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2014年6月13日 (金)

白元における失敗の要因/ブランド・企業論(29)

防虫剤「ミセスロイド」や保冷枕「アイスノン」などを生産、販売する日用品メーカーの白元(本社・東京都台東区)が、5月29日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理された。
負債総額は255億円だという。

「アイスノン」は、私などの世代にとっては思い出深い商品である。
昭和40年代、家庭用冷蔵庫の普及で、自宅で凍らせて繰り返し使用が可能な氷枕に変わるアイスノンは、子育て真っ最中の家庭の必需品だった。
私の子供の頃は、まさに氷枕だったので、文明とはかくなるものか、と感じさせられる商品の1つであった。
保冷剤というような一般名詞よりも、「アイスノン」という固有名詞の方が圧倒的に使われたように思う。

同様のことは、「ホッカイロ」についても言える。
冬場のゴルフにおいて、「ホッカイロ」は必需品とまではいかなくても、あれば便利であり、誰かが持ってくれば喜んでお裾分けにあずかった。
白元という名前よりもこれらの商品名が浸透していたことは間違いない。

同社のサイトを見ると、1923(大正12)年、鎌田商会(弊社の前身)創業とある。
創業者鎌田泉個人経営による防虫剤・防臭剤の製造販売の開始である。
株式会社になったのは1950(昭和25)年である。
直近の資本金は、33億7,033万円だから伝統ある大企業である。

その伝統の大企業がどこで躓いたのか?
もちろん要因はいろいろ挙げられよう。
端的には、相対的な商品力の低迷ということではなかろうか。

保冷剤については、普及と共に安価な類似商品が大量に市場に出回った。
アイスノンはブランド力において優越していたが、価格が重視されるのは日用品マーケットの宿命である。
有効な差別化戦略は難しく、シェアは落ちて行った。
ホッカイロはロッテが開発したホカロンを追随する形で市場に参入し、二大勢力となったが、後発メーカーの大量参入と低価格戦略によりシェアを落とさざるを得なかった。

マーケティングの用語にコモディティ化というものがある。

ある商品カテゴリにおいて、競争商品間の差別化特性(機能、品質、ブランド力など)が失われ、主に価格あるいは量を判断基準に売買が行われるようになること。一般に商品価格の下落を招くことが多く、高価な商品が低価格化・普及品化することを“コモディティ化”という場合もある。
コモディティ化(こもでぃてぃか)

同社商品の共通項は、上記の意味でのコモディティ化の宿命を持っていることであろう。
だから、老舗のブランド力を背景にした価格設定が、類似品の低価格参入によって消費者離れを起こしやすい、というのが本質的な問題であった。
しかし、花王、ライオン油脂、ユニチャームなどの企業も同様の商品を扱っている。
なぜ、白元は落後したか?

民事再生の引き金になったのは、創業家4代目社長の鎌田真社長に原因があると指摘されている。
たとえば以下のような指摘であるが、同様の内容が「週刊現代」6月21日号に『インサイドレポート』として掲載記事がある。

鎌田社長は創業者の孫で、慶応大経済学部卒業後に都市銀行を経て白元に入社。その後ハーバード大でMBAを取得し、2006年に四代目社長に就任。マスクの「快適ガードプロ」などヒットを飛ばす一方、民放テレビ局の女子アナとの交際も報じられるなど華麗な交友関係でも知られた。
 09年3月期には売上高301億1400万円と公表していたが、防虫剤市場でエステーに押されるなど競争激化で業績が伸び悩み、財務状態が悪化した。
 13年に住友化学が白元の第三者割当増資に応じ、白元株の19・5%を保有する筆頭株主となった。今年1月には、主力商品「ホッカイロ」の国内販売事業を医薬品メーカー「興和」に譲渡するなど資金繰りに追われた。
 その後、同社のずさんな経理処理が発覚。東京商工リサーチによると、決算内容に信憑(しんぴょう)性の問題が浮上、白元は金融機関に今年3月末から6月末までの返済猶予などを要請したが、銀行団は白元支援でまとまらず、取引先も事態を重く見たことから自力再建の道が絶たれた。
 29日付で引責辞任した鎌田社長。同社のウェブサイトでは「強いリーダーシップと確かなマネージメントをもって、白元に関わるすべての人を幸せへと導く」とうたいあげているが、ハーバードの教科書に「正直」の文字はなかったのか。
白元 御曹司社長が会社をつぶすまで 慶応→米ハーバードでMBA

ここでは、同族企業の経営私物化というお定まりの問題があるが、もう1つ、鎌田社長がハーバード大のMBAだったという点に注目したい。
ひと頃ほどMBA人気は無いようであるが、MBAというだけでは何の価値もないのはすべてのスキルと同じことである。
経営の現場の文脈の中でどう生かすかのセンスが問われるわけであるが、テレビ局の女子アナ(週刊現代誌によれば、現参議院議員の丸川珠代氏(自民党政策審議会長代理))と浮名を流しているようでは、センス以前の問題であろう。

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