実質GDPが前期比年率マイナス6.8%/アベノミクスの危うさ(37)
内閣府が13日発表した2014年4~6月期国民所得統計1次速報によると、 実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス1.7%、 年率換算マイナス6.8%となった。
アベノミクスは大丈夫か?
佐藤優『いま生きる「資本論」』新潮社(2014年7月)の中に次のような記述がある。
宇野弘蔵が「ファシズムの強さは無理論なところにある」と言っています。理論がなくて、気合でやっていく。これ、アベノミクスを思い出しませんか(会場笑)。安倍さんの特徴は、マルクス経済学も近代経済学も何も勉強していないということです。無理論の強さってあるんですよね。安倍さんは浜田宏一さんの話を聞いて、「状況はよくわからないけど、インフレターゲットは絶対にいい。気合を入れてやっていこう」。そんな感じでやっている。だから、長期国債の金利がどういうふうになるかとか考えていないのです。この<考えていない強さ>があるんです。景気を良くするためには賃金を上げてからだとなると、連合が賃上げを言っていないのに、首相自らが「内部留保があるんだから払え」と賃金を上げさせたわけですよね。これを国際基準から見ると、ファシズムの賃金論です。「おい、経団連会長、ちょっと来い。お前ら、内部留保を置いてあるのにけしからん、労働者の賃金上げろ」。これ、共産党が言っていることと同じじゃないですか。前に紹介したムッソリーニと同じじゃないですか。安倍さんも共産党も、ファシズムの経済学を主張しているんです。
ですからアベノミクスというのは、反知性主義とヤンキー的なナルシズムとのアマルガムなんですよ。
まさに、「そういうことだったのか!」(池上彰風に)という感じではなかろうか。
反知性主義の風潮は私もつとに感じていることである。
⇒2014年8月 8日 (金):再び暗い時代に逆行しないために/日本の針路(23)
「ヤンキー的なナルシズム」とは、「裸の王様」のようなものだろう。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
安倍首相のお好みのフレーズは「やれば、できる」である。
⇒2014年1月25日 (土):安倍首相の施政方針演説批判/アベノミクスの危うさ(25)
気合は重要であろうが、気合を入れてやれば、何事もうまくいくというわけではない。
マネジメントが、KKD(経験と勘と度胸)だけではうまく行かないのと同様である。
気合は必要条件かもしれないが、十分条件とは言えまい。
⇒2013年7月 9日 (火):規制委の安全性審査は必要条件ではあるが十分条件ではない/花づな列島復興のためのメモ(243)
必要条件と十分条件というのは適切ではないかもしれない。
間違っていれば、目的にたいする阻害要因になるからだ。
アベノミクスは3本の矢で構成されると説明されてきた。
第1の矢:大胆な金融緩和
第2の矢:機動的な財政政策
第3の矢:新たな成長戦略
第1の矢と第2の矢は、株と為替に関する限り効果を出しているといえる。
問題は、第3の矢である。
⇒2014年6月16日 (月):成長戦略の中身について/アベノミクスの危うさ(34)
第3の矢の直接的な指標は、実質GDP成長率である。
もちろん、長期的な視野で考えるべき問題ではあるが、上記の4~6月期の値により、アベノミクスは失速しているという懸念が増している。
政府は想定内だというが、エコノミストらが今春に予想していたよりもはるかに深刻なGDP減少だ。
池田信夫氏はアゴラの『なぜ人手不足で実質賃金が下がるのか』で次のように言っている。
これは単なる消費税の駆け込み需要の反動ではない(落ち込みは1997年よりはるかに大きい)。
特に個人消費の減少が大きい最大の原因は、実質賃金の低下である。
生活実感からいえば、諸物価値上がりばかりが目につく。
消費増税の(悪)影響は確実に出つつあるのではなかろうか。
さらなる増税をするのかどうか?
そもそも増税はなんのためだったのか?
社会保障の安定が大義名分だったはずである。
財務省は「税率を引き上げれば税収が増える」「そうすれば財政状態が改善する」という考え方だ。
しかし「増税すれば景気を冷やす」ことは想定されていた。
⇒2014年3月10日 (月):消費税増税で景気はどうなるか?/アベノミクスの危うさ(29)
だからこそ、実際は財政再建に逆行するような財政支出を行ったのではないか。
無理論の安倍首相は、気合で実施するのか、あるいは想定外の支持率低下などによって見直しを余儀なくされるのか。
順調に見えた安倍政権が正念場を迎えつつあるようである。
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