ダウンシフトと「ゆるい就職」人気/日本の針路(43)
政府は一所懸命に経済成長を謳っているが、経済が減速時代に入っていることは明らかなように見える。
そういう時代に、「ダウンシフト」というライフスタイルが徐々に広がってきつつある。
「ダウンシフト」(downshift)とは、生活のペースを下げて、ゆとりある生活に切り換えていくことを指します。
元々は「車のギアを1段下げる」という意味のダウンシフトが転じて、「生活のギアを切り替えること」
つまり「少ない消費と少ない収入で充足感を得る暮らし方を自発的に取り入れること」、「収入が減っても、ストレスの多い仕事を辞めて、よりシンプルで幸福が感じられる生活に切り替えること」や「出世競争、競争社会(rat race)からの離脱」といった社会的行動の意味で使われ始めました。
シンプルに生きよう!今日からあなたもダウン・シフター
初めて「減速主義=ダウンシフターズ」を名乗ったのは『減速して生きる―ダウンシフターズ』幻冬舎(2010年10月)の著者、高坂勝氏だという。
高坂氏は、1970年、横浜生まれ。
大卒後に勤めた大手企業を30歳で退社し、6.6坪の小さなオーガニック・バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」を開業した。
ダウンシフターズの広がりを具体的に示すのは、若者の就職活動の変化だろう。
「週休4日、月収15万」という「ゆるい就職」を支援するプロジェクトの主催する就職説明会が人気だという。
これまで当たり前とされてきた週5日フルタイム・正社員という働き方に代わる、新たなワークスタイルである。
新卒の学生から25歳までの若者を対象に、週3日勤務で月給15万円の派遣や契約社員等の仕事をマッチングする。
求職者向け説明会が9月2日に行われ、自分に合った働き方を求める若者たちが集まったという。
「ゆるい就職」を仕掛けるのは、全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や、女子高生による自治体改革ユニット「鯖江市役所JK課」などを企画してきた人材・組織コンサルタントの若新雄純氏。人材派遣・紹介は人材サービス会社のビースタイルが行う。若新氏は、「今は昔のように、車やマイホームに象徴される誰もが求める『普通の幸せ』のために、みんなが横並びでがむしゃらになって働く時代ではなくなった。仕事のやりがいや価値観が多様化するなか、若者が自分の働き方や人生について模索する時間が必要なのでは」と企画の背景を説明する。
週休4日、月収15万・「ゆるい就職」説明会に集まった高学歴の若者たち
ひと頃、「ノマド」が話題になった。
佐々木俊尚『仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)』(0907)のサブタイトルが、「ノマドワーキングのすすめ」であった。
⇒2011年2月21日 (月):知的余生の方法とノマドスタイル/知的生産の方法(11)
「ノマド」は、もともとは遊牧民のことで「時間、場所、人間関係、お金などに縛られない自由な生き方・働き方」を意味する。
情報通信技術の発展により、時空の制約が小さくなったのでノマド的生活が可能になったと言われる。
例えば、プロブロガー(ブログを書いて生計を立てている人)のイケダハヤト氏は、東京から高知に移住したが、ハンディはまったくないという。
イケダ氏はノマドの典型例であろうが、誰もが可能というわけではないだろう。
安倍内閣は地方創生の司令塔として「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、実力者といわれる石破茂氏を大臣を据えた。
しかし、組織を作り、実力大臣が座っても社会的な価値観の変容を伴わなければ、地方創生は不可能であろう。
イケダ氏は社会のOSと表現しているが、上り坂から下り坂へギアを変えることが人ようなのではないか。
高市早苗新総務大臣が盛んにローカル・アベノミクスと口にしていた。
アベノミクスがグローバル企業に軸足を置いてきたことを考えれば、ジョークのようにも聞こえるが、ご本人はそんな気は全くないようである。
福島原発事故の汚染水は「完全にコントロールされている」と言った内閣には、整合性などまったく意識しないということであろう。
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