造船会)の3学・協会が併存していた。
日本造船学会が東京大学、関西造船協会が大阪大学、西部造船会が九州大学が拠点であることは容易に理解できる。

同サイトに、歴代会長という資料が載っている。
造船協会の初代会長を務めたのが赤松則良で、任期は明治30年9月~大正7年4月の長期にわたっている。
そして、日本船舶海洋工学会となって初代の会長は、内藤林で、平成17年4月~平成19年5月の期間を務めている。
内藤は、平成16年1月~平成17年3月の間関西造船協会の会長を務めた。
最後の同協会会長とも言える。

内藤林君は、私の高校時代以来の畏友である。
「夏草冬涛」の友の1人である。
⇒2007年11月 5日 (月):私の『夏草冬涛』
当の内藤君を沼津市にある「明治史料館」に案内したことがあったが、赤松が沼津兵学校に関係していたのを知って内藤君自身が驚いていたのを思い出す。

内藤君は、第6回海洋立国推進功労者表彰(平成25年度)において、<科学技術>分野において内閣総理大臣賞を受賞した。
研究業績は、以下のように紹介されている。

船舶の実海域推進性能の先駆的研究
実海域での波浪中抵抗を効果的に低減させるためには水面近傍の船首船型が重であることを世界に先駆けて理論的、実験的に明らかにし、波浪中抵抗を低減する船型開発により船舶の省エネルギー化に貢献した。また、実海域推進性能の計算システムの構築や複雑な波を精度よく長時間にわたり再現できる造波水槽の開発により船の性能推定の研究に貢献した。
第6回海洋立国推進功労者表彰について

私は、造船学会の初代会長と新装成った造船学会の初代会長が、共に沼津に深い係わりを持っていることを知って感慨を禁じ得ない。

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2014年10月24日 (金)

「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)

妊娠した女性が勤務先で受けた降格処分が、男女雇用機会均等法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁が23日、「本人の承諾がないような降格は原則として均等法に違反する」との初判断を示した。
女性側敗訴とした広島高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻したが、女性側が逆転勝訴する公算が大きいと見られる。
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安倍首相は「女性が輝く社会」を掲げているが、実際に行っていることは「女性が輝く社会」を阻害するようなことばかりである。
「女性が輝く社会」であることの要件は、第一に平和であることだろう。
古賀茂明氏は、『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』角川oneテーマ21(2014年9月)で、安倍首相の本願を日本を米国に次ぐ世界の列強国(帝国主義国)と変えようしたいのだとしている。
そして、「列強国になるとは「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない国」、「戦争なしには生きられない国」になってしまうことだ。」と批判している。
⇒2014年10月19日 (日):小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)
戦争をしていては女性は輝けない。

第二は、女性であるが故の「妊娠・出産」の負担をできるだけ社会で共有することだろう。
未だに政治の場での女性蔑視のようなセクハラ野次等がニュースになる国である。
⇒2014年6月20日 (金):品位を欠く政治家にレッドカードを!/花づな列島復興のためのメモ(332)
⇒2014年6月26日 (木):「失言」体質と自民党の病理/花づな列島復興のためのメモ(334)
そしてその多くが自民党議員であることを考えれば、まず「隗より始めよ」ではなかろうか。

このような発言が出てくる土壌として、「女性は家庭で子育てをするのが本来の役目」とする価値意識があるのは容易に見て取れる。
そして、安倍首相が内閣改造で登用した女性閣僚もこうした価値観を持っているようである。
まずは有村治子・女性活躍・行政改革等担当相。

実は有村氏は、男女共同参画などに反対する保守系政治団体「日本会議」の議員懇談会のメンバーだ。2010年には日本会議が主催した「夫婦別姓に反対する国民大会」に拉致担当相になった山谷えり子氏とともに参加していた。
「女性活躍担当相」有村氏はどんな人? 「夫婦別姓」に反対の立場、中絶にも慎重

女性活躍担当相が、男女共同参画に反対の立場というのは理解に苦しむが、「ほとばしるような感慨」で「靖國・平和・民主主義」を讃えるという安倍親衛隊であるが故の抜擢であろう。
次いで、高市早苗総務相。

 自民が駄目なら非自民。非自民の限界が見えたらまた自民。権力を嗅ぎわける力は天下一品だ。その嗅覚で安倍氏へとたどり着いた。自分の鼻が頼りなだけに、スタンドプレーも目立つ。村山富市政権で植民地支配と侵略を認め謝罪した、いわゆる村山談話を「しっくりこない」と批判。政府の方針に反したもので、他の幹部から注意された。またTPP交渉参加を巡る党内議論が始まったばかりの今年2月、「政府の専権事項」と口走り反発を呼んだ。
しかし、実は安倍総理が、本音では村山談話に批判的。TPPの判断も一任を取りつけたかった。高市発言はその心中を察した「露払い」といえる。原発問題でも露払いのつもりか「福島第一原発事故で死者は出ていない」と発言し再稼働を主張した。失言と批判され、直後に撤回、謝罪した。
ある政調幹部議員曰く「高市は安倍のポチ。幹部の器ではないが、今は支えるしかない」。政権に返り咲いたばかりの自民党にとって内紛はご法度だそうだ。高市氏の嗅覚、おまけに自民党の「大人の結束」。野党各党もこの2つには学ぶところがあるのでは。
http://president.jp/articles/-/10675

さらに、山谷えり子拉致問題担当相兼国家公安委員長。

 いずれにしても、国家公安委員長が特定のレイシスト団体に明らかにシンパシーをもち、同一の差別思想を会見で口にしたのだ。普通なら、確実に閣僚辞任に発展する話だろう。
 ちなみに、山谷えり子については、保守派の小林よしのりもブログで警鐘を鳴らしている。
「山谷えり子は在特会だけではなくて、統一協会とも繋がりがあるらしい。」
「しかし、朝鮮人差別の「在特会」と、朝鮮人・文鮮明教祖の「統一協会」の二股をかけている山谷えり子とは、一体何者だ?」
「この山谷を「国家公安委員長」に任命した安倍晋三は、一体何を考えているのか? まったく恐ろしい! 日本はカルトに支配されつつあるのではないか?」
小林よしのりも「カルト」と批判! 山谷えり子をなぜ放置するのか

改造安倍内閣の5人の女性閣僚のうち、辞職した2人以外の3人が以上の人である。
この3人は、18日の秋季例大祭に、靖国神社を参拝したことでも共通性がある。
女性が輝くと言いながら、自分の価値観に近い親衛隊を大臣にしたというだけのことだった。

雨宮処凛さんは、次のように批判している。
「育児に非協力的で、出世のために長時間労働をいとわず、酒の付き合いを大事にする人」すなわち「おっさん」と類似の価値観をもっているが故に、日本型おっさん社会で仲間入りを認められた女性すなわち「名誉おっさん」を増やしても、女性の活躍とは言えない。
私には、上記の3閣僚が「名誉おっさん」にしか見えないのだが。

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2014年10月23日 (木)

再度、片山さつき氏の資質を疑う/日本の針路(57)

片山さつき参院外交防衛委員長の資質を問うたばかりである。
⇒2014年10月20日 (月):女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)
案の定、21日の委員会の質疑中、政府側の答弁要領を持ち込んでいたという失態を起こし、審議が中断したという事態が起きた。
この人は国会議員の資質として問題があるのではなかろうか。

 片山さつき参院外交防衛委員会委員長が政府の答弁メモをみながら委員会の運営を図っていたことに民主党の福山哲郎政調会長は「前代未聞」と強く批判した。
 福山政調会長は「私も外交防衛委員長の経験もあるが、政府側の答弁書を立法府であり、公正中立であるべき委員長がこのような運営をするというのは前代未聞」と片山委員長を批判。
 福山政調会長は「経緯やどのような理由でこのような行為を行ったのかを含め、(各党の)国対委員長間できちんと話し合って頂かなければいけない」と述べ「政策を担当する政調としても、政策議論をすべき国会で立法府と行政府がこのような状況でけじめがつかないようなやり方で運営されていることに対して強く抗議したい」と抗議の姿勢をみせた。
片山さつき氏、政府答弁書脇に委員会運営は前代未聞=民主・福山氏

自民党も愛想を尽かし始めているようである。

女性閣僚辞任直後の新たなミスに、参院自民党幹部も「あり得ない」と怒り心頭だ。
・・・・・・
 片山氏は9月、御嶽山噴火をめぐる事実誤認で謝罪したばかり。党内には「レッドカードだ」と片山氏の交代論が飛び交っている。
片山さつき氏、また失態… 政府側の答弁要領持ち込み 自民幹部も怒り心頭

元財務相主計官というエリートにしてはお粗末過ぎはしないか?
学力はあったのかも知れないが、コモンセンスに欠けているように見える。
日本語のコモンセンスにはさまざまなニュアンスが含まれている。

明治維新の後、さまざまな文化が欧米から輸入され、政治/行政のシステムや思想などの文献も日本語に訳されていった。その際“コモンセンス(Common Sense)”を「常識」と訳してしまったことが、日本人のモラルを誤った方向へ導いていったともいわれています。
“コモンセンス”は、他人への配慮を前提とした公共の場所での秩序維持の感覚であり、主に親のしつけによって身についていくものである。いわばモラルの土台となる感性が“コモンセンス”としてよいだろう。厳しい親のしつけや日常生活における訓練によって身につく感覚であるはずの“コモンセンス”を、「誰もが知っていて当然のこと」と誤った解釈をし、モラルの土台をすっぽりと失ったままで、社会が発展した結果が、現在の日本なのである。
コモンセンス

通常使う「常識」の意味でも、「他人への配慮を前提とした公共の場所での秩序維持の感覚」の意味でも、である。
御嶽山噴火に際してのガセ・ツイート以外にも、過去の問題発言が蒸し返されている。

片山氏は13年5月にも、台湾人女性の話として『台湾と中国の人の最大の差は価値観。お金のため人殺しというのは台湾にはない』とツイッターに投稿し、差別発言だと批判を受けた。根拠不明の話を軽々しく言うのは議員に必要な調査能力がないからですよ
片山さつき議員は噴火を政局に利用? 過去の問題発言に再点火

口先だけで謝罪してその場をやり過ごせばOKという考えが、問題なのに気がつかない悲劇である。
こんなレベルの低い国会の定数削減が進まないことに怒ろうではないか。

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2014年10月22日 (水)

知的生産のスキルとセンス/知的生産の方法(106)

梅棹忠夫さんが亡くなったのは、2010年7月だからもう4年余の時間が過ぎたことになる。
しかし、未だに梅棹さんの業績をタネにした書籍が後を絶たない、
堀正岳、まともとあつし『知的生産の技術とセンス 知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術』マイナビ新書(2014年9月)は、梅棹さんの『知的生産の技術』岩波新書(1969年7月)のアップデートを目指したものである。

1969年といえば、私が社会人になった年である。
当時と現在とでは、情報環境はまさに隔世の感がある。
現在のノートパソコンよりずっと厚みのある電子式卓上計算機(電卓)を、会社の課で1台購入したという時代である。
それまで実験データの解析はタイガー式と呼んでいた手回しの機械式計算機でやっていたから、格段の違いであった。

「1年半で2倍」と呼ばれる「ムーアの法則」という経験則がある。
表現にはバリエーションがあるようであり、元は集積回路の素子の集積度に関するものであるが、先端技術全般の発展法則を示すものとされる。
1969年は45年前だから、仮にムーアの法則を適用してみれば、2の30乗=約10億倍ということになる。
数字はともかく、知的生産の環境が大きく変わったのは間違いない。

私は特に「センス」の語をタイトルに入れたのが気になった。
というのは楠木建『経営センスの論理』新潮新書(2013年4月)を読んで、スキル・技術とセンスの異同について興味を覚えたからである。
楠木氏は、昨今のビジネスパーソンは「すぐによく効く新しいスキル」を求めがちであるが、スキルだけでは経営はできない、という。

 戦略を創るというのは、スキルだけではどうにもならない仕事だ。
 すぐれた戦略をつくるために一義的に必要なのは何か。それは「センス」としか言いようがない。

スキルとセンスはどう違うか?
アナリシス(分析)とシンセシス(綜合)の区別だと楠木氏は言う。
戦略の本質はシンセシスにあり、スキルをいくら鍛えても優れた経営者にはなれない。
まったく同感であるが、それではセンスを習得する方法はあるのか?

梅棹さんの『知的生産の技術』の時代と現在の違いは、端的にはアナログとデジタルの違いである。
しかし、知的生産の本質に変化はない。
知的生産の技術とセンス 知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術』の著者らは、センスを次のような「3極モデル」で考える。
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要は、インプットとアウトプットの差異をもたらすものであるが、「Secret Sauce」では手の打ちようがない。
著者らは、世間に対して自分の成果を問い,それに対する評価を受けるというサイクルの繰り返しで「個人のセンス」が見えてくるというが、それでは何も言っていないようなものではないか、と思う。


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2014年10月21日 (火)

安倍首相における女子力認識の勘違い/日本の針路(56)

内閣改造の目玉であるはずの女性閣僚が同日に辞任するというW辞任をどう考えるか?
安倍首相は自ら選任した2人の閣僚を慰留しないという選択をした。

 20日午前8時20分、首相はまず首相官邸で小渕氏と面会。小渕氏が「安倍内閣に貢献できず、申し訳ありませんでした」と頭を下げつつ提出した辞表を、首相は慰留することなく受け取った。
 それから約5時間後、官邸に姿を見せた松島氏が「せっかく抜擢(ばってき)していただいたのに、申し訳ない。辞職したい」と申し出ると、首相は「心機一転、これからもいろんな場面で能力を発揮してほしい」と語り、淡々と辞表を受理した。
 その後、首相は記者団の前に立ち、「2人の意思を尊重して辞表を受理した。政治において、行政において、難問が山積している。政治の遅滞は許されない」と述べ、早期決着させたことを強調した。
 表向き、2人とも自らの意思で辞任した形だが、とりわけ松島氏については早期の幕引きを図った首相の意向が大きく影響した。
ダブル辞任、収拾を優先 安倍首相、慎重論振り切る

「政治において、行政において、難問が山積している。政治の遅滞は許されない」という首相の言葉はその通りである。
しかし、自らの任命責任をどこまで深く考えているのだろうか?

今年は何かと「女子力」が話題になる年である。
理化学研究所のSTAP細胞問題でも、科学論争のはずが小保方晴子という一研究者が「若い女性」であることがクローズアップされた。

 小保方さんの「STAP細胞発見」が報じられると同時に、割烹着やおよそ研究室らしくないピンクや黄色い壁紙の研究室など「リケジョ」というワードや「女子力」をイメージさせるアイテムにマスコミは注目しました。実際、彼女が「可愛らしいアイテム」を好んでいたことは事実なのでしょう。しかしながら、そうした特徴を「アピール」として受け取るのは、あくまで受け取り側の問題であることも考えなくてはいけません。
「女子力」の卑俗な捉え方が浮き彫りになった小保方問題

私には、5人の過去最多の女性閣僚を登用した安倍首相の「女子力」についての認識が問われるところだと思う。
「女性の活躍」は必要であるし、望ましいことでもある。
しかし、実際の中身はどうなのか?

本日の「朝日川柳」に、「親分の代わりに子分が参拝し」と並んで、「この際は皆で辞めるか五人組」とある。本日辞任の二人だけでなく、「親分の代わりに参拝した」三人の子分の地位も危うい。辞任ドミノ、大いにあり得ることではないか。
本日発売の「週刊ポスト」の広告が各紙を麗々しく飾っている。
巻頭特集のメインタイトルが大活字で、「女を食い物にした安倍内閣が 女性閣僚トラブルで万事休す」。サブタイトルの方が内容あってなかなかのもの。「『女性活躍社会』の正体は主婦増税と『ブラックパート』量産だ」「小渕優子、松島みどり、山谷えり子は『秒読み』段階-まじめに働く女性たちの怒り爆発」。保守的傾向強い小学館の辛辣な政権批判である。
女性閣僚二人の辞任に安倍政権崩壊の予感

どうやら「崩壊の予感」を覚えるのは私だけではないらしい。
⇒2014年10月17日 (金):安倍政権高支持率の潮目は変わるのか?/日本の針路(53)
⇒2014年10月19日 (日):小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)
第1次政権を投げ出すきっかけとなった潰瘍性大腸炎を不安視する声もある。

 「週刊ポスト」の2週に渡る記事をまとめると、2009年に認可されたアサコールという薬が画期的に効いて潰瘍性大腸炎がよくなったと言っていた安倍総理ですが、アサコールだけでは大腸炎の症状が納まらず、副作用のリスクのある薬も併用せざるを得なくなっているのではないか、と推測。特に安倍総理は体調悪化が歯に来ることが多いようで、連日の歯医者通いから「週刊ポスト」は潰瘍性大腸炎の悪化を推測しています。
安倍内閣改造の予想と安倍総理の健康問題

安倍首相の体調はともかくとして、首相を含む自民党という政党のジェンダーに対する認識が問われるところである。
「女性閣僚」で浮上を狙うという発想が如何なものか。
ことさらに「女子」を表に出すのではなく、能力で選んだ適材が女性であったという時代を築くべきであろう。

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2014年10月20日 (月)

女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)

安倍内閣の2人の閣僚が辞任した。
首相が改造の目玉とした女性閣僚5人のうちの2人が揃って「カネ」の問題で失脚するという異常事態である。
政府与党は早急に収束を図るだろうが、体質そのものであるから一朝一夕に改善されることはあり得ないだろう。

 小渕優子経済産業相(40)=衆院群馬5区=は20日午前、安倍晋三首相と首相官邸で会い、自身の関連政治団体による不明朗な会計問題の責任を取り、辞表を提出した。首相は受理し、経産相の臨時代理に高市早苗総務相を充てた。また、選挙区内で「うちわ」を配布していた松島みどり法相(58)=東京14区=も同日午後、首相に辞表を提出した。首相は受理し、法相の臨時代理に山谷えり子国家公安委員長を指名した。2012年12月に発足した第2次安倍政権で閣僚が辞任するのは初めてで、閣僚2人が同時に辞任するのは極めて異例。首相は女性活躍推進の象徴として内閣改造で女性閣僚5人を起用しただけに、政権に大きな打撃となるのは必至だ。
安倍内閣:小渕・松島氏、閣僚辞任 「カネ」「うちわ」政権に打撃

2人の辞任は当然だろうが、これは氷山の一角であろう。
閣僚ではないが、片山さつき参院外交防衛委員長も問題含みである。
片山氏は国会議員になる前は、TVの討論番組などにも結構露出していた。
略歴をWikipediaより抜粋すれば以下のようである。

1982年:東京大学法学部卒業、大蔵省入省
2004年:女性で初めて主計局主計官に就任、主に防衛関連の予算を担当
2005年:いわゆる郵政総選挙で静岡7区から自由民主党公認で出馬、初当選
2009年:第45回衆議院議員総選挙で自民党公認で静岡7区から出馬したが、城内実し敗れる
2010年:第22回参議院議員通常選挙に自民党公認で比例区から出馬し、当選
2012年:第2次安倍内閣の総務大臣政務官に就任

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問題はさつきにみどりに山谷/臨時国会に“女難”の相あり

華麗なる経歴と言っていいだろう。
主計局主計官といえば、キャリア公務員の花形コースである。
いわゆる学力という意味では、良い成績を収めてきたであろうことは疑いない。
しかし、私はこの人の言動を垣間見るに、賢い人だとは思えない。
先日、御嶽山の噴火をめぐって、片山氏のツイートが話題になった。1_3

要は、民主党の事業仕分けによって、「常時監視の対象から御嶽山ははずれ」予知できなかったという趣旨である。
「某町村長」という言い方が責任ある立場でのこととは言えないと思うが、それは措いても、「22年の事業仕分けでばっさり切られ」というのは「虚報」である。
その後、民主党から抗議を受け撤回・削除せざるを得なくなった。

自民党の片山さつき参院外交防衛委員長がツイッターに民主党政権下で御嶽山の監視体制が縮小したとの趣旨の投稿をし、民主党が抗議した問題で、片山氏は1日、事実誤認があったとして削除し、民主党に謝罪する新たな投稿を載せた。
   投稿は「事実誤認に基づく発信でした。削除するとともに深くおわびします」としている。自民党も民主党に対し、片山氏の謝罪を直接伝えた。
   片山氏は9月28日に長野県の自治体首長の話として「民主党政権の事業仕分けで常時監視の対象から御嶽山がはずれた」などと書き込んだ。自民党参院執行部は1日、国会内で片山氏から事情を聴き、厳重注意した。
自民片山氏、御嶽山投稿で謝罪 「事実誤認」と削除

ただ、片山さつき氏のツイートは確信犯であるという見方もある。

民主党等の野党勢力に対してネット上ではデマ情報が、あたかも事実みたいに広げられています。自民党はまとめブログを複数傘下に収めていると見られ、それがこのような情報をドンドン広げているのです。後から嘘だと分かったとしても、情報を広げたもん勝ち状態になっています。
これはインターネットの拡散性を利用した巧妙な情報操作で、皆さんもネット上の情報を見るときには騙されないように注意が必要です。
御嶽山の事業仕分けバッシング、嘘だと発覚して片山さつき議員が弁明!「私が言ったわけではない」

普通の神経の持ち主ならば恥ずかしさにいたたまれないだろうが、ツイッターのようなメディアでは「言った者勝ち」という性格があるのは事実である。
虚報によって人心を動かそうというのは、典型的なデマゴーグの陰謀家の手口というべきであろう。
デマゴーグについて、三省堂 大辞林は以下のように説明している。

扇動政治家。普通,非難の意味を込めて使われる。

口先だけで「女性が輝く社会」と言ってもなあ、いう感じではなかろうか。

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2014年10月19日 (日)

小渕辞任は安倍腹痛のトリガーになるか?/日本の針路(54)

小渕経産相の後援会の資金管理のずさんさが明らかにされつつある。
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)
もちろん小渕氏自身の直接的な関与はないだろう。
小渕氏は後援会の代表者でもない。
しかし、自民党内にも、大臣辞任は不可避との見方が生まれているという。

地方議員の政務活動費が話題になっている折ではあるが、地方(痴呆)議員だけではない実態があるということだ。
私の周辺には、昔は当たり前だったと自慢げに話をする人もいる。
500円か1,000円程度の会費を払って、東京へバスで出かけて弁当を出しても立ってイベント等に参加する。
しかし、未だにこんなことが行われているとは正直驚きである。
素直に書いているのでは、という声もあるようだが、不記載の事例もあるようだから、弁護の余地はない。

小渕氏だけではない。
うちわを配った松島法相は告発されている。
現職の法相が告発されていることをどう考えるか。

改造内閣の中で、渦中にある小渕、松島氏を除く3閣僚が靖国神社へ参拝した。

 高市早苗総務相、山谷えり子国家公安委員長、有村治子女性活躍担当相の三閣僚は十八日、秋季例大祭に合わせて東京・九段北の靖国神社を参拝した。十七~二十日の例大祭期間中に第二次安倍改造内閣の閣僚が参拝したのは初。中国外務省は北京の日本大使館に抗議した。岸田文雄外相ら主要閣僚は参拝を見送る。
 中韓両国は、東京裁判のA級戦犯が合祀(ごうし)されているなどとして靖国神社への閣僚参拝に反対。安倍晋三首相が十七日、秋季例大祭に合わせ「真榊(まさかき)」と呼ばれる供物を奉納したことにも反発している。
 高市氏は参拝後、記者団に「国策に殉じ、国の存立を守ってくださった方に感謝と哀悼の誠をささげた。(中韓との)外交関係になるような性質のものではない」と述べた。山谷氏も「尊い命をささげたみ霊に感謝の誠をささげた」と語った。有村氏は「国民の一人として参拝させてもらった。他国に『参拝せよ』とか『参拝するな』と言われる話ではない」と述べた。
 閣僚の靖国参拝をめぐり、公明党は日中首脳会談実現に向けた機運に「水を差すのは避けるべきだ」(山口那津男代表)と自制を求めていた。
女性3閣僚 靖国を参拝 中国外務省が抗議

靖国神社をめぐる問題はデリケートである。
3人とも、私的なことであり、外国から云々されることではないと言っている。
私人として靖国参拝をすることについては別に問題はない。
しかし、閣僚は完全な私人ではないだろう。
⇒2013年8月16日 (金):靖国に祀られざる者の鎮魂

公明党は、神道に対する立場も違うだろうから、当然反対するであろうが、連立与党の反対を押し切ってまで強行すべきかどうか?
「尊い命をささげたみ霊」とはいうが、靖国神社の本質は、慰霊というよりも戦死者の顕彰にあると考えるべきだろう。
⇒2013年12月27日 (金):慰霊と顕彰/「同じ」と「違う」(66)

古賀茂明氏は『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』角川oneテーマ21(2014年9月)で、安倍政権の暴走ぶりを批判し、安倍首相の本願を日本を米国に次ぐ世界の列強国(帝国主義国)と変えようしたいのだとしている。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)

列強国になるとは「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない国」、「戦争なしには生きられない国」になってしまうことだ。

たしかに、特定秘密保護法、集団的自衛権、日米防衛ガイドラインという一連の流れは、日本を列強国の立場にすることであろうし、そうなれば戦争とは縁が切れなくなるだろう。
⇒2014年9月30日 (火) :『新・戦争のつくりかた』を読む/日本の針路(46)

閣僚が戦死者を顕彰する靖国に参拝する行為は、こういう文脈の中で捉えるべきであろう。
何となく、安倍首相の体調が気になるような雰囲気である。
⇒2007年9月13日 (木):安倍辞任をめぐって

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2014年10月18日 (土)

特許法改正の効果と影響/知的生産の方法(105)

今年のノーベル物理学賞は、名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授、米カリフォルニア大学の中村修二教授に贈られることになった。
青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザーに関する業績に対してであるが、日亜化学と中村修二氏の特許報奨訴訟のことが改めて話題になっている。
⇒2014年10月 7日 (火):青色LEDでの三教授のノーベル賞受賞を寿ぐ/知的生産の方法(104)

訴訟の経緯を、「日経ビジネスオンライン」の『ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか』で辿ってみよう。

 中村氏は1979年に徳島大学大学院工学研究科を修了し、日亜化学に入社。1990年に「ツーフロー方式」と呼ぶ、窒化ガリウム結晶成長技術の特許(404特許)を出願した。これが、高輝度の青色LEDの道を開いたとされる。そして1993年に日亜化学が青色LEDの製品を発表し、同社の業績は右肩上がりで急成長していった。 99年12月に日亜化学を退社した中村氏は、翌2000年2月に米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授に就任した。そして2000年12月、米国において日亜化学が中村氏を企業秘密漏洩で提訴。これに対し、2001年8月に中村氏が日亜化学を東京地裁に提訴した。これが4年に及ぶ青色LED訴訟のきっかけだった。
・・・・・・
最終的に中村氏は和解を受け入れ、法廷闘争は終結した。しかし、本人は決して納得していなかった。発明対価の算出方法が、地裁と高裁で大きく異なっていたのが最大の理由だ。
 6億円という数字に根拠なんて全然ありません。これまで発明対価は「超過利益」が判例の基準になってきました。日本の電機メーカーの場合、売り上げに対する利益率は良くて5%ぐらいでしょう。これが「普通の利益」になります。超過利益というのは(発明が売り上げに貢献した年の)総利益から、普通の利益を引いたものです。その超過利益と発明者の貢献度を掛け合わせることで、対価は決まります。
 私のケースだと、日亜化学では売り上げに対する利益率が60%。だから「60%-5%=55%」が超過利益になります。地裁では超過利益を1200億円と算出し、私の貢献度を50%と認定した。それで、600億円という発明対価になったんです。
・・・・・・
 本当に悲しいことですが、裁判所が保守的である限り日本は何も変わらない。技術者が全員海外に出ていって、日本がおかしくなるまでは真剣に考えないんじゃないでしょうか。
 「こんな国では、もう仕事なんてできませんよ」。冒頭で紹介したこの言葉を残し、中村氏は米国へと帰っていった。そして今も米国を拠点に研究を続けている。

上記は中村氏にフォーカスしているので、中村氏よりの紹介になっている。
私見は、おおざっぱに言って、中村氏の受けるべき相当対価は10億円程度ということだ。
そもそも適正な対価など算定使用がないだろうと思うが、以下のように考える。
・事業化のプロセス総体のなかで、発明フェーズは1/16程度の重みであろう
・企業内技術者が職務として行った発明に対しては、どれほど大きな経済効果をもたらした発明であったとしても、その程度の金額で十分ではないか
⇒2007年12月20日 (木):職務発明対価私見 

職務発明の特許権が、「社員のもの」から「会社のもの」になるように特許法が改正されるらしい。

 特許庁は17日、社員が仕事で行った発明(職務発明)の特許権について、社員への適切な報奨を義務付けることを条件に、「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは発明による特許は「社員のもの」としていた。企業に特許をより使いやすくさせる一方、社員に不利にならないように報奨を義務付けて研究開発意欲を確保し、競争力の向上を狙う。
社員発明:会社に帰属 特許庁、適切な報奨条件

Photo
発明:「社員」から「会社のもの」へ 訴訟リスク低減 特許活用、円滑化に道

しかし、発明行為は個人が行うものであって、企業が行うものではないだろう。
上記の日経ビジネスOLの記事に次のような言葉がある。

 2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長は、本誌の取材に対しかつてこう語った。「中村先生は勇気を持って、当然の権利を主張したと考えています。その彼が、今は米国で教壇に立っている。日本人としては寂しいことです。すごい技術を開発した研究者に、日本の若い人たちが学び、後に続くことができたら、どれだけ素晴らしいことか」。

2人のノーベル賞受賞者は特許法改正の方向性をどう考えるであろうか?
杉晴夫氏は、『論文捏造はなぜ起きたのか?』光文社新書(2014年9月)で、「科学の進歩は天才によって新たな研究分野が開拓され、その分野に多くの研究者が集まってその分野の知見を押し広げる」という形で発展すると説明している。
企業の都合に良いことを考えると、反骨心を持った研究者の離反を招くのは、中村氏の例が示す。
特許法の改正が、かえってブレークスルーするような大発明を阻害することにならないか。

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2014年10月17日 (金)

安倍政権高支持率の潮目は変わるのか?/日本の針路(53)

高支持率を背景に、暴走してきた安倍政権だが、雲行きに陰りが見え始めた。
9月の内閣改造で、目玉として起用した女性閣僚が次々と馬脚を現しつつある。
高市総務相や山谷国家公安委員長がネオナチといわれる団体と親密な関係にある。
また有村治子・女性活躍・行政改革等担当相は、ほとばしるような感慨で靖国を讃える安倍親衛隊の1人である。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)

個人の思想・信条の問題として看過すべきではない。
副総理の麻生財務省が、「ナチの手口に倣え」と発言しているのだ。
⇒2013年8月 4日 (日):撤回では済まされない麻生副総理の言葉
彼(彼女)らは確信的であって、決して口が滑ったということではないだろう。

松島みどり法相も言動を厳しく問われている。
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)

 先の内閣改造人事で初入閣した松島みどり法相の言動が波紋を広げている。地元で「うちわ」を配ったことが公職選挙法違反ではないかと野党から追及されたことを「雑音」呼ばわりし、撤回に追い込まれた。
 法務行政のトップである法相に強い規範意識が求められることは言うまでもない。軽率な言動が続くようでは閣僚の適格性すら問われよう。
 松島法相をめぐる問題の発端は、地元で「うちわ」を配ったことが公選法違反の寄付行為にあたるのではないかと民主党の蓮舫参院議員に国会で追及されたことだ。
 うちわは盆踊りなどで配られたもので柄があり、名前やイラスト、成立した法律が記されていた。有価物ではないかと追及された松島氏は「うちわのように見えるかもしれないが価値のあるものではない」「討議資料」などと苦しい釈明をした。だが、うちわはうちわである。
 選挙管理委員会によっては、選挙区でのうちわの配布禁止を明示している。首相が「疑いをうける以上、配布しない方が望ましい」と指摘したのは当然のことだ。
 松島法相をめぐっては東京都内に住居を持ちながら特例で議員宿舎に入ったにもかかわらず、週末を自宅で過ごしたことも批判されている。そんな状況なのに法相は自らへの野党の追及を記者会見で「雑音」と表現し国会で謝罪、撤回した。おごりすら感じられる言動に与党からも「許すまじき発言だ」などの批判が出たのも無理はない。
 松島法相は法相就任後もうちわを配布していたという。法相は死刑執行の命令という極めて厳粛な任務にあたる。さらに松島氏は特定秘密保護法も担当しているだけに「ルール」への感覚が疑問視されることは重大だ。一連の追及を「揚げ足取り」と片付けるわけにはいくまい。
社説:松島法相の言動 政権にゆるみはないか

民主党の階猛衆院議員が、松島みどり法相を公選法違反の疑いで松島氏に対する告発状を東京地検に提出した。
法相が告発されたのではサマにならない。

そして、小渕経産相である。Ws000001
東京新聞10月17日

好感度が高いと思われた小渕氏にして、である。
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)
野党がしっかりしていれば小渕氏の大臣辞職は避けられないだろうが、雪崩の引き金になる可能性もあるから、政府としても必死であろう。

目先の景気には安倍首相の強調するような好況感はない。
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
消費税を再増税するかどうかの判断は12月といわれる。

これまでは引き上げ容認の発言が目立ち、官邸サイドは首相の判断が縛られないよう「ニュートラル」になるよう腐心していた。ここに来て「1年半の延期」を訴える議員も登場、来年の統一地方選やその後の国政選挙を控え、引き上げ慎重の発言も増すとみられる。
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景気腰折れ、容認論に「待った」 与党内、変わる潮目 消費再増税、慎重論じわり

株式市場も荒れ模様である。
141017

日経平均の今日の引け値14,532円は、9月25日の16,374円から1,800円余、11%強の下落である。
アベノミクスによる円安によって、さまざまなマイナスの影響が出始めている。

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 卵、チーズ、砂糖の価格上昇で倒産――。東京商工リサーチによると、10月3日までに栃木県日光市の洋菓子メーカー「アサバ」が事業停止に追い込まれた。同県内ではオリジナルのチーズケーキが人気を集め、今年3月期には過去最高となる6億円弱の売上高を計上した。
 ところが、電気やガスの光熱費上昇に加え、反転した円安の環境下で輸入する原材料価格が急騰。赤字が一気に膨らみ、資金繰りが逼迫して事業継続を断念した。
 今秋から、中小企業のこうした「円安倒産」が急増している。
安倍政権が憂える「円安マグマ」

円安は生活者、特に個人消費に占めるガソリン価格の負担が重い地方に影響が大きい。
「地方創生」と「女性の輝く社会」という目玉政策が、まったく逆方向をむいているのだ。
これで株価低落となれば、一挙に潮目が変わる可能性がある。

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2014年10月16日 (木)

続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)

「女性が輝く社会」を政策目標として高く掲げている安倍内閣ではあるが、足元の国会では“女難”の相が表れているといわれる。
史上最多の5人の閣僚が誕生したが、どうもいただけないメンバーが揃ったようだ。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)

なかで小渕優子経産相は安全運転に徹しているかと見られた。

「就任から1カ月は利害関係者とは面会しない」方針を打ち出し、記者会見でも応答要領に目を通しながらの棒読み答弁を連発。NHKの「日曜討論」に出演した際は、録画を条件とし、「生放送での失言を恐れたのでは。面白味はないが、怪我もしない」(経産省関係者)というのが衆目の一致するところだ。
問題はさつきにみどりに山谷/臨時国会に“女難”の相あり

ところが、その小渕優子経済産業相に政治資金規正法に係る疑惑が指摘されている。
「小渕優子! お前もか」といった感じである。
「週刊新潮」10月23日号が、次のような形で報じている。
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 これでは、選挙区で団扇を配った松島みどり法相など霞んでしまいかねない。“初の女性宰相"にも擬せられ、鳴り物入りで改造内閣に加わった小渕優子経産相(40)。が、その政治資金の実態は、ひな壇から一気に地底へと堕ちかねないほどのデタラメを孕んでいたのだ。
小渕優子経産相のデタラメすぎる「政治資金」

具体的な内容は今後明らかにされて生きであろうが、以下のような内容が報じられている。

 毎日新聞が情報公開請求で入手した小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」の領収書や政治資金収支報告書などによると、同団体は09年、本来は事務所の維持に充てる「事務所費」として、ベビートドラー(乳幼児向け用品)3点と化粧品、ストールの計約4万5000円を支出していた。
 また、政治活動に充てる「組織活動費」として、著名デザイナーズブランドへの支払い計3件119万円余▽下仁田ネギの送料や品代計4件261万円余−−などを計上。銀座の百貨店の「子供・玩具売り場」への支出計5件15万円余(うち1件1万円余は事務所費に計上)のうち4万1580円は、11年12月24日のクリスマスイブに支払われていた。
 組織活動費の支出先はほかにも、女性用肌着売り場や婦人靴・バッグ売り場、紳士服売り場など多岐にわたる。さらに、銀座の百貨店や同店「お得意様営業課」に支払った計14件429万円余と、銀座の高級装飾品店への計10件46万円余については、領収書のただし書きがいずれも「品代」とだけ書かれ、使途が明らかにされていない。
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小渕氏資金管理団体:不透明支出、5年間で1000万円超

小渕氏は、1998年(平成10年)、父・小渕恵三の首相就任後、TBSを退社し恵三の私設秘書を務めていたが、2000年(平成12年)4月3日に父が脳梗塞により緊急入院し、翌5月に死去した。
同年6月の第42回衆議院議員総選挙に群馬5区から自由民主党公認で出馬し、16万票超を獲得して初当選した。
当選後、かつて父が会長を務めた派閥の流れを汲む平成研究会に入会した。
2008年(平成20年)、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)として初入閣し、第2次安倍改造内閣で、経済産業大臣・内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償支援機構)に任命された。

5人の女性閣僚の中でも、将来性が最も高いと見られ、注目度も高かったが、結局は同じ穴に生息する“むじな”だったということだろう。

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2014年10月15日 (水)

大学の2018年問題/日本の針路(51)

2018年、大学入学者数が減少期に入る。
18歳人口の減少は長期的トレンドであるが、増え続けていた大学への進学率が頭打ちになると想定されるからだ。

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少子化がさらに進む!2018年問題とは?

<1992年~2011年>
18歳人口がピークの205万人から120万人へ4割減少するが、大学進学率は27%から51%へと約2倍上昇。
かつて「入難出易」と言われた大学は「入易出易」状態になった。

<2012年~2017年>
18歳人口は120万人前後で横ばいで推移するが、学生が集まる大学とそうでない大学の「二極分化」が進行。
労働市場では、採用したいのに基準を満たす学生が集まらないという就職難と採用難が同時に進行している。

<2018年~2020年>
2018年~2020年までのわずか8年間で、18歳人口は約10万人も減少する。
大学進学率を50%とすると、大学進学者が5万人減、大学は統廃合時代に入る。

募集停止を余儀なくされる大学も多い。
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財政状態の厳しい大学はどこ?

大学も本格的な競争戦略の時代に入るということだ。
一般論として言えば、以下のような戦略であるが、一般論だけでは戦略とはいえない。

・難関総合大学(リーダー)⇒学生の質の上昇、教育・研究両面におけるグローバル化へ
・上記の受け皿大学(チャレンジャー)⇒拡大か縮小か、個性化・差別化で生き残り戦略
・差別化された小規模大学(カテゴリーキラー)⇒小さくても役割が明確な個性を磨く
日本の大学どうする? ~2018年問題を見据えた大学改革

大手予備校の代ゼミが大胆なリストラに踏み切った。
⇒2014年8月26日 (火):代ゼミ7割撤退の意味/ブランド・企業論(31)
予備校と塾の連携時代だという。
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東京新聞10月13日

どこを見ても大変な時代であるが、それが常態と考えるべきだろう。

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2014年10月14日 (火)

経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)

「株価連動政権」といわれ、必死に株価を維持してきた安倍内閣であるが、肝心の株価の動向が怪しくなってきた。
日経平均株価は5日連続して下落し、1万5千円割れで引けた。
141014

時事通信は、米株続落と円高を受けて投資意欲が冷え込んだと説明しているが、どうだろうか。
街角の景気判断でも先行き不透明である。
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東京新聞10月9日

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、内閣改造後に次のように語っていた。

 それから、安倍内閣は別名「株価連動政権」とも言えます。株価を維持することによって、あたかも景気がよくなったようなイメージをつくり上げている。この政権が比較的高い支持率を維持して来られた最大の要因は、株価上昇によって景気回復への「期待感」を醸成してきたことに他なりません。
 しかし、期待感がいつまでも実感に変わらなかったら、ある時点で国民はみな、我に返るでしょう。鳴り物入りで始まったアベノミクスですが、足もとの7月を見ると、現金給与総額の平均が2.6%増えた一方で、実質賃金指数(現金給与総額に物価変動の影響を加味したもの)は13ヵ月連続で下がっています。
 4月以降は消費税の負担が3%上がり、足もとの消費者物価指数も前年同月比で3%以上上がっているため、差し引きで見ればむしろ国民生活は厳しくなっているのです。今後景気がもたついた場合は、期待感が大きな反動となり、悲壮感が増すでしょう。そうなると、頼みの綱である株価が下落してしまう。これは「株価連動政権」にとって、非常に危うい状況です。
のるかそるか、安倍“株価連動”政権/見え始めた内閣改造の思惑と未来予想図

公的資金まで動員して株価維持を図ってきたのも、株価が高い限り国民の批判をかわせると考えているからである。
⇒2014年7月12日 (土):株価対策のための公的資金投入/アベノミクスの危うさ(35)

安倍政権の経済政策に対し、フィナンシャル・タイムズ紙は次のように評している。

 安倍晋三首相の「3本の矢」は明らかに的を外している。理由はそもそも矢が3本ないことで、あるのはたった1本、通貨の下落のみだ。
 これは過去には常に有効な公式だった。円安がかつては日本の電子製品や自動車の輸出を加速させたからだ。だが今日、もはやそうした効果はない。
[FT]アベノミクス3本の矢、いまだ的中せず

アベノミクスで曲がりなりにも効果を示したのは、「第1の矢」である異次元の金融緩和である。
しかし、金融緩和の実体経済への効果は疑問視せざるを得ない。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)
⇒2014年10月 2日 (木):「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)

そもそも自国通貨(円)安を好ましいとする政策は、どこか「うさんくさい」と考えるべきであろう。
⇒2013年2月14日 (木):円安と経済成長の両立は可能か?/花づな列島復興のためのメモ(193)
⇒2013年7月 2日 (火):円安は良いことか?/アベノミクスの危うさ(9)

心ある識者は、安倍首相の暴走に対して警鐘を鳴らしている。
デフレの正体  経済は「人口の波」で動く』角川oneテーマ21(2010年6月)や『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』角川oneテーマ21(2013年9月)などで知られる藻谷浩介氏は、アベノミクス以降、日経平均株価は9割上昇したが、国内の小売販売額は1%しか伸びていない、と指摘している。
国民や中小零細企業の大多数は円安で経費が嵩むばかりで恩恵を受けていない。
藻谷氏に対して、安倍首相は「アイツだけは許さない。あの馬鹿っ! 俺にケンカ売っているのか」と攻撃したという(「フライデー」誌2014年10月24日号)。
まあ実際の発言の様子は分からないが、同誌がヘイトスピーチになぞらえているのも尤もであろう。

脱藩官僚の1人古賀茂明氏は、『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』角川oneテーマ21(2014年9月)で、安倍政権の暴走ぶりを批判している。
まさに「暴走」というしかないだろう。
⇒2014年2月14日 (金):安倍首相の暴走をコントロールするのは?/花づな列島復興のためのメモ(307)
2月の時点ではまだ助走というべきであった。
⇒2014年9月30日 (火) :『新・戦争のつくりかた』を読む/日本の針路(46)

古賀氏は安倍首相の狙いを、日本を米国に次ぐ世界の列強国(帝国主義国)と変えようとすることであるとして、次のように書いている。

列強国になるとは「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない国」、「戦争なしには生きられない国」になってしまうことだ。

「戦争なしには生きられない国」になっても、自衛隊を志望する若者が減ったら戦争はできない。
現に集団的自衛権で他国との戦争の可能性が高まったことにより、若者の自衛隊離れが起きているという。
不足する兵員をどう補うか?
そのとき、徴兵制が敷かれるというのは蓋然性の高いシナリオであろう。

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2014年10月13日 (月)

超高齢社会をどう生きるか?/ケアの諸問題(15)

藤枝市立総合病院の外科医・金丸仁さんが書いた『死者は穏やかに微笑ん』万来舎(2014年8月)という小説が新聞に紹介されていた。
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東京新聞10月10日(静岡版)

わが国の高齢化は世界でも例がない段階に入っている。
高齢者人口は、平成27(2015)年には3,395万人となり、37(2025)年には3,657万人に達すると見込まれている。
その後も高齢者人口は増加を続け、54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。
Photo
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_1_1_02.html

しかしこうなることは、女性の出産可能年齢と合計特殊出生率や平均寿命のトレンドからして、ずっと前から分かっていたはずだ。
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)
いよいよ「地方消滅」が懸念されることになってから、「地方創生」が具体的な政策課題として取り上げられる。
⇒2014年5月10日 (土):人口減少の過程と問題/ケアの諸問題(7)
⇒2014年5月12日 (月):人口減少の過程と問題②/ケアの諸問題(8)
⇒2014年6月 4日 (水):超高齢社会と限界自治体/花づな列島復興のためのメモ(330)
しかも高市総務相は、「ローカルアベノミクスで……」などというトンチンカンなことを言っている。
はどう見ても輸出企業のための政策であるアベノミクスを、どうローカライズするというのか?

主人公の長瀬は65歳で公立病院を定年退職し、特別養護老人ホームの医師として働き始める。
そこで介護の現実に接したり、自分の父親の認知症が進んで行くのを見るうちに、考える。
日本社会はますます高齢化時代が進んで行く。安い賃金、汚い仕事の介護士の離職率は高いが、介護保険制度はいつまでもつか分からない。
老老介護が増え、認認介護と言われるような事態が進行するが・・・・・・

世間では、「不老即死」すなわちピンピンコロリが理想だという。
現実にはどうしたらいいか?
大学の同窓会で旧友に会い、「老人問題が今の日本の最も大きな問題だけど、どうすればいいと思う?」と問われるが、長瀬は答えられなかった。
現役の医師がSF風味のミステリー仕立てで問う日本社会の現実。

本書にも、認知症患者が起こしたJR列車事故について、家族の監視責任が問われた裁判の件が出てくる。
⇒2014年5月19日 (月):総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
こんな判例が定着すれば、在宅介護をする人はいなくなるだろう。
しかし、厚労省は、介護の在宅化を進める方針だ。
在宅介護で「強いられたボランティア」として介護をしているのは、多くの場合女性だ。

安倍首相は、昨年の「成長戦略スピーチ」で、「女性が輝く日本」を掲げ、(3年間抱っこし放題での職場復帰支援)を高らかに宣言した。
ところがこのスピーチは評判が悪かった。

「働く女性にとっての悩み・不安は、育休明けにキャリアを持続できるのか、ということ。3年間も職場を離れたら、その不安はさらに拡大する。またそもそも、子供が小さいうちの育児では、単に抱っこできれば済むものではない。病気やアレルギーがあれば医者に通わなくてはならない。夜泣きなどの体力的・精神的負担は大きい。子供がいない時代に比べ家事は一気に増える。今の核家族化した日本社会で、母親は夫など周囲の助けがないまま子を育てるのは困難だ。」

女性の側からも、つぎのような批判が続出した。
「結局育児は母親がするもんだみたいな昔のオヤジ的考えよね。働きたいママさんは沢山いて、両立のためのサポートをしっかりしてほしいと望んでるんだけど。」
「安倍さんの話を聞いていると、女は『産めよ、育てよ、働けよ』と言われている気がする。ムリですから!」

9月29日の第187回国会における所信表明演説では、(女性が輝く社会)という表現は継続しているが、(3年間抱っこし放題での職場復帰支援)は取り下げざるを得なかった。
現実を見ないで、観念的にウケを狙った言葉を並べても、化けの皮はすぐはがれる。

介護人材を養成するための施策も腰が定まっていない。
2014年2月 6日 (木):2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)

介護現場では低い給料への不満が広がっている。
 関西の社福に勤める女性職員は月に7、8回の夜勤をしても月給は20万円ほどにしかならない。「いくらがんばっても理事長は現場の努力を評価してくれない。給料は1年に2千円しか上がらない」と嘆く。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、福祉施設で働く人の13年の平均給料は月に約21万9千円、訪問介護で働くホームヘルパーは約21万8千円だった。看護師は約32万8千円と大きく上回り、栄養士も約23万4千円と上回る。
 介護職員らが入る労働組合「日本介護クラフトユニオン」では、組合員数は今年春の約6万8千人から半年で千人ほど減った。景気が持ち直してほかの仕事の給料が上がり、介護から離れた人がいるとみられる。
介護現場の待遇 薄給、耐えられない

介護保険は40歳以上が払う保険料や税金でまかなわれており、負担を抑えながら、どう介護サービスを充実させ、介護職員の待遇を改善するか。
来年度には、介護保険から支払われる介護報酬について3年に1度の改定があるが、この改定をめぐり、財務省と社会福祉法人が激しく対立している。
介護職員の待遇を改善するためには、介護報酬のアップが必要だが、原資の介護保険料は上げるのが難しい。
アベノミクスの方向性に答えはないだろう。

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2014年10月12日 (日)

マララさんノーベル平和賞受賞の意味/世界史の動向(28)

今年の延べう平和賞は、パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイさんと、インドの児童労働問題の活動家カイラシュ・サティヤルティさんの2人に授与されることになった。
⇒2014年10月10日 (金):「憲法9条」に対する国内と国外の評価の落差/日本の針路(49)

マララさんがノーベル平和賞を受賞したことはどのような意味をもつのだろうか?
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東京新聞10月11日

マララさんは、2年前にパキスタンの反政府武装勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)から銃弾を浴びせられた。10月
現地では今も学校を狙った事件が続いているという。
マララさんの母国パキスタンでは、有力メディアが「勇敢な人物」などと称賛し、こぞって受賞決定を歓迎した。
しかし、保守層の一部でマララさんに批判的な声もある。

 ただ、一部保守層は、欧米が人権問題などで圧力をかけるため、マララさんを利用していると反発している。マララさんの自伝を学校図書館に置くことを禁止する「全パキスタン私立学校連盟」のミルザ・カシフ・アリ会長は、平和賞の受賞決定を「西洋の指示に従った結果だ」と批判した。
「欧米がマララさん利用」…母国保守層に反発も

つまりマララさんはイデオロギー対立のシンボル的要素になっていることだろう。
TTP側の主張は以下のようだ。

 TTPが女子生徒が通う学校を攻撃するのは「男性は女性たちの保護者である」というイスラム教の聖典コーランの一節を極端に解釈し、女性が外で働いたり、教育を受けたりすることを「悪」と見るからだ。
 TTPは表向き「女子教育には反対しない」と主張している。ただし、TTPが言う「学校」はコーランの学習を主体としたマドラサ(宗教学校)だ。
 空軍からTTPに加わったアドナン・ラシド幹部は昨年7月、マララさんに公開書簡を出した。「あなたが命をかけるという教育とは、英国趣味のアジア人、英国流の意見を持ったアフリカ人を次から次へ生み出すことだ。女子用のマドラサ(宗教学校)に入って、コーランを勉強しなさい」と主張した。
なぜマララさんは撃たれたか 無防備な女子生徒標的続く

ノルウェー政府がウクライナ危機やイスラム国というような国際情勢に関連してではなく、子どもの権利に着目したことを評価したい。
世界で5,700万人に上る子どもたちが初等教育を奪われているという。
子どもが教育を受ける権利を持つのは普遍的な価値である。
教育を受けられないことが、貧困や過酷な児童労働の温床になっている。

幸いにしてわが国は、江戸時代の寺子屋という教育システムにより、子どもの識字率が世界最高水準になっていた。
文字を読めることは文明化の前提条件であり、明治維新以降の近代化を支える基盤になったのである。
マララさんの両親について、次のような事情が伝えられている。

 パキスタンの少女ペカイさんは、六歳の時に学校に通い始めたが、一年もたたずにやめてしまった。周りで学校に通っている女の子などいない。どうせ大人になったら、家の中の仕事をするだけ。学校に行っても、意味はないだろう▼だから、大きくなって恋に落ちたジアウディンさんから詩を献(ささ)げられても、読めなかった。ただ、この人の夢を支えていこうと思った。彼の夢は、貧しい家の子も女の子もみんな学校に行けるようにすること。そのために学校を作ることだった▼二人の間に生まれた女の子も、両親と同じ夢を抱くようになった。だが、そのために少女が学校に行くことを認めないイスラム過激派に撃たれ、死の淵(ふち)まで追いやられた▼それがマララ・ユスフザイさん。手記『わたしはマララ』が世界的ベストセラーとなった少女だ。
筆洗

このような事情があったからこそ、マララさんが昨年行った国連演説が多くの人の心に響いたのだ。

 演説でも、銃撃を受けたことで逆に「私の中で弱さと恐怖、絶望が死に、強さと力、勇気が生まれた」と主張した。最も大きな拍手がわいた瞬間だった。
 「タリバンとすべてのテロリスト、過激派の息子と娘たちに教育を受けさせたい」。マララさんは両親から学んだ「許しの心」を強調しつつ、「教育(の普及)のためには平和が必要」と、演説のテーマを自分の経験から普遍的な真理へと発展させた。
 約17分間の演説は格調高く、説得力に満ちていた。総立ちの聴衆の拍手はしばらく鳴りやまなかった。
ノーベル賞:勇気とリーダーの資質 マララさん国連演説

わが国の女性閣僚と比べるのもどうかとは思うが、人間としての器が違う。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)

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2014年10月11日 (土)

介護ロボットの可能性/ケアの諸問題(14)

ロボットの話題が賑やかである。
10月7日からCEATEC JAPAN 2014 が始まったが、オムロンの「ラリー継続卓球ロボット」がTVでも紹介されていた。
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オムロンが卓球ロボット披露

ロボットは介護分野でも大いに期待されている。
公益財団法人テクノエイド協会という組織が、「ロボット介護推進プロジェクト」を推進している。
同協会は、福祉用具に関する調査研究及び開発の推進、福祉用具情報の収集及び提供等により、福祉用具の安全かつ効果的な利用を促進し、高齢者及び障害者の福祉の増進に寄与することを目的としている団体である。
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ロボット介護推進プロジェクトの概要

「第41回国際福祉機器展 H.C.R.2014」でも、いくつかの介護ロボット関連の出展があった。
⇒2014年10月 3日 (金):福祉機器開発最前線/ケアの諸問題(13)

上図の重点分野にある「見守り」は比較的導入しやすい分野だと思われる。
たとえば「レーダーライト」について見てみよう。
システム開発のCQ―Sネット(横浜市、斎藤光正社長)開発したもので、レーダーで住宅の高齢者の安否を確認しようというものである。

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発光ダイオード(LED)電球に装置を内蔵し、高齢者が倒れた際などに家族に通報したり呼吸の異常を調べたりすることができる。
風呂やトイレなどに設置したレーダーが天井から高齢者の頭、肩までの距離を定点観測し、急な変化があるとインターネットで家族の携帯電話や福祉施設の端末に通報することができる。
例えば、入浴中に浴槽の水位より低い位置に体の反応を検知すると、倒れた可能性が高いと判断する。
転倒など異常を感知した後は呼吸と脈拍の計測に自動で移行する。

従来のセンサーを使った高齢者の異常探知機に比べ、レーダーの装置が電球内にあり簡単に取り換えができるため工事が必要なくプライバシーに配慮できる。
家庭用電源から電気を得るため電池切れの心配がないほか、白熱球よりも長持ちするLED電球に装置を組み込むことで10年以上のメンテナンスフリーが期待できる。

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2014年10月10日 (金)

「憲法9条」に対する国内と国外の評価の落差/日本の針路(50)

今年のノーベル平和賞は、女子教育の権利を訴えるパキスタンのマララ・ユスフザイさんと、インドの児童労働問題に取り組んでいるカイラシュ・サティヤルティさんに授与された。

ユスフザイさんは少女の教育を受ける権利を主張。その後パキスタンの武装勢力「タリバーン」のメンバーに頭部を銃撃された事件で世界的な注目を集めた。
サティアティさんは金銭を得るために子どもを利用することに反対する平和的なデモを主導するなどした。
ノーベル平和賞、マララ・ユスフザイさんとカイラシュ・サティヤティさんに

順当な人選ということだろう。
ノーベル平和賞は、スウェーデンではなくノルウェー政府が授与主体である点で他の分野とは異なっている。
ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルがスウェーデンとノルウェー両国の和解と平和を祈念して「平和賞」の授与はノルウェーで行うことにしたからである。
選定に政治的な思惑が見え隠れすることも他分野とは異質である。

日本人受賞者の佐藤栄作氏の場合、「非核三原則」の提唱が受賞理由であった。
しかし、1974年に受賞した後に有事の際の「核持ち込み」に関する密約が、日米間で結ばれていたことが明るみに出た
密約を暴いた毎日新聞の西山太吉記者は、有罪判決が確定している。
2000年になって、密約を裏付ける米国の公文書が発見され、対米交渉を担当した吉野文六外務省アメリカ局長(当時)も密約の存在を認めたが、西山氏が提起した国家賠償法に基づく賠償請求訴訟に対して、今年7月14日、最高裁は上告を棄却した。
⇒2014年7月 8日 (火):沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)
⇒2014年7月22日 (火):沖縄密約裁判、特定秘密保護法、解釈改憲、アベノミクス/日本の針路(11)

問題もあるノーベル平和賞ではあるが、世界の耳目を集めるニュースになることは間違いない。
今年は、他に米政府の監視プログラムを暴露した米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者(31)などがノミネートされていた。
注目すべきは、「憲法9条」が有力候補になっていたことだろう。

 受賞予測をしたのは、オスロ国際平和研究所(PRIO)。ウェブサイトで9条について「日本国民の多くはこの非侵略の誓いが、1946年(の憲法公布)以来、戦争を避けることができた大きな理由だとみている」と指摘し、他国との武力衝突が一度もなかった戦後約70年間の歩みに果たした役割を評価している。
 ハープウィケン所長は6日、朝日新聞の取材に応じた。1位の理由として、平和賞は「軍の廃止や縮小」などへの貢献者に贈られるとしたアルフレッド・ノーベルの遺志に合致している▽尖閣問題など東アジアで戦争リスクが高まっている――の二つに加え、安倍政権が9条の解釈を変え、集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたことで「9条が危機にある」ことを挙げた。
 所長は「ノーベル委員会は、授賞が安倍政権批判と見られることを気にするかもしれないが、9条が危機にある今年こそインパクトがあるとも認識するだろう」と指摘。2010年に中国政府と対立する人権活動家の劉暁波氏が受賞したことも挙げ、「政治的な問題から委員会が逃げることはない」と述べた。
 その上で、「東アジアの紛争の可能性は世界であまり注目されておらず、この地域に光を当てようとノーベル委員会が考えるかもしれない。原爆などで甚大な被害を受けながら、平和のうちに復興を遂げた日本の戦後約70年間の歩みに共感する人は世界に多い。平和賞の授与は世界から歓迎されるだろう」と話した。
9条、なぜノーベル賞トップ予測 「戦後の歩みに共感」

「何だ、朝日新聞の報道か」などという勿れ、である。
PRIOという民間機関ではあるが、海外の見方の例である。
これに対し、国内の自治体の及び腰が目につく。
「9条デモ」を詠んだサークルの選句の掲載を拒否したさいたま市公民館は、センスを疑う。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)

さいたま市の場合は、「何とも滑稽なほどナーバス」と思ったが、他の自治体にも同様の動きが広がっている。
「国分寺まつり」で毎年ブースを出している「国分寺9条の会」が今年の出店を拒否された。
⇒2014年8月31日 (日):ヘイトスピーチを国会デモ規制に短絡させる思考/日本の針路(33)

ただ白井市では、市教委は四月の規程改定で、「政治的中立」を理由に世論を二分するテーマの後援に慎重姿勢を打ち出したが、集団的自衛権をテーマに護憲団体が開く講演会について、後援する見通しとなった。

 講演会は、白井市の市民団体「しろい・九条の会」が来月十六日に市内で開催。日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を担当した東京外国語大の伊勢崎賢治教授が「紛争解決のプロが話す集団的自衛権」との演題で講演する。
 伊勢崎氏は安倍政権が進める解釈改憲による集団的自衛権の行使容認には「技術論としておかしい」との立場。九条の会は「集団的自衛権をより深く理解し、市民の知識を深める」ためとして、後援を市教委と市に申請した。
 市教委が後援申請を審査したのは、規程改定後はこの日が初めてで、委員たちは伊勢崎氏の著作を読んだ上で参加。「政治的に偏っていない。体験がユニークで勉強になる」「国際社会でどうあるべきか考えるきっかけになる」など、後援の承認に賛成する意見が相次いだ。
「九条の会」講演会の後援 白井市教委、一転承認

ごく当たり前の判断だろうが、それがニュースになるという時世である。
もし、「憲法9条を保持する日本国民」が受賞したならば、安倍政権はどう反応しただろうか?
見てみたい気もしたが、まあノーベル平和賞の性格からしてユスフザイさんたちの方が相応しいということだろう。

自治体が臆病になっているのは、国会へのデモを規制せよという高市早苗総務省や御嶽山ツイートでミソを付けた片山さつき議員等のおバカ政治家が跋扈しているので、障らぬ神に祟りなし、ということであろう。
今年のノーベル平和賞は逃したが、「9条」に対する内外の落差は著しい。
安倍首相は、慰安婦問題について、国内右派には朝日批判で点を稼ぎ、海外には反省をしてみせるというダブルスタンダードで対応しているが、海外の見る目は厳しいというべきだろう。

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2014年10月 9日 (木)

続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)

安倍首相は、「女性が輝く日本へ」の構築を高く掲げている。
にもかかわらず、閣僚の人選には首を傾げざるを得ない。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)

またまた新大臣めぐって、呆れるような国会質疑があった。
7日の参院予算委員会で、民主党の蓮舫氏と松島みどり法相の間のやりとりである。
松島法相が似顔絵や政策が書かれたうちわを選挙区内のお祭りで配っていたことに対し、蓮舫氏が「寄付にあたり違法だ」と指摘した。
松島氏は「うちわのような形をしているが、討議資料だ」と反論した。
「うちわのような形をしているが、討議資料だ」とは強弁も過ぎて滑稽である。

 蓮舫氏は委員会で、松島氏が夏に配ったうちわを手に「しっかりとした柄(え)。それにつながる骨組みがある。うちわなら、価値のある有価物で、その配布は寄付となり違法だ」とただした。公職選挙法では、政治家が選挙区内の有権者に寄付することを禁じている。
 これに対し、松島氏は「議員の活動報告を印刷した配布物だ。うちわと解釈されるならば、うちわとしての使い方もできる」などとし、公選法の寄付には当たらないと主張した。
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松島法相、有権者にうちわ配る? 「これは討議資料」

「うちわと解釈されるならば、うちわとしての使い方もできる」とは、余りに有権者をバカにした言い方ではないだろうか。
さすがに安倍首相も、「有価物という認識があったかどうか。疑いを受けている以上、こうしたものの配布を行わないことが望ましい」としたが、それ以上の咎めはしないようだ。
私はこんな似顔絵のうちわは「価値のある有価物」とは思わないが、製作にコストがかかっているという意味では有価物であろう。
しかも法務大臣に就任してからも製作・配布しているという。

内閣改造で法相就任後にも、法相バージョンのうちわを製作、配布していたことが分かった。8日の参院予算委員会で、みんなの党の水野賢一議員に質問され、松島氏自身が明かした。
 7日の同委員会で表面化したうちわには、松島氏が法相として初入閣する前の、経済産業副大臣としての肩書が記されていた。
 松島氏は、法相バージョンのうちわについて「9月上旬に作ったかと思います。経済産業副大臣の上に(法相という)シールをはったもの、法務大臣と書いたものもあったと思う」と認めた。
 うちわの製作について、「法律をコンパクトにまとめて書くことも含め、私が製作した」と、自らの考えだったことを明かした。
 安倍内閣の足を引っ張っているとして、進退を考える意思を問われると、「安倍政権の法相としてしっかり務めていきたい」と述べ、辞任は否定した。
松島みどり法相、大臣就任後もうちわ製作

松島氏は、「レッド松島」と呼ばれており、赤い服装がトレードマークだというが、赤いストール着用が問題になったばかりである。

 松島みどり法相は3日の記者会見で、参院本会議場で赤いストールを着用していた問題について「あれはスカーフ。ストールじゃない。多くの国で首もとのスカーフは洋服の一部になっている。ファッションの一部だ」と強調し、「服装を整える一部であるスカーフが(参院規則に)抵触するのかと驚いた。びっくりした」と語った。
 本会議場で「襟巻き」の着用を認めていない参院規則については「寒かった時代に襟巻きをして議場に入ってはいけないという意味だと思う」と主張した。松島氏は1日の参院本会議に赤く細いストールを着用して出席。次世代の党のアントニオ猪木参院議員はトレードマークの赤いマフラーを外しており、野党が問題視していた。
松島法相「スカーフは洋服の一部 抵触するのかと驚き」

問題にされたのは以下のようなものであり、私はファッションに疎いは、スカーフというのはやはり無理がある。
Ws000002
松島法相「スカーフは洋服の一部 抵触するのかと驚き」

松島氏は初登庁の時、出迎えの職員が少ないことに激怒したという話も伝わっている。
余りにトリビアなことで話題になるのは、大事な政策課題から目を逸らさせようという意図ではないかと勘繰ってしまう。
国会らしい、あるいは大臣らしい姿を見たいと思う。
こんな人に投票した人は、自分の判断を恥じるべきだろう。
そして、何よりも首相の任命責任が問われなければならない。

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2014年10月 8日 (水)

平和主義の進歩的文化人・坂本義和/追悼(59)

国際政治学者の坂本義和さんが2日、東京都内の病院で死去した。87歳だった。
坂本氏の名前は、学生時代に雑誌「世界」に掲載された論文でよく目にした。
その頃の学生は、無理をしてでも「世界」や「展望」のような総合誌を購読した。
というような書き方をすると、老化現象だと自覚しているが、若い人たちの教養レベルに愕然とすることがある。

坂本氏は、岩波書店を拠点とする、いわゆる「進歩的文化人」の1人であった。
私の好みは筑摩書房の「展望」の方であったが、展望に載る論文の方がより深く切り込んでいるように思えた。
すなわち私の感覚でradical(根源的)なものが多いような気がした。

それはさて措き、坂本氏の死は、いよいよ「戦後」という時代が終焉したことを感じさせる。
⇒2014年9月23日 (火):朝日新聞、ソニーの凋落と戦後という時代の終わり/戦後史断章(18)

Photo 1927年生まれ。東大法学部卒。米国留学後の59年、雑誌「世界」掲載の論文「中立日本の防衛構想」で、中立的な諸国の部隊による国連警察軍の日本駐留を提唱した。64年、東大教授。66年、中国との国交などを主張した「日本外交への提言」で第1回吉野作造賞を受賞するなど、学問的成果をしばしば提言の形で世に問い、戦後平和思想の定着に貢献した。79~83年、欧州以外で初の国際平和研究学会事務局長を務めるなど、幅広く活動した。
 平和主義を重視しつつ、護憲派の課題も指摘した。日米安保も憲法理念も同時に実現しようとする姿勢は「憲法をめぐる二重基準」だと批判。矛盾をあいまいに済ます思考停止はやめて、両者のギャップを埋めるべく軍縮や緊張緩和に向けた具体的構想を打ち出すべきだ、と訴えた。
国際政治学者の坂本義和さん死去 平和主義の可能性追求

Wikipedia坂本義和では、以下のように記述されている。

1964年から1988年まで法学部教授として国際政治学を担当する。東大紛争では加藤一郎総長代行と共に解決に尽力。東大教授退官後は明治学院大学、国際基督教大学で教える。衆議院議員の加藤紘一や政治学者の藤原帰一は坂本の演習の選択者である。門下生の学者に高橋進、中村研一、大西仁(東北大学教授)らがいる。
戦後冷戦期の論壇において、アメリカに批判的な平和主義の立場から、高坂正堯や永井陽之助らと外交や安全保障政策をめぐって、論戦を交わす。いわゆる「アイデアリズムとリアリズムの論争」とされるものだが、モーゲンソーの弟子としての坂本は、外交を道徳論レベルでのみ考えるものでない。したがって、坂本にあっては、日米安保条約の相対化のみならずいわゆる9条護憲主義もまた相対化され、「一国平和主義でなく、国連中心主義にたっての自衛隊の国際貢献のみの使用」が導き出される。
北朝鮮による日本人拉致問題では、「『拉致疑惑』問題は、今や日本では完全に特定の政治勢力に利用されている。先日、横田めぐみさんの両親が外務省に行って、『まず、この事件の解決が先決で、それまでは食糧支援をすべきでない』と申し入れた。これには私は怒りを覚えた。自分の子どものことが気になるなら、食糧が不足している北朝鮮の子どもたちの苦境に心を痛め、援助を送るのが当然だ。それが人道的ということなのだ」と発言した。この発言を巡っては拉致被害者家族会やその支援者からの反発を受けた。
2002年(平成14年)に北朝鮮自身が日本人拉致を認めると、坂本は『諸君!』『正論』などから激しく批判された。また、山脇直司のようなリベラル派からも、北朝鮮による拉致という国家犯罪は絶対に許してはならないし、左翼知識人の過去の言動は徹底的に糾弾されてしかるべきだろう、と批判された。こうした言動を取る坂本は、北朝鮮が日本で最も信用する進歩的文化人の1人であり、武者小路公秀と共に、朝鮮労働党と日本共産党の関係改善の斡旋役を務めたこともある。

今の時点で見れば、拉致問題に対する坂本氏の見解は硬直的というか教条的であり、現実が見えていなかったと批判されるのは当然であろう。
しかし理想論を語るのは悪いことではないと思う。
特に現実主義と称する勇ましい言論が風靡している状況に対しては。
麻生副総理は「ナチスの手口に学べ」と言った。
⇒2013年8月 4日 (日):撤回では済まされない麻生副総理の言葉

「ナチスの手口」とはどういうものか?
秋原葉月氏のツイートがある。
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ゲーリングの言葉に思い当たるところがあるのではないだろうか。
「憲法第9条にノーベル平和賞を!」が話題になっている時であるが、国内外の落差は大きい。
坂本氏は受賞の報を聞きたかったのではないか。
土井たか子氏と共に、天国で賞の行方を見ているような気もする。
合掌。

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2014年10月 7日 (火)

青色LEDでの三教授のノーベル賞受賞を寿ぐ/知的生産の方法(104)

今年のノーベル物理学賞が、名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授、米カリフォルニア大学の中村修二教授に贈られることが発表された。
青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザーに関する業績に対してである。
Led
中村修二氏の職務発明訴訟に高額判決出る! 青色LED訴訟、200億円の判決

 3赤崎氏と天野氏は、窒化ガリウムを使った半導体結晶の加工技術を確立し、長年不可能だった青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザーなどの開発に成功。中村氏はそれらの量産技術を開発し、世界で初めて製品化した。青色LEDは屋外大型ディスプレーや携帯電話のバックライト、屋内照明や信号機などに広く応用され、省エネに大きく貢献。青色レーザーは大容量光ディスクや高速通信機器など今日のIT時代に不可欠なさまざまな技術を可能にした。
 授賞理由は「明るく省エネルギーの白色光源を可能にした効率的な青色LEDの発明」。日本の受賞は12年の山中伸弥・京都大教授に続く快挙で、物理学賞は08年に南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏が受賞して以来。日本の受賞者数は、米国籍の南部氏を含め22人(医学生理学賞2、物理学賞10、化学賞7、文学賞2、平和賞1)となる。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金計800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)が贈られる。
 青色LEDは、赤色、緑色の開発に続いて、世界の研究者が開発に取り組んでいたが、材料となる窒化ガリウムの半導体結晶を作る技術が困難を極め、70年代後半には多くの研究者が断念していた。
ノーベル賞:物理学賞に赤崎、天野、中村の3氏

赤﨑勇氏は、鹿児島県知覧町(現・南九州市)出身。鹿児島県立第二鹿児島中学校から第七高等学校 (旧制)を経て京都大学理学部化学科卒業。
松下電器産業東京研究所基礎研究室長、名古屋大学教授、名城大学教授等を経て、現在は名城大学終身教授、名古屋大学特別教授である。

天野浩氏は、静岡県浜松市出身。名古屋大学大学院工学研究科教授。赤崎勇氏と共に、世界初の高輝度青色発光ダイオード(青色LED)の開発に成功した。

中村修二氏は、愛媛県西宇和郡瀬戸町(現在の伊方町)生まれの大洲市出身(小学校時代に転居)。
徳島大学工学部を卒業後、同大学大学院工学研究科修士課程修了。
修了時、京セラにも内定していたが、家族の養育の関係から、地元の日亜化学工業に就職。
高輝度青色発光ダイオードや青紫色半導体レーザーの製造方法などの発明・開発者として知られ、現在カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)教授(Professor of Materials & ECE, Director of Solid State Lighting & Energy Center)、愛媛大学客員教授である。

中村修二氏については、職務発明との関係で話題になった。
⇒2007年12月11日 (火):青色LEDの場合
⇒2007年12月15日 (土):「404号特許」
⇒2007年12月16日 (日):相当対価の算定法
⇒2007年12月17日 (月):東京地裁の判断
⇒2007年12月18日 (火):控訴審の判断
⇒2007年12月19日 (水):西村肇さんの考え方
⇒2007年12月20日 (木):職務発明対価私見  

LEDについては、2009年の全国学力テストの国語の問題にもなっている。
⇒2009年4月23日 (木):LEDの技術開発への期待

宿命的な資源小国であるわが国にとって、技術立国は国是ともいうべき位置を占めている。
知財についてどういう政策をとるかは重要であるが、職務発明をめぐって新しい動きがある。
職務発明の特許権を企業に帰属させるという法律案が議論されている。

職務発明とは、会社に勤める従業者が会社の仕事として研究・開発した結果完成した発明 をいう。
現行特許法では、職務発明の特許権は、従業員に帰属することになる(特許法35条)。
特許法35条1項の職務発明の要件は以下の通りである。
①従業者の発明であること
②使用者の業務範囲に属する発明であること
③従業者の現在又は過去の職務に関する発明であること
「職務発明」については、使用者(企業)が通常実施権を有する(特許法35条1項)ことになる。
企業は、従業員との契約や就業規則において、専用実施権が会社に与えられるようにするのが通常であるが、従業員には、専用実施権を企業に認める対価として、相当の対価の支払いを求める権利が認められている。
この対価の額をめぐって往々にして、企業と従業員の間で対立が起きる。

そこで、職務発明の特許権を企業に帰属させるという法律案が準備されている。
この場合、従業員に対して、どのような報酬等によって報いるかが問題になる。
改正によって結果的に従業員が不利益を受ければ、優秀な従業員ほど努力に対する対価が支払われないことになり、優秀な従業員が流出することになる恐れがある。
従業員に対し適正な報酬を支払うべきことについてはコンセンサスが得られるにしても、具体的な適正な報酬の額については論議が残るであろう。

私は、次のような故井深大さんの言葉に基本的には同感である。

開発に成功するまでに1のエネルギーが必要だとすれば、商品の試作に10倍、商品化に100倍、最終的に利益出るまでに1000倍はかかる。

この考え方を援用すれば、発明の報酬は開発利益の1000分の1程度ということになるが、事業化までのステップを<か・かた・かたち>の三段階と考えたい。
⇒2013年8月13日 (火):三段階論という方法②菊竹清訓の設計の論理/知的生産の方法(72)

発明は<か>の段階と考え、<かた>が事業化段階、<かたち>が市場化段階と考える。
ステップを移行する都度けた違いのエネルギーが必要とされるのであるが、仮に10倍ずつと考えれば、職務発明の対価は当該発明の利益の100分の1、5倍ずつと考えれば25分の1である。
ということになるが、余りに幅が大きい。

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2014年10月 6日 (月)

御嶽山噴火と川内原発再稼働/日本の針路(48)

安倍首相は、第187回国会の冒頭の所信表明演説で、次のように述べた。

 原子力規制委員会により求められる安全性が確認された原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます。
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説

原子力規制委員会の安全性基準とは如何なるものか?
福島原発事故で、安全性基準は適切に機能したのか?
安全性基準そのものの評価は、どう検討されたのか?

耐震設計審査指針(指針)によって安全性が十分保障されるように設計されている。したがって原発の地震に対する備えは万全である。これが通産省の見解だ。しかし石橋克彦・神戸大学教授は現在の地震学の知見に照らすと、日本中のどの原発も「想定外」の大地震に見舞われる可能性があると指摘する。
もうひとつの「想定外」原子力災害を防ぐには

上記は通産省という言葉からも分かるように、1999年の資料である。
⇒2011年3月17日 (木):「想定を超えた事態」ならば免責されるのか?
現在は基準の改訂をして、万全ということなのか?

石橋氏が「原発震災」という概念で、通常震災と津波等による原発施設の複合災害に対する問題提起したのは1997年のことであった。
2006年に、原発の耐震設計指針を改訂する委員会の委員だった石橋氏は、不徹底な改訂作業に抗議して辞任した。
しして、2011年に東日本大震災・福島第一原発事故が起きたのだ。

現在、川内原発の再稼働が検討されている。
まさに「安全性の哲学」が問われる局面である。
御嶽山噴火で多くの人命が失われたように、火山噴火も地震も、予知するためには現在の科学の知見では有効な判断はできないという前提で考えるべきではないか。

石橋氏は、川内原発の安全審査を厳しく批判している。
安倍首相の所信表明演説の前提である安全基準そのものに問題があるのであるが、その基準に照らしても審査に問題があるという。
新規制基準は、「内陸地殻内地震」「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について、複数選定して基準地震動を検討するよう求めている。
しかし、川内原発については、内陸地殻内地震しか検討していない。
141006
東京新聞10月6日

プレート間地震と海洋プレート内地震については発生位置の関係から検討から除外しているのだ。
規制委も安易にそれを認めて「合格」の判定を出した。
しかし石橋氏は、プレート間地震と海洋プレート内地震を除外するのは、再び「想定外」を招く可能性があると批判する。

九州電力川内原発が新たな規制基準に「適合」と判断された後、地元の薩摩川内市長と鹿児島県知事は、政府から経済産業相名の文書をそれぞれ受け取った。
しかしそれが何を担保するというのだろうか?
福島原発事故の経緯を見れば、未だに原状回復や補償は十分とは言えない。
一私企業の手に負えないだけでなく、政府の力も到底及ばないのだ。

安倍政権の下で原発ムラの住人や御用学者がゾンビのように復活しつつある。
懲りない面々である。

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2014年10月 5日 (日)

再生可能エネルギー利用の拡大/技術論と文明論(6)

九州電力など電力4社が太陽光発電による再生可能エネルギーの買い取り中断を決定した。
中断以外にも、東電、関電、沖縄電力の各社が買取に制限を設けるなど、再生可能エネルギーの買い取り制度が危うくなっている。
買い取りは法律上は義務付けられているが、例外規定が設けられていて中断することが可能となっている。
ここまで殺到するとは「想定外」だったのかもしれないが、制度設計の甘さは免れない。

元々の設備に対して、業者、さらには個人投資家なども参入して急激に供給量が増えた。
買取価格が高く設定されるインセンティブがあり、さらには認可も厳しくはなく、参入が容易だった。
九州や北海道は土地が安いこともあり、遊休不動産を持て余していた企業や個人投資家が買い取り制度に飛び乗った。

固定価格買い取り制度(FIT)は、小規模事業者や個人が太陽や風力などでつくる電力を、高値で安定的に買い取ることを大手電力会社に義務付けるものである。  
再生可能エネルギーの普及策として世界中で採用されており、日本では一昨年の夏から始まった。  
日本のFITには大きな抜け穴が用意されていた。
買い手側の電力事業者が「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがある」と判断すれば、接続、つまり買い取りを拒否できるという条項である。

九電は買い取り中断の理由を、次のように説明している。  

今年四月の買い取り価格引き下げを前に、駆け込み申請が急増、三月だけで過去一年分の約七万件の申し込みが殺到した。太陽光や風力は天候による変動が大きい。現在の発送電システムでは急激な出力変動に対応できず、停電など安定供給に支障が出かねない-。
再生エネ中断 原発依存に戻るのか

九電の川内原発は、3・11後の新規制基準に適合し、現在ゼロ状態の原発再稼働に最も近い位置にいる。
も先鞭(せんべん)をつけると目されている。
ところが川内原発の火山リスクについては火山学者から疑問が出ているのである。
⇒2014年9月27日 (土):御嶽山噴火と原発の火山リスク/技術と人間(5)

再生可能エネルギー利用の促進にブレーキがかかると、原発再稼働が必要だということになるのは目に見えている。
第187回国会の冒頭の所信表明演説で、安倍首相は次のように述べ、相変わらず原発再稼働に前のめりの姿勢を見せた。
川内原発について火山学者から安全審査に疑問が呈されているときに、御嶽山噴火が直前に起きているにも関わらず、である。

 原子力規制委員会により求められる安全性が確認された原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます。
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説

御嶽山噴火の被害の全容がまだ掴めていないということを考えれば、正気の沙汰とは思えない。
⇒2014年10月 1日 (水):火山列島でどう生きるか?/日本の針路(47)

連立与党の公明党は、再生可能エネルギーに積極的なようである。
日経テクノロジー・オンライン2014/09/10の公明党・江田議員のインタビュー記事に次のようにある。

江田 公約として最も重要なのは、まず、原子力発電所への依存度を可能な限り低減し、将来的に原発ゼロを目指すことである。
 この実現に向けて、必要不可欠な三つのうちの一つに、再生可能エネルギーの導入の加速がある。具体的な数値として「2030年に30%」という目標を掲げている。
 残りの二つは、省エネルギー対策の徹底によって、2030年のエネルギー利用(一次エネルギー供給)を、2010年に比べて25%削減することと、火力発電所の高効率化である。
 「ただちに原発ゼロを」と主張する人たちがいるが、現実的には不可能だ。原発への依存度を低減していく担保となるのが、再生可能エネルギーの導入を加速すること、そして省エネの促進、火力発電の高効率化だと考えている。
 再生可能エネルギーの導入は、国産のエネルギー資源の拡大という面でも、大きな意味を持つ。また、地域の活性化を促し、地域における産業の創出にも期待している。

今夏原発ゼロであったことを思えば、「ただちに原発ゼロを」との主張が非現実的という見方は説得力に欠けるが、「再生可能エネルギーの導入を加速する」ことには賛成である。
電力会社のFITの例外的規定を利用して、消極的な姿勢は批判されるべきであろう。
先日、静岡新聞に、小規模水力発電の記事が載っていた。

 熱海市西山町の糸川沿いに29日、新開発のプロペラ水車を活用した水力発電機が設置された。将来的な実用運転に向け、「産学官」共同の実証実験を10月1日から開始する。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の本年度事業で、市内のインターフェイスラボ(井手由紀雄社長)と名古屋大エコトピア科学研究所(内山知実教授)が受託した。熱海グリーンエネルギー推進協議会や市内の各種業者、市、県の協力を得て取り組む。
 プロペラ水車は、軸なしに周りのパイプとともに回転する新開発の技術で、水流に紛れた落ち葉や土砂で回転が止まることを阻止できるという。騒音抑制の効果も期待される。
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プロペラ水車で水力発電実験 熱海・糸川沿い

そろその効率追求の大規模技術から、安全性重視の中小規模技術へシフトする時代ではないのだろうか。

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2014年10月 4日 (土)

御嶽山噴火と台風8号による豪雨との関係/因果関係論(25)

戦後最悪となった御嶽山噴火の被害状況は次第に明らかになってきているが、未だに全容は不詳である。
今回の噴火については、予兆をつかむことが難しい「水蒸気爆発」であろうというのが、火山学者の共通の見解のようだ。
川内原発の火山リスクについて、原子力規制委の田中委員長は次のように述べた。

 御嶽山が大きな予兆なく水蒸気噴火し、原発の噴火リスクが改めて注目されている。再稼働に向けた手続きが進む九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の噴火対策について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は1日の記者会見で「(御嶽山の)水蒸気噴火と、(川内原発で想定される)巨大噴火では起こる現象が違う。一緒に議論するのは非科学的だ」と述べ、審査の妥当性を強調した。
川内原発「現象が違う」 噴火リスク、規制委員長が見解

「現象が違う」といえば、地学を含む自然史的現象はすべて異なる。
また、社会事象もすべて異なる。
東日本大震災を予知し得たなたなら、この発言も肯定できるだろう。
われわれには、まだ未知なることがまだ多い、というのが東日本大震災の教訓ではなかったか。
⇒2014年9月27日 (土):御嶽山噴火と原発の火山リスク/技術と人間(5)

火山の噴火は、マグマが直接噴出する「マグマ爆発」と地表近くの地下水がマグマに熱せられて起こる「水蒸気爆発」がある。

 今回は、地震はあったものの、山の膨張などは観測されていなかった。気象庁は「マグマによる噴火とは考えにくい」との見方を示している。
 御嶽山を長年研究する三宅康幸・信州大教授によると、79年以降にあった複数の噴火は全て水蒸気爆発だったという。「噴出物を詳しく調べないと分からないが、前兆が無かったことから見ても水蒸気爆発ではないか」と指摘する。
 現地入りした金子隆之・東京大地震研助教は「火山灰が2~3ミリ程度積もっている。ごま粒状にくっついており、水気の多い噴火ではないか」と話した。

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御嶽山、前兆少ない水蒸気爆発か 山の膨張、観測されず

今年の7月9日、長野県南木曽町は台風8号の影響で、1時間当たり70ミリの豪雨に襲われた。
同町読書の川で土石流が発生し、民家が流され1人が死亡する土砂災害が起きている。
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南木曽町と御嶽山の位置関係は上図のようである。
当然御嶽山にも相当量の降雨があったであろう。
御嶽山の山体が通常より多量の水分を蓄積していたと考えるのは自然であろう。

御嶽山では、前兆現象が観測されなかったのか?

 気象庁によると、御嶽山では9月10日ごろに山頂付近で火山性地震が増加し、一時は1日当たり80回を超えた。しかし、その後は減少に転じた。マグマ活動との関連が指摘される火山性微動は噴火の約10分前に観測されたが、衛星利用測位システム(GPS)や傾斜計のデータに異常はなく、マグマ上昇を示す山体膨張は観測されなかった。
 噴火は地震と比べると予知しやすいとされるが、過去の噴火で観測されたデータに頼る部分が大きい。気象庁火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は「今回の噴火は予知の限界」と話す。
 平成12年の有珠山(北海道)の噴火は約1万人が事前に避難し、予知の初の成功例として知られる。有珠山では江戸時代以降、地震増加が噴火に直結することが分かっていたからだ。
 だが、このような経験則が成り立つ火山は例外的だ。御嶽山は有史以来初となった昭和54年の噴火が起きるまで、噴火の可能性すら認識されず、近年も静穏な状態が続いていた。噴火過程の理解など予知の判断材料は十分でなかったという。
地震活動の予兆あったが…噴火の記録乏しく予知できず

地道な観測データを積み重ねることが肝要と言うことだろう。
片山さつき議員のように虚報を流して自分の立場の利を図ることは卑しい心情と言うべきだろう。
⇒2014年10月 1日 (水):火山列島でどう生きるか?/日本の針路(47)
同氏は謝罪するハメになったが、問題は思考回路にあるのだから容易には変えられまい。

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2014年10月 3日 (金)

福祉機器開発最前線/ケアの諸問題(13)

10月1日~3日、東京ビッグサイトで「第41回国際福祉機器展 H.C.R.2014」が開催されている。
アジア最大規模となる介護・福祉機器の総合展示会である。
高齢者と障害者の自立と社会参加の促進、家庭や福祉施設での介護の質的向上を目的に、杖・車いす・福祉車両、入浴・トイレ、住宅改造機材などの福祉機器、高齢者向けの食品や衣料などの生活品を一堂に会する展示会として、今回は585社・団体(うち海外55社)の関連企業が出展し、最新の製品・サービス約2万点を提案する。

私は、1日に某専門学校の学生たちと一緒に見学した。

初日の来場者数は40,678人と多くの皆様にご来場いただきました。来場者、出展社ともにH.C.R.史上最大の盛り上がりを見せ、アジア最大の福祉機器展は今年も多くの人の熱気と興奮に包まれています。
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H.C.R.2014 会期速報

私も何回かビッグサイトで行われた展示会に行ったことがあるが、出展社の数の多さ、来場者の数の多さ等からして有数のものだと思われる。
身体不如意であるから、全ブースを隈なく見て回るというわけにはいかないが、実に多様な機器が開発されている。
製品カテゴリで見ると以下のようである。
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http://www.hcr.or.jp/search/index.html

先ずは、「福祉機器最前線」のコーナーへ行ってみた。
コーナーで以下のようなデモンストレーションが行われていた。
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福祉機器の世界でも先端技術が積極的に導入されている。
介護の世界は究極の「人間が行うべき仕事」であろうが、ロボットと協働することによって大きな可能性が開けるのではなかろうか。

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2014年10月 2日 (木)

「経済の好循環」はどこに生まれているのか?/アベノミクスの危うさ(39)

安倍首相の第187回国会における信表明演説に次のような言葉がある。

 成長戦略を確実に実行し、経済再生と財政再建を両立させながら、「経済の好循環」を確かなものとする。そして、景気回復の実感を、全国津々浦々にまで届けることが、安倍内閣の大きな使命であります。
 引き続き、デフレ脱却を目指し、「経済最優先」で政権運営に当たっていく決意であります。
第百八十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説

この言葉をしらけないで聞けるのはよほどの安倍信奉者しかいないであろう。
連立与党の井上義久公明党幹事長ですら、10月1日の衆院本会議の代表質問で、次のような疑義を呈している。
「『(経済の)好循環はどこで回っているのか』というのが国民の生活実感ではないか」。

アベノミクスは異次元と自負する金融緩和で円安誘導してきた。
第2次安倍政権発足後の円安トレンドが、9月に入って急速に加速している。
実に6年ぶりの円安水準だという。
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日本経済新聞10月1日

円安は何をもたらしたか?
期待されたような輸出増は、生産拠点が海外へ移転済みのため起きていない。
代わりに輸入品の価格が上がり、食品値上げとなって家計を直撃している。
一般的な生活者は、節約マインドによって対処するしかない。

「経済の好循環」は、消費を伸ばして企業の生産活動を活発にし、賃金の上昇や雇用の拡大をもたらし、賃金の上昇や雇用の拡大がまた消費を刺激し、企業の新たな投資を促す、というようなフィードバックループが形成されることに他ならない。
経済政策に限らないが、安倍首相は言っていることの意味が本当に分かっているのだろうか?

「経済の好循環」どころか、消費は低迷し、生産、投資を落ち込ませるという悪循環に陥りつつある 。
日銀が発表した9月の短観(企業短期経済観測調査)では、円安による恩恵が大きい「大企業・製造業」のみ景況感がわずかに改善したが、これまで景気回復をけん引してきた「大企業・非製造業」や中堅、中小企業の製造業、非製造業はいずれも景況感悪化の回答が多い。
経済の実態を見据えないまま、「成長戦略の実行」と力説されても違和感を禁じ得ない。

成長戦略の柱は、「女性が輝く社会」「岩盤規制改革」だという。
「女性が輝く社会」について、安倍首相はとんだ勘違いをしている。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)

安倍政権は、株価を維持することに注力してきた。
高株価が景気が良くなったようなイメージが形成されるというのは、一面の真実ではある。
景気回復への「期待感」が醸成されている間はいいが、株価だけが実体経済と独立に上昇するならば、バブル以外の何物でもないだろう。
今日の日経平均株価は、420円(2.61%)安と暴落した。
今後の株価≒安倍政権の行方や如何?
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2014年10月 1日 (水)

火山列島でどう生きるか?/日本の針路(47)

連日報道されている御嶽山の噴火の様子には、息を飲むばかりである。
未だ被害の全容が明らかでないが、死者は50人に近づいており、戦後最悪の火山被害となった。
ちょうど紅葉シーズンの週末という条件が被害者を増やしてしまった。
それにしても、まったく「想定外」だったのだろうか?

至近距離で数多くの動画が撮影され、インターネットのサイトにアップされたのも時代性であろう。
迫力ある画像は、今後の研究資料としても貴重なものだと思われる。
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御嶽山噴火:救助阻む、噴石と有毒ガス

地球表面のプレートとプレートがぶつかりあう日本は「火山列島」である。
火山は脅威であるが、恵みでもあった。
⇒2012年5月 8日 (火):火山活動との共生/花づな列島復興のためのメモ(62)
⇒2013年4月 8日 (月):箱根の群発地震と富士火山帯の活動/花づな列島復興のためのメモ(206)

海側のプレートが陸のプレートの下に沈み込むが、地下のマグマの出口が火山だ。
昔、火山の分類として、活火山、休火山、死火山という3区分を習った。
北海道大学地震火山研究観測センターのサイトに、以下のような説明がある。

以前は火山を3つに分類している時代がありました。現在盛んに噴火を繰り返している火山を活火山(たとえば、桜島)、噴火記録はあるがしばらく活動を休んでいる火山を休火山(たとえば、富士山)、噴火記録がない火山を死火山(たとえば、雌阿寒岳)と分類する考え方でした。ところが、死火山と考えられていた北海道の雌阿寒岳が1955年以降、しばしば噴火を繰り返すなど、この分類では実態にそぐわない事例が出てきました。歴史が短い北海道では、それ以前に活動があっても記録に残されない場合があると、過去の活動を見逃すことになります。そもそも、火山の寿命は数万年から数十万年以上と言われており、近年では詳しい地質調査等によって何千年間も活動休止した後に噴火を再開した事例も報告されるようになりました。こうした状況を踏まえ、火山噴火予知連絡会は平成15年1月に、活火山を『概ね1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山』と新しく定義しました。この時点で、日本の活火山は108を数えましたが、その後、各地で地質調査が進み、1万年以内に発生した噴火が新たに見つかった火山がいくつか報告されはじめているようです。

日本列島の火山の分布は下図のようである。
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火山列島、急襲 御嶽山噴火、地元は備え途上

益田勝美『火山列島の思想』ちくま文庫(1983年2月)に、オオナムチが本来は「オオアナモチ(大穴持ち)」であり、じつは火山の噴火口のことなのだという説が述べられている。
「オオナムチの神」は阿蘇と大山に現れ、その後の国づくりを主導し、出雲に入って大国主命おおくにぬしのみことと名前を変える。
日本人は火山を怖れながら、共生してきたのである。

自民党の片山さつき議員が、「御嶽山の観測予算が削られたのは民主党政権の事業仕分け」という「虚報(デマ)」を流し、批判されている。
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https://www.facebook.com/norikadzu.doro

天に唾するととんだ目に遭う。
川内原発を再稼働させるならば、神をも恐れぬ所業というべきである。

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