親守詩とコミュニケーション/日本の針路(20)
7月28日の日本経済新聞「春秋」は、ルナールの『にんじん』に触れ、親子のコミュニケーションについて書いていた。
夏休みは親子のコミュニケーションを深める良いチャンスになり得る。
このところ、親による子供の虐待のニュースが多い。
中でも厚木市のケースには胸が潰れるような思いがする。
当時5歳の男児が衰弱死し、約7年後に白骨遺体で見つかったというものである。
警察は36歳の父親を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕したが、5歳と言えば腕白になる頃である。
どうしてそんなことになってしまったのか。
男児は平成13年に生まれ、今年中学生になるはずだった。父親は、18年秋から翌年1月ごろにかけて男児に食事や水を十分与えず、死亡させた疑いがもたれている。親の自覚や愛情が感じられず、やりきれない事件だ。
育児放棄や虐待を防ぐ立場の行政も対応できなかった。神奈川県の厚木児童相談所(児相)や厚木市は、男児が死亡する以前に、異変を把握していたことを認めている。男児が3歳当時の早朝、はだしでいるところを保護した際も迷子として扱い、調査しなかった。3歳6カ月児健診の未受診時も所在確認が十分でなかった。
小学校入学時は事前の学校説明会に親が参加しなかったが、市教育委員会の家庭訪問に応答がなかったため、「空き家」と判断した。厚生労働省の方針に伴い、所在不明児童を詳細に調査した結果、今年5月にようやく不明の事実が県警に通報された。
虐待死7年放置 男児救う機会なぜ逃した
母親も含め、親の身勝手にもほどがある。
昔ならばコミュニティの目があって、虐待が行われていれば何かしらの通報があったのではないか。
隣は何をする人ぞ、は人間関係の煩わしさから解放したが、そのしわ寄せは弱者に襲いかかっている。
そんな中で、「親守詩」という耳慣れない言葉を知った。
「親守詩」は「子守歌」に対する造語である。
「子守歌」をもじった親守詩は、子どもが作った上の句(5・7・5)に親が下の句(7・7)をつなげる連歌。口にできない思いを伝え合う機会として高橋史朗明星大教授が提唱し、全国で普及を目指す動きがある。
「親守詩」普及へ市民有志ら一丸 7月、裾野市大会
その裾野市大会の様子が静岡新聞に掲載された。
静岡新聞7月29日
アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、文化の類型として「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」を提示した。
「コンテクスト」とは、コミュニケーションの基盤である「言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性」などのことでである。
ハイコンテクスト文化とは、コンテクストの共有性が高い文化のことであり、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境のことである。
以心伝心の文化といえようか。
もちろん、どちらが優れているとか劣っているという問題ではない。
多民族か否か、多宗教か否か、歴史はどうか等々の要因の結果である。
日本は典型的なハイコンテクスト文化であると思われる。
⇒2014年6月27日 (金):ITビジネスの動向と日本の伝統/知的生産の方法(98)
中でも連歌(句)は、五七五と七七を交互に繋げていくものであるが、前句の心を付け句にどう繋げるか派コンテクスト理解そのものであろう。
その最もシンプルな形が、五七五と七七を2人で共作するものである。
つまり、親守詩は、ハイコンテクストなコミュニケーションの実践である。
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