昭和天皇実録の公開と検証の課題/日本の針路(40)
宮内庁はが9日、昭和天皇の生涯を記録した「昭和天皇実録」を公開した。
私は寺崎英成、 マリコ・テラサキミラー 『昭和天皇独白録・寺崎英成御用掛日記』文藝春秋(1991年3月)を手にしたことがあるが、今回の「実録」は正史という位置づけのものであろう。
正史であるが故の限界もあるだろうが、今後第一級の史料として活用されるものと思われる。
正史が100%信用できないことは、『日本書紀』からしてそうであったのだが、稗史を多面的に活用して検証すればいい。
ちなみに明治以降に作成された「実録」には以下のようなものがある。
昭和天皇実録 出典、曖昧さ残す
私も個人的には終戦の経緯や「2.26事件」の経緯など多くのことに関心があるが、その1つとして靖国神社参拝に関する「富田メモ」の問題がある。
富田メモについて、Wikipediaから抜粋する。
日本経済新聞2006年7月20日朝刊第1面トップで「昭和天皇、A級戦犯靖国合祀に不快感」という見出しでメモの内容を報じるとともに、メモの写真の一部を公開した(経済関連の重要ニュースを通常一面トップを基本とする同社では異例の対応であった)。その中で、昭和天皇が第二次世界大戦のA級戦犯の靖国神社への合祀に強い不快感を示したという内容が注目された。各報道機関・番組も、この記事を大きく報道した。
いわゆる右派はA級戦犯合祀原因説にこぞって反対した。
・百地章:非公式のメモをA級戦犯分祀論に結びつけるのは、天皇の政治利用になりかねない
・上坂冬子:昭和天皇の意思明確にと新聞に書かれていたが、これは早とちり
今回の「実録」で、天皇が靖国神社に参拝しないのは、A級戦犯の合祀が理由だと天皇自身が話したとする富田メモと符合することが分かったという。
メモの中身には触れていないが、その存在と内容を報じた日本経済新聞の報道があったことをあえて記述した上、メモを出典として明示していることなどから実質的にメモの中身を追認したと受け止められる
1988(昭和63)年4月28日に、同日午前、皇居・吹上御所で富田長官と面会したことが記され、「靖国神社におけるいわゆるA級戦犯の合祀、御参拝について述べられる」とある。
内容の詳細は書かれていないが、続けて「なお、平成18年には、富田長官のメモとされる資料について『日本経済新聞』が報道する」と記載されていた。
なお宮内庁は、実録の説明の中で「社会的な反響、影響が大きかったことから報道があったという事実を掲載した」と述べ、「メモの解釈はさまざまで、A級戦犯合祀と昭和天皇の靖国神社不参拝をとらえた富田メモや報道内容を是認したわけではない」としている。
しかし実録は、天皇の動静を記述する依拠史料として、富田メモを約180回にわたり多用しており、史料としての価値を認めている。
また、毎日新聞は、国政に関わる人物が天皇と1対1やごく少人数の場で会話したとみられる記載を集計している。
時代ごとの「天皇と国政」の距離・影響が分かるのではないか、という仮説である。
昭和天皇実録:元首から象徴へ…面談者の数に役割変化反映
戦争の進行と共に軍幹部との面談が激増し、1847(昭和22)年の新憲法施行を機に政治家や官僚の面談が激減したことが具体的データで裏付けられた。
一方、「象徴」となった戦後も国際関係などに関わる重要な時期に政治家らの面談が多くなる傾向がうかがえた。
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