三島北高校のグローバル人材教育/日本の針路(5)
文部科学省が今年度から「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業というのを始めた。
何となく胡散臭いネーミングであるが、全国の高校56校が指定され、静岡県からは三島北高校が選定された。
三島北高といえば私などの世代にとっては、女子校というイメージが強い。
富士真奈美、長山藍子、二宮さよ子等の女優を輩出してきたが、10年ほど前から共学になった。
SGHは何を目指すのか?
世界で活躍できる人材育成を行うという。
文科省では、指定校では単に英語教育を充実させるだけでなく、世界の貧困問題について学んだり、海外展開に力を入れる地元企業と協力して国際的なビジネスについて考えたりするなど、生徒に世界的な視野で物事を考えさせるプログラムを導入するとしている。
まあ特に反対することもないので、結果を見守りたいが、私が「世界で活躍できる人材」という言葉でイメージするのは、たとえば小沢征爾氏であり、あるいは羽生結弦クンである。
彼らこそ「スーパーグローバル」という言葉に相応しいのではないかと思うが、となると高校課程の教育の問題ではないような気がする。
むしろ枠にはまったカリキュラムではなく、自分で好きなことを突き詰めてやった結果ではないか?
三島北高校は、プロポーザルに「“生命を守る水”プロジェクト~国際的視野から地域課題を解決できるグローバルな人材の育成」の構想を挙げた。
このテーマ設定は適切なものだと考える。
地球のことを「水のある惑星」などというが、地球に多量の水が存在するのは奇跡のようなものである。
引力と水の物性(比重、沸点と融点、比熱 etc.)の絶妙なバランスによって、地表の7割が水で覆われている。
名水で知られる柿田川に隣接している柿田川公園に、水神を祀る貴船神社が建立されている。
小さな社であるが、その一隅に「水五訓」を刻んだ石碑が建っている。
「水五訓(則)」は、NHKの大河ドラマの主人公・黒田官兵衛の教えという説があるが、官兵衛の如水の号に合わせたこじつけのようである。
三島出身の大岡信氏に「故郷の水へのメッセージ」という有名な詩がある。
われわれは、「地表面の七割は水」であることに慣れて、「人体の七割も水」であることを忘れがちである。
日本人は、「水と安全はタダ」だと思っていると喝破したのはイザヤ・ベンダサンこと山本七平であった。
しかし二一世紀は「水争奪戦」の世紀になるといわれている。
もはや、「水も安全もタダではない」。
また、生命の起源が海にあることは、定説と言ってよい。
三好達治には、次のような詩がある。
海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。
そして母よ、フランス人の言葉では、あなたの中に海がある。
なお、グローバルを辞書で引くと以下のような説明である。
1.全体の,世界的な,グローバルな
2.全体的な,包括的な
3.球状の; 球形の
水は最も普遍的であると同時に、最も価値のある物質なのである。
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