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2014年9月 3日 (水)

改造安倍内閣に見る自民党と民主党の人事力の差/日本の針路(35)

安倍改造内閣の陣容と自民党の役員人事が決まった。

 自民党は3日午前、内閣改造に先立ち、党本部で臨時総務会を開き、党の役員人事を決定した。今回の人事で最大の焦点となった石破茂前幹事長の後任に、谷垣禎一法相(69)が就任し、新四役が誕生した。
 総裁経験者の幹事長就任は初めて。首相は総務会長に重鎮の二階俊博衆院予算委員長(75)を起用する一方、政調会長に衆院当選3回の稲田朋美行政改革担当相(55)を抜てき。選対委員長に茂木敏充経済産業相(58)を充てた。選対委員長を選対局長に格下げし、従来の党三役体制に戻すことも検討したが、四役のままとした。
自民党:「首相のもとで結束」谷垣・新幹事長が強調

焦点だった幹事長人事は、谷垣禎一氏というサプライズである。
TYでは、自分でも予期していなかったと語っていた。
野党として野田政権に協力して消費税増税の道筋を描いた当人であるので、増税路線ということであろう。

石破氏は幹事長に固執する気配を見せて、党内の評判を落とした。
結局閣内に取り込まれ、座敷牢に入れられたも同然である。
「地方創生担当」ということだが、誰がやっても一筋縄ではいかないだろう。

幹事長は野戦に強い人が就くポジションというイメージがあり、公家集団とも言われる宏池会の流れを代表する谷垣氏の起用は意外感がある。
しかも、元総裁の幹事長は初めてということだ。
安倍首相は今回の人事で、長期政権を視野に布陣を敷いたと見られる。
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安倍改造内閣の閣僚名簿を発表 自民党役員人事も決定

今回の人事では、来春の統一地方選と来秋の党総裁選を乗り切るための挙党態勢の構築と公明党との連携強化が狙いと言えよう。
つまり、自民党のための人事である。
滋賀県知事選で負けているので、福島県知事選と沖縄県知事選は必勝であり、統一選後には集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の審議も本格化する。
公明党との協力が不可欠となるが、谷垣新幹事長は民主党政権時代、党総裁として公明党の山口那津男代表と良好な関係を維持してきた。

安倍首相は、幹事長交代という一石で二鳥を得たような感じである。
人事はマネジメントの要諦だと言われるが、この辺りが自民党と民主党の大きな違いではなかろうか。
たとえば野田政権の時の人事を振り返ってみよう。

内閣の要の官房長官は藤村修氏だった。
藤村氏は一般に知られていない政治家だったと言えよう。
少なくとも私にとっては「Who?」という感じであった。
大阪市生まれで広島大学工学部経営工学科卒業。
大学在籍時に交通事故遺児の作文を読んだことをきっかけに交通遺児育英会の活動にボランティアで参加するようになり、大学卒業後、交通遺児育英会の職員を経てあしなが育英会顧問・評議員、社団法人日本ブラジル交流協会理事長を務めた。

1993年、第40回衆議院議員総選挙に旧大阪3区から日本新党公認で出馬し、新党ブームに乗ってトップ当選した。
新進党などを経て、1998年の民主党結成に加わった。
2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙で落選し、2013年10月2日に政界からの引退を表明した。
生来真面目な人柄を窺わせるが、官房長官に必要な「軍師」という感じはしない。
⇒2014年1月 4日 (土):現代軍師論/花づな列島復興のためのメモ(288)

幹事長は輿石東。
韮崎市出身で、都留市立都留短期大学(現:都留文科大学)初等教育科卒業。
支持基盤の日本教職員組合(日教組)を背景に、1990年の第39回衆議院議員総選挙に日本社会党公認で山梨県全県区から出馬し、初当選した。
社会民主党、旧民主党を経て、民主党へ移行。次第に政治的影響力を増大させていき、小沢、菅、鳩山のトロイカに並ぶ実力者になった。

野田氏により党幹事長に起用されたのは、挙党態勢・党内融和を優先させる狙いがあるとされているが、参議院議員の幹事長起用は、民主党はもちろん自民党でも例がなかった。
経歴からも窺えることだが、風貌からしても、あるいは言動でも、寝業師というべき存在だった。
選挙の責任者であり、大衆的な支持が必要な幹事長には「?」を付せざるを得ない。

安倍-菅-谷垣と野田-藤村-輿石を比べてみれば、もちろん直接本人たちを知っているわけではないが、政治的な力量や人間としての魅力において、民主党の劣位は否定できないと思われる。
私は自民党批判派であり、政権交代に大いに期待した1人であるが、人事力という面で見ても、民主党は政権を担う準備ができていなかったと総括せざるを得ない。
2012年12月の解散総選挙には、輿石氏が最後まで反対だったと言われ、野田首相(民主党代表)と輿石幹事長の息が合っていなかった。
大敗するのも当然だったと言えよう。

改装した安倍政権はどうだろうか?
支持率の推移は下図のようである。
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東京新聞9月3日

近年の政権の中では、高支持率で推移してきたと言って良い。
しかし頼みのアベノミクスが不透明になりつつある。
消費税増税による日本経済への影響が、大きく顕在化しつつあるように見受けられる。

 マスメディアの報道からはわかりにくいが、今回のGDP速報以前にも4月の増税以降、経済指標の悪化は続いていた。実質賃金のうち固定給となる「きまって支給する給与」は3カ月連続の▲3%台。消費者に実際の納税義務が発生しない以上(納税者は事業者)、消費税は税金というよりも政府による物価上昇統制となる側面がある。消費税で物価が3%上がる中で賃金が上昇しなければ、実質の手取りは増税分がそのまま下がる。所得が上がらなければ、GDPの6割を占める民間消費に回るとは考えにくい。駆け込み需要によって3月の消費支出が39年ぶりの前年同月比7.2%増となったとは華々しく伝えられても、4月は東日本大震災の発生した11年3月(▲8.2%)以来、3年1カ月ぶりの大幅下落▲4.6%、5月は過去33年間でワースト2位の▲8.0%という数字については報道では影を潜めてしまう。
 さらに、GDPの2割弱を占め民間の設備投資の先行指標とされる機械受注(船舶・電力を除く民需)は、4月が▲9.1%。5月は▲19.5%とリーマンショック時をはるかに超える過去最大の減少幅だったのは周知の通り。これではGDPの事前予想も下方修正せざるをえない。これだけ悪い指標が続けば、15年10月の10%増税にひた走ることは不可能だ。本来こうした予想は増税前にすべきもの。専門家がバイアス抜きの主張ができない、あるいは主張をしてもかき消される現状が日本社会の構造の中にあるとすれば、適正な経済政策の運営は難しい。
GDP急落。本当は悪化している日本経済

消費税増税もさることながら、資本主義の終焉をも視野に入れなければならない様相もある。
『資本論』関連の書籍が陸続と発刊されているのは、資本主義の幾詰まり感があるからではないか。
⇒2014年8月23日 (土):消費増税と景気対策/アベノミクスの危うさ(38)
たとえば、目についたものだけでもつぎのような解説本が出版されている。
・佐藤優『いま生きる「資本論』新潮社(2014年7月)
・木暮太一『超入門 資本論』ダイヤモンド社(2014年5月)
・池上彰『池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論
  集英社(2009年6月)

アベノミクスには、このような大局的な視点が欠けているように思われる。
安倍政権が、近来にない長期政権になるか、はたまた波乱の時を迎えるか、間もなくはっきりするだろう。

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