ウナギの傾向と対策/日本の針路(14)
今日は「土用の丑の日」。
土用とは、以下のような期間である。
五行に由来する暦の雑節である。1年のうち不連続な4つの期間で、四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間ずつである。
土用
したがって、四季のそれぞれに土用があるが、特に夏のことを指すことが多い。
昔海水浴に行った時、土用波に気をつけろ、と注意されたことがあった。
世界大百科事典 第2版の解説は以下のようである。
熱帯の洋上で発生した台風の暴風圏から出てくるうねりは,数千kmの海面を伝搬していち早く日本の太平洋岸に打ち寄せる。これは台風が洋上にある間じゅう継続する。夏の土用の入り(7月20日前後)がすぎて,日本が太平洋高気圧におおわれておだやかな晴天が続いているときに顕著に現れるところから,俗に特異な季節的現象として〈土用波〉と呼ばれてきた。
土用の間のうち十二支が丑の日を「土用の丑の日」という。
今年は、土用はが7月20日(日)~8月6日(水)で、この期間における丑の日は7月29日だけである。「梅雨明け十日」という言葉があるが、夏の土用の時期は暑さが厳しく夏ばてをしやすい時期である。
したがって、昔から「精の付くもの」を食べる習慣があった。
『万葉集』にも大伴家持に次の歌がある。
石麻呂に吾物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻漁り食せ
(巻16・3854)
土用にウナギを食べる習慣が一般化したきっかけは、平賀源内が近所のウナギ屋に相談されて、「本日、土用丑の日」と書いた張り紙を張り出したところ、大繁盛したことだと言われている。
6月12日、国際自然保護連合(IUCN)が、ニホンウナギをレッドリスト(絶滅危惧1B)に指定した。
過去30年で、生息数が50%以上減ったという基準を満たしたからだ。
したがって、今日はウナギがレッドリストに指定されてから初めての「土用の丑の日」である。
三島市は富士山への降水が湧出することもあって、水が豊富である。
市内のうなぎ屋では、この湧水にうなぎを2~3日打たせ、うなぎ特有の臭みや余分な脂を落として食用に供している。
⇒2012年7月26日 (木):土用の丑の日に因んで
レッドリストに指定されて、ウナギはどうなるであろうか?
現在出回っているウナギは、稚魚のシラスウナギを捕獲し育てたものがほとんどである。
しかしシラスウナギの漁獲高は激減しており、養殖ウナギがピンチになっている。
ニホンウナギ、絶滅危惧種 「土用の丑」未来につなげ! 期待の完全養殖、コストが課題
親から採取した卵をふ化させ成魚に育てる「完全養殖」は実験室では既に成功している。
完全養殖が難しかったのは、太平洋を回遊するウナギ生態(産卵地や幼体が育つ環境など)がく謎だったからである。
⇒2012年7月26日 (木):土用の丑の日に因んで
ウナギの河川での生態についての調査も始まった。
西マリアナ諸島で生まれたウナギは、成長しながら日本の河川にたどり着き、大人になるまでの4~15年を過ごすといわれるが、その詳しい生態は分かっていない。
日本経済新聞7月28日
私自身は、加齢のためもあるのか、以前ほどウナギを食べたいとは思わなくなった。
また、日野市では、「ウナギは神様の使い」として食べることをタブーにしているという。
東京新聞7月23日
埼玉県の吉川市は江戸川と中川が流れる低湿地でナマズの養殖で知られる。
河川の歴史を勉強する(という名目の)研究会の会員だった頃、吉川市のナマズの養殖場を見学したことがある。
せっかくだからということで、江戸川と中川の合流点付近の福寿家というナマズ料理店でナマズ料理を食した。
http://mitsuikaihatsu.blog122.fc2.com/blog-entry-242.html
好みの問題ではあるが、「ナマズのかば焼き」という話題性だけで、ウナギに敵うとは思えなかった。
ウナギは万葉の時代から食べてきた資源である。
なんとか絶滅の危機から復活してもらいたいものだ。
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