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2014年9月25日 (木)

シリア空爆が自衛権の発動なのか?/世界史の動向(27)

米軍が22日、シリア領内のイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の拠点に対する空爆をアラブの友好国と共同で実施した。
8月に開始したイラク北部への空爆に続く武力行使であるが、シリアでは初めての空爆である。
⇒2014年8月 9日 (土):アメリカがイラクで空爆を再開/世界史の動向(23)

オバマ米大統領は23日、イスラム過激派組織「イスラム国」に対するシリア領での空爆作戦に参加した中東5か国代表らと会談し、「世界が結束しているという明確なメッセージを発した」と述べ、作戦が「有志連合」の連携の成果であることを強調した。
 米軍によると、23日のシリア空爆は計24回に及び、ステルス戦闘機F22を初めて実戦に投入し、巡航ミサイル「トマホーク」も47発撃ち込んだ。8月8日のイラクでの空爆開始以来、最大規模となった。
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シリア空爆最大規模、「世界が結束」米強調

他国の紛争に慎重だったオバマ大統領の方針転換である。
国際社会挙げて「イスラム国」を叩かなければならない、と宣言した以上、米国がシリア問題に介入せざるをえなくなるのは必然だったとも言える。
しかし、米軍のシリア領空爆には国際法上の疑義が呈されている。

イラクの場合には、当事国の要請を受けて、という手順を踏んだ。
シリア政府は「イスラム国やその他のテロリストと戦ういかなる国際的努力も支持する」と事実上容認したとも見られるが、少なくとも手順的には問題を残しているだろう。
米国は23日、空爆をシリア領内で実施したことについて、「国連憲章51条に基づく自衛権行使」だとする文書を国連に提出し、これを法的根拠としてシリア空爆の正当化を図ろうという姿勢だ。

だが、フランスがシリアからは支援要請を受けていないことを問題視し、シリアには軍事介入しない姿勢を鮮明にしている。また、イランも「シリア政府の同意か国連安全保障理事会の決議が必要だ」などとする考えを明らかにして、米国に釘を刺した。
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シリア空爆、米「自衛権行使」 国連に文書、正当化図る

イスラム国をめぐる構図は複雑であるが、基本はサウジアラビアが資金源のスンニ派とイランが資金を出しているシーア派の対立である。
⇒2014年6月18日 (水):シーア派とスンニ派/「同じ」と「違う」(76)
しかし、シリア国内では、体制、反体制、イスラム国などの諸勢力が争っている。
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アメリカVSイスラム国、全面戦争に突入か!? 海外の反応。

昭和14(1939)年夏、日本はソ連と共産主義の脅威に対抗すべく、ドイツとの日独防共協定を軍事同盟へ発展させようと交渉を進めていたが、8月23日にドイツはソ連と独ソ不可侵条約を締結した。
8月28日、平沼騏一郎首相が「欧州情勢は複雑怪奇」という言葉を残し、総辞職した。
国際政治の駆け引きは「複雑怪奇」なのが相場ともいえるが、シリア情勢もまったく「複雑怪奇」という以外にない。

イスラム国をめぐる構図は、以下のようである。
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東京新聞9月24日

今回の空爆に参加している国は以下のようである。
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静岡新聞9月25日

「イスラム国」はゲリラ組織と国家の中間的な組織であると言われる。
つまり不定形の部分があるということだ。
移動しながら活動を続ける組織ならば、空爆しても簡単に逃げられるだけだ。
「イスラム国」が「人民の海」に紛れているならば、空爆の効果は限定的だろう。

イラク政治史が専門の酒井啓子千葉大学教授は次のように言う。

シリア内戦に周辺国が好き勝手に介入した結果、「イスラーム国」というフランケンシュタインを作り上げた。その作った張本人たちであるアラブ湾岸諸国が、そのフランケンシュタイン出現の責任を自覚し、回収に積極的な役割を果たす必要がある。チェチェンや北アフリカから戦闘員が「イスラーム国」に流入していることを考えれば、ロシアや北アフリカ諸国、そしてそれらの背景にある西欧諸国もまた、「イスラーム国」というフランケンシュタインの創り主である。
 
 しかし、フランケンシュタインはすでに自活能力を獲得している。シリアやイラクの石油施設を接収して、石油の闇輸出で収入を得、あちこちで拉致誘拐した者から身代金を巻き上げる。イラクでの戦闘を経て、武器や財産を戦利品として得たことで、「イスラーム国」は、外部からの資金を断たれたとしても、かなりの程度自活できる。
 本来力をいれて行うべきは、そうしたフランケンシュタインの創り主たちの間での本格的な共闘体制のはずだ。それを欠いて空爆だけしていればよい、というのでは、結局は地元社会の「責任をとらない余所者たち」への不信感を高めるだけである。
シリア空爆の意味

オバマ政権の中東戦略は迷走している。
2011年末にブッシュ前政権が始めたイラク戦争の終結を宣言したが、イスラム国の勢力拡大を受け、イラクでの戦いを再開せざるを得なくなった。
8月に開始したイラクでの空爆はこれまでに190回以上に達しているが、イスラム国の勢いが弱まる気配はない。
底の見えない戦いに進む決断をしたが、オバマ大統領の苦渋には終わりが見えない。

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