豪雨禍の傾向と対策としての古人の知恵/日本の針路(30)
広島の土砂災害は、目を覆うばかりの惨状だ。
特に、安佐南区の11歳と2歳の兄弟が生き埋めになったという報道には胸が締め付けられる。
弟思いの優しい兄だったという。
東京新聞8月21日
土砂崩れが発生した広島市北部の現場付近では、3時間で204ミリを記録し、平年の8月分の雨量を上回った。
確かに、異常な集中豪雨といえよう。
そのような異常な豪雨はどうして起こるのだろうか?
広島地方気象台は「バックビルディング現象」が起きた可能性が高いとみている。
あまり聞いたことがない。
「バックビルディング現象」とは何か?
同じ場所で次々と積乱雲が発生し、豪雨が集中する現象のことらしい。
気象庁などによると、湿った空気が入り込んで積乱雲が作られ、同じ方向に風が吹いて次々と直線上に並ぶと、局所的な豪雨をもたらす。風上の積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることから、バックビルディング現象と呼ばれる。 2012年7月に九州北部、昨年8月に秋田・岩手県を襲った豪雨災害などでも、この現象が起きたとされている。 広島の上空には、数日前から九州方面と豊後水道方面から暖かく湿った空気が多量に流れ込んで停滞し、大気が不安定な状態が続いていた。広島工業大の田中健路准教授(気象学)は「バックビルディングに間違いないだろう。前線に湿った空気が流れ込み、次々と積乱雲が生まれたのではないか」と分析する。
広島豪雨:バックビルディング現象の可能性
バックビルディング現象であるとして、現在の技術ではバックビルディングが起きる場所や時間を予測するのは困難だという。
それでは不可抗力なのか?
中国山地のマサが雨に弱いことは良く知られている。
土砂災害の危険区域はある程度は特定できるだろう。
実際、災害発生箇所は山裾である。
土砂崩壊は自然現象であるが、災害は社会現象である。
異常な集中豪雨はこれからも発生するであろうが、その予測が難しいとしたらどうすべきか?
地震と同じことであろう。
8月21日の東京新聞の朝刊コラム「筆洗」に、『常陸国風土記』に出てくる夜刀神のことが書いてある。
常陸の国には、角のある蛇「夜刀(やと)の神」がいて、その姿を見たものは呪われたという▼箭括(やはず)の氏麻多智(うじまたち)という者が葦(あし)原を開墾し田にしたところ、夜刀の神が現れて耕作を妨げた。勇敢な麻多智は山際まで追い詰めてから、こう言った。「ここから上は神の地として認めよう。だがここから下は人の田とする。以後、私が祭祀(さいし)者となって、お前を祭るから、どうか祟(たた)ったり怨(うら)んだりしないでくれ」(田中聡著『妖怪と怨霊の日本史』)▼開発には思わぬ危険が伴う。切り開きつつも、自然への畏れを持ち続ける。古代の怪異な話の底には、そうした先人の思いが潜んでいるのか
筆洗
宇佐美正利『風土記説話の謎』高陵社書店(2014年4月)の第2章が「麻多智伝承と常陸の蛇神」である。
麻多智伝承を以下のような図式で解読している。
「温故知新」というが、災害対策、最近の言葉でいえば、減災もしくは国土強靭化も古人の知恵に学ぶべきところが多いようだ。
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