マレーシア機撃墜は偶発的な事故か?/世界史の動向(24)
ウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜された事件から1カ月経った。
⇒2014年7月18日 (金):マレーシア航空機がウクライナで墜落/世界史の動向(22)
マレーシア機撃墜、真相巡り対立続く
墜落現場周辺の戦闘は依然として収束の様相は見えず真相究明に向けた現地調査も十分進んでいない。
マレーシア機といえば、行方不明になった航空機も未だ最終的な報道はない。
⇒2014年3月19日 (水):マレーシア機はどこへ行った?
マレーシア機受難の年であることは間違いないだろうが、ことはマレーシア機に留まるものではないような気がする。
良く知られているように、第一次世界大戦の直接の原因は、サラエボにおける銃弾だった。
1914年6月28日に、オーストリア・ハンガリー二重帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の甥で皇位継承者であったフランツ・フェルディナント大公がサラエボにおいて妻と共に暗殺された。
第一次世界大戦は、当事国の想定を超えて拡大した。
現在、世界情勢は第一次世界大戦当時と類似していると言われる。
日本は勝利陣営に属し、かつ戦火は主としてヨーロッパの範囲であったため、切実感が希薄だった。
それが、東亜・太平洋戦争に突き進む雰囲気を醸成する一因になったと思われる。
⇒2014年7月14日 (月):第1次世界大戦と日本/世界史の動向(21)
撃墜されたマレーシア航空機の乗客の多くの遺体は身元が判明していないままだ。
犠牲者については、遺体の損傷が激しいことなどから、時間が経過すればさらに身元確認は難しくなるだろう。
この事故(事件)について、軍事評論家の田岡俊次氏は次のように解説している。
SA-11は重量690kg、長さ5.55mで、最大射程は32kmとも35kmとも言われ、最大高度は2万2000mに達する。これはキャタピラ式の自走発射機に4発搭載されるが、その他にミサイル管制車、対空監視レーダー車、通信車、予備弾運搬車、整備車が必要で、6輌が1セットで1組のシステム「9K37」となる。操作要員は少なくとも20人は必要と考えられる。いつ敵機がきても対応できるようにするには、要員は3交代分が必要で、その居住設備や食糧、水など、また発電、暖房用の燃料を運ぶトラックもいる。携帯式の対空ミサイルなら歩兵や民兵、ゲリラでも少し訓練すれば使えるようになるが、本格的な対空ミサイルは技術的に高度で、専門的教育・訓練を受けた将校、下士官たちのチームでないと操作できない。
マレーシア航空機撃墜事件! 非難合戦→危機の深化を避ける方法とは
とすれば、目的意識的な撃墜だったのだろうか?
田岡氏は、そうではなくて誤射によるものだろうという。
西から東に向かって飛行する航空機を対空ミサイル部隊のレーダーが捉え、それまでに撃墜したIL76やAn26輸送機と同様、東部に兵員や武器を運ぶウクライナ空軍機と誤信してミサイルを発射した、と考える方が自然だろう。
皮肉にもこうした対空ミサイル誤射による旅客機撃墜「大量殺人」の過去の例はアメリカとウクライナだけにある。イラン・イラク戦争中の1988年7月3日にはホルムズ海峡のイラン領海内に入りイラン砲艇を追っていた米巡洋艦ヴィンセンスが、バンダル・アバス空港から離陸したイラン航空のエアバスA300をレーダーで捉え、イラン戦闘機と誤認して対空ミサイルを発射、撃墜し290人を死亡させた。この事件発表の際、米国防総省はイラン領の小島を地図から消去し「公海上」と主張したが間もなく露見した。また2001年10月4日にはクリミアのウクライナ軍対空ミサイル部隊が演習中、イスラエルのテルアビブから黒海を上空を経てロシアのノボシビルスクへ向かうロシア「シベリア航空」のTU(ツポレフ)154旅客機に長距離対空ミサイルS200(NATO名SA-5、射程距離300km)を発射、黒海に墜落させ、78人が死亡した。
誤射であっても誤射するような条件があったということだろう。
そういう条件を生み出さないようにするにはどうしたらいいか?
第一次世界大戦が、1発の銃弾から始まったとすれば、1発のミサイルが世界大戦に拡大するのはあり得ないことではないと思われる。
私たちは、第二次世界大戦(大東亜戦争、太平洋戦争)の教訓を風化させてはならないだろう。
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