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2014年9月 5日 (金)

朝日新聞の池上彰氏のコラム掲載騒動/日本の針路(37)

従軍慰安婦問題についての朝日新聞の対応が論議を呼んでいる。
⇒2014年8月22日 (金):続・朝日新聞社はどうなっているのか?/ブランド・企業論(30)
私はすでに朝日新聞の定期購読はやめているので、朝日の記事を読んでいるわけではないし、朝日の誤報問題は今に始まったことではないと考えているので、正直それほどの関心があったわけではない。
朝日新聞の論説が私の感覚とは異なるのは、たとえば消費税増税や大飯原発再稼働に対するスタンスである。

私は、消費税増税や大飯原発再稼働に対する賛否でポジショニングすれば、当時の野田政権と対極に位置していた。
残念ながら民主党の公約破りによって、消費税増税法案は可決され、施行されている。
10%とすることもすでに決まっていて、スケジュールの問題だけである。
朝日新聞は、実行不能な公約を決めた小沢前代表に非があるのだと言っているが、これを詭弁と言わずして何を・・・。
⇒2012年6月28日 (木):戦い(消費増税法案、東電株主総会)済んで、日が暮れて/花づな列島復興のためのメモ(96)

小沢氏らは新党・「国民の生活が第一」を結党し、綱領に「自立と共生」を謳い、脱原発と反増税を掲げた。
「国民の生活が第一」は、マスメディアの小沢タタキなどにより衰勢となり、それまで一貫して小沢と行動を共にしてきた岩手の地方議員及び後援団体の大規模な離脱などを招いた。
総選挙に際しては、解党して卒原発を掲げた嘉田由紀子氏らの「日本未来の党」に合流したが、総選挙後嘉田氏らが離脱して「生活の党」に改称した。
結果として、存在感を失ったことは否めなないが、政策の一貫性は維持していることが、状況追随的な民主党とは差異がある。
一連の流れの中で、「一強多弱・政高党低」という現在の政治状況が生み出された。

この流れに、朝日新聞の論説がどの程度の影響力があったのかは不明であるが、昔の朝日新聞はもっと矜持があったのではなかろうか。
というような言い方は、老化を示すものだと言われるが、オピニオンリーダーとして輝いていたのは事実であろう。
⇒2012年7月12日 (木):民自公翼賛体制と朝日新聞の変質/花づな列島復興のためのメモ(108)
⇒2013年10月14日 (月):朝日新聞社はどうなっているのか?/ブランド・企業論(3)

今度は、池上彰氏のコラムをめぐっての騒動である。
池上氏については、分かりやすいニュース解説に定評があり、啓蒙書も多い。
⇒2014年2月 8日 (土):池上彰氏の解説する城南信金理事長吉原毅氏の脱原発論/原発事故の真相(104)

佐藤優氏は、『いま生きる「資本論」』新潮社(2014年7月)の中で、池上氏のことを労農派的と評していた。
労農派は、日本資本主義論争において講座派と対立した非日本共産党系マルクス主義者集団であるが、私は池上氏を良識派ではないかと思う。
マルクス主義者だという印象はなかったので、記憶に残っている。
⇒2014年8月18日 (月):実質GDPが前期比年率マイナス6.8%/アベノミクスの危うさ(37)

池上氏のコラム問題は以下のような形で始まった。

 ジャーナリストの池上彰氏が朝日新聞に連載しているコラムで、同紙による従軍慰安婦報道の検証記事を取り上げようとしたところ、掲載を断られていたことが3日、池上氏への取材で分かった。池上氏は連載の打ち切りを申し入れた。
 コラムは「池上彰の新聞ななめ読み」。毎月1回、朝日を含む各紙の報道ぶりをテーマを絞って読み比べ、内容を論評している。池上氏によると、8月分として掲載予定だった原稿で、朝日が慰安婦報道を検証した特集(8月5、6両日掲載)に言及したところ、朝日側から「掲載できない」と通告されたという。
 池上氏は「これまで、いつも自由に書かせてもらっていたが、今回に限って『掲載できない』と言われた。それでは信頼関係が崩れると考え、打ち切りを申し入れた」としている。
 朝日新聞社広報部は「連載中止を正式に決めたわけではない。今後も池上氏と誠意をもって話し合う」とするコメントを出した。
池上彰氏、朝日新聞に連載中止申し入れ 慰安婦記事の掲載断られ

これに対し、朝日新聞は、世間の批判に抗しきれなかったのであろう。
結局次のような対応をとった。

 朝日新聞が8月初めに掲載した過去の慰安婦報道に対する特集記事について、池上彰さんがコラム「新聞ななめ読み」で取り上げました。本社はいったん、このコラムの掲載を見合わせましたが、適切ではありませんでした。池上さんと読者の皆様におわびして、掲載します。
<お知らせ>池上さんコラム、掲載します

池上氏のコメントは以下のようであった。

私はいま、「過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ」という言葉を思い出しています。今回の掲載見合わせについて、朝日新聞が判断の誤りを認め、改めて掲載したいとの申し入れを受けました。過ちを認め、謝罪する。このコラムで私が主張したことを、今回に関しては朝日新聞が実行されたと考え、掲載を認めることにしました。

池上氏の対応は、オトナということであろうが、そもそも朝日新聞はなぜ掲載拒否のような愚行にでたのであろうか?
一般の会社の場合、たとえば自社製品に対するクレームは改善のチャンスと捉えよ、とされる。
社会の木鐸を自認するものとして、批判されることに耐え難かったのであろうか?

週刊誌や産経、読売等のライバル誌・紙の批判のボルテージは上がる一方のようであるが、「そんなに張り切っていいの?」と冷水をかけておきたい。

 最近の身の回りで強まる表現活動や言論空間を制限する動きは見過ごせない。
 さいたま市大宮区の三橋公民館は、市民が「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句を月報に載せなかった。 東京都国分寺市では十一月に開かれる国分寺まつりに、市民団体の「国分寺9条の会」や「バイバイ原発/国分寺の会」の参加が認められなかった。
 多様な考えが民主主義を強くする。異論や反論を排除せず、熟慮する場がつくられるべきだ。
池上コラム問題 言論を大切にしたい 

言論を大切にしないと歴史を繰り返すことになる。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)
⇒2014年8月31日 (日):ヘイトスピーチを国会デモ規制に短絡させる思考/日本の針路(33)

一度目は悲劇としてであるが、二度目は喜劇としてである。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
⇒2014年9月 4日 (木):改造安倍内閣、2度目は喜劇にならぬように/日本の針路(36)

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