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2014年8月26日 (火)

代ゼミ7割撤退の意味/ブランド・企業論(31)

大手予備校の代々木ゼミナールが、全国27校舎のうち7割に当たる20校舎を閉鎖し、数百名の講師の希望退職も募るというニュースが話題になっている。
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東京新聞8月26日

河合塾、駿台予備校とともに「予備校3大大手(SKY)」といわれる代ゼミも、少子化や経済難に抗し切れなかったのだろうか。

 1957年に開校した代ゼミは駿台予備学校、河合塾と並び「三大予備校」と評され、私立文系を目指す浪人生を中心に生徒を獲得してきた。近年は国立回帰や現役志向の高まりが逆風になっており、10年には中学受験塾「SAPIX」の運営会社を買収し、浪人生に依存した事業モデルからの脱却を図っている。
 現役生の大学受験が主な対象の「東進ハイスクール」を運営するナガセでは、14年3月期の売上高が前の期比6%増の約400億円だった。
 教育業界では少子化を背景にここ数年、ナガセが四谷大塚を買収し、ベネッセホールディングスが東京個別指導学院を子会社化するなど、再編が加速している。今後もリストラや合従連衡といった動きが続きそうだ。
代ゼミ、20校閉鎖 浪人生減で全国7校に

私は経済的に余裕がなかったこともあって、現役合格が至上命題だったが、友人たちの多くが予備校体験を持っている。
予備校で学んでいる間に当初の志望を変更した例も少なくない。
長寿化が進んでいるので、予備校でゆっくり将来のことを考える時間を持つのも悪くはないと思うが、経営困難ということでは仕方あるまい。

受験情報誌の出版などをしている「大学通信」、情報調査・編集部ゼネラルマネージャーの安田賢治さんはNHKの取材に対し、まず予備校を巡る現状について、「少子化で受験者数が減る一方で大学の数が増え入りやすくなってきているが、受験生の間では浪人してまで志望する大学を目指すより、模擬試験でA判定、B判定の所ばかり受けるといった、今の実力で合格できる大学に現役で入ろうという志向が高まっている。今の受験生は、就職も安定志向が強いのと同じように、大学受験でもむちゃをしない傾向が強く、実力以上の大学にチャレンジするよりも、合格すればそれでいいという感じになってきている。予備校にとっては現役生よりも浪人生の方がお金が入るが、こうした受験生の間での現役志向の広がり、さらには所得の伸び悩みで予備校の学費を抑えたい家庭の事情などもあって、予備校の経営環境は厳しくなっている」と指摘しています。
そのうえで安田さんは、「代々木ゼミナールは入試が厳しかった時代に、私立大学、中でも文系の受験に強みを発揮してきた。しかし今は、就職が厳しいということもあって、理系の人気が高く、とりわけ学費を比べた場合、私立よりも安い国公立をめざす動きが広がってきている。『代ゼミは私立文系に強いというイメージ』が、かえって生徒が集まらなくなる理由、そして校舎を大幅に閉めざるをえないということに、つながっていったのではないか」と話しています。
さらに安田さんは今後の予備校業界の動向について、「業界では少子化が進むなか大手ではない予備校で施設を閉める動きが出ていたが、今回、この流れがついに三大予備校まで及んだかという感じだ。大手予備校の間ではこれまで浪人生の取り合いみたいな形になっていたが、これからは今まで蓄積してきたノウハウ、大学に合格するためのノウハウを生かして現役世代を取り合うという形になっていくのではないか。ただ、現役生は浪人生のように高いお金を取れないので、ビジネスモデルは変わっていくのではないか」と話しています。
代ゼミ校舎閉鎖 背景には「現役志向」

代ゼミの経営はどうなるのか?
他人事ながら、気になるところだ。
ところが、代ゼミは30年前から今の少子化を見越して、粛々と業態転換を進めてきた可能性があるというのだ。
30年前からとすると、業態転換の時間的余裕は十分にあったと考えられる。
事実、代ゼミ校舎の用途転換は進んでいる。

20〜30年前頃までの建築はホテルやオフィスビルに転換し、それ以前の古いものは建て替えになっているように見受けた。
しかも名古屋の場合は、古い校舎をより巨大な新建築に建て替えたうえで大半をホテル化するという思い切りの良さだ。
このように約30年前より最近のものは「最初からオフィスやホテルへの転換を見越している」という噂の通り、実際に建物が用途転換されていることが分かった。
こうした用途転換がスムーズに進んでいる理由としては、以下の3つが考えられる。
・不動産は基本、自社グループで保有(高宮学園、JECなど)
・立地は基本、駅前の一等地(土地を隣り合わせに取得し、一体再開発に備えている?ケースも)
・更にオフィス、ホテル用途に転換しやすい形状で床面積も確保できる大型ビルとして建設
こうした方針に沿って、代ゼミでは多くの校舎が約30年前に土地取得・建設されており、それより古いものは2000年代後半からより大きな建物に建て替えている。
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TKP貸会議室=JECビル ※JEC=代ゼミ関連会社
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代々木ヴィレッジ=旧・代ゼミ本部の跡地に建った商業施設

『武器としての決断思考』などの著作で知られる滝本哲史氏は、「代ゼミは、「日々是決戦」(ひびこれけっせん)と生徒には言っていたが、社内では「日々是決算」(ひびこれけっさん)と言われるほどの経営主導組織。」とTwitter上でつぶやいている。
『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』が異例のベストセラーになった楠木建氏は、「「先見性」は過大評価。ただの適応。」とコメントを寄せている。
先見性と言わずとも、「転んでもただでは起きない」くらいのことは言えそうだ。

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