言論弾圧は中国共産党のオウンゴール/世界史の動向(26)
ウイグル族の経済学者、イリハム・トフティ氏に対し、新疆ウイグル自治区の裁判所が23日、無期懲役と政治的権利の終身剝奪に加え、全財産を没収する判決を言い渡した。
ウイグル族をめぐる問題は中国中央政府(=中国共産党)のアキレス腱のように思われる。
⇒2013年11月 4日 (月):天安門自爆テロ?/世界史の動向(1)
⇒2014年5月27日 (火):緊迫するウルムチ/世界史の動向(14)
イリハム氏は、ウイグル族の自治を確立し、漢族との融和をめざすという立場だったといわれる。
同氏は、ウイグル族の権利の擁護は訴求したが、ウイグル独立の主張には賛同してこず、公判でも「私は一貫して国家の分裂に反対し、いかなる分裂活動にも参加していない」と語っていた。
穏健派とみられてきた学者に対し、重い判決を下したことは、当然のことながら国際社会からは批判的な目で見られよう。
改めて、ウイグル族独立問題をレビューしてみよう。
新疆ウイグル自治区は中国の西端に位置し、人口約2000万の半分がイスラム教徒のウイグル族で占められている特殊な地域です。中国が王朝だった時代には、中国やモンゴル遊牧民族の圧力を受けながら独立と従属を繰り返していました。この地域にある楼蘭という古都はシルクロードの舞台としても有名な場所です。しかし1949年に中国共産党が政権を握って以降は、完全に中国に併合され、1955年に新疆ウイグル自治区という名称になり今に至っています。
中国当局は、新疆ウイグル自治区に大量の漢族を移住させ人口比を逆転させようとしており、政治や経済といった重要な分野では漢人が大きな影響力を持っています。また中国は建前上、宗教を否定する社会主義国家なので、イスラム教の活動について常に監視下に置いています。このため一部の住民は中国の統治に対して強く反発し、中国からの分離独立を主張しています。
<中国>イチからわかるウイグル族独立問題
新疆ウイグル自治区では、漢族とウイグル族の民族対立が原因と疑われる衝突事件が相次いでいる。
危機感を深める習近平指導部にとって新疆の安定は最優先課題の一つである。
イリハム氏は元中央民族大学副教授で、ウイグル関連サイト「ウイグルオンライン」の開設者である。
昨年十月の天安門前の車両突入・炎上事件後は、当局がウイグル族によるテロと断定したことを疑問視する発言をしていた。
穏健派のイリハム氏に対して、指導部は強硬な取り締まりで臨んでおり、イリハム氏にも厳罰をもって対処した。
中国では裁判所も共産党の指導下にある。
新華社通信によると法院は、イリハム氏が「ウェブサイトや大学の授業で民族分裂の思想を広め、犯罪集団を形成。国家分裂を目的とした犯罪活動を実施した」と認定した。
穏健派知識人に対して強硬姿勢で言論封殺を図ったと批判されても抗弁できまい。
イリハム氏を厳罰に処したことは、長期的には中国共産党の威信を低下させるものであると考える。
香港の行政長官選から民主派の候補を事実上排除したことも同様の文脈上にあると言えよう。
中国の民主活動家・王丹氏は次のように批判している。
中国の民主活動家、王丹氏(45)は1日、台北市内で記者会見し、中国が香港の行政長官選から民主派の候補を事実上排除したことについて「自分が決めた人の中から選ばせるのは、やくざの手法だ」と批判した。
王氏は「中国共産党の行動の本質は反民主主義だ」とした上で、民主的な選挙の実現は「人類社会の基本的な文明の問題」と述べ、香港市民の抗議活動を支持するよう訴えた。中国が武力鎮圧に乗り出した場合、「(香港市民への)ノーベル平和賞の申請運動を始める」とも話した。
王丹氏、香港長官選は「やくざの手法」と中国批判
中国の統治能力のキャパシティを越えているのではないか?
音を立てて崩壊していく様が見えてきたようだ。
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