アメリカがイラクで空爆を再開/世界史の動向(23)
アメリカが8日、イラク北部で攻勢を強めるイスラム過激派組織「イスラム国」への空爆に踏み切った。
今回の空爆決定は、イラク政府からの要請に基づく措置であり、イラク国民への迫害に対する人道的被害への対抗策と米国民の保護が目的だとする。
オバマ政権は、イラク戦争の「終結」を宣言していたが、再びイラクに武力介入せざるを得ないことになったわけである。
オバマ大統領は、イラク戦争終結を唱え当選した。
当然、選ばれた」大統領として介入には消極的であり続けたが、空爆せざるを得ない状況に追い込まれたことは、国際情勢がオバマ大統領が考えているようには推移していないことを示している。
オバマ大統領はイスラム国が勢力を拡大しつつある今年初め、「彼らは大学の2軍選手」と発言していた。
しかし、イスラム国は着実に勢力を拡大している。
今回の空爆は、イラク北部クルド人自治区の中心都市アルビルである。
イラク限定空爆 「イスラム国」標的 軍事行動、撤退以来3年ぶり
イスラム激派組織「イスラム国」の移動砲台がターゲットで、同市に滞在する米国人の保護を目的としている。
限定的なものであるとされるが、戦闘行為が当初の意図を越えて拡大する事例は事欠かない。
イラクでは国民の約60%がシーア派で、約20%がスンニ派である。
「イスラム国」はスンニ派であり、背景にシーア派が軍や主要官庁の高官を独占する現状に対する不満がある。
⇒2014年6月18日 (水):シーア派とスンニ派/「同じ」と「違う」(76)
⇒2014年6月17日 (火):イラクにおける勢力対立の図式/世界史の動向(19)
スンニ派の過激派組織「イスラム国」は今年6月にイラク北部・西部で大規模な侵攻を始め、首都バグダッドをうかがう勢いをみせていた。
「イスラム国」は、ラマダン明けの7月下旬以降に攻勢を強め、同国最大のモスルダムなどを次々と制圧した。
クルド人部隊はほとんど抵抗せずに撤収し、迫害を恐れる住民は混乱に陥った。
だが、「イスラム国」に空軍力はなく、最新鋭の対空兵器も保有していないとみられる。
米軍の空爆は一定の「抑止力」になり得るだろうが、スンニ派は、約16億人のイスラム教徒全体から見れば、約9割を占める圧倒的多数派である。
アメリカがスンニ派を攻撃対象にしたことは、イスラム圏の反アメリカ感情を増幅する恐れがある。
宗教は救いなのか、災いなのか、改めて考えざるを得ない。
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