超高齢社会と限界自治体/花づな列島復興のためのメモ(330)
5月1日にNHKで放映された『極点社会 ~新たな人口減少クライシス~』は、ショッキングな未来像を伝えるものだった。
わが国が急速に高齢化しつつあることは良く知られている。
65歳以上の高齢者が、総人口に占める割合を、高齢化率という。
高齢化率によって、社会の状態は次のように区分けされる。
高齢化社会:高齢化率7%超
高齢社会:高齢化率14%超
超高齢社会:高齢化率21%超
わが国の高齢化率の推移は下図のようである。
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2011/gaiyou/html/s1-1-1.html
すなわち、わが国は1970年に高齢化社会に、1994年に高齢社会に、2009年に超高齢社会になった。
ここまでは、事態の深刻さは別としても、比較的馴染みがあることである。
その結果として、わが国の人口は、ドラスティックな変化をしていくだろうと予測されている。
国土交通省が発表した「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」と題するレポートによると、日本の人口は2004年の1億2784万人をピークとし、今後100年間に100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111118/201698/
この図をみると、われわれが日本史において、実に特異な時代に生きているのだなあと、感慨のようなものを覚える。
大東亜(太平洋)戦争中に大政翼賛会が掲げたスローガンに、「進め一億火の玉だ」というのがあるが、わが国の人口が1億を超えているのは、だいたい1950年~2050年の間ということになる。
進め一億火の玉だ
一億というのは、大東亜(太平洋)戦争中は、
朝鮮半島や台湾などの植民地人口も含めて称したのであろう。
また、大東亜戦争(太平洋)によって、このような大きなグラフにも表れるような人口減少(戦死および戦争関連死)があったことも分かる。
『極点社会 ~新たな人口減少クライシス~』は、人口減少によって、従来余り意識されなかった問題が生ずることを指摘した。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3493.html
超高齢社会になると、高齢者の数が増えるような印象であるが、多くの地方では高齢者すら減少していくのだ。
高齢者すら減少を始めた市町村は、年金で成り立ってきた経済がシュリンクする
。
そして、東京の都心部である豊島区ですら、地方から流入する若い人が枯渇し、結果として消滅する危機だという。
⇒2014年5月12日 (月):人口減少の過程と問題②/ケアの諸問題(8)
地方で雇用の
場を失った若年女性が首都圏にこれまで以上に流入していくが、首都圏では子供を産み育てられないことは、出生率が示しているところだ。
地方は若年女性が消え、必然的に急速な人口減少を招く。
すなわち、“限界自治体”化し、壊死していく。
一方で過密と集中が予想される首都圏は、少子化が進む。
結果的に日本全体が縮小していくのだ。
出産可能な女性の数は、20年先程度までは現時点でほぼ確定している。
ドラッカー流の表現をすれば、『すでに起こった未来』なのである。
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