お友達内閣の経済ブレーン/アベノミクスの危うさ(36)
「新潮45」の7月号に、岩村充氏と藻谷浩介氏の対談『「経済学の限界」をわきまえないアベノミクスの虚妄』という対談記事がのっている。
岩村氏は、日本銀行出身で早稲田大学商学研究科教授の経済学者である。
『貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム』新潮選書(2010年9月)という著書から分かるように、視野の広い学者である。
藻谷氏は日本総研の主席研究員であるが、『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』角川oneテーマ21新書(2013年7月)が 大ベストセラーになり、今様々な方面から注目を集めている人である。
対談は互いにリスペクトし合う雰囲気の、好感の持てるものであるが、次のような見方に納得した。
安倍首相のブレーンについてである。
第1次安倍内閣の時、「お友達内閣」などと自分のお気に入りの仲間で内閣を構成する手法が批判された。
それでも、塩崎恭久氏のように、主義主張は異なるにしても、苦労を共にした仲間という意識がある人が中枢にいた。
第2次安倍内閣のブレーンはどうか?
目玉政策のアベノミクスを支える経済学分野についてみると、浜田宏一、岩田規久男、本田悦朗、高橋洋一氏等の名前が浮かぶ。
揃って、「貨幣が成長を決する」というマネタリストである。
あるいはリフレ派といわれる人たちである。
リフレ派とは、コトバンクによれば以下の通りである。
緩慢なインフレを継続させることにより、経済の安定成長を図ることができるとするマクロ経済学の理論を喧伝(けんでん)、もしくは政策に取り入れようとする人々のこと。
・・・・・・
リフレ派の主張は、政府・中央銀行が数パーセント程度の緩慢な物価上昇率をインフレターゲットとして意図的に定めるとともに、長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が無制限に買い上げることで、通貨供給量を増加させて不況から抜け出すことが可能だとするもの。
あるいは、集団的自衛権行使容認の論拠とすべく自ら設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)。
行使容認論者で構成され、憲法については薄いが、解釈改憲に踏み切る。
要するに、身辺には同調者しかいず、昭恵夫人しか(?)批判者がいない、ということである。
「裸の王様」になるのも、むべなるかなである。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
にもかかわらず、マスコミからのアベノミクスに対する批判は少ない。
それは現在、日本人の間に「リセット願望」が高まっているからではないか?
リセットした後に成長の伸びしろが用意されているのではないか?
しかし、それは幻想に過ぎない。
なぜなら、敗戦後とは世界経済の成長性も全く違うし、日本の社会構成も全く違う。
今や日本社会は超高齢社会になっているのだ。
⇒2014年6月 4日 (水):超高齢社会と限界自治体/花づな列島復興のためのメモ(330)
香西泰氏の研究によれば、太平洋戦争において、米軍は重要産業地帯ではなく、下町などの住宅地を重点的に攻撃した。
日本軍が必死に守る産業設備を攻撃するよりも、厭戦気分を醸成した方がリスクが小さいという判断である。
そうして温存された産業設備と戦時中に工場に動員された人のスキルが戦後高度成長の源になった。
「焼け野原からの奇跡の復活・成長」というのは、神話に過ぎない。
その神話をもう一度というのはないものねだりである。
次に予定されている総選挙まで、政権は安泰なのだろうか?
第1次安倍政権が、体調不良で途中で退出を余儀なくされたことを忘れるほど、記憶力が減退している訳ではない。
そういう危うさを自覚してかしないでか、一内閣の閣議決定という形で日本の針路を決めようとする。
その姿勢に対しては、やはり「No!」と言うべきであろう。
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