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2014年7月22日 (火)

沖縄密約裁判、特定秘密保護法、解釈改憲、アベノミクス/日本の針路(11)

1972年の沖縄返還をめぐる日米間の密約文書開示訴訟で、14日、最高裁は元毎日新聞記者西山太吉氏ら原告側の上告を棄却した。
行政機関が存在しないと主張する文書について、「開示の請求者側に存在を立証する責任がある」との初判断を示したが、司法の権威を自ら貶める判断と言えよう。
140715
東京新聞7月15日

最高裁が弁論を開かないと決めた時点で二審の高裁判決が維持されることは確定的であったが、情報開示を求める側に重い立証責任を課したことは、特定秘密保護法の施行を控え、国民の知る権利に大きな制約を与えはしないか。
⇒2014年7月 8日 (火):沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)

集団的自衛権の行使の閣議決定を受けて、衆参の予算委員会で審議が行われた。
政府が歯止めとする武力行使の3要件のうち「(国民の権利が)根底から覆される明白な危険がある場合」をどう解釈するかについては、以下のようなやり取りがあった。

横畠裕介内閣法制局長官の答弁は、以下のようであった。

 他国への武力攻撃が発生し、「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻・重大な被害が及ぶことが明らかな状況」だと。
 その上で、どういう事態が該当するかは「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、規模、態様、推移」などを総合的に考慮し、「我が国に戦禍が及ぶ蓋然(がいぜん)性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断する」と。
 つまり、日本自身が武力攻撃を受けたのと変わらないぐらい深刻な場合にのみ、集団的自衛権の行使が許されると言ったのだ。
集団的自衛権 横畠長官の答弁は重い

「日本自身が武力攻撃を受けた」場合は、当然従来の政府見解のように個別的自衛権で対応できる。
あえて、集団的自衛権の行使という必要はない。
だが安倍首相は、長官答弁と基本的に変わらないとしながらも、政府が武力行使の3要件に照らして判断すると強調した。

問題は以下のような場合である。
中東のホルムズ海峡が機雷で封鎖され、原油供給が滞るような場合、集団的自衛権を行使して機雷掃海ができるとするか否かである。
原油の供給の途絶は「日本自身が武力攻撃を受けた」のと変わらないぐらい深刻か?
人によって考えはさまざまであろう。
1973年や1979年のオイルショックを体験した人、あるいは堺屋太一『油断!』文春文庫(1978年3月)などを読んだ人の中には、まさに日本の死活問題だ、という人もいるだろう。

 世論調査では、政府が集団的自衛権の行使を容認したことを「評価する」としたのは35・3%にとどまった。逆に、集団的自衛権による自衛隊のシーレーン(海上交通路)での機雷除去には47・8%が「賛成」と回答、「反対」を約10ポイント上回った。集団的自衛権の象徴的事例の行使には理解を示す一方、集団的自衛権の行使容認そのものには慎重という逆転現象が起きたわけだ。
アベノミクス評価に大きな陰り 内閣支持率下落の背景
 

しかし、である。
機雷を敷設した国にとっては、その除去は戦闘行為そのものであろう。
当然のことながら、反撃する。
それに応戦すればもはや戦争である。
第1次世界大戦も、サラエボでの偶発的な出来事が、瞬く間に拡大した。
戦争とはそういうものであろう。
⇒2014年7月14日 (月):第1次世界大戦と日本/世界史の動向(21)

日本経済は原油輸入の8割以上を中東に依存している。
そのシーレーン確保は重要な問題である。
しかし、「日本の経済に相当な打撃がある」たびに集団的自衛権の行使を認めたら、日本はハリネズミのように身を固めなければならないだろう。
それが現憲法と相容れないことは明らかである。
解釈で方がつく問題ではない。

秘密保護法によって、政府判断を批判できる余地はきわめて絞られた。
しかも、挙証責任が開示を求める側にあるという最高裁判断である。
集団的自衛権の行使についても、政府の独断ということになれば、オーストラリアでの演説の次の冒頭の言葉を裏切ることになろう。

戦後を、それ以前の時代に対する痛切な反省とともに始めた日本人は、平和をひたぶるに、ただひたぶるに願って、今日まで歩んできました。20世紀の惨禍を、二度と繰り返させまい。日本が立てた戦後の誓いはいまに生き、今後も変わるところがなく、かつその点に、一切疑問の余地はありません。
豪州国会両院総会 安倍内閣総理大臣演説

ここへきて看板のアベノミクスにも厳しい評価が出ていることが表面化しつつある。

 政府高官は、内閣支持率が低下傾向にあることについて「集団的自衛権の問題が一番の要因だった。これが終われば、支持率は高くなる」と分析する。しかし、世論調査では首相の景気・経済対策を「評価しない」との回答が47・1%と「評価する」を7・7ポイントも上回り、前回調査(6月28、29両日)と評価が逆転。社会保障政策も6割超が評価せず、老後の生活への不安を解消していないといえる。
 政府は有効求人倍率など経済指標が好調に推移していることを強調する。だが、日経平均株価は昨年12月から今年1月にかけて1万6千円台に突入したものの、2月以降は1万5千円台で足踏み。高騰するガソリン価格は、自動車での移動が欠かせない地方の生活費を圧迫し、経済指標に表れにくい“不満要素”となっている。
アベノミクス評価に大きな陰り 内閣支持率下落の背景

民の暮らしは確実に悪化しているのが分からないとしたら、やはり「裸の王様」と言わざるを得ないだろう。
⇒2014年7月16日 (水):お友達内閣の経済ブレーン/アベノミクスの危うさ(36)
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)

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