総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
私は、回復期のリハビリ病院に5カ月ほど入院していた。
その時、これは近未来の日本の社会の姿ではないかと思った。
2025年に団塊の世代が後期高齢者になる。
あと10年である。
先ごろ、認知症の人が起こした電車事故の損害賠償訴訟について、高裁判断が示された。
認知症の罹患者は91歳の男性で、損害賠償請求をしたのは、JR東海である。
判決は、85歳の妻に賠償を命ずるものだった。
⇒2014年4月29日 (火):認認介護という現実/ケアの諸問題(6)
地裁では、遺族の長男も損害賠償の対象になっていたが、控訴審の名古屋高裁でも妻の賠償責任があると判断された。
認知症徘徊は妻のみ責任 JR事故、賠償は半減
この判決をどう見るか?
民法は、損害賠償について、次のように規定している。
この判決をどう考えるかは立場によってさまざまであろうが、多少でも介護の現場を知っている人ならば、介護の現場を無視した教条的な判決と考えるのではないか。
⇒2014年5月13日 (火):軽度認知症とその対策/ケアの諸問題(9)
実際、もし自分が遺族の立場だったらと考えると、どうできただろうか?
週刊現代5月24日号
団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、認知症患者も増大しているのではないだろうか。
それに伴い、事故件数も増大すると予測されている。
在宅医療・介護の方針が打ち出されているが、判決は逆行しているようにも思えるし、十分な体制が確保できるとも思えない。
http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/3020
2025年に向けて、ほとんどすべての人が、介護をする人かされる人になるであろう。
すなわち総介護社会である。
自公両党は、野党の審議が十分ではないという反対を押し切って「医療・介護総合推進法案」を強行採決した。
一方で、集団的自衛権も強権的に行使容認の方向に動くようである。
静岡新聞5月15日夕刊
どう見ても、介護人材の拡充は焦眉の課題であろう。
しかるに、介護職が3Kと呼ばれる悪環境にあることは、社会通念となっている。
東京新聞5月11日
この国の将来はどうなるのであろうか?
杞憂を抱くのは私だけではあるまい。
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