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2014年7月10日 (木)

STAP論文撤回理由書書き換えの怪/知的生産の方法(100)

6月29日に、三嶋大社に設えられた水無月祓の茅の輪を潜ってきた。
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早くも今年の半分が過ぎたことになるが、「もう」半分と考えるか、「まだ」半分と考えるか。
ポジティブ思考とネガティブ思考の違いだなどと言われる。
相場には「もうはまだなり、まだはもうなり」という格言もあるが、今年の10大ニュースを考えるには「まだ」早いだろう。

とは言え、STAP細胞を巡る一連の問題は、間違いなく十大ニュースの一角に入るのではなかろうか。
1月末に理化学研究所から、新生児マウスの脾臓細胞から簡単な処理で万能性のある細胞が得られた、と発表があった時は大きな期待感を持った。
⇒2014年1月30日 (木):新しい人工万能細胞/知的生産の方法(79)

ヒトの身体は約60兆個の細胞からできている。
たった1個の受精卵が細胞分裂を繰り返して、身体の各部位に分化するが、その過程は非可逆的であるというのが今までの発生生物学の常識であった。
受精卵だけが分化能力(多能性)を持っており、人工的に多能細胞を作るとすれば、初期の受精卵から作るのが最も可能性が高い。
こうした発想で受精卵から人工万能細胞のES細胞が作られた。
また、京都大学の山中伸弥教授は、分化した細胞を初期化する因子を発見して、iPS細胞を開発した。
⇒2012年10月 9日 (火):山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞/花づな列島復興のためのメモ(148)

理研の発表は、弱酸性溶液に浸けるだけで万能性が発現するというのだから画期的であるはずだった。 
ところが、1か月ほどの間に数々の問題点が指摘された。
それでも、ミスはあっても将来性のある研究と、期待を持ち続けた。
⇒2014年3月13日 (木):STAP細胞に関する過熱報道/花づな列島復興のためのメモ(315)
ショックだったのは研究リーダーの小保方氏の実験ノートの画像を見た時である。
およそドキュメントとは呼べないようなもので、これは何らかの錯誤があったのかも知れないな、と感じざるを得なかった。
⇒2014年5月 9日 (金):理研は説明責任を尽くしているか?/知的生産の方法(94)

真相はどういうことか? 
ニュースで見聞する範囲ではなかなか理解できなかったが、ようやく「日経サイエンス」誌の8月号に載っている『STAP細胞の正体』という解説記事で分かったような気がした。
「分かる」と「分ける」は同じ語源だというが、あるものを他のものと明瞭に分けられた時「分かった!」という感覚になる。
アイデンティティあるいは動詞形のアイデンティフィケーションという言葉があるが、識別(同定)あるいは識別(同定)することである。
あるものがどういう存在であるのか、分かりやすい日本語で言えば「正体」ということであろうか。

記事は、STAP細胞について遺伝子の塩基配列の解析データを分析した結果、「STAP細胞」とされているものは「ES細胞」だった可能性が高いというものである。
それを踏まえて、論文の共著者が英科学誌ネイチャー論文撤回を申し出て、科学上の問題は一応決着したと言われた。
ところが、論文撤回の理由書が、共著者の合意がないまま書き換えられていたことが7日に判明した。
新たなミステリーである。

 STAP細胞は、若山氏が小保方氏にマウスを提供。そのマウスから小保方氏がSTAP細胞を作り、若山氏がSTAP幹細胞に培養したとされている。
 ところが若山氏は6月、STAP幹細胞を調べたところ、当初、自分が渡したマウスと違う15番染色体に印となる遺伝子が挿入されていたと発表。このマウスは、自分の研究室では一度も利用したことがないとして、小保方氏の細胞作製に疑問を投げかけた。この発表を受け、共著者は全員の合意で、論文の撤回理由書に「この場所(=15番)に遺伝子を挿入したマウスは若山研究室で維持されたことはない」と記載してネイチャー側に提出していた。
 ところが2日に発表された同誌には、STAP幹細胞が「若山研のマウスや胚性幹細胞(ES細胞)と挿入場所が一致する」と逆の説明に変わっていた。
 若山氏は産経新聞の取材に対し、STAP幹細胞の遺伝子の挿入場所は、別の解析で15番染色体ではなかった可能性があるとして、6月の発表内容を修正。そのうえで、若山氏が小保方氏に渡したマウスとは異なることに変わりはないと説明した。
 若山氏は「ネイチャーには染色体の番号だけ修正を依頼した。その後、誰かがさらに大きく修正した。若山研に疑惑が行くような修正なので、私でないことは明らか」としている。
 これに対し、共著者の丹羽仁史理研プロジェクトリーダーは「(修正は)発表を見て気づいた。それ以上のことは何も分からない。若山氏に説明していただくしかない」とコメント。理研関係者によると、若山氏の修正メールは共著者に共有されておらず、小保方氏や理研の笹井芳樹副センター長、米ハーバード大の共著者も修正は全く知らなかったという。
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STAP論文、撤回理由を無断書き換え

謎が謎を呼ぶような展開で、「まだ」最終的な真相解明にはほど遠い。
それも含めて、10大ニュース入りは間違いないだろう。

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