再び暗い時代に逆行しないために/日本の針路(23)
70年前に私は生まれた。
清沢洌の『暗黒日記』の1944年の8月8日の項の記述は以下のようである。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
小磯首相、ラジオで放送。何をいっているのか分からぬ。「天皇に帰一し奉る」ということが結論だが、それは何を意味するのか。これぐらい分かったようで分からぬ文字はない。
「何をいっているのか分からぬ」ようなことを首相がいうのは、反知性主義が蔓延していることの表れである。
反知性主義とは、Wikipediaによれば以下のようである。
反知性主義(英語: Anti-intellectualism)は、本来は知識や知識人に対する敵意であるが、そこから転じて国家権力によって意図的に国民が無知蒙昧となるように仕向ける政策のことである。主に独裁国家で行われる愚民政策の一種。
「意図的に国民が無知蒙昧となるように仕向ける政策」をとっているのかどうか分からないが、わが国の現状は「反知性」的であるように思う。
東浩紀氏は、次のようにつぶやいている。
日本は徹底して反知性主義の国(頭いいひとや上品なひとをバカにする国)で、そこがいいとこでもあるからね。アニメとかニコ動とかそういう国だから栄えてるわけでね。むずかしいですよね。
https://twitter.com/hazuma/status/482354534648254464
もちろん異論はあるだろう。
しかし、麻生副総理(元首相)が、未曾有を読めなかったり、アニメ好きなのは周知のことである。
藤原肇『小泉純一郎と日本の病理 Koizumi's Zombie Politics』光文社ペーパーバックス(2005年10月)には、今をときめく安倍首相のカリフォルニア“留学”の実態が語られている。
総理と副総理が揃って余り知的ではないということである。
藤原氏は、『石油危機と日本の運命―地球史的・人類史的展望』サイマル出版(1973年)によって、「日本の運命」ならぬ「私の人生」を左右したひとである。
⇒2009年4月 4日 (土):同級生の死/追悼(6)
ネットが浸透すると、人間の行動が短絡的になる傾向があるのではないかと思う。
LINEなどによるイジメが典型的である。
集団心理がネットによって増幅し、陰湿化しているのではないかと思う。
先日、防衛大学で、上級生による暴力支配が明らかになるという事件があった。
東京新聞8月4日
まるで中学生のイジメである。
およそ大学生になってやるようなことではないが、暴力支配は反知性主義の最も先鋭化した姿だろう。
問答無用でる。
さいたま市の公民館が俳句の掲載を拒否するというのも、具体的な現れ方は対照的ではあるが、深く考えることを放棄しているという点で共通性がある。
⇒2014年7月31日 (木):「九条俳句」とさいたま市教育長批判/日本の針路(16)
東京新聞8月7日
70年前の状況に逆行しているように感じるのは私の思い過ごしであろうか?
ちなみに前日の『暗黒日記』の8月7日の項には次のようにある。
笹川良三とかいう国粋同盟の親分は何千万円の財産家だという。右翼で金のうならぬ男なし。これだから戦争はやめられぬ!
死の商人と国粋主義者はメダルの裏表である。
最近は三島の街中を、右翼の街宣車が大音量で軍歌を流しながら走ることが多い。
嫌な世相であり、70年前に逆戻りしているような感じがする。
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