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2014年7月 8日 (火)

沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)

1972年の沖縄返還を巡って日米両政府が交わした密約文書の開示を求めた訴訟は、国に開示を命じなかった東京高裁の判決が確定する見通しとなった。
最高裁が14日に判決を言い渡すことを決め、二審の結論を見直す際に必要な弁論を開かないため、原告側の訴えを退けた二審の高裁判決が維持される見通しである。

 「沖縄密約」を巡っては、2000年に米公文書の存在が判明したが、当時の政府は密約の存在を否定した。09年に政権を奪った民主党は密約を調査する有識者委員会を外務省に設置。委員会は10年に「広義の密約があった」と結論付けた。東京高裁も11年、密約と文書の存在を認めたが、外務省は廃棄の経緯も含めて再調査をしていない。政府筋は「何度再調査しても仕方がない」と明かす。
沖縄密約:不開示確定へ 「情報公開 何のためか」

沖縄密約事件とは、第3次佐藤内閣の1971年、日米間で結ばれた沖縄返還協定に際し、「アメリカが地権者に支払う土地現状復旧費用400万ドル(時価で約12億円)を日本政府がアメリカに秘密裏に支払う密約が存在することを掴んだ毎日新聞社政治部の西山太吉記者が日本社会党議員に漏洩した事件である。
検察側の主張によると、西山記者は女性事務官に酒を飲ませて泥酔させて肉体関係を結び、その関係を基に外務省極秘電文のコピーを盗み出させた。

1972年、日本社会党の横路孝弘と楢崎弥之助が、西山が提供した外務省極秘電文のコピーを手に国会で追及した。
この事実は大きな反響を呼び、世論は日本政府に批判的となったが、政府は情報源がどこかを内密に突き止め、佐藤首相は西山と女性事務官の不倫関係を掴むと反攻に出て、西山と女性事務官は外務省の機密文書を漏らしたとして、4月4日に国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕、起訴された。

当時の東京地検特捜部の検事佐藤道夫が書いたとされる起訴状の「ひそかに情を通じ、これを利用して」という文言が「空気」を変えた。
当初は他紙も、西山を逮捕した日本政府を言論弾圧として非難し、西山を擁護していたが、世論は一転して西山と女性事務官を非難する論調一色になった。
裁判においても、審理は男女関係の問題、機密資料の入手方法の問題に終始した。

この事件の本質は何だったのか?
沖縄返還に伴う「密約の存否」のはずである。
それが、情報入手における男女関係に関心が集中し、あるいは集中するように誘導され、「密約の存否」から逸れて行った。
佐藤首相側の戦略勝ちということになるが、果たしてそれでいいのだろうか?

余波として、毎日新聞が不当な取材をしたということで不買運動が起こり、毎日新聞凋落の一因となったといわれる。
政府は密約の存在を否定していたが、2010年の一審・東京地裁判決で、密約文書に「署名した」とする元外務省局長の証言があって、文書が存在していたことは事実と考えるほうが自然であろう。
国は「探したが見つからなかった」と主張した。
二審においても国は「再調査したがやはりなかった」と主張したが、東京高裁は、一審に続いて文書が存在したと認める一方で、国の再調査結果を評価し、開示を命じた一審判決を取り消した。
ただし、国が密約を隠すために意図的に文書を廃棄した可能性があると指摘し、国の文書管理のあり方を批判した。

わが国には当該文書が存在していず、米国側に存在しているとしたら、文書管理に対する国の姿勢が問われよう。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)が2001年4月1日施行されたが、「探したけれどなかった」で済むとすれば、有名無実である。
まして、「特定秘密の保護に関する法律」が成立し、国の決定がどんどんヴェールに隠される方向にある。
集団的自衛権で、武力行使を伴う自衛隊派遣を決定する場合などにおいても、最も重要な根拠が「ブラックボックス」になって国民に知らされない可能性が高い。
渡辺白泉(⇒2012年1月17日 (火):渡邊白泉/私撰アンソロジー(14)、2007年11月16日 (金):渡辺白泉)の句がリアリティを増してくる。

戦争が廊下の奥に立つてゐた

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» 沖縄密約:不開示、確定へ 最高裁判決を14日に指定  米国では開示されているのに [自分なりの判断のご紹介]
こういうニュースは聞きたくないの ですが。 沖縄密約:不開示、確定へ 最高裁判決を14日に指定 1972年の沖縄返還を巡る日米間の 密約を示す文書について、元毎日 新聞記者の西山太吉さん(82)らが 国に開示を求めた訴訟で、最高裁 第2小法廷(千葉勝美裁判長)は7日、 判決期日を今月14日に指定した。 2審を見直す際に通常開く弁論を経て おらず、国に開示を命じた1...... [続きを読む]

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