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2014年8月14日 (木)

理研笹井氏の自死の問題提起/日本の針路(26)

理化学研究所の笹井芳樹氏の自死は、いろいろな意味で衝撃であった。
STAP論文問題の実質的な意味の中心人物であったのは間違いないだろう。
彼の死によって、何が問われ、何に封印されたのであろうか?
⇒2014年8月 5日 (火):STAP論文問題のキーパーソン・笹井芳樹/追悼(53)

自ら死を選んだ人の胸中に去来したことを生きている人間が云々して余り意味がないとは思う。
「終わるべきときを自覚して、この世に別れを告げ」た人の心の中の動きについて、現に生きている人間が後から憶測して、あれこれ言ってみてもしょうがないのではないか、ということである。
⇒2010年9月 6日 (月):江藤淳の『遺書』再読

STAP細胞とされたものの「正体」は、現時点ではES細胞等が混入したものではないか、というのが有力であるようだ。
「日経サイエンス」誌の8月号に載っている『STAP細胞の正体』という解説記事に書かれている。
⇒2014年7月10日 (木):STAP論文撤回理由書書き換えの怪/知的生産の方法(99)
「Newton」誌9月号の『白紙に戻ったSTAP論文』も同趣旨である。

STAP論文には様々な細胞が登場して素人には分かりにくい。
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『白紙に戻ったSTAP論文』

TS細胞はES細胞と同様に初期胚からつくられる幹細胞である。
幹細胞とは、組織や臓器に成長する(分化する)元となる細胞で、それぞれの臓器で固有に存在するものである。
STAP細胞は新生児マウスの脾臓細胞に弱酸性の刺激を与えることによって得られるとされる。
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FI幹細胞の遺伝子解析データは、FI幹細胞とされているものがES細胞9、TS細胞1の混合物であった可能性が高いことを示していた。
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STAP細胞とされているものが何であったかについては、理研で検証実験が行われていて、まだ最終的な結論は発表されていない。
しかし、仮に「nature」誌の論文に重大な過誤があったとしても、直ちに研究不正があったとはいえない。
⇒2014年6月21日 (土):故意と悪意/「同じ」と「違う」(77)
私は、STAP論文問題には、過誤があったかも知れないが、不正と断定することは尚早であろうと思っていた。

しかし社会は必ずしもそうは考えない論調が支配的だったようである。
特にマスメディアの小保方氏に対する取材は、常軌を逸したものであったようだ。

 神戸・ポートアイランドにある理研発生・再生科学総合研究センターで進められている検証実験の準備を終え、小保方氏が退勤したのが午後8時ごろ。
 この日午後5時半ごろ、理研周辺にマスコミ関係者が手配したとみられる複数台のバイクが止まっていることが確認されたため、タクシーで理研を出た小保方氏は、いったん神戸市中心部にほど近いホテルに立ち寄った。
 取材を避けようと、小保方氏はこのホテルの女子トイレに午後9時ごろまで身を隠したという。ところが、トイレから出た小保方氏に、ロビーで声をかけてきたのが「NHK」を名乗る記者とカメラマンら5人だった。
 小保方氏は再び女子トイレに逃げ込んだが、取材班の中にいた女性がトイレの出入り口まで追いかけ、小保方氏の様子を電話で誰かに報告していたという。
 その後、ホテルを出ようとした小保方氏は、カメラを回しながら質問を投げかける取材班を避けようとしたが、下りのエスカレーターでカメラマンに上下を挟まれ、退路を断たれた状況に。小保方氏はエスカレーターを逆走してロビーに逃げたものの、「ロビー中を追いかけられた」(三木弁護士)そうだ。
 結局、小保方氏はホテルの従業員に助けを求め、従業員の誘導でホテルから脱出できたのは、午後10時ごろだった。
トイレまで小保方氏深追いしたNHK、右手けがで実験に“支障”

メディアだけではない。
冷静な議論が行われるべき学界等でも、一種の集団ヒステリーとも思えるような状態が見られた。 

STAP細胞の論文問題で、理化学研究所による不正調査や検証実験などに対して、約1万5000人の基礎生物学者を抱える日本分子生物学会が、異例の集中批判を展開している。
 STAP細胞が存在したかどうかを調べる検証実験の中間報告は、近く公表される見通しだが、「一連の対応は科学を否定するもの」とする強い批判に、理研はどう応えるのか。
・・・・・・
 同学会理事長の大隅典子・東北大教授が「理研の対応は、税金で研究を支える国民への背信行為。不正の実態解明が済むまで、検証実験は凍結すべきだ」との声明を出し、口火を切った。理研は6月末に着手した不正の追加調査を何より優先するべきだという指摘だ。
 その後、同学会の幹部ら9人も相次いで見解を公表し、学会あげて問題視する姿勢を鮮明にした。「科学的真実そのものの論文が撤回された以上、検証実験は無意味」(町田泰則・名古屋大名誉教授)。「STAP細胞は今や(未確認生物の)ネッシーみたいなもの」(近藤滋・大阪大教授)と、厳しい言葉が並んだ。
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STAPは「ネッシー」…学会、異例の集中批判

これらの批判には根拠はあるのだろうが、集団で襲いかかっている印象は否めない。
上記の分子生物学会の批判に関する報道は、8月2日付である。
精神的に追い詰められていた笹井氏を死へ誘ったのは、この批判紹介記事であったのではなかろうか?
STAP論文に関する過熱報道によって失ったものは余りにも大きい。
しかし、過熱報道によって得たものは余りに少ない。
⇒2014年3月13日 (木):STAP細胞に関する過熱報道/花づな列島復興のためのメモ(315)

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コメント

『国民への背信行為』『不正の追加調査を何より優先するべき』というのは、全くの正論です。誰の眼にも明らかな事をやろうとしないから非難されて当然でしょう。
『精神的に追い詰められていた笹井氏を死へ誘ったのは、この批判紹介記事であったのではなかろうか?』――よってこのような物の見方は完全に本末転倒です。非があるとすれば、理研の方ではないでしょうか?

投稿: | 2014年8月15日 (金) 19時59分

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