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2014年6月12日 (木)

DNA鑑定とアイデンティティ/知的生産の方法(97)

アイデンティティという言葉がある。
ビジネスパーソンにとっては、CI(コーポレート・アイデンティティ)によってお馴染である。
辞書サイトには、次のような説明が載っている。

「あるものがそれとして存在すること」、またそうした認識をさします。「同一性」「一致」のことです。
アイデンティティー(identity)は、広義には、「同一性」「個性」「国・民族・組織などある特定集団への帰属意識」「特定のある人・ものであること」などの意味で用いられます。
コンピューター関係で用いられるときは、「一致」「識別」のことです。
学術用語としてのアイデンティティーの定義は、哲学分野では、「ものがそれ自身に対して同じであって、一個のものとして存在すること」です。心理学・社会学・人間学などでは、「人が時や場面を越えて一個の人格として存在し、自己を自己として確信する自我の統一を持っていること」と説明され、「本質的自己規定」をさします。

このアイデンティティを明らかにする手段の1つとして、DNA鑑定が大きな決め手とされるようになった。
DNA鑑定は物証の王様といわれ、再審無罪となった足利事件、東電OL殺害事件、最近の袴田事件等はすべてDNA鑑定が決め手と言ってよい。

ちょっと前に、女優の喜多嶋舞氏が俳優の大沢樹生氏との結婚生活において産んだ子供について、DNA鑑定の結果、大沢氏の父性確率が0%だったということが話題になっていた。
その後の経緯については知らないが、親子関係というものを改めて考えさせられた。
DNAは生物学的な親子関係の決め手ではある。
しかし、親子関係には、一定期間共同生活を送ることにより、単なる血統的な意味よりももっと別の要素もあるのではないか。

それにしても、父親というものは、母親に比して何と頼りない存在であることか。
法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子を嫡出子という。
民法は婚姻中に懐胎された子をもって夫の子と推定する懐胎主義によって立法している(772条1項)。
ところが、第2次大戦前には、婚姻の慣行として子が出生するまで婚姻の届出をせず、内縁関係にとどまるという場合も多かった。
それでは不合理ということで、判例、学説は懐胎主義から脱し、父母の婚姻中に出生した子をもって嫡出子とする出生主義によることになった。
であるから、大沢-喜多嶋夫妻の子供が、法律的に大沢氏の子供であることは確定している。

嫡出子と非嫡出子には、法律の上で以下のような差異がある。

1.父子関係の成立
嫡出子は母の夫が父であると推定されるが(772条)、非嫡出子の父子関係は父の認知によって成立する(779条)。なお、母子関係については後述の通り、通常、懐胎・分娩という事実から当然に発生する(判例として最判昭37・4・27民集16巻7号1247頁)。
2.親権
嫡出子の親権は父母が共同で行うが(818条)、非嫡出子の親権は母が単独で行う。ただし父が認知し、父母の協議によって父を親権者と定めることができる(819条4項)。
3.氏
嫡出子は父母の氏を称するが(790条1項)、非嫡出子は母の氏を称する(同条2項)。父の氏への変更は家庭裁判所の許可により可能で(791条1項)、このとき子は父の戸籍に入る。
嫡出(Wikipedia)

父子関係の直接的な証明が難しかった時代には、嫡出の推定は婚姻関係で判断することが自然でもあり、合理的だった。
しかし、近年の生物科学の発展により、DNA鑑定という有力な手段が登場し、民法の規定のままでいいのかどうかが問われている。
最高裁で弁論が開かれた父子関係取り消し訴訟は、DNA型鑑定が民法の嫡出推定を破ることができるかどうかが問われている。

民法は、夫が遠隔地で暮らしているなど明らかに夫婦関係がない場合などには例外的に「推定が及ばない子」として、嫡出推定を否認している。
しかし、今回争われているのは、このような例外的な事情はない。

関西訴訟は、夫が単身赴任中に妻が妊娠。お宮参りや保育園行事などに家族として参加していたが、妻が別の男性と交際していることが発覚した。妻が子を連れて家を出ていき、今は交際相手とともに生活しているという。北海道訴訟では、結婚約10年後に妻が出産し、夫の子として出生届を出したが、その後、離婚が成立した。
DNAの鑑定技術向上で民法の「想定外」 最高裁はどう判断?

Dna
静岡新聞6月10日

まあ、ケースバイケースで判断せざるを得ないような気はするが。

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