消費増税と景気対策/アベノミクスの危うさ(38)
8月21日の日本経済新聞のトップ記事を見て、「?」と思った。
消費税10%化が予定されているが、景気への悪影響を防ぐために、景気対策を講じるというのだ。
つまり公共事業(や軍需産業へのテコ入れなど)で景気を下支えしようということだろう。
純国産戦闘機の開発が同じ紙面に載るというのも暗示的である。
⇒2014年5月16日 (金):成長戦略の実体は原発と軍需産業か/アベノミクスの危うさ(31)
しかし、消費増税は何のためだあったのか?
消費税を上げる法律は、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」である。
つまり、「増税分は社会保障に充当する」というのが消費増税の大義であったはずだ。
⇒2014年4月 5日 (土):消費税増税の趣旨と現実/アベノミクスの危うさ(30)
増税すれば景気に悪影響が生ずるのは想定される範囲内というか、当然であろう。
現に、実体経済ははかばかしくないように見える。
⇒2014年3月10日 (月):消費税増税で景気はどうなるか?/アベノミクスの危うさ(29)
⇒2014年8月18日 (月):実質GDPが前期比年率マイナス6.8%/アベノミクスの危うさ(37)
「新成長戦略」が喧伝されている。
⇒2013年10月28日 (月):競争力強化法案は有効な成長戦略になり得るか/アベノミクスの危うさ(19)
安倍首相は、第186国会冒頭の施政方針演説で、「七 イノベーションによって新たな可能性を創りだす」としている。
⇒第百八十六回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説
しかし、バブル崩壊後、何回も成長戦略が策定されていながら、いずれも奏功していない。
要は、官主導の成長あるいは計画的イノベーションということにムリがあるように思う。
⇒2014年2月 1日 (土):官製成長戦略でイノベーションは起きるか/アベノミクスの危うさ(26)
私はアベノミクスという経済政策パッケージが破たんしているのではないかと思う。
いくら気合いを入れてやっても、もともとムリなものはうまくはいかない。
景気の動向を左右するのは、企業というよりも消費者・生活者である。
フランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本論』が話題になっている。
邦訳は未刊であるが、「週刊東洋経済」誌で 「『21世紀の資本論』が問う 中間層への警告/人手不足の正体」(2014年7月)という特集が組まれるなどしている。
「21世紀の資本論」が問う、中間層への警告
上掲「東洋経済」誌によれば、以下のような主張だという。
資本主義は格差を拡大するメカニズムを内包している。富裕層に対する資産課税で不平等を解消しなければならない。さもなければ中間層は消滅する。
アベノミクスは富裕層優遇の政策ではないのか。
中間層が消滅してしまったのでは成長はあり得ないだろう。
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