集団的自衛権と自衛隊員/日本の針路(8)
自衛隊は、憲法9条との関係で、専守防衛という形で合意が得られてきた。
いまその性格が大きく変わろうとしている。
集団的自衛権の行使が認められれば、他国の戦争に加わる道が開けるからだ。
その影響は国民全体に及ぶが、直接的には先ず第一に自衛隊員に係る。
自衛隊員自体はどう考えているであろうか?
もちろん、人によってそれぞれであろう。
「喜んで、とはいわないけれど、命令なら行きます」。陸上自衛隊に今年入隊し、東日本の駐屯地に勤務する20代の隊員は「もし戦場に行くことになったら」との記者の問いにそう答えた。
他の隊員と集団で生活し、武器や装備の扱い方の訓練を受けている。長距離を走る訓練では、途中で動けなくなった隊員を抱えてゴールを目指す。疲れ切って戻る宿舎で、新聞を読む時間はない。「集団的自衛権って何なのか、よくわからない」
「命令なら戦場に行く」…自衛隊員の思いは
おそらく「命令なら行く」という人が最も多いのではないだろうか。
命令に服するのは軍隊の最も基本的な規律だからである。
しかし隊員の家族にとっては必ずしもそうではあるまい。
私の知人にも、自衛隊員の息子を持つ母親がいるが、できれば辞めさせたいと言っていた。
上記の新聞記事でも次のような母親の声が紹介されている。
息子の入隊に賛成したのは、「災害救助で社会貢献したい」と動機を話したからだ。息子の制服姿を見た入隊式でも戦場に立つことは想像しなかったが、にわかに現実味を帯びてきたように思える。「人を殺すことに息子を加担させたくない。戦争に行かせるために、自衛隊へ入れたわけじゃない」。声をふるわせながら、「なぜこれを止められないの」と訴えた。
「命令なら戦場に行く」…自衛隊員の思いは
また、実際に現場の苦しさ、厳しさを体験した上での次のような意見がある。
「『派兵は政治が判断すべきこと』『9条があるから中国になめられる』と言う人がいるが、訓練であっても実弾が飛び交う下をはいつくばった経験がないから、そんなことが言える」。現場を知るからこそ力を込める。「銃を手にする自衛官はサラリーマン意識の隊員も少なくない。入隊時に誓約するのは、日本に対する直接および間接侵略に対して『身をもって責務の完遂に努める』だ。無関係の国へ派遣されるいわれはない」
解釈改憲によって集団的自衛権の行使を容認しようとする手法にも憤りを感じる。「要は安倍首相の独り善がり。1億2千万の国民の命をそんな理屈で危険にさらすわけにはいかない」
集団的自衛権を考える(19)元自衛隊員に聞く きょう創設60年
TwitterやFacebookで「すごい説得力」と評判の意見を紹介する。
強烈な安倍首相批判=元自衛官(防空ミサイル部隊)の泥 憲和さん。
・・・・・・
なんでそんなことに自衛隊が使われなければならないんですか。 縁もゆかりもない国に行って、恨みもない人たちを殺してこい、 安倍さんはこのように自衛官に言うわけです。 君たち自衛官も殺されて来いというのです。 冗談ではありません。 自分は戦争に行かないくせに、安倍さんになんでそんなこと言われなあかんのですか。 なんでそんな汚れ仕事を自衛隊が引き受けなければならないんですか。 自衛隊の仕事は日本を守ることですよ。 見も知らぬ国に行って殺し殺されるのが仕事なわけないじゃないですか。
みなさん、集団的自衛権は他人の喧嘩を買いに行くことです。 他人の喧嘩を買いに行ったら、逆恨みされますよね。 当然ですよ。 だから、アメリカと一緒に戦争した国は、かたっぱしからテロに遭ってるじゃないですか。 イギリスも、スペインも、ドイツも、フランスも、みんなテロ事件が起きて市民が何人も殺害されてるじゃないですか。 いま私が反対している集団的自衛権とは、そういうものではありません。 日本を守る話ではないんです。 売られた喧嘩に正当防衛で対抗するというものではないんです。 売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというんです。 それが集団的自衛権なんです。
・・・・・・
私たちは、いま私が生きてきた時間、戦後という営みを再考するときである。渡邊白泉の次の句を噛みしめながら。
⇒2014年7月 5日 (土):さいたま公民館の俳句掲載拒否と新興俳句事件/日本の針路(4)
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