憲法9条と積極的平和主義/日本の針路(12)
安倍首相の説明に説得力が欠けるのは、情熱的な割に論理の道筋(理路)が不明確なことが一因だと思われる。
安倍首相のお気に入りの言葉に、「積極的平和主義」がある。
集団的自衛権行使を容認する閣議決定においても、強調されている。
しかし、「積極的平和主義の具体的な意味は明快ではない。
かつて日本は、「聖戦」という言葉で、大東亜戦争つまり対(鬼畜)米英戦争(後に、対中、対蘭、対ソ戦争も含むと解釈された)を始めた。
ブッシュ元大統領は、イラク開戦にあたり米国民に向かって、「この危険な時を克服し、平和を実現する」と呼びかけ、「イラクの自由」という作戦名を付けた。
つまり、平和を唱えた戦争の例は多い。
⇒2013年10月18日 (金):積極的平和主義をどう理解するか/アベノミクスの危うさ(17)
先のオーストラリア訪問の際のキャンベラの連邦議会での演説でも強調されている。
首相は「戦後を、それ以前の時代に対する痛切な反省とともに始めた日本人は、平和をひたぶるに願って今日まで歩んできた」として戦前への反省を踏まえて世界平和に貢献する考えを強調。その上で、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定に基づき、安全保障関連の法整備を進める方針を表明した。
演説で首相は、第二次世界大戦で日豪両国が戦った歴史を振り返り、哀悼の意を示した。「20世紀の惨禍を二度と繰り返させまい。日本が立てた戦後の誓いは今後も変わるところがない」とした。集団的自衛権の行使容認に関し「安全保障の法的基盤を一新しようとしている」と説明する一方で、狙いについては「法の支配を守る秩序や、地域と世界の平和を進んでつくる一助となる国にしたい」と「積極的平和主義」の意義を強調した。
安倍首相:豪連邦議会で演説「積極的平和主義」強調
分かりにくいのは、「平和憲法」と称される憲法解釈の改変との関係であろう。
現憲法が平和憲法と言われる所以は、第9条にある。
http://event.kinasse.com/kuma9/kyuujo.html
首相の言う「日本人は、平和をひたぶるに願って今日まで歩んできた」という具体的な表現が9条であると考えるのが自然であろう。
ところが、それを骨抜きにしようというのが集団的自衛権である、という指摘がある。
お笑い芸人の太田光と社会学者の中沢新一の共著に『憲法九条を世界遺産に』集英社新書(2006年8月)がある。
また、「憲法9条にノーベル平和賞を」という運動がある。
戦争の放棄を定めた憲法9条をノーベル平和賞に推した「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(事務局・神奈川県相模原市)に、ノルウェー・オスロのノーベル委員会から推薦を受理したとの連絡があり、正式に候補になったことがわかった。朝日新聞デジタルが報じた。
「憲法9条をノーベル平和賞に」一人の主婦が発案 委員会が推薦受理
戦争放棄を憲法に謳っている国はあるのか?
Yahoo知恵袋に、「日本のように戦争放棄を宣言している国って、他にあるのですか?」という項目がある。
次のような回答がある。
戦争を完全に放棄しているのは,日本の他に太平洋のパラウが有名です。パラウは,日本が第一次大戦後に,敗戦したドイツ領の島々を国連から委託統治したのが最初で,そこでは今でも日本人に好意的で,国旗も日本の日の丸を模して作ったそうです。
戦争放棄と絞るとこれぐらいしかありません。
後は,永世中立国オーストリア・スイス・トルクメニスタンだそうです。ただ,どこの国とも軍事同盟を結んだりできないため,スイスなどはとてもしっかりとした軍隊を作り上げ,もしものときは,自らが自国を守ることになっています。永世中立国は,日本のような非武装・非暴力な国ではないので,自国を守る軍は,しっかり作っているのです。
もちろん、国権の発動たる戦争は放棄しているが、正当防衛の権利は有するというのが従来の解釈である。
集団的自衛権、すなわち他国の防衛が正当防衛の範疇に入るのか?
一心同体的な国の場合は、正当防衛ということはできよう。
さしあたってアメリカということであろうが、アメリカからの押しつけ憲法だから自主憲法制定を、と言っている人が、武力行使についてはアメリカのいいなりになろうとしているのではないか。
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