KADOKAWA・ドワンゴ経営統合/ブランド・企業論(28)
5月13日、株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴは、両社が経営統合することで合意したと発表した。
対等の精神に基づき、両社の完全親会社となる「株式会社KADOKAWA・DWANGO」を共同株式移転で設立するとしている。
統合会社は、両社の株主総会などの承認を経て10月1日に設立する予定で、代表取締役会長には現ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏、代表取締役社長には現KADOKAWA取締役相談役の佐藤辰男氏が就任する予定である。
KADOKAWAとドワンゴの2社は従来から、濃密な関係を持っていた。
2011年に資本提携しており、お互いに株式を持ち合いしている。
両社の時価総額は1000億円前後でほぼ同じくらいである。
そういう条件が揃っての統合であり、必然とも言えるのかも知れない。
統合した会社の姿は、以下のようである。
http://thepage.jp/detail/20140521-00000007-wordleaf
株式会社KADOKAWAは、角川書店を中心とする老舗企業である。
私などには、創業者の俳人としても著名だった角川源義のイメージが強く、国文学系の出版社という感じがするが、多彩な領域のメディア企業化している。
一方の、株式会社ドワンゴは、1997年設立の新興企業である。
伝統的メディア企業と新興メディア企業の統合で思い出すのは、AOLとタイム・ワーナーとか、日本のTBSと楽天、ニッポン放送とライブドアなどである。
大きな話題となったが、いずれも成功しなかった。
その辺りを問われて、角川歴彦社長は、次のように説明している。
まず、敵対的な合併を目論むと大概ダメになると思います。ですから、今のご質問例の半分はそういう形だったと思います。タイム・ワーナーとAOLについては、今日になってみれば歴史的な、時代的な評価として無理だったということにあると思います。
その点では、KADOKAWAがリアルなプラットフォーマーとしてきちっとした成果を出したいというときに、ドワンゴがいたわけです。また、ドワンゴが自身のプラットフォームから配信している若きクリエーターたち、UGCたちには、もうひとつ上を卒業するような可能性、才能を持った人たちが、またKADOKAWAの舞台で仕事をしてくれる。これが積み重なっていけば、異質と思われた会社同士が、実は一卵性双生児だった、と思っていただける日が近いと思っております。
http://logmi.jp/12816
私は、両社の内部事情については良く知らない。
しかし、上記の役員体制を見れば、KADOKAWAの角川歴彦会長の、ドワンゴ会長・川上量生氏への後継者指名と言ってもいいだろう。
川上氏は京都大学工学部の出身で、現在45歳。
卒業後、サラリーマンを経て1997年にドワンゴを創業した。
当初はセガ・エンタープライゼス(現セガサミーホールディングス)のゲーム機ドリームキャスト関連のビジネスを行っていたが、携帯コンテンツ事業にシフト、2007年にニコニコ動画を開始して躍進した。
統合後の持株会社では、角川氏は相談役に退く。
角川氏は、2010年の資本・業務提携の時点から、川上氏に対して合併を持ちかけていたという。
経営統合することにより、KADOKAWAの有するコンテンツおよびリアルプラットフォームとドワンゴの有する技術力およびネットプラットフォームが融合する。
ネット時代の新たなビジネスモデル作りを、若い川上氏に託した角川氏の判断は、どう出るか?
過去のメディアの大型統合は失敗例が多い、というジンクスを破ることを期待したい。
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