力により現状変更を迫る時代/世界史の動向(13)
中国、ベトナムなどが領有権を争う南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島海域で、中国が石油を掘削し、両国船が衝突する事態となっている。
先日、オバマ米大統領がアジア歴訪した直後である。
オバマ大統領はフィリピンと基地を共同利用できる新軍事協定を結び、「南シナ海を含む地域の安定に寄与する」と表明した。
これは、中国の力の行使を抑止する狙いであろう。
しかし、中国は米国の思惑どおりにはならないとばかりに、むしろ力を誇示しようとしている。
中国が掘削作業準備を始めた海域はベトナム中部沖約220キロの地域である。
今月になって起きた船舶衝突では、両国はいずれも相手の船舶が意図的に衝突してきたと批判合戦を行っている。南シナ海の南沙諸島(英語名:スプラトリー)は、ベトナムのほか、フィリピン、マレーシア、ブルネイも領有権を主張しているが、掘削現場近くの西沙諸島(同パラセル)に関しては、ベトナムのみが中国と対立している。外交筋によると、ベトナムは中国の西沙諸島をめぐる動きを問題視し、対話の機会を求めているものの、中国側は西沙諸島について、同国の支配下にあり主権も有しており、係争中ではないとの姿勢を崩さないという。中国の政府系シンクタンク、南海研究院の呉士存院長は「ベトナムが何を言っても何をしても、中国は(西沙諸島での)計画を推し進めるだろう」と語る。
両者の言い分はそれぞれあるだろうが、私の印象としては、中国中国の行為は力ずくで現状変更を試みるものであり、横暴のように見えることは確かだ。
民主党の菅政権時代の尖閣諸島での中国船衝突事件を想起する人も多いのではないか。
2010年9月7日、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた巡視船「みずき」が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じるも、それを無視して漁船は違法操業を続行、逃走時に巡視船「よなくに」と「みずき」に衝突し2隻を破損させた。
海上保安庁は同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し、取り調べのため石垣島へ連行し、船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取を行った。
中国政府は「尖閣諸島は中国固有の領土」という主張を根拠に、北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の主権に基づく司法措置に強硬に抗議し、船長・船員の即時釈放を要求した。
これを受けて13日に日本政府は船長以外の船員を中国に帰国させ、中国漁船も中国側に返還した。
この時の政府の対応は釈然としないものだった。
同様のことが、南シナ海でも行われようとしている。
中国はさまざまな国内問題の解決のために対外的な問題を起こしているように思える。
とすれば、満州事変時の日本と同じことではないのか?
第一次世界大戦の開戦から100年。
再び、力で現状変更を迫る時代ということだろうか。
再び、力で現状変更を迫る時代ということだろうか。
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