「デフレ脱却」の正体/アベノミクスの危うさ(33)
生活必需的な商品の値上げが相次いでいる。
サーモン、ハマチ、カツオなどの鮮魚が、平年と比べると2~7割値上がりしている。
世界的なすし人気で輸入が減ったり、海水温の低下で取れなくなったりと、原因は様々であるが、食卓に欠かせないだけに痛い。
また、丸大食品も、ハム、ソーセージなどの加工食品を8月1日から平均10%の値上げを発表した。
食品だけではない。
レトルト食品やシャンプーの詰め替え容器などに使うナイロンフィルムの価格が上昇している。
石油化学原料の値上がりを受けて大手のユニチカや東洋紡などが打ち出した値上げを、需要家の印刷会社が上げ幅を圧縮して受け入れたものである。
印刷会社は他の樹脂フィルムの値上がり分とともに包装製品への転嫁するという。
安倍政権がアベノミクスを打ち出して以来、経済界は概してアベノミクスを評価しているようである。
株価の動向を、TOPIXで見てみよう。
アベノミクスを打ち出してから昨年の5月頃までは、ほぼ一本調子で上げていた。
しかし、その後は、概ね1100円~1300円のボックスで推移している。
政府は法人税減税などを約束し、株価維持(PKO)のため、全力を尽くしているように見える。
しかし、税体系全体の中で代替財源をどうするのか、明確な説明はない。
まさか、消費税の増税分を充当?
前半の株価は、主として黒田日銀総裁が言うところの「異次元の金融緩和」の効果と見られる。
国債を買い入れ、世の中に出回る資金量を増やすことが骨子である。
資金量を増やすことによって、消費者物価指数を対前年比2%上昇させるという。
資金量が増えれば、お金の価値は下落し、財・サービスの価格は上昇する。
将来もこの傾向が続くとすれば、価格が上昇する前に購入しようと消費は活発化するだろう。
そうすれば、デフレから脱却し、景気は良くなって行く。
日銀の金融緩和は、アベノミクスの「3本の矢」の1本目である。
週刊朝日4月11日号
しかし、生活感覚的には、消費者物価が上がったことを素直に喜べない。
冒頭で書いたように、物価の値上がりは需要の増大ではなく、他の要因によって起こっている。
他国の需要増、気象変動、原材料の高騰(円安を含む)などである。
地方における生活必需品であるガソリンについてみよう。
ガソリン価格の推移は下図のようであるが、ガソリン価格は、基本的に為替レートに依存する。
http://www.d3.dion.ne.jp/~furuk_tm/gti_data/price.htm
リーマンショックのよって下落したガソリン単価は基本的に上昇基調にあるが、直近のその要因は円安と増税であろう。
そもそも地方においてはガソリンは生活必需品であって、価格弾力性は硬直的である。
つまり「需要が増えたから価格が上がった」わけではない。
企業の賃上げが報道されているが、大企業はともかく中小零細企業は、賃上げしたくてもできないのが現実のようである。
消費増税もあって、一般的な人々の生活は決して楽になっていないであろう。
黒田日銀総裁はインタビューに応えて次のように語っている。
黒田総裁は22日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビュー(英語で行われ、WSJが翻訳した)で「実施がカギだと思う。迅速かつ即座に実施する必要がある」と語り、改革のペースに不満を示した。また「重要なのは政府や民間セクターが行うことだ」とし、安倍政権が改革を速やかに実施しなければ「実質成長率は期待外れに終わる可能性がある」と指摘。「それは経済にとっても、社会にとっても好ましくない」と述べた。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303295604579581380259838254
アベノミクスによってインフレあるいは脱デフレになったとして、それを喜んでいいものかどうか、疑問である。
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