iPS細胞による網膜再生手術/日本の針路(42)
STAP細胞問題で信頼を失いかけた日本の再生医療が新しい段階に入った。
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターと先端医療センター病院(神戸市)が12日、iPS細胞から作った目の網膜細胞を人に移植する世界初の手術を実施した。
細胞が副作用なく定着し安全性が確認されればは、研究段階から実際の治療へ大きく前進する。
患者は網膜で重要な役割を果たす細胞に異常が起こって視力が低下し、失明の恐れがある難病「加齢黄斑変性」を患う兵庫県在住の七十代女性。昨年八月、理研が開始した臨床研究の患者募集に応じた。
iPS細胞は体中の細胞に変化でき、再生医療で最も有望視されているが、体内でがん細胞などに変化することがないとは言い切れない。初臨床の対象として、がんになりにくい上、治療する範囲が狭いため必要とするiPS細胞が少なくて済む目の細胞が選ばれた。今後四年間は患者の検査を続けて異常がないかを確認する。
iPS世界初移植 理研などが網膜細胞を難病女性に手術は、異常な血管ができて傷ついた色素上皮を専用の器具で取り除き、縦1・3ミリ、横3ミリの色素上皮細胞のシートで置き換えた。先端医療センター病院の栗本康夫・眼科統括部長(53)ら眼科医3人が執刀し予定通り2時間で終了。高橋リーダーが立ち会った。
執刀チームは「多量出血などのトラブルはなく、成功したと言っていい」としている。患者は元気な様子で、約1週間後に退院できる予定。計6人の手術を計画しているが、2人目以降の時期は未定だ。
iPS細胞:世界初の移植手術 目の難病患者に
京都大学の山中伸弥教授がマウスで初めて作製してから8年で、iPS細胞は実用化に一歩近づいた。
高橋政代リーダーは、亡くなった笹井芳樹氏から相談を受けたことがきっかけでiPS細胞の研究を始めたという。
⇒2014年8月 5日 (火):STAP論文問題のキーパーソン・笹井芳樹/追悼(53)
STAP細胞の問題で靄がかかっていたような再生医療に、光が射したといえよう。
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