ヘイトスピーチを国会デモ規制に短絡させる思考/日本の針路(33)
自民党は8月28日、人種差別的な街宣活動「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)を規制するとともに、国会周辺の大音量のデモ活動の規制強化を検討し始めた。
また、国会周辺での拡声器を使ったデモ活動は静穏保持法で禁じられているが、摘発事例が少ないという現状について、会合に参加した高市早苗政調会長は「(デモ活動がうるさくて)仕事にならない」と発言。同法を改正し、国会周辺でのデモ活動の規制強化を検討する考えを示している。
自民党のこの動きに対し、共産党の志位和夫委員長はツイッターで、
「人種差別を煽り立てるヘイトスピーチと、政治に対して市民が意思表示するデモとは、全く別のものです! 両者を同列視し、デモを規制強化の対象とすることは、民主主義の根幹を壊すものです!」
と、強く反発している。また、社民党の議員からも、以下のように批判の声が出ている。
「自民党内で、ヘイトスピーチにかこつけて、官邸前での街頭宣伝行動を規制しようという議論があるとのこと。脱原発や集団的自衛権行使反対などの国民の切実な声を封じようとする動きであり、極めて問題です」(社民党・吉田忠智党首)
「脱原発や秘密保護法や集団的自衛権の行使反対の国会の周辺の活動を規制しようとしている。市民活動に対する弾圧だ」(社民党・福島みずほ副党首)
ちなみに、静穏保持法は、国会や外国公館、政党事務所などの周辺で、静穏を害するような拡声器の使用を制限する法律で、正式名称は「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」。選挙運動または選挙における政治活動や、災害時などは例外として規定されている。
自民が国会デモ規制検討 野党「民主主義の根幹壊す」
俗に、「味噌もクソモ一緒」などというが、高市早苗政調会長の発言はまさにその類であろう。
高市氏は入閣も噂されている安倍シンパである。
「福島第一原発事故で死者は出ていない」という発言と共に、この人たちの思考回路が表面化した発言と言えよう。
⇒2013年6月19日 (水):高市発言の思考の文脈/原発事故の真相(73)
原発事故の死者とは何かということに対する考察が欠落しているし、木を見て森を見ない(見ようとしない)態度は批判されるべきだろう。
福島地裁の判決を重く受け止めるべきだろう。
⇒2014年8月27日 (水):自殺と原発事故の因果関係を認定/因果関係論(24)
しかし、高市氏のような発言は、ボディブローのように市民社会を圧迫してくるであろう。
さいたま市の「九条デモ俳句」の掲載拒否はバカバカしい自己規制である。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)
バカバカしいと言って笑って過ごしていると、どんどん拡大して行く。
「国分寺まつり」で毎年ブースを出している「国分寺9条の会」が今年の出店を拒否された。
東京新聞8月29日
「国分寺まつり」実行委員会の言い分は、「内容が政治的である」からということである。
さいたま市と同様の発想であるが、市レベルでどんどん萎縮しているのであろう。
「政治的」と言っても、憲法を護ろうというのは、考えてみれば国民として当たり前のこととも考えられる。
デモは有権者が政治に対して意思表示をするための重要な手段である。
その規制の検討は、原発再稼働、集団的自衛権、消費税、沖縄基地問題・・・等々に対する安倍政権批判を封じる狙いがあるとみるのが自然であろう。
言論の抑圧は思考の抑圧である。
暗い時代へ向かっていることは間違いないが、時代を逆転するようなことが長続きするとも思えない。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
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