鎮魂の季節に思う/日本の針路(22)
死者は季節を問わないが、毎年、8月は鎮魂を意識する月である。
⇒2013年8月16日 (金):靖国に祀られざる者の鎮魂
旧暦7月15日が、盂蘭盆(ullambana)と呼ばれる父母や祖霊を供養する行事が行われる日である。
旧暦7月15日は、新暦では2014年は8月10日にあたる。
年により変わり、8月8日頃〜9月6日頃で、2015年は8月28日、2016年は8月17日である。
一般に、月遅れ開催として、8月15日を「お盆」とするところがほとんどである。
お盆の「盆」は、霊に対する供物を置く容器を意味する。
それが、供物を供え祀られる精霊の呼称となったといわれる。
盂蘭盆と盆が混同して習合したという説もある。
祇園祭とともに京都の夏を代表する風物詩の1つである京都の五山送り火は、8月16日に行われる。
東山如意ケ嶽の「大文字」が最も有名であり、大文字が送り火の代名詞になっている。
五山とは、如意ケ嶽のほかに金閣寺大北山の「左大文字」、松ヶ崎西山(万灯籠山)・東山(大黒天山)の「妙法」、西賀茂船山の「船形」、嵯峨曼荼羅山の「鳥居形」である。
死者の霊をあの世へ送り届ける儀式であり、鎮魂の月に相応しい行事である。
私が子供の頃は、家でもお盆の行事として、家の出入口で迎え火や送り火を焚いた記憶がある。
家に迎えた精霊は、送り火で送り出すが、船にしつらえた灯籠を川や海へ流すのが精霊流しである。
盆の間に供えた野菜や果物などのお供え物も流したが、いつの頃か河川環境の保全のためであろうが、こういう行事は姿を消した。
現在は仏壇もないマンション暮らしであるから、「お盆」の過ごし方と言っても、心の持ちようくらいしかない。
偶然ではあろうが、8月15日は終戦の日である。
戦争で亡くなった人を慰霊する意識と重なって、鎮魂の思いが増すのであろう。
私は、戦死者への鎮魂ということでは、青春の愛読書阿川弘之『雲の墓標』や大木惇夫の詩『言うなかれ、君よ別れを』をベースにした久世光彦さん演出のTVドラマが思い浮かぶ。
⇒2008年5月27日 (火):偶然か? それとも……③『雲の墓標』
⇒2008年5月29日 (木):『言うなかれ、君よ別れを』
そして、広島、長崎への原爆投下も8月である。
日本人にとって、殊に忘れられない、忘れるべきでない出来事であろう。
松井一実・広島市長は、6日の平和記念式典で、「今こそ、日本国憲法の崇高な平和主義のもとで、69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要がある」と指摘した。
出席した安倍首相の胸には響かなかったようであるが。
戦争に良い戦争も悪い戦争も、基本的にはないと考えるが、原爆投下こそ戦争犯罪として考えるべきであろう。
⇒2007年8月 9日 (木):長崎への原爆投下
今もイスラエルによるガザの空爆の様子が映像で伝えられているが、どう見ても犯罪行為であろう。
戦争の大義などは、振り返ってみれば大概虚妄であるか、せいぜい一面の真実に過ぎない。
大東亜戦争におけるアジアの解放、イラク戦争におけるイラクの自由・・・・・・。
⇒2014年4月30日 (水):吉本隆明『高村光太郎』/私撰アンソロジー(32)
現在も世界のあちこちで戦争状態である。
安全保障環境の悪化ではあるが、集団的自衛権が抑止力になるのか?
広島市長の言葉の方にリアリティが感じられるのではなかろうか。
私自身は、昭和20年の8月15日は未だ1歳であったから、もちろん一切の記憶はない。
初めての記憶は4歳くらいであろう。
それ以後の社会の変動は目覚ましいものである。
一生のうちに、何世代分かの体験をできたということは、有難いことというべきであろう。
そして、多くの同世代やもっと若い人たち見送った。
私自身が、脳血管障害の部位がもう少し違えばどうなっていたかも分からないし、手当てが遅れていればということもある。
⇒2010年3月 6日 (土):闘病記・中間報告
幸いにして、生きながらえてささやかな活動もできる。
ムダにしてはいけないと思う。
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