危険ドラッグ撲滅のために/日本の針路(24)
乱用者による交通事故が相次いだ「脱法」ドラッグは、「危険」ドラッグに名称変更した。
しかし、名称を変更しただけでは余り効果は期待できないだろう。
⇒2014年7月11日 (金):亡国の脱法ドラッグに有効な規制を/日本の針路(7)
⇒2014年7月25日 (金):「危険ドラッグ」への名称変更だけでは不十分/人間の理解(6)
危険ドラッグの使用経験者は推計約40万人だという。
現在のように、化合物を特定して規制する方式がイタチごっこになるのは当然である。
規制を逃れる化合物は容易に作成できる。
しかも、規制を強めれば強めるほど毒性の強く、しかも正体不明のドラッグが登場してくる。
規制の仕方を考え直さないと乱用は根絶できない。
特集ワイド:続報真相 危険ドラッグ、治療現場の悲鳴
PCP(フェンサイクリジン)は1950年代に開発された麻酔薬であるが、深刻な副作用があり使用が禁止された。
幻覚・妄想、突発的な暴力行動などの精神症状が特徴で、記憶や思考が通常の意識から切り離される解離症状が何時間か続く。
しかし、1970年代に密造されアメリカ国内で大流行した。
脱法ドラッグの多くは、PCPの類似物質であるといわれる。
毒性の強いドラッグが増えた結果、救急搬送される患者も重症化している。
現在は、入院の必要な患者が3分の2まで増えているという。
悪質な交通事故の絡むケースが増えているのも、毒性の強い薬物にシフトしているからではないか。
厚労省は覚醒剤や麻薬に似た幻覚作用などをもたらす物質を薬事法上の「指定薬物」と定め、製造や販売、さらに所持や使用も禁止している。
昨年、中心構造が同じ物質を一括して規制する「包括規制方式」を導入した結果、指定薬物は現在約1400種類に上る。
しかし、「包括規制方式」でも、特定物質を指定する方式では限界があるだけでなく、より危険な方向に進む可能性があることは上述の通りである。
警視庁は5日、交通事故を起こす前でも運転手が危険ドラッグを使用している疑いが強い場合は道交法違反容疑で現行犯逮捕する運用を始めた。
化学物質が分からなくても、未然に事故を防ごうということだろう。
しかし、疑いの根拠に客観的な合理性がないと、恣意的になる可能性がある。
乱用者が後を絶たないのは、人間の好奇心といった問題を別にすれば、流通ルートがあるからである。
つまり、商売にしている人間がいるということである。
商売にならないようにすることがポイントである。
1つの考え方としては、神経系に強い作用を有する物質(特定された化合物ではなく、混合物も含む)の使用は、医師等の限られた資格を有する人間以外は全面禁止にしたらどうだろうか。
違反者には高額の罰金および刑罰を科して、割に合わないようにすることである。
仲介しても商売にならなければ、手を出す人はいなくなるのではないか。
社会の知恵が問われる問題である。
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