成長戦略の中身について/アベノミクスの危うさ(34)
いわゆるアベノミクスは「3本の矢」で構成されているとされる。
首相官邸のサイトには、下図が掲げられている。
アベノミクスは初動において、順調な株価の上昇を招き好スタートを切ったように見えた。
しかし、この1年間は勢いが止まってボックス圏で推移している。
⇒2014年6月14日 (土):「デフレ脱却」の正体/アベノミクスの危うさ(33)
そこで期待されているのが、「3本目の矢」である「成長戦略」である。
上記官邸サイトでは、「成長への道筋」として、下図のような説明がある。
抽象論のレベルでは特に言うべきことはない。
しかし、本当に成長が可能なのか、あるいは成長を目標とすべきか、疑問なしとはいえない。
たとえば「新たなフロンティアを作り出す」といっても、容易には「作り出」せないから、フロンティアなのだろう。
それでも、本気で取り組めば可能なように思われるのが、「規制・制度改革と官業の開放の断行」である。
しかし、政府の規制改革会議の答申には、いくつかの疑問を感じる。
雇用分野では、時間でなく成果で賃金が決まる労働時間規制の見直しを求めた。
社会人のほとんどの期間を残業代とは無縁で過ごしたが、報酬を時間に対して支払うか、成果に対して支払うかといえば、本質的には成果に対して支払うべきであろう。
現実には組織労働については個別の成果が捉えにくいことなどから、労働時間に対して支払うのが合理的な場合が多い。
特に自分の裁量の余地がほとんどないような場合には、時間で支払う方が妥当であろうが、あくまで成果の代理変数であると考える。
しかし、成果を強調すると、かえって様々なマイナスが生じることも事例に事欠かない。
成果主義の陥穽である。
医療分野では、混合診療の拡大が目玉らしい。
安倍首相が都内の病院を視察の上で法案を提出するなど、強いこだわりを見せた。
製薬会社や医療機器メーカーは、概して市場拡大が期待できると考えているようである。
しかし肝心の日本医師会は、必ずしも賛成ではないようだ。
東京女子医大病院(東京都新宿区)における小児に対する医療事故が問題になっている折でもあり、医療の問題は成長戦略とは切り離して考えるべきだろう。
⇒2014年6月11日 (水):誰のための混合診療か?/アベノミクスの危うさ(32)
問題は、農業改革である。
農協に関して、JA全中(全国農業協同組合中央会)の廃止を柱とした原案が、「新たな制度に移行」にすり替わった。
農業の基盤強化など本来の目的が担保されるのかどうか不明である。
ということは、「岩盤に穴をあける」という掛け声とは裏腹に、硬い岩盤を避けているのではないか。
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